スクウェア・エニックスが本日11月19日開催した『FINAL FANTASY XII』制作発表会。本記事では速報に続いて『FFXII』の世界設定の説明や、クリエイター陣によるトークセッションで明らかにされた本作の最新情報をお届けしていく。
■大きな世界観「イヴァリース」の部分を切り出した『FFXII』の世界
『FFXII』の舞台は、イヴァリースと呼ばれる世界。この世界では、バレンディア大陸を支配するアルケイディア帝国と、オーダリア大陸を支配するロザリア帝国が長年にわたり戦争を続けていた。
そんな中、アルケイディア帝国は両大陸の回廊に位置する小国ダルマスカ王国に侵攻する。
そして、侵攻されたダルマスカ王国の王女であり、帝国に対するレジスタンス活動を続けるヒロイン“アーシェ”と、ダウンタウンで暮らす明るく前向きな主人公“ヴァン”との出会いが、『FFXII』のストーリーの始まりとなる。
「イヴァリース」と聞いて『ファイナルファンタジー タクティクス アドバンス』を思い出す読者もいるかと思うが、これについてプロデューサーの松野氏は、『FFXII』が独立した作品であり単独で楽しめることを前置きした上で、「イヴァリースとは、スクウェアに入社してから考えた1つの世界観です。僕はいつもそうなんですが、大きな世界観の1部分を切り出して、ゲームを作っていく手法をとっています。そのため、『FFXII』と『FFT-A』の間には、同じ種族が登場する点などの共通点があります」と説明した。
また、現時点では詳細は明かされなかったが、『FFT-A』をプレイしていればニヤリとできるような仕掛けが用意されているとのことだ。
■裏話も飛び出したトークセッション!
本日の発表会で行われたトークセッションには、プロデューサー/ディレクターの松野泰己氏、アートディレクターの皆葉英夫氏、キャラクターデザイン/3Dマップディレクションの吉田明彦氏、背景アートの上国料勇氏、モデリングの皆川裕史氏、音楽の崎元仁氏の6人によって行われた。この中で資料では明らかにされていなかったいくつかの「裏話」が披露されたので、ピックアップして紹介していく。
まずは、キャラクターデザインについて。吉田氏によれば今回のキャラクターデザインでは、ムービーではなくリアルタイムポリゴンで描くことを考えてデザインされているという。そのため、開発初期の頃に比べて“アーシェ”のスカートがかなり短くなったという。リアルタイムシーンでは、ひらひらと揺れるパーツや長いパーツがポリゴン数を消費するためだ。
また、『FFXII』では背景にプリレンダリングCGではなく、リアルタイム処理の3Dポリゴンを使用しているため、キャラクターのモデリングはかなり苦労したとのこと。ちなみに3Dの背景のほかにも「ある挑戦」を行っているため、キャラに割けるポリゴン数は大きな制限があったという。しかし、残念ながら「ある挑戦」の内容は明らかにされなかった。
画面写真を見ると従来の『FF』と異なり、フィールド画面でもHPゲージが表示されていることが気になるが、「ある挑戦」と関係があるのか気になるところだ。
続いて、ロゴに描かれた騎士「ジャッジ」について、松野氏より説明が行われた。『FFT-A』では、法と秩序の騎士団としての役割を果たしていた「ジャッジ」だが、逆に『FFXII』では恐怖の騎士団として、主人公たちと対峙するという。
その他、崎元氏とともに『FFXII』の音楽を担当する植松伸夫氏は、ビデオレターの中で『FFXII』でも歌を使用することを明らかにした。どのアーティストを起用するのかといった具体的な話は伏せられたが、「単にエンドロールにかぶせるような使い方はしたくない」(松野氏)とのことで、ゲーム中効果的に使用されることが期待できそうだ。
■ダーク&シリアスの松野テイストは、『FF』はどのような融合を果たすのか
質疑応答で「これまでのシリーズおなじみのキャラは登場するのか」と聞かれた松野氏。これに対しては「本日公開された映像の中には登場しなかったが、モーグリやシドといったキャラクターは登場します」とコメントし、『FF』ファンを安心させた。「ただし、『FFXII』の世界には“毒”がいくつか入れています。『FFT』で表現したかったことですが、『FFXII』は現実世界と違い人権が保障されていない世界です。その中でゲームとは直接関係しませんが、階級闘争が世界観を描く過程で登場します。例えば、モーグリも種族の中で階級があってもいいんじゃないかという思いがありまして、足元には鉄球のついた足かせがはめられているモーグリもいてもいいんじゃないかと思っています」と続け、松野氏ならではの重いテーマが盛り込まれることも明かされた。
また発表会の最後には、「松野氏がこれまでに手がけてきた作品『伝説のオウガバトル』『タクティクスオウガ』『ファイナルファンタジー タクティクス』などでは、民族、宗教、階級といった、非常に繊細でダークなテーマが物語に織り込まれることが多かった。一方『FF』シリーズは一般層をターゲットとした作品だが、『FFXII』はどちらを重視して制作されるのか」という質問も。
これに対して松野氏は「何が主流で何が亜流か、という議論があると思います。例えば映画『グラディエイター』はダークな部分がありながら、アカデミー賞を受賞するなど、一般層にも受け入れられました。作品を作る上で、ダークな部分を前面に持ってくるか、わかるユーザーにはわかる、というように持ってくるかの違いでしょう。」
「『FFXII』についてですが、主人公は明るい少年です。ですから物語は明るく進んでいくと思います。ただ、映画と違いゲームはインタラクティブなものなので、ユーザーが望めばそこに何かが見つかるという構造になっている。そのため、ダークな部分を望んだ人は、そういうものが見えるでしょう。逆にダークな部分を望まない人、気づかない人にとっては、そうでないように進むはずです」とコメントし、本日の発表会の締めくくりとした。
発表会には『FINAL FANTASY』の生みの親、坂口博信氏も駆けつけ、「おかしな言い方ですが、私は松野氏を愛しています。愛する松野氏と愛する『FF』が融合することに大きな期待を寄せています」とコメントした。
ロゴには鎧の騎士「ジャッジ」が大きく描かれている。『FFXII』では恐怖の騎士団であり、ヴァンとアーシェは彼らに追われることになるという。
『FFXII』のイメージイラストは、中世の技術で高層ビルを建てたらどうなるかをイメージして描いたとのこと。
『FFXII』では数多くの飛空艇が登場する。例えば右のアートに見える飛空艇は全長約340メートルとなっており、戦艦大和の約260メートルを超える、巨大飛空艇となっている。また、上国料氏によればさらに巨大な飛空艇も登場することが明らかにされた。
『FFXII』の主人公ヴァンと、ヒロインのアーシェ。明るい考えの主人公と亡国の王女の出会いから、『FFXII』の物語が始まる。
会場で公開された映像は、プリレンダリングのムービーと、リアルタイムポリゴンで描かれたイベントシーンなどを編集したもの。なお、あえて『FF』らしい映像を選んできたという話だった。
フィールド画面にも関わらず、ヴァンのHPゲージが右下に表示されている。一体どのような意味があるのだろうか。
松野プロデューサーは「発売までまだ半年ありますが、皆様の期待を裏切らない出来にします」とコメント。今から発売が待ち遠しい限りだ。
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データ
▼『FINAL FANTASY XII』
■メーカー:スクウェア・エニックス
■対応機種:PS2
■ジャンル:RPG
■発売日:2004年夏
■価格:未定
■関連サイト
・『FINAL FANTASY XII』公式サイト
・スクウェア・エニックス