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2013年6月14日(金)

PS4、Wii U、Xbox Oneの3ハードが目指す方向性とは? ハードメーカー3社の戦略を考察【E3 2013】

文:イトヤン

 アメリカ・ロサンゼルスで開催中の“E3 2013”に合わせて、マイクロソフト(MS)、SCE両社がそれぞれプレスカンファレンスを行った他、任天堂はオンライン配信“ニンテンドーダイレクト”において、E3出展ソフトに関する情報を公開した。ここでは各社の発表を通じて明らかになった、PS4、Wii U、Xbox Oneの各ゲームハードがそれぞれ目指す方向性とその戦略について考察してみたい。

【E3 2013】 【E3 2013】 【E3 2013】

 ハードメーカー3社の発表で紹介されたゲームの中で、3社以外のソフトメーカー、いわゆるサードパーティからXbox One、PS4、Wii Uのいずれか1機種のみに発売される独占ソフトの数は、ごくわずかしかない。サードパーティタイトルは基本的にマルチプラットフォームとなっており、独占供給されるソフトには何らかの形でハードメーカー自身が関与している。この事実を踏まえた上で、3社の発表について見ていこう。なお、ダウンロード配信が中心のインディーズゲームに関しては後述する。

■Xbox Oneは“エンターテインメントマシン”を封印してゲームタイトルにフォーカス

 E3に先行して、日本時間の5月22日に行われた“Xbox One”の発表会では、ゲームだけに留まらず、映画やTVドラマ、スポーツ中継などを統合したエンターテインメント・プラットフォームとしての側面が強く打ち出されていた。だが今回のカンファレンスでは、あくまでゲームにフォーカスし、他の話題についてはほとんど語られなかった。それだけでなく、Xbox Oneのローンチタイトルであるはずの『Kinect Sports Rivals(Kinect スポーツ ライバルズ)』や、ディズニーとのコラボ作である『Fantasia(ファンタジア)』といったカジュアル向けタイトルも紹介されず、コアゲーマー向けの作品のみをひたすら前面に押し出すという徹底ぶりだ。

【E3 2013】 【E3 2013】

 このように今回のカンファレンスでは、Xbox Oneをゲーマー向けハードとして位置づけようとする意図が強く感じられた。それゆえか、Xbox 360の新モデルを発表当日に店頭発売する(注:北米のみ)という大きなイベントが用意されていたにもかかわらず、Xbox 360については簡単な紹介に留めて、時間の大部分をXbox Oneのソフト紹介に費やしていた。

 欧米では11月に決定したXbox Oneの発売当日に、このハードを購入するユーザーの大半が、いわゆるコアゲーマーであることは容易に想像できる。MSとしてはXbox Oneを将来的に、総合エンターテインメントマシンへと成長させる意図があるのは先の発表会でも明らかだが、ローンチを成功させるためにはまず、ゲーマーへのアピールがなによりも重要だと判断したのだろう。

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 コアゲーマーを引き込むのに何がもっとも重要なのかと言えば、それはもちろんゲームタイトルだ。そこでMSとしては、同社最大の人気作である『Halo(ヘイロー)』はもちろんのこと、以前にXbox 360用ソフトとして発表していた『RYSE(ライズ)』をXbox Oneに移行させたり、MS傘下のRare(レア)が過去にリリースした(日本では未発売)対戦格闘ゲーム『Killer Instinct(キラーインスティンクト)』を復活させたりと、あらゆる手を尽くしてソフトラインナップをアピールしている。

 ここで注目したいのが、Xbox One独占ソフトとして発表されたカプコンの『DEAD RISING 3(デッドライジング3)』だ。このタイトルの開発はカプコンが行っているが、発売元はMSとなることがカプコンUSAの公式ブログで説明されており、MSのプレスリリースでも2つの社名が並んでいる。上で紹介したように、サードパーティによる独占ソフトがほとんど存在しなくなっている状況の中で、MSとしてはソフトの独占に直接関与するという方法を選んだようだ。

【E3 2013】 【E3 2013】

 このようにファーストパーティ以外の独占ソフトがほぼ存在しない中で、EAの『TITANFALL(タイタンフォール)』がコンシューマ機ではXbox OneとXbox 360だけで登場することは、大きなアドバンテージと言えるだろう。

 『Call of Duty(コール オブ デューティ)』シリーズの開発者たちが新たに設立したデベロッパー、Respawn Entertainment(リスポーン・エンターテインメント)の第1作となる『TITANFALL』は、兵士の立場での銃撃戦と巨大メカを操縦するバトルを一度に楽しめるSFミリタリーFPSだ。この作品が次世代ハードではXbox Oneでのみ登場することは、元々Xboxファミリーが得意としているシュータージャンルが、より盤石になることを意味する。海外では特に人気の高いジャンルだけに、コアゲーマーには強くアピールしていくはずだ。

 一方でXbox Oneにとっての課題は、現在Xbox 360を利用しているアクティブユーザーを、どうやってXbox Oneに移行させるか、という点だろう。前述の『TITANFALL』をはじめ、Xbox 360には今後もまだ多くのタイトルが登場する。Xbox 360ソフトの互換性がないXbox Oneにとって、北米では現行ハードでもっとも成功しているXbox 360が、最大のライバルとなってしまう可能性も十分にあり得る。

 また、MSのプレスカンファレンスからはもう1つ、違った種類のメッセージを読み取ることができる。それは日本のゲーム業界、特にゲーム開発者に対するアプローチだ。プレスカンファレンスの冒頭を飾るタイトルに、KONAMIの『METAL GEAR SOLID V THE PHANTOM PAIN(メタルギア ソリッドV ファントムペイン)』が選ばれて、小島秀夫監督がスピーチを行ったことは、その表れと言えるだろう。

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 さらに注目したいのは、今回のカンファレンスで初公開されたXbox One用ソフト『D4』だ。これはエピソード形式で展開されるミステリーアドベンチャーとのことだが、本作の開発を行っているのは日本のデベロッパーである“アクセスゲームズ”で、過去に『Red Seeds Profile(レッド シーズ プロファイル)』を手掛けたSWERY65氏がディレクターを務めている。日本の独立系デベロッパーとMSが共同で、全世界に向けて作品を発表する機会を得たことは、日本のゲーム業界、とりわけ独立系のデベロッパーにとって可能性が大きく広がるはずだ。

 今回のカンファレンスで、MSが日本のゲーム開発者に対して見せたアプローチは、Xboxにとって今もなお、日本が重要な地域だと受け止められていることの表れだとも言える。ネット上では、Xbox Oneが11月に発売される21の地域の中に日本が含まれていないことに対して、さまざまな憶測が飛び交っている。だが、初代XboxもXbox 360も欧米から1~3カ月ほど遅れて日本で発売されたことを考えれば、その点に関して特に心配する必要はないだろう。日本のゲームファンとしてはあくまで冷静に、正式な発表を待ちたいところだ。

→PS4は“ゲーマーのためのハード”というアピールに成功(2ページ目)

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