福山“ロレンス”と小清水“ホロ”の旅路は?「狼と香辛料」アフレコインタビュー!
2008年1月より放映が予定されているTVアニメ「狼と香辛料」の第3話アフレコが、都内のスタジオで行われた。
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写真は取材に参加してくれたキャストと原作者コンビ、そしてスタッフのもの。前列左から福山潤氏、小清水亜美さん、中原麻衣さん。後列左から文倉十氏、支倉凍砂氏、高橋丈夫氏、荒川稔久氏。 |
「狼と香辛料」は、可憐な少女の姿を借りた老獪な狼の化身“ホロ”と、まじめな中堅行商人“クラフト・ロレンス”の旅路と心の交流を描いたファンタジー作品。旅の連れ合いである“ホロ”と“ロレンス”の、軽妙でありながら時に艶やめいたものを感じさせる言葉のやり取りや、2人が道中で出会う商人たちと繰り広げる静かで熱い駆け引きなどが人気となっている。
今回、第3話のアフレコ終了後、“ホロ”役の小清水亜美さん、“ロレンス”役の福山潤氏、“ノーラ”役の中原麻衣さんに加えて、監督の高橋丈夫氏、脚本の荒川稔久氏、原作者の支倉凍砂先生、挿し絵や表紙を手掛けるイラストレーター・文倉十先生からコメントをいただいた。以下に掲載していくので、アニメの放映を楽しみに待っているという人はもちろん、初めて本作を知ったという人もぜひご覧いただきたい。
――まず初めに、キャストの皆さんに質問です。演じているキャラクターの説明とその魅力をお聞かせください。
福山潤氏(以下、福山):“ロレンス”は25歳の行商人で、いろいろな国々を旅しています。1人での旅が続いて、若干さびしさを覚えているころに“ホロ”と出会いまして。言葉巧みな“ホロ”の手のひらで転がされながらも、彼女にあなどられないよう懸命に頑張る、若さの抜けない青年です。
小清水亜美さん(以下、小清水):“ホロ”というキャラクターは、とても長く生きている狼で、「豊作を司る神」なんですね。それで、長く過ごした村を出たいと思って、人間の姿になって“ロレンス”の荷馬車の中に隠れて旅に出るというキャラクターなんですけど。彼女は、会話中に本心をあまり見せないんです。その割には「これは本音なんじゃないだろうか?」という言葉をついポロっとこぼしてしまう。そのギャップが魅力だと思います。
中原麻衣さん(以下、中原):“ノーラ”っていう女の子は羊飼いなんですが、羊飼いとして非常に高い能力を持っているんです。その能力を生かして、“ホロ”たちと旅ができたらいいなと考えているキャラクターなんですね。
福山:その能力をかさに着て何かしようとするんですよね?(笑)
中原:違うのっ!!(笑) すごい優しくて純粋な女の子なんですけど、そういう優しさとかを抜きにして、「こういう能力を持っているけどどうですか?」みたいな感じ(笑)。そんな風にしてお2人とかかわっていくようになるキャラクターです。
――今度は制作サイドに質問します。アフレコも今日で3回目を終えたわけですが、その感想をお聞かせください。
高橋丈夫氏(以下、高橋):会話を中心にしてできている作品なので、特に主演のお2方には毎回毎回長いセリフや長いシーンを頑張ってもらっています。とにかく声優さんの力によるところが大きいので、これからもよろしくお願いします。
荒川稔久氏(以下、荒川):書くほうも辛かったんですが、演じるほうはもっと辛いかもしれません(笑)。これから段々とテンポアップして、楽しくなっていく部分もあったり、CDドラマなどもこれから書く予定です。“ノーラ”にたぶらかされるという話になってるかもしれないので、楽しみにしていただければと思います。
――続いて、原作を手掛けた支倉先生と文倉先生にお伺いします。アフレコをご覧になっての感想をお聞かせください。
支倉凍砂先生(以下、支倉):小説を書くという作業とまったく違うので、ただただ驚くばかりでした。また、声優さんの体力のすごさにも驚かされました。
文倉十先生(以下、文倉):支倉さんと同じで、違う職業のプロの仕事を間近で見られて、とてもいい経験をしたな、と思いました。
――初めてアニメ化が決定したと聞かされた時のお気持ちを教えてください。
支倉:信じられないっていう気持ちが1番にありました。
文倉:本当にビックリするだけで……。今となっては、服装をもっと見栄えのする感じで描いておけばよかったな、と後悔しています(笑)。
――今度はキャストの皆さんにお伺いします。アフレコが3回終わりましたが、何かおもしろいエピソードなどはありましたでしょうか?
福山:この作品の大きな魅力の1つでもあるんですが、物語の大部分が会話で成立しているんですね。最初のころこそ村人たちとの会話もあったんですが、“ホロ”と出会ってからは、ずーっと彼女と話をしているので、逃げ道がない感じで難しいことを説明してばかりいます(笑)。僕が今まで演じてきたキャラクターの中でも、“ロレンス”という役は、地に足が付いていて、大変しっかりとした青年なんですよ。ですから僕にとって彼を演じるということには、挑戦するという部分もありますので、毎回毎回新鮮な気持ちで演じさせてもらっています。とは言え、リテイクされる中で「ここはもっとこうしたい」という反省を、噛みしめながらアフレコに望んでいるので、失敗したりするととても悔しかったりするんですが。今は一生懸命やらせていただいてますけど、なんだか初心に帰ったみたいでおもしろいですね。
小清水:“ホロ”という役は、本当に難しいキャラクターで……。というのも、彼女はとても長い時間を生きてきた「賢狼」なんですよね。それを、21年しか生きていない私が、どれだけ「らしく」演じられるかということがずっと課題としてあるんです。そもそもセリフが難しい言い回しであったり、内容自体が難しかったりするので、舌が回らない時は、言葉が上手くしゃべれなくて……自分の滑舌の悪さを恨むというか、イライラしちゃうこともありますね。「なんでこんなに喋れないんだ!」って。でもそれだけ演じていてやりがいがありますし、これから先にどれだけ“ホロ”に成長させてもらえるのかなって期待と、頑張ろうって思いがあります。
――中原さんはまだ出演されていませんが、“ノーラ”を演じるうえで気を付けようと思っている点や、彼女の印象などを教えてください。
中原:拝見したシナリオは、“ノーラ”が出てくる話の冒頭部分だけなので、彼女がどうやって“ホロ”と“ロレンス”と出会うのかはわからないんですね。また、まだ収録をしていないのでシナリオを読んでの印象ということになるんですが、かわいらしくてしっかりしているのに、実は幼いというか、ギャップがあるキャラクターです。演じる時には、そんな部分を出していければいいなと思います。
――本作には経済が深く絡んでいますが、経済に関する部分で印象的なやり取りや、苦労したところはありますか?
福山:“ホロ”に経済についての説明をするくだりがあるんですが、今日のアフレコでは、銀貨の名前をずっと間違えて言っていました(笑)。また序盤での“ホロ”とのやり取りは、ほとんどずっと駆け引きをやっているようなものなんです。その部分が原作ではこと細かに描写されていますので、原作では行間として表現されている部分をいかに皆さんに楽しく理解してもらえるかというところが、我々の勝負だと思います。特に、序盤での“ホロ”と“ロレンス”の主導権争いは、演じていて力の入るところでしたし、楽しんでもらえるかと思います。
小清水:“ホロ”は、独特な取引の仕方をするというか、例え言葉をよく出すんですよ。「~~の如し」という具合に。そういった言い回しの時は、歌と普通のセリフの中間くらいのリズムで演じています。人が聞いていて、思わずうなずいてしまうようなリズムというのがあると思うんですが、それを大事にしています。楽しいんですけど、とても難しいですね。私の頭脳では、およばないところもあるというか(笑)。そこは役者として、演じる役との頭脳の差はカバーしていきたいところですね(笑)。
福山:なんでそんなに自分を下に下に持っていくの(笑)。
小清水:ね。本当に。頑張ります(笑)。
――“ホロ”の喋り方は独特ですが、何か練習をしていたりしますか?
小清水:個人的に、まずは「リスニングが大事だ!」と思いまして。“ホロ”の言葉遣いはちょっと古いので、そういった時代設定の映画を見てみようと思っています。こうした覚え方が自分には合っているんじゃないかな、と思いますしね。って、まだこれからなんですけど(笑)。とは言え“ホロ”のセリフには独特のリズム感があるので、自分なりにそれを構築しようと心がけています。
――小清水さんと福山さんに質問です。お互いの役の印象を教えていただけますか?
小清水:“ロレンス”というキャラクターは、頭は切れるし、実際年齢よりも大人っぽく見えるデキた人という感じなんですね。でも“ホロ”との掛け合いを見ると、「“ホロ”のほうが上手なんですね」って思っちゃいます(笑)。なんとなく彼の駄目な部分がさらけ出されていくというか、背伸びしていた部分がどんどんと崩されていっちゃう。逆にそこが人間臭くて好きですね。
福山:“ロレンス”は、もの言わぬ馬とずっと旅をしてきた男ですから、よくしゃべる“ホロ”をパートナーにするということは、彼が望んだかどうかはともかくとして、はたから見ればとてもいい「旅のともがら(仲間)」に恵まれたなぁ、と思います。また彼は、行商ではなく店を持ちたいという夢を持っているので、“ホロ”の交渉術や知識などは役に立つんじゃないかな。彼の自尊心は、傷つけられる一方であるかもしれませんけども(笑)、大きな糧になるでしょう。だから、“ロレンス”が彼女のことを女性としてどう思っているかは置いておいて、ありがたい教師という感じですね。
――高橋監督と脚本の荒川さんに質問です。小説をアニメーションにするうえでこだわっているポイントを教えてもらえますでしょうか。
荒川:この作品をアニメ化するという話を聞いた時に、最初は僕も信じられない気持ちでしたね。原作では込み入った経済関係の話がおもしろくてそこに引き込まれたんですけど、これを30分という尺のあるアニメするために、足していったシナリオが皆さんにどれだけわかってもらえるかというのが心配でした。セリフに定着させるのが大変で、小清水さんのおっしゃっていたように、ある程度リズムを意識して、耳に入りやすいセリフになるよう心懸けたつもりです。
高橋:映像作品というものを考えた時に、全編会話で成立させるだけでなく、アニメならではの脚色を盛り込むという考え方もあるんですね。でも、この作品のおもしろさは“ホロ”と“ロレンス”の掛け合いの妙にあるので、その部分を外さないように、そして30分間退屈しないように四苦八苦して作っています。
――それでは最後に、皆様の好きな香辛料と、ファンへの一言をお願いします。
荒川:香辛料……シナモンで。皆さんが最初にイメージした「狼と香辛料」に近いものに仕上がるんじゃないかなと思います。“ロレンス”は微妙に地に足が付ききっていない感じですね。“ホロ”は、収録を重ねていくたびに小清水さんしかいないって気持ちが大きくなっています。だから、皆さんスっとアニメの世界に入っていけるんじゃないかなと思います。
高橋:……胡椒くらいしか思い浮かばない(笑)。今のアニメのジャンルで区別できるタイプではなく、他に類を見ないような作品なので、ぜひ注目してご覧になってください。
支倉:サフランで。アニメでは、原作でも気を遣った“ホロ”の耳と尻尾の描写が素晴らしかったので、その点を楽しみにしていただければと思います(一同笑)。
文倉:音の響きだけなんですけど、ナツメグ。美術設定など、小説とはまた違った印象を受けると思いますので、そういう点にも注目してもらいたいですね。
中原:本当はブラックペッパーが大好きなんですけど、今日はターメリック(ウコン)で。肝臓に優しいでしょ?(笑) “ノーラ”の出番は大分先なんですけど、それまでに“ロレンス”さんと“ホロ”が、しっかりと場を暖めてくれるかと思うので(福山:前座かよっ!!(笑))、それに乗っかって行こうかと(笑)。最後までぜひ見てください。お願いします。
小清水:柚子胡椒は、大丈夫なのかな? 柚子胡椒で(笑)。アフレコは、毎回“ホロ”との戦いという感じで、一生懸命挑んでいます。皆様にお届けするころには、音と映像が合わさって、素晴らしいスパイスの効いた作品になっているのだと思います。これからも飽きない味付けで続けていきます(一同笑)。では、オチをお願いします。
中原:すっごいハードルが上がった……(笑)。
福山:滑っちゃうよっ!(笑) ……香辛料ですが、僕はカレーが大好きなのですが、カレーと言えばガラムマサラ、ということで。楽しみにしてくださっている皆さんはたくさんいらっしゃると思いますが、大変プレッシャーを感じながら第1話を迎えたことを覚えています。シリーズを通して見ていただいて、物語のおもしろさに加えて、人との会話が最大の娯楽だということや、お金を稼ぐことが大変だということが、作品を通して考えていただければいいですね。
――ありがとうございました!
(C)支倉凍砂・メディアワークス/「狼と香辛料」製作委員会
データ
■TVアニメ「狼と香辛料」
【スタッフ】(敬称略)
原作:支倉凍砂(「狼と香辛料」電撃文庫刊)
キャラクター原案:文倉十
監督:高橋丈夫
脚本:荒川稔久
キャラクターデザイン・総作画監督:黒田和也
色彩設計:佐野ひとみ
美術監督:小濱俊裕(スタジオ美峰)
美術設定:塩澤良憲(スタジオ美峰)
撮影監督:松井伸哉
音響監督:高桑一
音響制作:神南スタジオ
アニメーション制作:IMAGIN
ほか
【キャスト】(敬称略)
“ホロ”役:小清水亜美
“ロレンス”役:福山潤
“ノーラ”役:中原麻衣
“クロエ”役:名塚佳織
ほか
■関連サイト
・TVアニメ「狼と香辛料」公式サイト
・電撃文庫&hp
・メディアワークス