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“歴史の裏”に鋭く切り込んだストーリーと、プレイヤーを飽きさせない独自のシステムで好評のRPG『シャドウハーツ』最新作がついに発売! パワーアップした本作の魅力を、監督の町田松三氏に直撃。『シャドウハーツII』の気になる部分を解き明かす!

●『シャドウハーツ』は、いままでにないRPGにしたかった
――まずはじめに、『シャドウハーツ』のコンセプトを教えていただけますか?
町田松三氏(以下敬称略):一言で言えば“王道のRPG”ですね。きちんと遊べて、誰でも楽しめるRPG。ただ、王道といっても『シャドウハーツ』ならではの独自性は出したかった。それで、近代の史実をベースにした世界観で作ってみようと思ったんです。
――よくある中世風のファンタジーは避けたということですか?
町田:そういうファンタジーも好きなんですけどね。『シャドウハーツ』では、あえて近代を舞台にして、そこに想像の部分を入れ込んでいきました。
――具体的には、どのような世界観なんですか?
町田:『シャドウハーツII』の舞台は1915年ごろのヨーロッパとアジアです。映画「紅の豚」もほぼ同じ時代の話なんですけど、なんというか世の中が科学で便利になっていく時代。いろんな発明がされて、ギミック的におもしろい機械が出てきたりしていた時代ですね。ただ第一次世界大戦が勃発して、暗いムードが世界を覆っている、という感じです。


●進化したジャッジメントリング!
  コンビネーション攻撃でラスボスも秒殺!?

――システム的な特徴はやはり“ジャッジメントリング”だと思うんですが。
町田:普通のコマンド選択式の戦闘がイヤだったんですよ。それで発売元であるアルゼのパチスロからヒントを得まして(笑)、“目押し”のシステムを取り入れてみたんです。
――やっぱりあれはパチスロからきてるんですか!
町田:はい、でもパチスロのリールをそのまま持ってきちゃうと、見えてる範囲が狭いから目押しが難しいんですね。直感的に「ここで押さなきゃいけないんだ」っていうのがわからない。それで現在の形に落ち着いたんです。
――『II』のジャッジメントリングは新要素が追加されていますよね。
町田:リングをカスタマイズして、自分にあったリングが作れるようになってます。リングに追加効果を付けられたり、アイテムを入手することでヒットエリアの数を増やしたり、幅を広げることができたり、という調整も可能です。あと、リングの入力が面倒くさいという人のためにオートのリングもあるんですよ。
――オートですか! それは、ちょっと微妙じゃないですか?
町田:実は社内からの強い要望で。あるスタッフに「目押しがめんどくさいからオートにしてくれ!」って再三言われて、オートのモードをつけたんですよ。
――好評でしたか?
町田:いや、その人はぜんぜんオートで遊ばなかったです(笑)。でも、せっかく作ったし、そういう意見もあるだろうからということで、そのまま残そうということになりました。でも、個人的には、オートを使うより自分でプレイしたほうが面白いだろうな、という気持ちはありますよね(笑)。
――そのほかシステム面での見どころはどこですか?
町田:コンビネーション(コンボ)攻撃ですね。すべての攻撃が連携できるシステムになっているので、ちゃんと順番を考えてリングのカスタマイズをすれば、ラスボス級の敵も秒殺できます。
――それはすごい。
町田:僕がはじめてラスボスを倒したときには何十分もかかったんですけど、隣でそれを見てニヤニヤしているスタッフがいまして。そのスタッフのところに行って見てみたら、ラスボスがかわいそうになるくらいすぐに倒されてました。
――やっぱりコツがあるんですね。
町田:コンボで使う攻撃を、あらかじめ設定しておくショートカット機能がついてまして、それを使うとボーナスダメージがつきます。とにかくいろいろな組み合わせを試して最強のコンボを見つけていってほしいですね。


●声優・池田秀一氏がオオカミに!?
  独特のギャグは『シャドウハーツ』ならでは

――『II』の開発はいつごろからスタートしたんでしょうか?
町田:一昨年の秋ごろですね。『II』からリアルタイムのイベントシーンを入れようということになって絵コンテを描いてたんですが、2時間半ぐらいの予定がいつのまにか6時間を超えるものになってしまいまして。それを全部モーションキャプチャーで撮影しました。でも開発はしんどかったですけど、スタッフはみんな楽しんでやってましたよ。
――その楽しい現場の雰囲気のせいですかね。『シャドウハーツ』には独特のお笑い要素がありますが。
町田:世界観がハードですから、そのぶんギャグの要素を入れたくなるんですよ(笑)。ずっとシリアスなストーリーだけだと、遊んでいる人も救いがなくなっちゃうと思うので。
――今回もギャグの要素は多いんですか?
町田:ベタなものから、かなりマニアックなものまで(笑)。いちばん見てほしいのはオオカミのブランカです。
――あー、ブランカはいつも勝手になにかやってますもんね。
町田:普段はしゃべらないんですけど、画面の端っこでヘンな行動をしていたりするんですよ。ちょっとシリアスなイベントでも、仲間とじゃれあってたりとか。だから、画面にブランカが出ているときは注目しておいてください。あ、そういえばブランカだけはモーションキャプチャじゃないんですよ。当たり前ですが(笑)。
――オオカミですもんね。
町田:ブランカのモーションは担当のスタッフが作ってるんですが、彼が突然ぼくのところにやってきて「町田さん、やっていいですか!?」って言うんですよ。「何を?」って聞き返したら「ブランカにいろいろさせていいですか!?」って。そしたらもう好き勝手にやってましたね。ぼくも遊んでいて引っくり返るようなものがあります。
――あと、ブランカの声は池田秀一さんということですが。
町田:今回は36人の声優さんに出演していただいたんですが、大御所中の大御所にこの役を持っていったとき、マネージャーさんに「うちの池田はどの役ですか?」って聞かれて、それで「オッ、オオカミなんですけど……」と(笑)。でも「主人公クラスの、いちばん頭がよくてかっこいい役なんです!」って一生懸命説明しました。そのかいあって、収録のときはノリノリでやっていただけましたね。
――シブい感じで?
町田:はい、シブい感じで(笑)。池田さんに「役作りはどういうキャラクターでいきましょう?」ってあの声で聞かれて、「某有名キャラのように……」とお願いしました。
――それすごく贅沢ですよね(笑)。
町田:ブランカというキャラを作って、声を当てると決めたときから声優さんは池田さんに、と考えてましたからね。


●RPG史上もっとも頭の悪い主人公?
  愛すべきキャラクターたちに注目!

――『シャドウハーツ』はキャラクターの人気がとても高いですね。
町田:そうですね。何よりも主人公のウルがこんなに受け入れられるとは思ってなかったので、ぼくらもビックリしています。『I』のアンケートハガキで、「私の考えるウルは、こうなんです!」という熱いメッセージをたくさんいただいたりして。ウルはいい子なんだけど、口が悪いんですよね。頭も悪いし(笑)。
――いままでにないタイプの主人公ですよね。そこが魅力なんだと思います。
町田:そう言ってもらえるとうれしいです。
――ところで、例えば『II』では前作のキャラクターを登場させずに、まったく違うストーリーにしてしまうというやり方もあったと思うんですが。
町田:ええ、それも考えました。でもやっぱり『I』で反響が大きかったウルは出そうということに決めまして。じゃあ同じく『I』のヒロインで、ウルの恋人のアリスはどうするのかと。彼らに子どもができてその子たちが戦う話にしようか? とか、そういうストーリーも考えたんですよ。だけどそうじゃなくて、もっとドラマチックにしたかった。それで、アリスが亡くなってしまうという前作のバッドエンドからストーリーを組み立てていったんです。
――かなり反響があったんじゃないですか?
町田:公式サイトや雑誌で発表したあとは、ファンのみなさんから「なんでアリスが死んでるの! ヒドイ!」という怒りの手紙がいっぱい届きまして……。ウルとアリスがセットでこれほど人気があるとは思ってなかったんでビックリしましたね。
――そういったファンの方に向けてのメッセージはありますか?
町田:もう、遊んでもらうしかないかなと思ってるんです。「カレンは嫌いじゃないけど、ウルの恋人はアリス以外許さない!」とか「ウルはキレイな女の子に絶対よろめくはず!」とか、なかにはすごく思いつめているお手紙もありまして……。もう、みなさん早く遊んでください! という感じです(苦笑)。
――遊べば納得してもらえそうですか?
町田:どうでしょうね。作り手としては納得してもらえるというか、わかってもらえると思ってるんですけど、遊んでみての感想は人それぞれかもしれないです。


●ただ楽しいだけのゲームではなく、
  プレイした人の心になにかを残すものを

――やはり世界観がシリアスだからこそ、ユーザーの思い入れも強くなってしまうのかもしれませんね。
町田:そうですね。けっこうハードなお話なので、男の人に人気が出るかなと思っていたんですが、不思議と女性に受け入れられているのは意外でした。
――というか、根本的な疑問なんですが、そもそもなぜそんなシリアスなストーリーにしたんですか?
町田:うーん、やっぱりドラマチックで奥の深い物語を作りたかったんです。ただ遊んで楽しかったねというだけじゃなく、プレイした人の心になにかを残すものじゃないと作る意味がないと思ってるんで。
――ただ、レベルを上げて敵を倒してというだけではないところを狙っている?
町田:ええ、マンガでも映画でも物語を楽しむことは同じだと思うんですが、自分がそのなかにいて体験できるっていうのがRPGの良さだと考えています。ユーザーに訴えかけるドラマを作るというのがぼくのなかでは大前提ですね。長い時間をかけて遊んでもらうことになるので、後悔しないような作品にしなきゃって気持ちはあります。
――作品にちゃんとメッセージがこめられているんですね。
町田:『I』は父と子の熱いドラマがあって、テーマは“希望”だったんですが、今回は“幸せ”というテーマを追求していくものになっています。人それぞれが感じる幸せって違うけれど、あなたにとっての幸せはなんですか? というのをウルを通して、ユーザーのみなさんに選択してもらいたいです。
――ユーザーの気持ちを常に意識してるんですね。
町田:開発スタッフもプロモーションスタッフも気にかけていたのが、ユーザーさんからの意見です。『I』のアンケートハガキはぜんぶ目を通しました。良かったところは残して、イマイチだったところは直して、ちゃんと全体的にパワーアップさせていこうね、というのが合言葉になっていましたね。ホントにファンの皆さんに後押しされたところが大きいです。
――それでは最後に、ユーザーに向けてメッセージをお願いします。
町田:スタッフの思いはできる限り詰め込んだので、あとは早く遊んでいただきたいです。
――どうもありがとうございました。

町田 松三 氏
町田松三氏
 ノーチラス株式会社 取締役開発本部長。旧スクウェアで『FFVII』『クロノトリガー』などの作品の開発に携わる。ネオジオポケットの『ファーゼライ』からディレクション業務を担当し、『シャドウハーツ』シリーズの監督として現在に至る。

シャドウハーツII
■メーカー:アルゼ
■対応機種:PS2
■発売日:2004年2月19日
■価格:6,800円
  限定DXパック 9,800円
■関連リンク:公式サイト
(C)2004 ARUZE CORP. All Rights Reserved.(c)2004 Nautilus Inc.

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