カセットテープ知ってる? Bluetooth機能を搭載してラジカセが復活

澤田真一
公開日時

 クラウドファンディング『Makuake』に『CICONIAクラシカルステレオラジカセ TY-2111』(以下、TY-2111)が資金調達を実施しています。

 これは文字通り、80~90年代調のラジカセ。ですがUSBやmicroSD、Bluetoothとの接続も可能です。昔ながらのオーディオ機器に近代的な機能が加わった製品、と表現するべきでしょうか。

 そんな『TY-2111』が、大きな話題を呼んでいるとのこと。早速試してみましょう。

80年代を彩った“カセットテープ”

 80年代の音楽記録媒体と言えば、コンパクトカセットでした。これは一般的に“カセットテープ”と呼ばれています。それを再生するためのオーディオ機器がラジオカセットレコーダー、即ち“ラジカセ”です。

 カセットテープは、ハンドバッグの中に収納できる“夢の小型記録媒体”でした。しかもラジオ番組の録音も簡単な操作でできるということもあり、当時の若者は誰しも自宅にラジカセを置いていました。それはCDやMDが登場してからも変わらず、90年代はカセットテープとCDが仲良く共存していたことを、当時子供だった筆者は覚えています。

 そんなカセットテープですが、実は今でも根強い需要と人気があります。高齢者が宴会場や結婚式場にカセットテープの音源を持ち込んで演歌や民謡を歌う、ということもよくあるとか。また、最近ではアナログ独特の音質が見直され、カセットテープで新曲を発表するアーティストもいます。

 『TY-2111』はラジカセですから、もちろんカセットテープに対応します。アナログスイッチひとつで差込口が開く、懐かしい仕組みです。

 ラジオはAMとFMを受信。チューニングはもちろんダイヤルを回して行います。タッチパネル式の画面に数字を入力して……などという仕組みではありません。カセットテープの再生や一時停止、巻き戻し、早送り、ボリュームの調節等も、全てアナログ操作です。このあたり、デジタルネイティブのZ世代にとっては新鮮ではないでしょうか。そもそも、“巻き戻し”や“早送り”などという単語が今の若者に通じるかどうか……。

 そして、ロッドアンテナ。ラジカセには必ずこれがつきものです。いやぁ、懐かしい!

 受信したラジオ番組を録音することもできます。しかし、対応の記録媒体はカセットテープだけではありません。『TY-2111』にはUSBメモリーとmicroSDカードのスロットも用意され、またカセットテープの音源を現代の記録媒体に移すことも可能です。逆にUSBメモリーからカセットテープへ、ということもできます。

クイーンの名曲を聴く

 そして、『TY-2111』には現代の音響機器と同様にBluetooth機能があります。これを使ってスマホに接続し、音楽を聴いてみましょう。今回はクイーンの名曲『ボヘミアン・ラプソディ』で試してみました。

 この曲はクイーンの伝記映画のタイトルとして、そのまま使われています。それだけポピュラーミュージックの歴史に大きな足跡を残したということですが、フレディ・マーキュリーがこの曲を作った当初はレコード会社から冷淡な目で見られていました。

 『ボヘミアン・ラプソディ』は5分55秒の曲。今でこそこの程度の尺の曲は珍しくありませんが、リリースされた1975年当時は“あまりに長過ぎる曲”と思われていました。特にラジオ番組で流すとしたら、1曲はせいぜい3分強でなければなりません。しかも『ボヘミアン・ラプソディ』は、5分55秒の中で何度も変調する“つぎはぎの曲”です。このあたりでクイーンとレコード会社が揉めたことは、上述の映画でも描写されています。

 そこでフレディは、友人のラジオDJケニー・エヴェレットに『ボヘミアン・ラプソディ』の音源を渡し、その一部を番組内で流してもらうことにしました。するとこれが好評を得て、一般リスナーからレコード化を望む声が大きくなります。

 『TY-2111』のスピーカーからこぼれ出るフレディの「Mama……」というフレーズは、胸打つような説得力に満ちています。ザンジバル島出身のインド系イギリス人の青年は、ロックを“複雑で感傷的な芸術”に変えてしまいました。ステレオの音響機器で彼の曲を聴くと、力強さの中にある繊細さをはっきりと認識することができます。

高価格の理由

 このような“現代の機能を加えたラジカセ”というのは、『TY-2111』以外にも存在します。そして実のところ、『TY-2111』は同種の製品と比較したら割と高価格です。他社製品に、『TY-2111』の半値以下のものがありました。

 この価格差の正体は何でしょうか?

 『TY-2111』の軍艦部には、3つのダイヤルがあります。左からボリューム、バス、トレブルです。曲によっては低音を利かせたほうがいい、高音をシャープにしたほうがいいという差異があり、それに応じて自分の手で操作できるという仕組みです。高価格帯のラジカセには、必ずバスとトレブルのダイヤルがついていました。

 これが安価な製品になると、ボリュームとトーンしかありません。このトーンは低音か高音の二者択一で、高音を際立たせると低音がスカスカになる……というような現象が起こります。ウッドベースが曲をリードするビバップ以降のジャズを聴く場合、トーンダイヤルしかないラジカセではあまりにも性能不足。本格的な音質を追求するなら、ダイヤルの多い機種を買うのが正解です。

 しかも『TY-2111』には切り替え式のバスブースト機能も搭載され、より迫力のある低音を楽しめるようになっています。これぞまさにラジカセの醍醐味と言えるでしょう。

Makuakeでは割引価格で入手可能

 『TY-2111』の一般販売予定価格は3万円。ですがMakuakeではそれよりも安い価格でオーダーできます。

 筆者が12月10日に確認したところでは、2万4000円の出資枠が180個残っていました。実は筆者自身も、この『TY-2111』を購入しようかと思案しています。現代のオーディオ機器にはないメカニカルなアナログスイッチが、かえって魅力的です。若者から高齢者まで楽しめる機器としても、『TY-2111』は今後注目されるべき製品ではないでしょうか。

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

関連する記事一覧はこちら