『新サクラ大戦』に『龍が如く7』! 2020年に向けて飛躍するセガゲームスの取り組みを名越氏に訊く【電撃PS】

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 来年には創立60周年を迎えるなど、ゲーム業界の一翼を担ってきたセガゲームス(同グループのアトラスも含む)。10月31日発売の『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』を皮切りに、『新サクラ大戦』『龍が如く7 光と闇の行方』と、2019年の年末から2020年にかけて多くの人気タイトルが発売されます。

 『龍が如く』の最新作をRPGにジャンルを変え、一方では『サクラ大戦』シリーズをアクションにするなど、常にチャレンジをし続けるセガゲームスは、いつも以上に多くのゲームファンから注目を集めています。

 そこで今回は開発の陣頭指揮を執る同社取締役CPO、そして“龍が如くスタジオ”の総合監督でもある名越稔洋氏に、各タイトルにかける想い、そしてセガゲームスとしてこれから目指す先をうかがいました(インタビューは10月1日に実施)。

「『サクラ大戦』っておもしろい」が広く伝播してほしい

――『新サクラ大戦』は“新”と付けるだけの変化を持たせつつ、旧来の『サクラ大戦』ファンも納得させなくてはならないなど、制作するうえで2つのテーマがあったと思います。その部分の折り合いを付けるにあたり、一番悩まれた点はどこでしょうか?

名越稔洋氏(以下、敬称略):そもそも『サクラ大戦』はセガフェス2016で実施されたファン投票で復活期待部門1位になり、新作を作ろうという話になりました。その後作ってもいいと会社が判断したのは、IP戦略を強化し、過去のIPのリバイバルを含め積極的に取り組むという動きがあり、『サクラ大戦』がいまだに根強いファンが多いIPだからでした。

 でも、当時ファンだった方たちは皆歳を重ねて当時ほど熱狂的に応援してくれるとも限りませんし、女性のファンもいますが男性ファンの比率が高い作品です。だから作るとすれば、新しいファンを取り込めるような作品にしたいと考えました。

 私は『サクラ大戦』がどんなゲームであるのかは理解していますが、旧来のファンに対して刺さるものをどのように作ればいいのかというのは、あまり理解していないんです。でも、既存のファンに向けただけの作品になると、セールスもある程度は見えてしまいますし、ゲームのスタイルにしてもターン制シミュレーションをベースにしたものになり、ジャンルとしても制約があることは感じていました。

 だから、逆にぶち壊す部分をどのくらいまで許容できるならば作ってもいいのかなと、私は考えていたんですね。ただ、それをやると『サクラ大戦』ではなくなるという人もいて、私は壊せないならば制作に反対だったんですよ。ですが、いろいろな議論を交わし、「やはり新たなファンも増やしていかないと」となり、壊す方向に会社も舵を切ってくれました。

 私は言ってみれば新しい『サクラ大戦』を生むうえで、ゲームを作るというよりもぶち壊す方向に舵を切る船長です。要素を加えることはいくらでも加えられますが、まずは加える前に変えるものから決めなくてはいけません。じつは"檄!帝国華撃団(以下"ゲキテイ")"の歌を変えるというアイデアもあったんですよ。でも「符号として残っても新しいものを生む上で抑制には働かないよね」となり、残すことになりました。

 このように音楽についてだけではなくて、キャラクターについて、ゲームシステムについてなど、1つ1つ“『サクラ大戦』らしいもの”“『サクラ大戦』らしいけど変えるべきもの”という形でタグ付けしたんです。「バトルは変えるべきだよね、"ゲキテイ"はやっぱり残そうよ」とか、「ならば田中公平先生は必要だよね」など、どんなスタイルのゲームにするのかを1つ1つ丁寧に組み立てました。

――まさか"ゲキテイ"を変える選択肢もあったという話は驚きました。

名越:開発が始まってからの話をすれば、『サクラ大戦』におけるリアルタイムのアクションゲームは、あまり誰も想像がついていませんでした。ただ『龍が如く』シリーズでは長くアクションを手掛けていて、『新サクラ大戦』も人型のアクションゲームであるといえばそうですし、今回はソニックタイトルを手掛ける“ソニックチーム”も協力して作っているんです。

 『新サクラ大戦』の戦闘部分をキャラクターアクションと考えれば、“ソニックチーム”はエンジンもアクションとしてのさばき方もうまいから、それはそれで新しい、Mass(マス)に向けて触りやすい新しいアクションゲームが作れる、一番近いチームであろうと考えていました。

――たしかに体験版を触った感触では、とても手触り感がよかったです。

名越:あとは開発陣を信用していないわけではありませんが、ほったらかしにしていると「やっぱり『サクラ大戦』ってこうじゃない?」と、決めつけた誰かが徐々に舵を切り始めて、方向が従来のものに戻りがちです。

 このようなことはチームではよくあることで、「絶対に戻さない」「この道に行くんだ」「この方向で行くんだ!」ということを見届けることが、基本的に私の今回の仕事でした。だから、私はイベントごとがあってもステージには立たないし、作っているというよりは仕向けた人なので、そういう立場での参加でした。

――先ほど『サクラ大戦』に必要なもの、変えるべきものをタグ付けしたというお話がありましたが、名越さんのなかでそれが最終的に“新しいものにならない”と結論が出ていたら、制作はスタートしていかなったということでしょうか?

名越:やめていたか、規模をもう少し小さくしたプロジェクトにしていたかのどちらかでしたね。

――先日の花やしきでの先行体験会、そしてTGSや店頭体験会と、プレイヤーが実際に手に取る機会が多くなってきました。実際に触れた方の声を聞いて「あ、やっぱりこんな声が出たか」など、手応えという面ではいかがですか?

名越:賛否はあったと思いますが、基本的には受け入れてもらえたと思います、また、従来のバトルシステムに『サクラ大戦』らしさを感じていた方が、思ったよりもいなかった印象です。そこは変えて正解でした。

 あとは、いろいろな作家さんとのコラボレーションでしょうか。今は昔に比べるとコラボレーションが当たり前の時代になりましたが、『サクラ大戦』らしい豪華さの受け皿が、ゲームのなかにもたくさんあるんですよね。いろいろな作家さんを受け入れたり、多彩な設定を受け入れたりとか、その要素をずいぶん昔から持っている作品なんだと。

 当時は10数年後を見据えて作っていたわけではありませんが、そういった要素を自然にふんだんに使えたという意味では、未来に向けた非常に広がりのある、懐の深い設定だったんだなと、感心し直しました。いろいろと変えましたが、根っこの部分は変わっていないわけですから。そこが評価されたのだとすると、先人が作ってきた“サクラ愛”を含めて芯がしっかりしたコンテンツだったんだと、あらためて思い知りました。

――たしかにプレイしたユーザーからは、そのあたりが感じられたという意見が多かったですね。とくに新主人公については、発表当時は「やっぱり主人公は大神(一郎)でないと」という意見もありましたが、すごく好意的に受け止められていると思います。

名越:そのあたりはむしろ『サクラ大戦』をわかっている者たちが作った部分ではあるので、そこはよかったのではないですかね。

――『新サクラ大戦』はマンガ、舞台、アニメとゲーム以外でのメディアミックス展開が発表されていますが、こちらはわりと初期から計画されていたことでしょうか?

名越:やるからには手を精一杯広げてという考えは、あるにはありました。ただ、それが花開くかどうかは、正直今からなので1つ1つ丁寧に慎重にやっていかないと考えています。あとはゲームIPの横展開ですから、ゲームがしっかりしていないとダメだよという話とか。今の時代なかなか思ったようにいかないから、まだ心配は尽きないところではありますけど、各担当は一生懸命にやっているから上手くいってほしいなとは思っています。

――こちらはゲームを買われた方の“サクラ愛”を深めるための施策なのか、それとも新しい窓口を多く用意して、新規のお客さんを呼び込むための施策なのでしょうか?

名越:挙げていただいた以外にもコンテンツを認知させるスピードを速めるため、というものなどもあり、目的はさまざまですよね。ただ、これをある種のリスクヘッジと取るのか、むしろリスクと取るのかだと思います。

 両面を持っているので、成功しなければ時間とお金のムダ遣いで、成功すればIPの浸透を加速させる要素になりつつ、プロジェクトとしての収益にもなります。これはもう本当にやるかやらないか、なのかなと(笑)。

 でも、セガゲームスはIPをたくさん持っていて、これまでもいろいろなアイデアが出たり消えたりしていますが、『サクラ大戦』ほど大きな議論になったIPはなかなかないんですよ。私は上手くいくと思います。ゲームが上手くいけば、結局のところほかも上手くいきますし。

――発売まであと約2カ月半ということで、すでに既存のファンへのアピールは十分だと思いますが、これから新しいファンに向けて、どのような点をアピールしていきたいとお考えですか? 例えば『サクラ大戦』は知らないけど"ゲキテイ"は知っているという方も多いと思いますが。

名越:ドラマ性の高いコンソールゲーム、いわゆる昔で言うところのアニメファンたちに向けて作られたタイプの作品は、今は待っていてもあまり出てこないので、卒業しちゃった人もいると思います。先日任天堂さんからNintendo Switch Liteが発売されましたが、気づくと今は携帯ゲーム機市場がなくなってきています。

 コンソールでの大作IPの展開が限られているなかで、「そういうゲームをしっかりとしたハードで遊ぶのは楽しいよね」「情熱を持って作られていればおもしろいよ」と伝えて、遊んだ方にも「おもしろかった」と拡散してほしいなと。"ゲキテイ"がよかったではなく「『サクラ大戦』っておもしろい」というキーワードから広まって行ってほしいですね。

 アトラスの『ペルソナ5』がドカンと当たったときの要素と比較するべきか別としても、大半のユーザーは手掛けたクリエイターがきっかけで買ってくれるわけではないんですよ。「『ペルソナ』がおもしろい」が広まったから『ペルソナ5』が売れたんです。ジュブナイルな設定が~などは、みんなは知らないんです。本作はそれと同じで「『サクラ大戦』がおもしろい」という、短い動機付けがたくさんの人に伝播していくことが、今の一番の願いです。

伸びしろを求めてジャンルを変えた『龍が如く7』!

――『新サクラ大戦』同様、セガゲームスの大きなチャレンジタイトルとなるであろう『龍が如く7 光と闇の行方』ですが、いつ頃からRPGでやろうと決められたのでしょうか?

名越:『龍が如く6 命の詩。(以下、龍が如く6)』では「桐生一馬のドラマが終わりますよ」と宣言して、実際に終わりました。そこから『極』シリーズで昔のIPを掘り起こすなどしましたが、私は「次どうするの?」と、頭のなかでは次の主人公は誰で、どんな物語で……とばかり考えていました。

 でも、それだと何も変わらないし、そこに留まってしまうとまだ誰だかわからないけれども、次の主人公は桐生一馬と比べられ、桐生一馬のほうがよかったと言われ、最後はつぶれていくだけだと。とはいえ、新しい主人公はその宿命を背負って生まれてくるものではあるので、そこは止められないと。

 だとしたら、桐生と比較にならない軸を持った主人公にしないといけない。そうなると、やはりドラマがどうだ、舞台がどうだといった設定面ではなく、“ゲームとしてどうだ”という変化が必要だと考えました。とにかく新たな主人公に桐生との勝負をさせたくなかったんですよ。

――同じ土俵で桐生一馬とがっぷり四つ、というわけではなかったんですね。

名越:それはあまり考えてはいなかったですね。あとは『龍が如く』自体が発売当初、ゲームやゲームマーケットに対する挑戦でもありました。その姿勢はシリーズ化してファンに応えることで薄れていったわけではありませんが、挑戦というよりは期待に応えるという部分に徹していたのは否めません。シリーズが発売から15年経過しようとしているなか、いつかは原点に立ち返る必要があったわけですね。

 それで『龍が如く6』で桐生の物語を終わらせると決めたときに、次の作品でそれをやらなくてはと考えました。ただ、そのときは私もゲームジャンルまで変えるとは思っていなくて、当然「どんなアクションにするの?」と、アクションの変化形をみんな考えていました。

――『龍が如く6』のゲーム体験と違うと感じてもらえるものにしないとダメということですね。

名越:その変化案からマルチバトルみたいなものを考えて、AIの精度を上げることをずっと追求していました。それもいい方向にはいったのですが、「やっていることは十全かつ磨かれたAIだけだよね」という話になりまして(笑)。それでも十分に違うアクションシーンになったか、と言われたら、プライド的には違うと言い切れますが、大きく違うとは言い切れないよな……と。

 一方では『JUDGE EYES:死神の遺言(以下JUDGE EYES)』を発売して、あちらはむしろ強くアクションシーンを更新したというわけではなく、今まで試してきたなかで、一番手触りが優しくて爽快なものの集合体でした。さらに木村拓哉さんという素材もあり、ゲームが得意ではない方もプレイしてくれるのではないかと想定して、いわゆるガチャプレイでもクリアできるようにしないとダメという課題があったんです。

 成長要素についても、たくさんあるというよりは、あるにはあるけどもそんなにそこに重きは置いていない作りにしています。それで「じゃあアクションはこちらにまかせて、違うことをやろうよ」となったんですね(笑)。

 そして「それは何だ?」となったときに、RPGというアイデアが出てきたわけです。AIがどう働くかということも含めて、ようはチームプレイをやりたかったんです。一緒に戦って、それを2人、3人、4人と一緒に戦わせたかった。それを考えると「RPGっていいよね」と。

 それで実際にゲームを作り始めるわけですが、まずは一度雰囲気を作ってみるんです。エイプリルフールに公開した動画はまさにそれで、あのときはまだAIは完成していなくて、素材だけを適当につなげて作ったんですね。公開してみたら「バカバカしいけどおもしろいよね」という話になりました。

 ただ、あのときでまだ五分五分かな。一応このときは5割やる気で、6割7割かと言われるとまだ半信半疑で、アクションのほうが安全だと考えていましたから。ただ、安全なものを作るとなると「じゃあ桐生で行こうよ」と、話が戻っちゃいまして(笑)。

 「このままだとこのスパイラルから抜けられないよ」となり、これはもう決める側の問題だと考え、次の社内のプレゼンでRPGに変えることに決めました。ただ、会社としては『龍が如く』というIPが海外でも支持されるようになってきて、全体的にもよくなってきているわけです。だからその流れのなかでジャンルを変えると「今までは何だったんだ」となる心配もあり、そこは私が経営者を説得しました。まあ、私も経営陣の1人ではありますが(笑)。

 「これ以上はアクションで作れる伸びしろを担保できない、限界だ」と、会社に正直に話したんですね。精神的にそうなってしまったら、ゲームは絶対におもしろくはならないし、ハッキリ言うとそれに近いところまできてしまっていました。別のIPなら話は別ですよ。でも『龍が如く』が前提でかつ、定められた時間内で……となるとキツかった。“龍が如くスタジオ”としては、10数年であれだけの本数を出してきているわけですからね(笑)。

 もちろんやる以上は成功させますが、失敗だとか海外でどうだとかは抜きにして、チャレンジをするというプロセスを1回通さないとダメですよ。当然この次も問われるわけだから、どんな結果になろうとも、将来を考えたときに1回チャレンジを挟むことがとにかく大事であると伝えました。

 まあ、ゲームジャンルからガラリと変えるのはチャレンジという面で見ればやりすぎかもしれませんが、やり過ぎかもしれないチャレンジを1回やらせてもらえませんかと。それで作ったのがエイプリルフール動画で、実際バカバカしいけど、世界中どこを見てもあんなものを作るところはないと思います(笑)。

――あの動画はいろいろな意味で、突き抜けたバカバカしさがよかったです(笑)。

名越:それはそれで1つの強みではあるかなと。「何なんだこれ?」となりつつも、冗談ながらもふざけきったことをちゃんとやり切るという姿勢は、『龍が如く』チームの強みですからね。何か絶対に生まれますよと。

 ただ、開発を始めたら始めたで、最初は本当にコマンドRPGにそれなりのAIがプラスされていただけで、乗り越えなくてはならないことが山ほどありました。「あれ? これってアクションのほうがラクだったのでは?」と、最初の何カ月間はその状況がずっと続いていて、ぶち壊しては作り直しを繰り返して、それこそ「アクションに戻すならば今だぞ」みたいな(笑)。

 今でこそ当たり前のように対応していますが、軸があって避けるという動作にしても、それがプレイヤーに対して有利に避けるのか、不利に避けるのか、そして避けた先にさらに別の要素があったときに、それを避けるためにその先の読み合いが必要になるんですよ。

 これまではコリジョンが当たったか、当たらないかくらいを考えればよかったのにと(笑)。アクションならばそれで済んでしまうことも、RPGにしたらそれだと済まなくなることがいっぱい起きてしまったんですね。

 それで最初はそれがわかるように、恐ろしく丁寧に作っていたんです。そうしたら1勝負に恐ろしく時間がかかりまして。「なんてテンポの悪いゲームだ。チンタラしていて遊んでられない」と(苦笑)。プログラマーからも「これが完成したとしても絶対に遊びたくない」という話もあり、そこからは状況が的確に伝わって、かつテンポもよく感じるにはカメラをどんな風に動かすべきかを追求しました。

 アクションシーンの羅列だけども、ちゃんと命令を与えながらかつ何が起きているか理解ができる。状況を理解できて、次に何をしようと頭に浮かんで、それがスムーズに入力ができるようにですね。バトル時間の理想は桐生一馬で敵が何人かいたときに一試合が終わる時間と、ほぼ同等まで持っていくことでした。そこに持っていくまで、TGS前ギリギリまでかかっていましたね。

 ただ、ショックだったことが1つありまして、TGSでは「やっぱりまだテンポが悪い」と言われたんですよ。やはり印象なんでしょうね。じつはアクションのほうが入力に没頭していることもあり、あっという間に時が過ぎていくんです。人はシンキングタイムが挟まると、同じ時間でも少し間を取っていると勘違いをしてしまうのですが、実際はストップウォッチで測るとほぼ変わらないんです。あとはこの形にしたことで、アクションではできなかったオートプレイもできるようになりました。

 この『龍が如く7』ではRPGで育った世代たちが作るゲームエンジンで、ファンタジーという軸、SFという軸、そしてアニメという軸とはまったくどこにも当てはまらない体験をさせたかったんです。そういう意味で私は成功していると思います。

 ただ、それとこれとは関係ないよと言う方もいるかもしれません。最終的にはユーザーが決めることですし、何とも言えないところではありますが、バカバカしくもおもしろいものは『龍が如く』というより、“『龍が如く』チームが提供する1つのおもしろさ”だと考えています。このチームでないと作れない体裁ではないでしょうか。

――これまでの『龍が如く』シリーズには、多分にRPG要素が含まれていたと感じています。例えば桐生一馬という男になるロールプレイ要素や成長要素、街のなかで行きたい場所に行っていろいろな体験をするなどですね。実際RPGしか遊んだことがない人が『龍が如く』を遊んでハマったというケースもすごく多いです。そういう意味でも、スタッフとRPGとの相性がよかったのでしょうか?

名越:スタッフはほぼ全員『ドラゴンクエスト(DQ)』『ファイナルファンタジー(FF)』はプレイしていますからね(笑)。結局は要素の置き直し作業から入るんです。「これは『DQ』で言うところの何だ」「これは『FF』で言うところの何だ」と、チーム内でもするわけですよ。

 それはある種のパクリではありますが、私は早々にスクウェア・エニックスの社長である松田(洋祐)さんと話していますし、堀井(雄二氏。『DQ』シリーズの生みの親)さんとも話をしているのは、そこはリスペクトしているという前提からです。なんとなくRPGという要素、呼び名もそうですし、ゲームジャンルを変えるためにこそこそと使うのではなく、堂々と付き合いたかったんですね。

 だから、国内外でRPGの大先輩であるスタジオ(会社)や関係者に頭を下げるということは、私のなかでわりと重要な儀式だったんです。実際、堀井さんに「おもしろそうじゃん」と言われたのはありがたかったし、そう言われた以上は頑張ろうと思ったきっかけではあるので、それはよかったですね。

――『龍が如く』をRPGにしようと考えた背景には、やはり『JUDGE EYES』の成功もあったのでしょうか?

名越:それはありましたね。個人的なものでしょうけど。私はアクションを難しく育てていくことはできるけど、『龍が如く』チームが作るものではないなと。だって、そこに興味のきっかけを作って提案するスタジオではありませんから。作る実力があるにせよ、たぶん『SEKIRO』(フロム・ソフトウェア/Activision Publishing, Inc.)は作らないと思います(笑)。

 もちろんゲーム内容はスゴイとおもいますし、見た瞬間からどうやって作ったのかなど、スタッフたちはAIの成り立ちをすぐに分解し始めるのですが、それは技術者ですからそうなんですよね。「実際にやるか?」となったら「死にゲーはなぁ……」になると思います。「ならばまったく興味はないの?」と聞かれたら「自分たちなりの解釈でああいったゲームを1回はやりたいよね」という気持ちもあります。

――今回はRPGこそが『龍が如く』チームとしておもしろいことができるという答えだったと?

名越:そうですね。まさかの取り合わせですが、そのまさかにお金をかけてしっかり作ればちゃんと商品になるんですね。まさかのおもしろさがあり、ゲームを遊んでおもしろかったという思い出になってくれれば、私たちはそれでいいと考えています。さらにその先はユーザーが常に決めることですので。

 『龍が如く』シリーズはアクションをずっと極めてきたと言われていますが、極めるということは僕らが「こんなことができる」という提案と、「これはやっぱりいやだった、辞めてくれ」というユーザーの声の積み上げの両方があるんです。

 私たちもこちらが提案するものを一方的に押し売りする気はありません。でも、常に今自分たちが精神的にもアイデア的にも、今一番おもしろいと言える提案をしたことに関してはウソがありません。それについて「もう1杯おかわりをくれ」と言われるか、「もうお腹いっぱいだ、辞めてくれ」と言われるかは、ユーザーに言う権利がありますので、それを楽しみにまた次を待つというか、それしかもうないですね(笑)。ただ、短期間で作品を作れるチームだから、それに対する答えが早めに出せます。どんなアンサーゲームを作るのか、それはまた私たちの強みでもあります。

――たしかにハローワークでジョブチェンジするゲームを遊ぶとは、誰も思ってもいませんでした(笑)。あとは主人公の春日一番という男についてお聞きします。今回成り上がりをテーマにした物語が展開しますが、語れる範囲で物語の魅力をうかがえますか?

名越:成長ドラマなので、成長=RPGとかけている部分があります。ゲームジャンルがまだ決まっていない段階で、まずはどんな主人公で、どんな事件が起きてどうなるのかという粗々のプロットを決めました。ドラマの作り方はみんな長けてきているから、「大体こうしようよ」とか「色味をこう足したほうがいいよね」などの話が出るんですね。それでRPGにすると決めてからは「もう少し何か欲しいよね」となりました。

 じつは桐生一馬は生まれ育ちをキレイに明かしてはいないんですね。それはそこを描く必要がなかったからで、いくつか理由があります。桐生は最初から人望がある程度あり、精神的にも強くて割と弱くはない、けっこう最初から人間としてできているんです。だからそこから過去を振り返るタイミングは意外と必要ないし、それにつなげていく理由もなかなかありませんでした。あとになってそれはいいことか、悪いことかを振り返ったことはありますが、誰もそこは見たがっていないから関係ないよねと。

 逆に今回は「春日はどんな人物だったの?」と、過去もしっかり描きたいという思いがありました。今回はどうでもいいと思っていたシーンが、かなりラストにかかわってくるなど、相当深いところまで考えています。じつは春日の祖父についても語られるんですよ。彼がどんなDNAを持つ人物であるのかなどね。

 結局、人は血なのか骨なのか育ちなのか、もしくは環境なのかそれともDNAなのか……という。善と悪があるなかで、自分が何を選ぶのか。そして自分以外の仲間という要素があるなかで、どのような道のりを辿るべきなのかを問われるんです。これが桐生だと彼は自分を持っているから、ふらつかないんですよね(笑)。

 でも、春日は基本的には興味がある話にすぐ飛びついちゃうし、だまされてしまう。だまされながらもひっくり返そうと頑張るんだけども、わりと泳ぐタイプの人間なので、それはそれで周りも彼の純真な純の部分に対して、心がだんだん動いていく。そんなドラマは桐生では書けないですよね。桐生では作れないドラマを、という意味では、新しい主人公の春日は見事に応えてくれているなと私は思っています。

 また、成り上がるという意味で言えば、彼は偉くはなりたいというよりは、なれるはずがないという、割と諦めているところがあって、何者でもない自分にストレスを持たない、ある意味現代的な感情を持っています。成り上がりを目指していくと「人生って楽しいな」「目指すものがあるのは素敵だな」とか、それがもし道徳的にけしからん方向に行くと「腹が立つものだよね」と、わりと当たり前のことを考えられるような主人公なので、私はかなり好きですね。

――桐生一馬は人間ができていて、プレイヤーは感情移入というより、彼の生き様を俯瞰して見るような感覚だったと思いますが、春日の場合は感情移入がしやすい感じでしょうか?

名越:わりとそうだと思います。彼が困っているときはプレイヤーも困ると思いますし、普通に同じ温度感でドラマを見られるんじゃないですかね。

――あとはパーティ制のRPGということで、いわゆる仲間のキャラクターへの愛着もこれまでより強くなりますか?

名越:強くなると思います。仲間になる理由もそうだし、当然裏切りなどもあったりしますが、なぜ近寄って来たのかもわからないままの関係だったり。1つ1つ適宜パズルのピースを埋めていかない感じが、少しじれったくもあり、おもしろくもあります。

 「彼はなんでこういうことをするんだ?」「彼はそう言っているけど明らかにウソだよね」とかね。ただ、「そう言っている以上はほかに言いようがないし放っておくか……」みたいな(笑)。操作しながら心の中で「ウソつけ」と思いながらプレイしていると、それはそれで楽しかったりします。あとは仲間同士の相性が今回はすごく大事です。

――春日との関係だけではないんですね。

名越:そうですね。一対一だけではおもしろくないし、やはり多対多であるべきだと考えています。TGSで公開したストーリートレーラーではハン・ジュンギが出てきましたけども、彼は一緒に出てきたあの女性キャラクターとものすごく仲が悪かったり、韓国組織コミジュルの総帥、ソンヒもやっぱりあのキャラクターとはすごく仲が悪かったりします。

 そこにはキャラクターごとに、生い立ちやポリシーや生き様があり、好き嫌いの理由にも筋が通ったものを持っているんです。それがドラマを進めるにあたり、有利になったり邪魔になったりします。団体行動はそういうことがあるあるじゃないですか(笑)。今お前が前に進まないと俺も行けないんだけど……というときに「私絶対に行かない」とかね。普通はパーティゲームだと仲間は一緒に進んでくれるのに、そう簡単にはいかないということを、現代劇だからこそおもしろく描けています。

――発表会でRPGとして発表されたときの反応と、その後TGSの体験版や動画などで詳細がわかってからの反応が、だいぶ変わって来たという印象を受けました。現時点での手応えはいかがですか?

名越:それは大きく変わりました。今から急いでやらなければいけないのですが、拡散性の強い、これはユーチューバーさんに頼ることもあるかもしれませんが、遊んでみたところの拡散をしっかりする必要があります。ドラマ押しもまた改めて完成披露で押していきますが、遊んでいるときのおもしろさを、もう一回しっかりやっていきたいですね。

 じつはTGSのときは10時に開場してから5分しか経っていないのに、試遊がすでに1時間半待ちだったんですよ。メディア日なのにみなさん触りたいんですね。「なるほど、どんなものなんだ」とひと言いいたいんだなと。ですが、一般日ではまずブースに来て「アクションのほうがよかった」と言われるんですよ。それで「プレイされました?」とお聞きしたら「いや、やっていない」と。そこはやりましょうよと(笑)。

 それで実際に遊んでいただいたら、「あれはあれでありでしょう」と言ってくれる方がけっこう多かったんです。「あれはありえない」「アクションでなければ絶対にありえない」ではなかったので、突破口はまだあるなと私は考えています。ただ「アクションもよかった」と、結局みなさんはそう言うんですけね(笑)。

 桐生しかり、ゲームシステムしかり、これまでのシリーズと比較されることはわかって生まれてきたコンテンツだから、この生まれてきた宿命をどう理解してもらえるか、私たちのプロモーション上の1つの課題なので、これを一生懸命伝えていくしかないなという想いです。

――“触る機会を”という意味では、TGSの体験版を配信するなどの予定はありますか?

名越:ありますよ。TGSの体験版ではありませんが、体験版の配信は考えています。

――待っている方は多いと思うのでうれしいニュースですね。TGSの体験版も時間内にとても遊び尽くせるボリュームではなかったので(笑)。あとはシリーズのファン目線で言えば、ナンバリングである以上は過去作とのつながりを感じさせる、例えば東城会の歴史のようなものは、ゲームを進めていくうえで見えてくるのでしょうか?

名越:見えてきますね。

――そこはやはりナンバリングを付けている意味であると?

名越:神室町もそうだし、ナンバリングである以上と言ったほうがいいのかな。春日自身も東城会のメンバーだった人だから、このバックボーンや舞台や人を語るには、触れないで進みようがありませんので。ただ、そこが難しいのが、色濃く出してしまうとそこに足を引っ張られてしまうんですね。「なぜ彼らは彼らなりに何かできる力を持っているのに何もしないんだ」とか。だから、そこはいい感じにどこまで疎遠にするかは、ドラマを作るうえでけっこう悩むところです。

――足かせになるようではダメだと。

名越:ダメですね。仮に真島でも桐生でも出したとして、彼らは“スーパーマン”なわけですから「解決できるじゃん」と(笑)。

――たしかに(笑)。

名越:そうなると「ええ、どういうこと?」となり、物語がよくわからなくなってしまいます。過去に触れないことはできないし、触れすぎるとドラマのパワーバランスが崩れてしまうので、そこがいつも物語を作るときの課題ですね。でも今回は初代『龍が如く』のときに桐生に対して錦山という存在がいるように、春日にはもう1人の存在がいます。

 そのときの関係性と振りとオチの熱さが初代と同じ、いえそれを超えるくらいのドラマが展開されると思うので、そこは注目してほしいですね。わりといろいろなことが起きるのですが、骨子になる話はけっこうシンプルなものになります。そこはすごくいいかなと感じています。でも、仕掛けはさすがにいろいろと作品を作ってきて、昔よりスキルが磨かれてきましたので、けっこうよくできていますよ。

 ただ「タイトルを『7』にしないでほしかった」という方もいたんですね。「このシステムは認めます。おもしろいです、買います。予約もしました。でも、これはRPGとしての別シリーズにしてほしかった」という声も多かったです。

――たしかに発表当時は『新・龍が如く(仮)』という名称でしたから、そう感じられた方もいたのかもしれません。

名越:かもしれませんね。でもなんて言えばいいんだよ、となるじゃないですか(笑)。言葉って非常に難しい。

――でも『龍が如く』の新しい先に進む第一歩という意味でのナンバリングはありだと思います。

名越:たとえば制作体制とか、制作コストとか、コストから作品を語るのは変ですが、あえて組織やお金の面を含めてしっかりとした大作としての構えとか、それを含めてナンバリングを付けてなんら問題ないというか、それを含めて大丈夫でしょう。そう思って買っていただいて問題がない、覚悟を持ってクレームがこないものを作っていますし。でも、難しいですよね(苦笑)。

 TGSでも言ったのですが、それこそタイトルを戻そうかという話もあったんですね。私たちは買ってくださることに意義があるので。そこにケチが付かないで買ってくださる方が増えるならばと。そうしたら「いや、もう(配布物を)刷っちゃっていますよ」と言われて、じゃあダメだと(笑)。

エアポケット的なタイミングがまさに“たべごろ”!

――2006年に発売のWii版をリメイクし、ある意味『新サクラ大戦』と同じようにIPの復活というに近い 『たべごろ!スーパーモンキーボール』ですが、このタイミングでのリメイクを発売する狙いから教えてください。

名越:これは私から作ろうと言ったのではなく、城﨑(『たべごろ!スーパーモンキーボール』プロデューサー/ディレクター:城﨑雅夫氏)という、『クロヒョウ 龍が如く新章』のときから一緒にやっている若いスタッフからの提案なんです。

 彼は『JUDGE EYES』も手掛けていて、制作が終わってから、彼も昔のゲームのリバイバルを何か1本手掛けてみたいと話していたんですね。ちょうどいいコンテンツがないなと思っていたら、彼のほうから『モンキーボール』をやりたいですという提案がありまして。

 Nintendo Switchという新しいハードが出て、プレイステーションも新しいハードが期待されるなかで、エアポケットのようなタイミングで出すのは逆に言えばいいタイミングだと考えました。私自身はきちんとした形できちんとした時期に出せば、『モンキーボール』は長く売れるタイトルだと思っていますし。

――しかも"たべごろ!"というタイトルで、価格帯もすごく求めやすいですよね。

名越:あれはなかなか思い切ったタイトルですよね(笑)。でも、それが許されるタイトルではあると思います。私はその時代に応じて、価格も含めてリファインして存在し続けることができれば、いいIPかなと考えています。

――シリーズの生みの親としては、今発売されることについてどんな思いですか?

名越:環境が違いますからね。ただ、ゲームは当然性能がよくなって、やれることが広がってやりたいことの欲求が深まっていき、それはそれで多種多様なものが世に出ていくのですが、ゲームである以上は性能による深掘りと、ゲーム性というのが必ずしも一致するとは限らないんですね。

 本来で言うと、なかなかできないけれども『テトリス』的なゲームが何年か1回にポンと生まれて、アイデア1つでブームが起きちゃうんだ、ということが常に起きてほしいと願っている人の1人なんです。それがゲームの正体だと思っていますし。美しいムービーが用意されて、たくさんのアイテムや成長要素が用意されているのもゲームですが、それはそれで別なのかなと。

 『モンキーボール』もそうですが、やはりジャストアイデアで、国を問わず、そして世代を問わずにヒットするゲームを生み出せるはずで、そういった一獲千金な意味合いも含めて、ゲームクリエイターは常にそういう野心を持っていてほしいと考えています。

 そういう人がまた新しいものを思いついて、第二、第三の『テトリス』みたいなものを作っていくのではないでしょうか。だからパズル、アクションだけじゃないですが、ワンボタン、もしくはワンレバーで暇さえあれば触ってしまうようなゲームが作れるのでは、そして作りたいと常にそう思っています。

1回限りのお祭りだからこそのメガドライブミニ

――先日発売された『東京2020オリンピック The Official Video GameTM』は、2020年に向けてアップデートで種目が増えていく仕掛けが話題ですが、これは最初から想定されていたことでしょうか?

名越:そうですね。

――開催が近くなるにつれて盛り上がるような施策を考えているのでしょうか?

名越:発売後から2020年4月までの間に追加種目の無料配信や、実際のアスリートがアバターとして登場する"アスリートに挑戦!"を開催期間中まで継続的に配信する予定です。

――9月に発売されたメガドライブミニは、ユーザーの満足度も高くセールスも好調だと思います。今後はセガサターン版やドリームキャスト版など、このような過去ハードのミニ版が出る可能性はあるのでしょうか?

名越:ないんじゃないですかね。正直に言うと任天堂さん、SIEさんがこういったハードを出す波に乗っかったんですよ(笑)。ただ、乗っかった以上は後発であるが故のこだわりですね。あとはセガらしさというか、タイトルの選定ではやたら必死になって詰め込んだ感とか。その必死さがなんかいいかなと。ただ、私は1回だけのお祭りだから必死になったんじゃないかなと思っているところがあります。

――セガサターンミニが出る可能性はどうですか?

名越:わからないですけどね。儲けだけでやっていないところがあるので。もちろん、儲かるのは担当からしたらうれしいとは思うんですよ。ただ、評価をしていただきましたが、トータルで見ると……かなと。ここは私からは即答はできませんが(笑)。みなさんがもし発売を願うならば、そう伝えた方がいいかもしれません。

 ただ、あの頃のほうがゲームらしい熱さはあったかもしれませんね。私はセガサターンのような3Dの演算ができるようになってからのハード以降は、近代ゲームの枠に入ってしまうのかなと思っているので。

――そこは今と地続きであると?

名越:わりとそうですね。だからメガドライブの16BITハードまでが1つの区切りなのかなと。

IPを持つ会社がプラットフォームホルダーになる時代を見据えて

――今年の秋から来年にかけて、セガゲームスはもちろん、セガグループのアトラスからもタイトルが多く発売されます。それらの展望などをお聞かせください。

名越:正直に言うと、今年に合わせてたくさんタイトルを用意したわけではなくて、たまたま多くなったというのが現実にはあります。セガゲームスも『龍が如く』シリーズや『ソニック』シリーズのような、同じスケールになりうる新しい大きな柱を作るという課題を持ってはいます。それも本気でね。

 自分が取締役であるので言いますが、アトラスもヴァニラウェアのタイトルも『真・女神転生』シリーズも、安定した高い評価を得られたここ数年は素晴らしい方向に行っているとは思います。でも、彼らも『ペルソナ』『真・女神転生』以外の方向を作らなければいけないフェーズに来ているんですよ。お互い、セガゲームスにせよアトラスにせよ「新しい世代を見越した新規 IPとは何だ」と、今は真剣に取り組んでいます。

 世の中ではやはり1つの会社のなかでの、端的に言えばバンダイナムコエンターテインメントさんならば、集英社さんの人気アニメを題材にしたゲーム。カプコンさんならば『モンスターハンター』があります。それらをマルチユースにやるという、それはそれでフォーカスする強みはありますが、我々はバラエティに富んだ選択をする会社でありたいと考えています。

 「どうせあの会社はこれだよね」と言われない、「セガってどんな球を投げてくるのかな」と言われるカラフルなおもしろさが常に秘められていることが、セガゲームスのウリだと思うんですね。「あ、そんなところに投げてきたんだ」と言われたいんです。まあ、ときにはそれが暴投になることもありますが(笑)。でも、ハマればすごくいいコースに投げられるし、バシッとハマると思います。そうなるように新しいものに注力している真っ最中なので、それが早くお披露目できるようになりたいですね。

――そうなると来年の60周年という節目では、そういったチャレンジがいろいろお披露目されていくのでしょうか?

名越:まだ早いかな(笑)。60周年といっても周年は勝手に来ますからね。私からすると続けていくことと止めることが大事で、止めなければ新しいことはできないですよね。誰もが知っていることですが、スクラップ&ビルドとはよく言ったもので、捨てる勇気、そして作る勇気を持ち、限られた資源・時間のなかで何をしていくのかが問われます。

 一方で我々は新しいゲームハード、5Gへの時代という展望を持っています。もちろん、会社が違えば展望は違うでしょうが、セガゲームスとしてのビジョンは持っていて、それをどう体現化するのかというところですね。1つのヒントを言えば、もうハードはどうでもいい時代にやっとなってきている、そういう時代が来るんですよ。これまでプラットフォームホルダーは、ハードウェアの事業をやっている会社を指していました。でも、これから先の究極のプラットフォームはIPになると考えています。

 そういう意味で言えば、アトラスはとてつもないプラットフォームホルダーになれるポテンシャルをすでに持っています。セガゲームスもあやかりたいというか、そうなっていきたいんです。それを早めて、そしてロイヤルティを高めていくために、5Gのような速いインフラがあったうえで、どういう運営をしていくのかが求められます。

 正確で即時性の高い運営とは何なのか、というところで勝負をしていく時代にたぶんなっていくので、来るべき時代の準備を始めなくてはいけません。だからよりIPが大事で、IPを大事にする精神が、より問われていくのかなと。IPを単なる売り上げを出す道具のように思っているだけだと、すり減らして終わりになるじゃないですか。

 今までハードが中心の時代は、わりとソフトはそういう運命にあっていたのですが、逆に今からはそうではありません。ソフトを作る会社が、自分たちでIPの磨き方、磨くペースを決められる、優先権を持つ時代になっていくので、話はだいぶ変わってきますよね。

――そういう意味でも『新サクラ大戦』はその試金石になりそうですね。

名越:そうしていきたいですね。今回が受け入れられたら、いいペースで新作を投入するべきだと思います。

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