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2004年11月1日(月)

「東京国際CG映像祭」で『鬼武者3』&『FFVIIAC』CG制作の舞台裏が語られた!

 10月30日、六本木アカデミーヒルズで「第3回 東京国際CG映像祭」が開催された。

 「東京国際CG映像祭」は、「東京国際映画祭」の関連企画として10月30日と31日の2日にわたって開催されたもの。日本の著名な監督やCGクリエイターによるトークセッションやセミナー、メイキング映像の上映などが行われた。
 初日となった30日には、「メイキング オブ 『鬼武者3』CGシネマティックスとその系譜」、「『ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン』~コンピレーション オブ FFVII~」といったゲーム関連の講演が行われ、会場はCGクリエイターの卵たちやゲームファンで埋め尽くされた。

■「メイキング オブ 『鬼武者3』CGシネマティックスとその系譜」
 この講演の登壇者は、『鬼武者』シリーズ3作品でCGムービープロデューサーを務めたROBOTの倉澤幹隆氏。会場では、『鬼武者』、『鬼武者2』、『鬼武者3』のオープニングムービーがそれぞれ上映され、各ムービー制作における工夫やこだわり、制作の流れ、苦労した点などが語られた。
 『鬼武者』シリーズでは、ゲームパートは稲船敬二氏、CGムービーパートは倉澤氏とプロデューサーを明確に分離。倉澤氏は、「主演俳優のCG化」や「戦国時代の合戦を描きたい」といったカプコンからの要望に応えつつ、最新技術を駆使したり、新しい試みにチャレンジしながら、クオリティの高いムービーの制作を実現してきたと話す。

 その倉澤氏にとって、企画、制作をすべて任されたという『鬼武者3』のオープニングムービーはシリーズの集大成となった作品。芝居、演出の監督に山崎貴氏、アクション演出に香港のアクション俳優・監督のドニー・イエン氏を起用するなど、世界中の誰もが楽しめるドラマを目指したとのこと。このムービーでは、CGをより実写に近づけるため、背景にミニチュアを使用。しかしながら、ミニチュア背景の屋内シーンができあがってくると、フルCGで制作していた屋外シーンとの質の違いが顕著に現れるという問題が起こってしまったという。この問題については、富士の裾野や富士山の頂上でロケハンをしたり、飛行撮影を敢行するなど、屋外風景もすべて実写で対応したと、倉澤氏は当時を振り返りながら話してくれた。

 また、『鬼武者3』のオープニングムービーでは、ビデオコンテがそれぞれの監督によって編集されており、「完成形のイメージが明白なので、CGムービーの制作にとても役に立った(倉澤氏)」とのこと。会場では、世界初公開となるドニー氏が編集した「ライブアクション・ビデオコンテ」などが上映され、来場者の注目を集めていた。

■「『ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン』~コンピレーション オブ FFVII~」
 このトークセッションには、「FFVII AC」のプロデューサーを務めるスクウェア・エニックス執行役員の橋本真司氏、「FFVII AC」COディレクターの野末武志氏、同キャラクタースーパーバイザーの宮本桂氏、同シーケンススーパーバイザーの森泉仁智氏が参加した。

 橋本氏はまず、「FFVII AC」をはじめとする「COMPILATION of FINAL FANTASY VII」プロジェクトやその制作体制、プロデューサーとしての留意点などを説明。「『FF VII』は発売されて7年が経った今でも、個人サイトなどでファンの熱が続いている。人気が衰えない作品なので、多面的な展開を考えた」と、さまざまなプラットフォームで展開するこのプロジェクトの経緯を語る。

 続いて、野末氏らが「FFVII AC」の開発技術について、実際の開発画面を公開しながらそれぞれ解説。野末氏は、「FFVII AC」のCGコンセプトとして“ゲームムービーとの差異”、“映像内の空気感”、“キャラクターのデフォルメ”の3点を挙げ、「カメラを通して見たライティングなどを意識して“空気感”を表現。一番難しいのは“キャラクターのデフォルメ”で、ゲームでの存在感やファンが持っているイメージを壊さないようにするのが大変だった。クラウドだけでも8体くらいのパターンが存在する」と、人気作品の続編映像を制作する際に心がけていることを語った。

 キャラクター作りのコンセプトについて、宮本氏は“クオリティとコストバランスの取れたキャラクター作り”、“安定したデータ作り”、“再構築しやすいキャラクター作り”の3点を重視し、「やるべきところはしっかりやり、省くべきところは省くように心がけている」と話す。「ゲームのイメージを残しながら、等身に近いキャラクターを作るのに、かなり試行錯誤を繰り返している。スクリーンショットを細かく見ている方は気付いているかもしれないが、クラウドが現在のバージョンに落ち着いたのはつい最近(笑)」と、キャラクターのモデリングにおいて苦心している開発現場の様子を述べた。宮本氏によると、「FFVII AC」では、男性、女性、子どもという基本となる人間型ベースを制作し、このベースを派生させる形でそれぞれの登場キャラクターをモデリングしているとのこと。「時間をかけて安定したベースのデータを作成するとともに、共通で使える部分を規格化することにより、キャラクターを再構築しやすくなった(宮本氏)」と作業の効率化についても明らかにした。

 最後に橋本氏は、「日本のマンガやアニメ、ゲームは世界中で受け入れられており、国境がない。今後もいろいろなプランを考えていこうと思っているが、『FFVII』のような魅力あるコンテンツがなければ、このような展開はありえない。原点を作ったクリエイターに敬意を示すとともに、支えてもらったファンに感謝したい」と述べ、トークセッションを締めくくった。

 トークセッション後に行われた質疑応答では、会場に訪れた『FFVII』のファンたちから登壇者を苦笑いさせる質問が続出。現段階での「FFVII AC」の開発状況は「ざっくりと言って60%くらい(野末氏)」とのことで、橋本氏は「PSPメディアのUMDとDVDでのリリースを考えていますが、映像作品ということで映像業界との調整の必要もあり、ゲームのように完成して即発売というわけにはいかないかもしれません。でも、なるべく早く発売したいと思っています」とコメントしていた。

超満員となった「東京国際CG映像祭」。後方までびっしりと席が埋まり、立ち見が出るほど。

『鬼武者』シリーズのオープニングムービー制作について、さまざまなエピソードを話してくれた倉澤氏。「作品ごとに違う監督を起用し、それぞれがまったく異なる仕上がりになっていることがおもしろみにもなっていると思う」とコメント。

シリーズの集大成となった『鬼武者3』オープニングムービーについて、倉澤氏は「スタッフが知っているいろいろな技法をいかした結果、世界的に高く評価される映像が完成した」と満足そうに語った。

橋本氏はプロデューサーについて、「大規模なチームをうまく誘導するという役割。長期にわたっての開発が続く中、スタッフのモチベーションを維持することも重要」と話した。

「FFVII AC」制作のメイキング映像が公開されるのは、今回が初めて。制作の流れや使用機材など、非常に細かいところまで聞くことができた。

トークセッションに参加した開発スタッフ陣(左から野末氏、宮本氏、森泉氏)。スクウェア・エニックスのリクルートから専門的な話題まで飛び出した質疑応答では、3人ともにこやかに答えてくれた。

Character Samanosuke by (C)Fu Long Production,
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CHARACTER DESIGN:TETSUYA NOMURA

■関連サイト
「東京国際映画祭」
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