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2008年7月1日(火)

7月2日開設のオンラインゲームポータル「55Shock!」その戦略と展望に迫る!

文:電撃オンライン

 数多くのFlashゲームを配信するゲームポータル「Shockwave」が、7月2日にオープンを予定しているオンラインポータルサイト「55Shock!」。今回は、サイトのプロデューサー岡山氏に、ゲームポータルサイトの在り方と「55Shock!」が目指す戦略について伺った。

 今回のインタビューは、そもそもゲームポータルサイトとは? ゲームポータルサイト運営の方法や、そのキャッシュフローは? などなど、普段は知ることのできない突っ込んだ内容となっている。ゲームポータルサイトの運営や、その舞台裏に興味のある読者には、ぜひ読んでいただきたい。

「55Shock!」インタビュー
「55Shock!」について、その思いを熱く語る岡山氏。目線の先には、常に業界を驚かせるビジョンを見据える。

――オンラインゲームポータルサイト「55shock!」のオープンが7月2日に迫っていますね。資料によりますと、「55shock!」の大きな特徴として「他サイトと比べて、提供するゲームの価格が安い」ことが挙げられると思いますが、実際ユーザーにはどれくらいお得感があるのでしょうか。

岡山氏:7月2日の「55shock!」オープンにあわせて、人気MMORPG『ストラガーデン』のキャラクターイラストなどを一新した『ストラガーデンNEO』のオープンベータテストを開始するので、まずはこのタイトルを参考にお話しましょう。『ストラガーデンNEO』では、今までの『ストラガーデン』同様に、ゲーム内で使用する通貨「ストラポイント」を現金で購入するのですが、「55Shock!」では、これを最大25%オフでご提供します。最大、というのは、一度の決済額の高さに応じて割引率を上げていこう、ということです。つまり、5,000円の「ストラポイント」を1回で決済いただくと10%引きで4,500円、10,000円になると15%引きで8,500円、50,000円を一気に決済していただくと25%オフで、37,500円になります。実を言うと、オンラインゲームでは高額な決済をするユーザー様が思いの他多いんです。現在、アイテム課金型の大手MMORPGでの1人当たりの決済単価は、月に10,000円を軽く超えます。ですので、高額決済のユーザー様に10~25%を還元するという戦略は、「55Shock!」ユーザーにとって非常に大きなメリットになると考えていますね。

――かなりユーザーフレンドリーなサービスですね。なぜそのような還元が行えるのか、非常に気になります。どのようにして実現したのでしょうか?

岡山氏:一般のお客様にご説明する際、弊社は大まかには「広告収入を還元する」という説明をしています。つまり、「55Shock!」の母体となるゲームポータルサイト「Shockwave」でいただける広告収入を還元する、ということですね。しかし、正直なところ、それだけでユーザー様への還元が実現できるほどWeb広告の単価は高くないのが実情です。そこで、弊社は一般ユーザー様から見えにくい部分で価格還元を実現する戦略もあわせて実行することにしたわけです。

 その1つ目は、オンラインゲームポータルサイトとしてのコミュニティー機能のオープン化です。他のポータルサイトは、各ポータルごとにコミュニティーを設置するなど、ユーザー様をクローズドなコミュニティーに誘導することで囲い込みを狙う戦略を取っています。しかし、弊社はあえて誰でも参加できるオープンなコミュニティーにユーザー様を誘導し、代理コミュニティーとして利用することでユーザー様の囲い込みを実現しました。といいますのも、弊社は以前からソニーの「FLO:Q 」やニワンゴの「ニコニコ動画」といったサイトとコンテンツパートナーとして提携していた実績があります。つまり、誰もが参加できるコミュニティーをうまく活用してユーザー数を増やしてきた実績が弊社にはあるんです。なので、このオープンなコミュニティーに点在する既存のユーザー様にうまく協力してもらって、還元を行っていくという狙いがあります。

――正直、今のお話ではどのようしてユーザーへの還元につなげるのかが非常にイメージしづらいのですが、具体的にはどのような活用方法をお考えなのでしょうか。

岡山氏:例えば、A社というオンラインゲームのポータルサイトがあり、A社とウチは同じゲームを提供していたとします。すると、ユーザー様はどちらの会社の会員であろうと、ゲーム内では同じサーバーに接続することになります。つまり、入口が違うだけなんですね。でも、A社が持っているクローズドな環境のコミュニティーでは、「このイベントについては言っちゃダメ」とか「オフラインイベントの告知をしちゃダメ」とか、情報に規制がかかることが少なからずあるんですよね。これでは、コミュニティーはどうしても活性化しない。そうなると、ユーザー様はブログなどのオープンな環境を探して、公式とは別に新たなコミュニティーを形成し始めるんですよね。

――つまり、ポータルサイト側でコミュニティーの管理をする必要がなくなる、ということですか?

岡山氏:弊社がコミュニティーを持たない理由は、それです。あえて公式なコミュニティーを準備せず、ユーザー様同士の情報交換を個人的なブログなどにアウトソーシングすることで、日記システムなどを独自に施設・管理する必要がなくなります。つまり、それにかかるコストは完全にゼロにできる。このように、不必要なマイナス要素を発生させない独自のポータルサイト理念が構築できたからこそ、ユーザー様にこれだけの値引き還元が可能になった、というわけです。

――なるほど、SNSやブログがユーザーに認知されてきたからこそ実現できた戦略というわけですね! ちなみに「55Shock!ポイント」などの、いわゆる中間マネーとなる擬似通貨は設けないという戦略にも、ユーザーへの還元を実現する狙いがあるのでしょうか?

岡山氏:もちろん、そこにも仕掛けがあります。他社では「○○コイン」や「○○ポイント」といった中間マネーを持っていることが多いですよね。しかし、「55Shock!」はそういうシステムを用意しないので、そもそもインフラ整備をする必要がない。そのおかげで、単純に浮いた分のコストをユーザー様に現金還元できるんです。

 中間マネーを利用するシステムを大まかに言うと、1,000円分で「1,000○○ポイント」を購入し、そのうちの「600○○ポイント」でゲームを購入、という流れになりますよね。でも、400ポイント余ったからといって、それが現金になるわけではありません。あくまで中間マネーとして残るだけです。しかし、『55shock!』は、とにかくわかりやすい。『ストラガーデンNEO』の「1,0000ストラポイント」を得るなら15%引きで8,500円。手元には1,500円が現金として残ります。つまり、値引きされた分が限定的にしか使用できない中間マネーではなく、現金として還元されるということです。

(注:「ストラポイント」はゲーム内で使用する通貨を直接購入するので、中間マネーではない)

――ユーザーにとっては、中間マネーとしてではなく、現金が手元に残るというのはかなり嬉しいですよね。

岡山氏:ユーザー様もうれしいでしょうし、もちろん弊社にとっても中間マネーを準備しないからこそ生まれる利益があります。仮に「55shock!ポイント」という中間マネーを用意したとします。すると、ユーザー様にはまず現金を「55shock!ポイント」に換金してもらって、そのポイントでゲームを購入して遊んでもらうことになります。1,000ポイント換金してもらっても、200ポイントのゲームを購入した場合、まだ800ポイントの未使用分が残っている。そうなると、弊社としてはユーザー様に換金していただいたポイントを消費してもらうためのアバターや日記システムを用意したりと、結局インフラ面で投資を続けなければならない。実はこれこそが、他社さんの大きな負担になっているんですよね。我々はそこを省くことで、ユーザー様に現金を還元するという、他のポータルサイトでは難しかったことを可能にしたのです。

――なるほど。現在のオンラインゲームポータルサイトでは、かなり画期的ともいえる還元システムですね。では、実際に「55Shock!」を立ち上げることになったキッカケをお教えください。

岡山氏:まず、弊社には「55Shock!」の母体となる「Shockwave」がありました。「Shockwave」は、おかげさまで月間330万人以上の方にご利用いただいている、Flashゲームを主に扱ったゲームポータルサイトになりました。ですので、我々も日本でトップクラスのFlashクリエイターたちを抱えながら、毎週新しい作品をどんどん公開することができたわけです。そして、サイト内およびこれらのゲームを遊ぶ前に自動的に表示される広告の出稿料が、弊社の主な収入でした。

 しかし最近のWeb広告は、「何人のユーザー様を広告主のサイトに移動させたらいくら」や「何件の申し込みがその広告から獲得されたら報酬はこれくらい」など、結果至上主義の成功報酬型にシフトしてきました。「Shockwave」はクリエイティビティーで売ってきた会社なので、そういった広告システムに組み込まれてしまうと、非常に動きづらい。つまり、いくらクリエイティビティーあふれる斬新なゲームを作っても、多くの人を引き付ける広告的な魅力がなければ結局はダメ。広告媒体として成功するまで斬新なアイディアを持ったクリエイターたちに無用な負担をかけ続けることになってしまいます。それであれば、もっとシンプルに、広告だけに頼ることなくユーザー様に奇抜で斬新なゲームやサービスを提供し、還元することを前提に少しだけお金を払っていただくほうが、商売として風通しがよいと考えて「55shock!」の立ち上げにつながりました。

――広告に頼らないポータルサイトとしての手段を模索した結果、というわけですね。

岡山氏:はい。それと、今まで「Shockwave!」には、ほとんどカジュアルゲームしか置いていなかったのですが、オンラインゲームについてのアンケートを取ってみたところ、「すでにオンラインゲームをプレイしたことがある」または「やってみたい」という回答が7割弱にも達したんですね。ストレートに言うと、我々は新しいサービスを提供して、ユーザー様から広告料に代わるお金をいただきたい。そして、ユーザー様の半数以上はオンラインゲームを遊びたいと言っている。ならばその両者を満足させる「55shock!」は事業としてGOだろう、という判断を会社がしたので、私どもがプロジェクトを立ち上げることになったのです。

――なるほど。既存のポールサイト「Shockwave」や広告モデル、ユーザーのニーズなど、さまざまな要素が合致しての立ち上げということですね。ちなみに、現在「55Shock!」のプレオープンサイトでは5つの配信予定タイトルが掲載されていますが、このラインナップにも戦略的な狙いがあるのですか?

岡山氏:実は、サイトに掲載されているアクションゲーム『ボンバーマン オンライン Japan』、カジュアルレーシングゲーム『Fun! Fun! Buggy!』、MMORPG『ストラガーデンNEO』、対戦格闘ゲーム『EXTREME FIGHTER』、MMORPG『ワーネバ・オンライン』の他に、MMORPG『エンジェルラブオンライン』とパズルゲーム『テトリスオンライン』を加えた合計7タイトルの配信を予定しております。我々の戦略には、とにかくタイトル数を増やしたい、という考えがあります。先ほども申しましたが、すでに他社で提供されているタイトルを多数用意したい。加えて、ポータルサイトのローンチ用として新作も必要です。この、両戦略のバランスを取った結果が今回のラインナップですね。

――ちなみに、超有名作品『ボンバーマン』シリーズのオンラインタイトルを選んだ理由は?

岡山氏:昨年から、我々にはユーザー様からお金をいただく形でのオンラインポータルサイトを開設したいという希望がありました。以前から「Shockwave」でユーザー様を確保してはいましたが、基本的にはユーザー様からはお金をいただいていない状態でしたので。同時期に『ボンバーマン』の開発元であるハドソンさんは、独自のゲームサイト「ハドソンキングダム」を終了することになったんですね。『ボンバーマン』自体は超有名タイトルなのですが、『ボンバーマン オンライン』に関しては、残念ながら認知度を広めることができなかったというわけです。そういった事情を持ち寄った両社が運命的に巡り合うことができ、お互いに強い部分を出し合いながら、共同でやっていこう、という形で『ボンバーマン オンライン Japan』を配信することが決定しました。

――良質なゲームを開発するのがハドソンで、それをゲームポータルサイトとしてのノウハウを最大限に利用して世に広めるのが『55shock!』ということですね。非常にいい形での分業だと思います。

岡山氏:そうですね。『ボンバーマン』自体には確実にユーザー様が付いているので、今後は「55Shock!」で『ボンバーマン オンライン Japan』を配信して、「Shockwave」の既存ユーザー様を中心に認知度を広めていくことが重要だと考えています。

――それができるのが「Shockwave」の、そして「55Shock!」の最大の強みということですよね。では、「55Shock!」でオンラインゲームの提供を開始することで、今後はどのような事業展開を予定していますか?

岡山氏:現在、無料で配信されているゲームのプレイ前に表示される30秒の広告を完全にカットしてしまう、というようなプレミアム会員構想はありますね。

――ユーザーからすると、ゲーム前に見なければいけないものが減っていき、よりスムーズに遊べるシステムになっていく、ということですね。

岡山氏:はい。今後もユーザー様にとって何が喜ばしいことなのかを追求していきたいですね。そして、これは希望ではありますが、「Shockwave」や「55Shock!」を知っているだけで、そして利用しているだけで、ちょっとした優越感が持てるようなサイトにしたいです。知らない人に、自分だけが知っているものを自慢したくなるような感覚ですね。ですので、まずは「Shockwave」や「55Shock!」を知らない人に、こんなサービスがあるんだ、ということを認知してもらえるようにがんばっていきます!


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