『NOMOREHEROES』須田剛一氏にインタビューその2!キーワードは団地と「相棒」!?
12月6日にマーベラスエンターテイメントから発売された、Wii用ソフト『NO MORE HEROES』の開発スタッフにインタビューを行った。
『NO MORE HEROES』は、Wiiリモコンを使用した直感的&爽快感抜群のアクション、独創性あふれるシナリオ、ハイセンスなビジュアル&サウンドなどで注目を集める注目のアクションアドベンチャーゲーム。開発は、PS2/GC『killer7』やDS『Contact(コンタクト)』などを開発したグラスホッパー・マニファクチュアが担当し、キャラクターデザインをTVアニメ「スピードグラファー」のコザキユースケ氏、メカデザインに「交響詩篇エウレカセブン」のコヤマシゲト氏などを起用している。
前回からひき続き、お話を聞いたのは、グラスホッパー・マニファクチュアの代表取締役で、本作のディレクションとシナリオを手掛けた須田剛一氏。ゲーム制作についてや、デベロッパーとしてこだわりなどについて語ってもらった。
――ここからは須田さんのゲーム制作についてお聞きします。これまで、既存のゲーム概念を覆すような作品を作られてきましたが、モノ作りをする際にルールはあるのでしょうか?
須田氏:あまりルールの意識がないので、いわば「ルールを設けないこと」でしょうか。僕は小説、映画、コミック……と、いろいろな娯楽がある中で、ゲームは極上のエンターテイメントだと考えています。ゲームだからこそ、文章、音楽、映像など、多くの要素を乗せることができるんですよ。これを意識し、リミッターを設けずにやりたいことをやろうと思っています。とはいえ、ゲームを発売するには、レーティングによる表現の規制をクリアしなければなりません。ディレクターは、この中で実現できる表現をしっかり研究して、よりよい演出の手法や、ゲームの難易度を探っていくことが大事な仕事なのだと考えています。
――グラスホッパー・マニファクチュアの第1作目である『シルバー事件』をはじめとして、須田さんの作品では「善」と「悪」の描かれ方が印象的ですが、本作ではどうですか?
須田氏:『シルバー事件』は犯罪事件をメインに扱っている作品ですが、登場人物の立ち位置は、犯罪の内容に左右されます。つまりは、主役は事件そのもの。シナリオを書く前に、まずは物語の舞台と社会構造をじっくり考えるんです。それを自分の肉体を通して、自分が経験した現実と照らし合わせて捻出されたものをシナリオと登場人物の設定に落とし込んでいく……という手法を取りました。この方法は、他の作品でも同様です。だから今回も善悪にフォーカスしていません。ただ今回の場合は、殺し屋同士のぶつかりあいなので、「人間力VS人間力」というのをテーマとしています。
――須田さんの作品では、『killer7』のボス戦直前をはじめとして印象的な「演出」が入りますが、それはなぜでしょう?
須田氏:僕は企画屋の人間なので、「過剰なサービス」が職務と考えています。企画で一番大事なことは「プレイヤーの記憶に残る」ことなので、この点はどの作品でも一貫して力を入れていますね。逆にそれをしないと企画屋がいる意味がないので。
――今回は、ボスとの戦闘の前に“シルヴィア”から電話がかかってくるシーンが、それにあたりますよね。
須田氏:お約束的なものは入れるようにしています。本当はもっといろいろ入れたかったんですけどね(苦笑)。あとは、ボス戦の前の余韻を高めたいというのもありました。ないよりはあった方がいいと思うので、過剰に入れました。
――話は変わりますが、団地を舞台とした話にこだわりがあるのですか?
須田氏:『BLOOD+ One Night Kiss(以下、BLOOD+)』や『ムーンライトシンドローム』では団地が出てきます。実は僕自身が、団地観というような感覚が単純に好きだからです(笑)。団地巡りもしますしね(一堂笑)。『BLOOD+』を作る前に視察とかにも行ったんですが、最近の団地はまたさらにすごいんですよ。監視カメラがすごいあって……(以下、団地トークが続く)。奥深いんですよ、団地は進化しているんです。場としての魅力を感じますね。人が密集しているので、多くの人の物語がある。時間によって、場所を利用しているというのもあって、題材としてはおもしろいと思います。一応、『BLOOD+』は僕の団地観の集大成にしたつもりですが、機会があれば再度扱いたいと思います(笑)。
――『killer7』は数々の賞を受賞しており、海外で高い評価を得ていますが、このことについての感想は?
須田氏:うれしいです(笑)。『killer7』はカプコンさんのブランド力と三上さんのプロデュースがあって、海外でうまくいきました。しかし、僕は日本人で日本のデベロッパーなので、日本で売れるゲームを作りたいです。評価されるのもうれしいですがセールスが延びてほしいというのは、率直なところです。Wiiが絶好調なのでタイミング的にはいいはずなので、本作は心の底から多くの人にプレイしてもらいたいですね。
――話が大きくなりますが、ゲームデベロッパーとして、現在のゲーム業界をどう捉えていますか?
須田氏:今、ゲーム業界は、産業として成熟しきって、これからの土台を作る時期なのではないでしょうか。映画産業が、世界の各地域で互いに影響を受けながら発達してきたように、ゲームも地域ごとに特色が出していけたらいいと考えています。最近の日本では、DSやWiiは、高機能化とは別の道でゲームの可能性を提示した、非常にパンクで魅力的なハードだと思います。一方、海外(北米)に目を向けると、Xbox 360が主流だったりします。それぞれの地域で受け入れられているハードでの開発にはとても興味がありますね。
あと、個人的な意見なんですが、若い作り手の方にもっと出てきてほしいです。ゲーム雑誌で取り上げられる人で、若い人を見ないので。僕も最近取り上げてもらえるようになったんですが、まだ若手なんですよ。でももうじき40なんですね。ディレクターは早いうちに経験したほうがいいと思うので20代の人とかに出てきてほしい。WiiウェアやXbox 360のLIVE アーケードなどをうまく活用すれば作品を配信できるので、ビジネスとして形になればいいですね。
――では、グラスホッパーに企画マンとして入りたいという人は、どういう形で努力したらいいですか?
須田氏:うちは今いっぱいなんですよ……元も子もないですね(笑)。やっぱりガッツですね。企画はまずはそこです。現場で、地味な作業が日々続いていくなかで、それを仕事としてよろこべる。なんのかんの言ってゲームを作るのはおもしろいんです。最終的にお客さんが遊んで楽しんでくれると思えばささいなことは乗り越えられるんですが、気持ちを強く持てるいかどうかが大事だと思います。
――須田さんのプライベートについてお聞きしたいのですが、私生活の須田さんはどんな方でしょうか?
須田氏:あんまり皆さんと変わらないですよ(笑)。TVっ子なので、ドラマからバライティ番組を普通に見てます。今は「相棒」のシーズン6を見ています(一同笑)。「相棒」はキテますよ! おもしろいドラマはいろいろあるんですが、「相棒」は別格におもしろいです! 「LOST」も好きだったんですが、途中で展開が読めてから見なくなりました。「Xファイル」は好きだったので最後まで見たんですが、それで海外ドラマは燃え尽きましたね。見たい海外ドラマはあるにはあるんですが、それよりは「相棒」です!
――集めているものとかありますか?
須田氏:食玩を買うくらいかな。あとは蕎麦が好きなんで蕎麦の本を集めています。……あんまりおもしろくないですね(苦笑)。
――(笑)。今、須田さんが注目しているゲームタイトルなどはありますか?
須田氏:一番は来年発売される『バーンアウト パラダイス』ですね。大好きなんです! 死ぬほどやります、おもしろくて止まらないんです! ある時期は他の方が作ったゲームに興味がなかったんですが、最近は遊ぶようにしています。その中でも『バーンアウト』シリーズを作ったチームは、尊敬します。
――須田さんが作りたいと思っているハードはどれでしょうか?
須田氏:うーん。Xbox 360ですかね。アメリカでメインハードとなっているので、メジャーリーグに乗り込むような感じで、それに挑戦してみたいという気持ちはあります。
――それでは最後に、ファンへのメッセージをお願いします。
須田氏:『NO MORE HEROES』は、他のWiiタイトルとくらべてひとクセあるゲームです。しかし、「100歩譲って、ちょっと興味がある……かも?」という人も是非、まずさわっていただければと思います。また、だれかがプレイしているのを横で見ていても楽しめるようになっていますので、みんなで楽しんでもらえたらうれしいですね。横で見ていて気になったら、ぜひ……いや、気にならなくても、ぜひ(笑)、買っていただけたらと思います!
| |
『バーンアウト パラダイス』の発売が楽しみだと語る須田氏。同氏がディレクションとシナリオを手掛けた『NO MORE HEROES』は発売中! |
(C)Marvelous Entertainment Inc.
データ
▼『NO MORE HEROES』
■メーカー:マーベラスエンターテイメント
■対応機種:Wii
■ジャンル:A.ADV
■発売日:発売中(2007年12月6日)
■価格:7,140円(税込)
■『NO MORE HEROES』の購入はこちら
■関連サイト
・『NO MORE HEROES』公式サイト
・グラスホッパー・マニファクチュア
・マーベラスエンターテイメント