【BitSummit】開発ツールで作られたコダワリの逸品! 会場で気になった作品を紹介 1日目2/2【電撃PS】
- 文
- まさん
- 公開日時
2019年6月1日(土)と6月2日(日)の2日間にかけて、京都勧業館・みやこめっせで開催されている日本最大のインディゲームイベント『BitSummit 7 Spirits』。
電撃PlayStation編集部のインディゲーム担当ライターのまさんが、会場内で見つけた注目のタイトルを紹介します。
会場で気になった作品のピックアップ紹介
- 1日目その1……モチ上ガール/アスタロン: 地球の涙(Astalon: Tears of the Earth)/KUNAI/鳥川鳥三
- 1日目その2……Orangeblood/Outrider Mako ~露払いマコの見習い帖~/レトロゲームエイリアンズ
- 2日目その1……30minutes Night Flight/わ~きんぐでっど/スラッジウィッチ/ネトオフ
- 2日目その2……TRICK ART DUNGEON/CHRONO SWORD/STAR RENEGADARS/VIRGO VERSUS THE ZODIAC
- 2日目その3……PIRATES 7/Muse Dash/魔女の迷宮/Wattam(ワッタン)/音効炒飯
初日レポートの第2弾は、ちょっと変わったテーマで紹介していこうと思います。それは”開発ツール”。プログラムがわからない人でもゲームを作れる開発ツールを使って作られたゲームから、気になる作品を取り上げていきたいと思います。
『Orangeblood』
緻密なドット絵で繰り広げられる金と硝煙とドープな世界
1本目から、いきなりインパクトのある作品がドーンと登場! grayfaxsoftwareが開発、Playismが販売する本作は、2017年に『RPGツクールMV』で制作していることが公開されてから、ゲーマーの間で話題となっていました。
何よりすごいのは、緻密ですごいドット絵のグラフィック。あまりにも細かすぎる……! 『RPGツクール』系のゲームはデフォルトのセットから自分で用意したものまで使える幅広いツールですが、ここまで緻密なドット絵で描かれた作品はなかなかありません。
硝煙の匂いが漂ってきそうな世界観も独特で、マフィア物の抗争のような物語の主役は少女たち。BGMもセリフ回しもハイセンスでクールです。イカした音楽にノリながら銃を乱射し、敵をねじ伏せていく戦闘シーンから、すれ違うたびに吹き出しが表示され、とにかく雑多で騒がしい雰囲気が醸し出される移動シーンまで、エキゾチックでシビれる作品です。素直にカッコいい!
体験できるのは10分間という短い時間ですが、いかがわしい街の雰囲気や徹底している世界観。マネしたくなるようなセリフ回しなどもバッチリ体験できます。戦闘中にダメージを受けたときや、戦闘終了後に吹き出しが出てくるなど、町人から主人公たちまで、とにかく誰かしらがしゃべっている印象があるのも面白いところ。
カワイイ絵でギラついた独特の世界観と、RPGとして楽しめそうなガンファイトの戦闘。発売が楽しみな1作です。
『Outrider Mako ~露払いマコの見習い帖~』
ピョンピョン飛びついて資材を回収! 和風な世界観が独自の魅力を醸し出す
例年よりもさらに攻めた感じのラインナップで新規タイトルを発表し、個人的にも注目していたPLAYISMブース。『アクションゲームツクール MV』で作られた良さげゲームもズラリと並び、ツールを使いこなしたユーザーによるタダ物じゃないゲームも多く目立ちました。そちらも機会があれば紹介したいのですが、2本目はまた違う制作ツールの作品。『Gamemaker Studio』というツールを使って2016年から開発が進められていた本作は、先ほど紹介した『Orangeblood』に負けず劣らずの緻密なドットが光っています。
こちらはアクションゲームなので、ヌルヌル動かせてるのが魅力の1つ。配達人としてアイテムを納品するために、フィールドを探索しながら素材を収集。クエストのように依頼をこなしながら進めていくゲームのようです。妖怪の世界に迷い込んでしまったような美しいのに怪しい世界観もさることながら、ピョンピョン動かせる操作性が心地よいゲームです。
モーションも細かく、フォントから依頼のUI(ちゃんと配達人らしく宅急便のラベルのようになっている)まで、手を抜かずにこだわっているのも良いですね。これまた、発売が楽しみな1作です。
Playismプ―スは、ほかにも『アクションゲームツクールMV』を使ったタダ物じゃないアクションが並べられているなど、今年のラインナップにインディへの思想が感じられるブースとなっていました。いや、本当にスゴイんですよ! ゲームを作るツールで本気を出したらここまでクオリティが高い物を作れるぞ、と言いたげな作品ばかり。機会があったら遊んでみてください。
『レトロゲームエイリアンズ』
取材する側から作る側へ! 80年代PCゲームリスペクトな雰囲気の作品
ラストは、80年代のPCレトロゲームをリスペクトした1作。ゲーム内ゲームとしてレトロゲームを遊ぶという構造になっており、今回は用意されている作品のうちの1つ『王家の墓』が遊べました。
レトロゲームリスペクト作品は多く出ていますが、ここまで古いPCアドベンチャーを再現した作品も珍しい感じ。逐一コマンドを選んで移動するのが懐かしく、グラフィックの色数の少なさや表示の速度までレトロにこだわっています。あくまでもゲーム内ゲームなので、最初はゲームを遊んでいる女の子との会話シーンがあるのも変わったところ。
ゲーム内ゲームの『王家の墓』は、ヒントなしのレトロ感が非常にそれっぽいゲーム。迷子になってあっさり死んでしまうなど、スピーディなゲームオーバーも昔のアドベンチャーという感じですね。
ちなみに、制作ツールは”ティラノビルダー”というノベルゲームに特化したツール。うまく工夫すれば、ゲーム内ゲームも作れてしまうことに驚きました。そして何よりビックリなのが開発者。じつは自分と同業者です。製作者は、週刊ファミ通などでライターをやっている戸塚伎一さん。インディゲームの取材をしているうちに自分もゲームを作りたくなってしまったタイプです。気持ちわかるなあ……。
というわけで、同業者として気になってしまったのでインタビューしてみました。ファミ通のゲーム(ファミ通のゲームではない)が電撃に掲載される。この自由さこそがインディゲームですよ!
──まず、制作の経緯からおうかがいしていいですか?
開発:最初は、2年前に趣味でノベルゲームを作ってみたんですよ。それが、世代の違う人のゲームというテーマで作っていたのですが、思いのほか若い人にもゲーム実況で取り上げられていたんです。完全にオッサン向けのテーマだと思っていたのに、若い人が喜んでくれた。
それなら、もっと自分の趣味を掘りつつ、若い人もさらに入っていけるような大掛かりなものがやれないかと思って、テーマを探していたら80年代のアドベンチャーに行きつきました。荒々しい絵や、ストーリー展開。1人称がどこかわからないようなキャラクターのセリフが楽しかったので、そこを再現したいと思ってつくりました。
──最初は『王家の墓』だけのゲームだと思っていたのですが、ほかにもいくつかゲームを入れる予定なのでしょうか?
開発:そうです。設定としては夜に携帯ゲームで遊んでいる女の子と出会って、「このゲームをクリアして欲しい」と頼まれるんですよ。主人公は怪しいと思いつつ、昔遊んでいたゲームなので遊んでいくのですが、そうすると、80年代の作品を復刻したソフトみたいな形で懐かしくて、だんだん記憶の扉も開いていって……と、ゲーム内ゲームを軸にした現代のお話しになっています。
自分の世代が主人公といいますか、その視点でのお話しになっている感じです。
──制作ツールは『ティラノビルダー』なんですよね。こういうことができるのかと驚きました。
開発:ボタンの位置をわざと古くしたり、そういった調整にはかなり時間がかかったのですが、もともとある素材で作ってしまうとどうしても頑張って作ったねという感じしか出ないので、できればリアルに寄せるなら古いレトロゲームに寄せればそれっぽくなるんじゃないかと思いました。
──ゲーム内の画面もご自身で描かれているのですか?
開発:女の子はイラストレーターさんにお願いしていますが、ゲーム内ゲームの荒々しい絵は古いPCの解像度を再現できるグラフィックツールを使って作っています。
──最終的には、どこでリリースする予定なのでしょうか?
開発:PC(Windows)ですね。あとは、もしお願いできるならSteamでも出したいのですが、まだ『ティラノビルダー』でブロックを並べるので精一杯です。
──ライターをやってゲームまで作られるバイタリティはすごいですね。
開発:イベントの取材を何年もやっていると、自分で作りたくなってくるんですよね。Unityなどは全然わからないのですが、『ティラノビルダー』などの開発ツールでもアイデア勝負というか、まだまだ新しい感じでt作れるネタはいっぱいあると思います。ただ、自分がオッサンなので激しいアクションはちょっとね(笑)。
う~ん、すごくわかる! インディゲームの取材をしていると自分でも作りたくなってくるんですよね。もしかしたら、会場に遊びに来ていた一般のユーザーの人たちも同じ気持ちを抱いているかもしれません。ツール製の名作ゲームが今後もバンバン登場するかも? これまで以上にしっかり見ておいたほうがいい分野かもしれませんね。というわけで、初日のレポートはここまで! 2日目も含めた続きは……今夜力尽きていなかったら書きます! ではまた。
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