2008年5月24日(土)
2005年10月にTVアニメが放送され、今年1月31日にDS用ソフト『蟲師 ~天降る里~』が発売された人気コミック「蟲師」。TVアニメで主人公の“ギンコ”を演じた中野裕斗氏が、「蟲師」に携わった人を訪ねたり、「蟲師」にかかわることをしたりするコーナー「蟲の居所」の10回目をお届けする。
題字・漆原友紀 |
「蟲師」は、「月刊アフタヌーン」(講談社刊)で隔月連載中のコミック。本作を題材にしたTVアニメは、幅広い層の支持を獲得して、文化庁メディア芸術祭「日本のメディア芸術100選」アニメーション部門で6位入賞を果たした。また、マーベラスエンターテイメントから発売されているDS版『蟲師 ~天降る里~』は、「蟲師」の世界が100%再現されていることに加え、ゲームオリジナルのストーリーを楽しめることでも話題となった。
今回の「蟲の居所」は、音響監督としてTVアニメ「蟲師」とDS『蟲師 ~天降る里~』の制作に携わったたなかかずや氏をお迎えする。
中野氏:今日のゲストは、耳がよすぎることで有名な、たなかかずや氏です。
たなか氏:よろしくお願いします。「蟲の居所」を読んでいて驚いたんですが、声優さんはゲームをプレイしているんですね。
中野氏:土井さんも小林さんも結構やりこんでいるみたいですね。それで、たなかさんはゲームをプレイされましたか?
たなか氏:すみません。忙しくてあんまりプレイしていません(苦笑)。中野さんは、最近はプレイしているんですか?
中野氏:最近はそこまでプレイしていませんね。一通り遊び尽くしたんで、たまにプレイするくらいです。
たなか氏:遊び尽くした……すごいですね。
中野氏:(胸を張って)“ギンコ”ですから。たなかさんはキャラクターの名前を何にしましたか?
たなか氏:男の子にして自分の名前、「かずや」にしました……普通ですみません。
中野氏:いや、基本ですよ。では、ゲーム中で好きなキャラクターは?
たなか氏:好きなキャラクターじゃなくてもいいですか? 師匠の“ヤクノ”は嫌いです。だって、蟲の調書のチェックをお願いすると、バツを入れて返してくるじゃないですか(一同笑)。
中野氏:ワハハハハハ。そこは第一関門ですよね。馬越さんも1回目でバツをもらっていました。
たなか氏:えええええ。あんなに絵がかける馬越さんがですか? それはビックリですね。
中野氏:ゲームで好きなところはどこですか?
たなか氏:ゲーム本編の話ではないんですが、ボク、ソフトの予約特典でついてくる巾着のできがすごくいいと思ったんですよ。
中野氏:あれは限定生産なので、いまや貴重なアイテムみたいですよ。
たなか氏:あれはうれしいですよね。大人が使っていても恥ずかしくない、渋いデザインでキレイだっていうのがイイ!
中野氏:なるほど。次回作があるときは、本皮のグッズとかでどうでしょうか?
たなか氏:本皮はすごいですね。企画として、蟲をたくさん集めて、それをネットのランキングに登録した上位者にプレゼントするとかできたらおもしろいですよね。
中野氏:今、Web上で蟲の名前をユーザーさんから募集して、選ばれた人にはサイン入りのグッズをプレゼントするというキャンペーンを行っているんですが、すごいですよ。名前だけでなく、設定や名前の由来までビッシリ書かれているんです。
たなか氏:皆、和名ですかね? 「ビル・ゲイツ」とかはいない?(一同爆笑)。
中野氏:いません、いません。和風な名前ばかりです。
たなか氏:中野さんの「朝捕まえたから、朝青龍」っていうのは笑いましたね。
中野氏:そういうのしか浮かんでこないんですよ(笑)。
たなか氏:このゲームは、きっと旅をしながら遊ぶとかよさそうですよね。この前、シンガポールに仕事で行くことがあって、その時にやろうと思っていたんですよ。購入したノイズキャンセル付きのヘッドフォンを使って遊ぼうとしていたら、そのヘッドフォンのあまりの快適さに映画ばかり見てしまって(笑)。飛行機の中とか、音の変化が小さくずっと音がなっている空間だと、ノイズキャンセルの機能が最も効果的に働くんです。まさにそれをつけているだけで寝れるくらい環境騒音を低減するんですよ! ……なんか、この話って音響監督っぽくないですか?
中野氏:そうですね。音には人一倍敏感なたなかさんですからね。
たなか氏:電車の中もいいですし、集中したい時にも最適ですよ。結論としては、DSにヘッドフォンをセットするのを失念して、ゲームをあまりプレイできていないということです(苦笑)。
中野氏:では時間を作って、ぜひお願いします。スムーズに進めるコツは、捕まえた蟲の場所と時間をメモすることですよ。ゲームの世界観はどうでしたか?
たなか氏:まったく違いませんでした。声を録る時も、アニメの世界観そのままだったので、すんなり収録できたんじゃないですかね。
中野氏:アフレコに5時間くらいかかるんじゃないかと心配していましたが、あっさりいきました。
たなか氏:ボクが心配していたのは、中野さんの滑舌だけですから(一同笑)。
中野氏:毎回、それは注意されていましたね。
たなか氏:第1回目の土井さんの記事を読んで「時間を許してくれるスタジオでよかった」と話していたんですが、本当ですよね。明け方まで収録っておかしいですよ(一同笑)。
中野氏:本当ですよ、そりゃ皆疲れますって。
DSをプレイしながら、収録当時や、TVアニメ撮影時を語ったたなか氏と中野氏。話は「蟲師」からヘッドフォンへ。 |
中野氏:ゲームのアフレコ時のエピソードはありますか?
たなか氏:予想外に早く終わったことくらいですね。よく考えると、複雑な話の中の一部のセリフというのではなく、かみくだいたようなセリフが多かったので、早く終わったのかもしれません。
中野氏:他には、本編より緊張しなかったというのもあるかもしれませんね。
たなか氏:世界観がアニメとゲームでマッチしているので、それに対して心構えをする必要がないため、緊張しなかったのかもなあ。
中野氏:でも未だに、アフレコ時は緊張しますね。特に「蟲師」以外の作品は。
たなか氏:最初からその世界にいたわけではないから、慣れにくいのかもしれませんね。でも中野さんのいいところがあるから“ギンコ”役にも選ばれたわけですし、その後も声優として活動されているわけです。そこは自信を持っていいと思いますよ。
中野氏:どうですかね(照れ笑)。もし次に「蟲師」があるとしたら、どうされますか?
たなか氏:ボクですか?……助手かなにかで。「できたころに呼んでください」的なポジションを取りたいです(一同笑)。
中野氏:またそれですか。馬越さんも「劇場で観客席から見たいです」と言っていました。
たなか氏:いや、ボクは現場にはいますよ。中野さんができあがったくらいに行きます。そういえば、アフレコに慣れていない人の声を録った「蟲師」での経験が、自分の中で今に生きていますね。今やっている作品もそうですし、タレントさんをゲストに呼ぶ時のいい指針になっています。何がわからないかは、中野さんを思い出すとわかりやすいんです(笑)。
中野氏:小学校の時は、刑事ドラマを自分で作ってテープに吹き込んだりしていたんですが、物心ついてからは声だけで演じることが少なくなりましたね。
たなか氏:ボクも、テレコとかバラバラにして遊んでいましたね。
中野氏:やっぱりそういう職業に就きたくなるんですよね。たなかさんは、最初から音響監督を目指していたんですか?
たなか氏:エンジニアの仕事をしている時に、アニメをやっている現場だったんですよ。その時に「このキャラはこうなんじゃないですか? あれはこうなんじゃないですか?」と言っていたら、「うるさい、それならお前がやれ!」って言われまして(一同爆笑)。それで気がついたら音響監督になっていましたね。
中野氏:すごいですね。たなかさんは今後、自分の作品をやりたいという気持ちはないんですか?
たなか氏:今のところはないですね。以前はミュージカルをやりたいと思っていたんですが、ちょっと仕事が忙しくなってしまったので、止まっています。
中野氏:なるほど。質問に戻りますが、TVアニメのキャラクターで好きなキャラは誰でしょうか?
たなか氏:うーん……なんだかんだで“ギンコ”は思い入れがありますね。あとは子どもの“ギンコ”ですね。
中野氏:ありがとうございます。それにしても、こんな無の男をよく料理しましたね(笑)。
たなか氏:料理というか調教ですね(笑)。でも、他の方もおっしゃっていたように、その無がいいんですよ。
中野氏:知り合いの映像監督も、「“ギンコ”はキミの何もないのが出ていて、すごくいいね」と言っていました(一同笑)。
たなか氏:タレントさんが声の仕事をすると、キャラクターを超えてその人が出てきてしまうんです。声優さんはキャラクターの後ろに隠れる仕事。だからまったく別の仕事なんですよ。にもかかわらず、中野さんの演技は、素晴らしかった。
中野氏:演技って、そんなに違わないと思うんですけどね。逆にボクなんて、何の声をやっても同じなんじゃないかなって思うくらいです。
たなか氏:いやいやいや、中野さんが出演している別のアニメを見たんですが、違いましたよ。ちゃんと演じ分けていましたって。
中野氏:そうですか。いつもアフレコの時はたなかさんの顔が浮かんで、ダメ出しされるんじゃないかと思っています。
たなか氏:中野さんの現場に毎回はいませんって(笑)。そういえば、DVD-BOXのパッケージ見ましたよ。装丁がすごくよかったですね。今見ると忘れていることばかりで、改めて見たんですがとやっぱりおもしろかったです。
中野氏:ボクもたまに見ます。今聴くと、声が若いんですよね。
たなか氏:そんな前でしたっけ? 3年くらい前ですよね?
中野氏:ですね。忘れられないように、こうやって顔を見せておかないとダメだと思い、いろいろな人を訪れています(笑)。
たなか氏:なるほど。挨拶は大切ですからね。
中野氏:では、最後にファンへのメッセージをお願いします。
たなか氏:アニメーションの世界をそのまま持ってきたかのようなゲームの世界。喧騒(けんそう)を忘れて浸ってみてはどうでしょうか? どうぞお楽しみください。
中野氏:本日はありがとうございました。
話ははずみ、趣味の旅の話や、ここでは書けないような今後の仕事について、はたまた人生観まで語り合った2人。最後は「また仕事をする時はよろしくお願いします」と挨拶し合い、インタビューは終了となった。 |
・中野裕斗氏近況 |
||
|
温かかった日々から一転し、三寒四温な日々が続いています。体調を崩さないように気を付けてください。 なんとなくですが、こんな時期に「蟲」が多そうな気がするのは、ボクだけでしょうか? 部屋にいる“ギンコ”よ、なにか見えないかい? |
(C)漆原友紀/講談社・「蟲師」製作委員会
(C)2008 Marvelous Entertainment Inc.