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2008年10月1日(水)

DSの特色を最大限に生かすために! 『ナイツ・イン・ザ・ナイトメア』インタビュー

文:電撃オンライン

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■「リトライ」や「レベリング」のペナルティ

「伊藤真一氏」

――本作では、今までのシリーズにもあった「リトライ(※1)」の他に、新たに「レベリング(※2)」という要素がありますが、これを搭載した理由を教えてください。






※1 「リトライ」
ゲームオーバーになった際に、敵の残りHPなどを引き継いだまま、ステージの最初からやり直すことができる。

※2 「レベリング」
ゲームモードの1つ。ストーリーから独立して、キャラクターのレベル上げやアイテム収集などができる。

伊藤:今回は1つしかセーブができないため、それ以上ゲームが進められなくなる、いわゆる「詰み」になる可能性があるので、それを解決できるような要素が必要だと思って搭載しました。ちなみに、「レベリング」という名前には、「ここで経験値を稼がないと進めないというものじゃないよ」という気持ちが込められています。実は、名前の候補にはもっとわかりやすいものもありました。でも、例えば「トレーニング」という名前にすると、なんとなく「ある程度レベルを上げてから次の面に行かなくてはいけない」というイメージがあるような気がしたので、あえてちょっとなじみのない名前にしました。

──最初のメニュー画面からしか「レべリング」ができないのも、レベル上げを強制させるような印象をプレイヤーに与えないように、という配慮からでしょうか?

伊藤:そうですね。例えば、各ステージをクリアした後の「セットアップ画面」で使えると、プレイヤーさんが「とりあえずレベルを上げておかないと損かな」と感じてしまうんじゃないかと思いまして。ですから、「レべリング」の項目はメニュー画面に置いて、「クリアできない」と思ってゲームを中断した時に初めて使えるようにしました。

――『ユグドラ・ユニオン』では特定のアイテムが手に入らないといったことがありましたが、本作に「レベリング」や「リトライ」を使うことによるペナルティはあるのでしょうか? 現在、プレイ中の人にとっては気になるところだと思います。

伊藤:今回はアクション性が強く、そのせいで「リトライ」や「レベリング」をせざるをえない場合が誰にでもあると思うんです。なので、ゲームの楽しみを奪うようなペナルティは用意していません。あっ、でもエンディングでは全ステージの評価が確認できるのですが、「リトライ」を使ったステージに関しては、評価に「リトライ」と表示されちゃいますね。オール「S」ランクとかを目指す人にとっては、使いづらくなると思いますが(笑)。でも、それだけですね。

――確かに「なんか負けた気がする」というのはあるかもしれない(笑)。ちなみに、「レベリング」のペナルティに関してはどうでしょうか?

伊藤:こちらも、ないですね。「レベリング」したから特定のキャラクターが仲間にならないとか、アイテムが手に入らないとか、イベントが起きないというのは、一切ありません。ちなみに、マニュアルにも書いてあるのですが、難易度に関しても同じです。「イージー」だからといって出ないイベントはないので、自分にあった難易度で楽しんでほしいと思います。『KiN』は変わったゲームで、他のゲームの経験が生かせる部分が少ないと思います。ですから、最初は「イージー」からプレイしてみてください。それでゲームに慣れて、「ゆるいな」と感じるようになったら、「ノーマル」から順々に難易度を上げていけばいいと思います。

――個人的な話で恐縮ですが、自分は「ストーリーは同じでも「イージー」だと仲間にならないキャラクターがいるんじゃないか」と思って「ノーマル」で始めて、すっごい苦労しています。現在進行形で(笑)

伊藤:シリーズを通してプレイしている人のほうが疑い深いかもしれませんね(笑)。今回はゲームシステムが特殊で、戸惑うところが多々あると思います。ですから、そういった制約は付けていません。キャラクターを仲間にするだけでもアイテムが必要だったりと大変で、プレイヤーさんに「このキャラクターを仲間にできないのは難易度のせいじゃないかな」と思われると難易度選びの自由度がなくなってしまうので、そこは声を大にして「制約はつけていません」と言っておきます。

――これも個人的な印象かもしれませんが、「トランソウル」を実行するタイミングというのが、ある意味で難しいですよね。「まだやらなくてもクリアできる」みたいな。

伊藤:初めての「トランソウル」はそうですね。「トランソウル」するとキャラクターが失われるので、いつやるのかですごく悩むと思います。でも、「キャラクターが騎士団のために犠牲になるというのは、それくらい重い選択なんですよ」ということで、プレイヤーさんにはぜひ悩んでほしいですね。

■延期した2カ月という期間

――2カ月ほど発売が延期されましたが、実際のところ何があったのでしょう?

伊藤:実は、最初はゲーム内にチュートリアルが入っていなかったんですよ。当初の予定通り7月に発売するとなると、チュートリアルは満足できる形では入れられないということで、ナシにしていたんです。ただ、スタッフの中でも「慣れてくるとおもしろいんだけど、慣れるまでの敷居がすっごく高い」という意見が圧倒的だったんです。このままでは、ゲームに慣れる前にあきらめられてしまうと。そこで、社内の判断もありつつ、チュートリアルをゲーム内に組み込むことになりました。その作業にかかる期間が、2カ月だったというわけです。

――公式サイトなどで当初公開されていたものと比べて、ゲーム画面もかなり変わっているように見受けられましたが?

伊藤:正直な話、7月の時点ではゲーム要素の中にプレイヤーさんから見てわかりづらいものもあったんです。延期することが決まった時点で、そういった部分をゲーム画面を見ただけでもわかりやすくするようにしました。ゲームの各場面でいろんな表示が増えていたりと、当初発表したものとはかなり変わっています。全体のクオリティを上げるという意味では、2カ月お待たせしてしまった分、遊びやすくできたと思っています。ボス戦でゲームオーバーになるとヒントが出るというのも、その2カ月で追加されました。

――確かに、ヒントがないと倒せなかったんじゃないかと思うようなボスがいましたね。個人的には“ガンツァー(※3)”で苦戦しました。最初はゲームオーバーになった理由がわかりませんでした。

※3 “ガンツァー”
「アクティベーション」しているユニットを一撃で消滅させる特殊能力を持ったボス。

伊藤:やっぱり(笑)。特定のボスで詰まる人がいるんじゃないかと思ったので、結構無理矢理なところもありましたが、ヒント機能も追加しました。できることは全部やろうとあれこれ足していったので、延期された最後の2カ月は開発用のROMが毎日更新されていく、みたいな感じでしたね。

■「D・H・E」シリーズについて

――本作は「Dept.Heaven Episodes(以下、D・H・E)(※4)」シリーズの最新作ということですが、これまでの『リヴィエラ~』や『ユグドラ・ユニオン』とのつながりはあるのでしょうか?

※4 「Dept.Heaven Episodes」
スティングが開発するゲームのシリーズ名。同シリーズのタイトルは、世界観を共有している。「Dept.Heaven Episode I」が『リヴィエラ』、「Dept.Heaven Episode II」が『ユグドラ・ユニオン』で、『KiN』は「Dept.Heaven Episode IV」になる。なお、「III」については本文参照のこと。

伊藤:一部のキャラクターにつながりがあるのですが、基本的に個々の話はそれだけで完結しているので、前のシリーズをやっていないと今回の話がわからないということはありません。チュートリアルに“ユグドラ”が登場したりとか、前のシリーズをやっていた人がニヤリとできる程度です。「I」も「II」もプレイしないと「IV」がわからないというのは個人的にも嫌なので、どれからプレイしてもいいし、自分の肌に合うものだけをやってもいいように作ってあります。

 これまで『リヴィエラ』、『ユグドラ・ユニオン』と作ってきたんですが、基本的に続編を作らず、システムも内容も新しいものを作ってきました。自分でも好きなゲームの続編なら遊びたいと思うので、『ユグドラ・ユニオン』や『KiN』をそれぞれ『リヴィエラ2』、『3』という名前でを出してもよかったのですが、作り手としてのわがままになるのですが、オリジナルを作れる環境にある限りは新しいものに挑戦したいと思っています。新しいプレイ感、遊び方を提案していきたいなと感じでやっているので。

――確かに『リヴィエラ2』と言われると、『1』をプレイしていない場合は敬遠したくなりますが、さりげなく「D・H・E」シリーズとしてくくられているのであれば、本作をプレイしてみたらおもしろくて「プレイしたのが「エピソードIV」だから、今度は「I」をやってみようかな」という気持ちになりますね。

伊藤:そういう狙いもあります。順番にプレイしていくのではなく、例えば逆にプレイしていくことで「このキャラクターはこっちとつながっているんじゃないかな」と想像する楽しみもあるのではないでしょうか。個人的には、今後「D・H・E」シリーズを作っても、システムは全然違ったものになると思います。変わったシステムで遊びたい人は「D・H・E」シリーズをプレイしてみてください。逆に、オーソドックスなシステムを使う時は、「D・H・E」シリーズとつけないので(笑)。

――ちなみに「III」が欠番になっていますが、今後発売される予定などはあるのでしょうか?

伊藤:「D・H・E」シリーズのナンバリングは、物語の時系列ではなく企画を出した順番で、「III」がないことにそんな深い理由がある訳ではないんですよ。ただ、ユーザーさんの間で「何か理由があるんじゃないか」と言われるようになって、逆に言い出しにくくてなってしまった感じです(笑)。ちなみに「III」は、PC用オンラインゲームの予定でした。会社的にまだ展開できるタイミングではないということで、いったん凍結していますが。

──ここが初出の情報なら、すごいかも(笑)。ちなみに、「III」はMMORPGですか?

伊藤:そうですね。MMO(多人数同時参加型)でした。ただ、「RPGと言い切ってもいいのかな」と迷うような内容です(笑)。変わったゲームになりそうで、個人的には作ってみたいので、ナンバリングとしては残してあるという感じですね。制作できる体制が整ったら、改めて考えてみたいと思っています。その時に、MMORPGのようなオンラインゲームが家庭用ゲーム機でも普通にプレイされるようになっていたら、家庭用ゲーム機で出すかもしれません。

■合わせたのは市場ではなくハード

――比較的ライトユーザーが多いと思われるDS市場に対して、本作のようなコアユーザーをメインターゲットとしたタイトルを販売することに、不安はありませんでしたか?

伊藤:「ライトユーザーに受けなくてはいけない」という使命感やプレッシャーはありませんでしたね。それよりも、DSという市場に合わせてカジュアルなゲームを作った結果、コアユーザーが離れて、かといってライトユーザーにも受け入れられないという、誰も残らないパターンを危惧しました。そうならないように、まずゲームとしてしっかり作り込むことにしました。DSの市場に合わせて作るのではなくて、「ゲームとして何がおもしろいのか」というところからスタートして、タッチペンを使ったおもしろいゲーム、DSのギミックを生かしたおもしろいゲームを提案する方法を考えるようにしたわけです。ですので、市場というよりは、ハードに合わせたという感じになりますね。仮に今後、Wiiで新作を出すことになったとしても、「ライトユーザーに合わせて」というよりは「このコントローラーをどういじろうか」を考えるんじゃないかと思います(笑)。

――やはり、今後も独創的なゲームを制作されていくご予定なのでしょうか?

伊藤:そうですね。ちょっと変わったゲーム、やり込めるゲームをプレイしたいという人が楽しめるゲームを作りたいと思います。『KiN』も、公式サイトで体験版の情報が掲載されているので、これをプレイして気に入ってもらえたら、買っていただいても楽しめると思います。「なんだか変わったゲームだからプレイしない」という人には合わないと思いますが、「変わったゲームをやってみたい」とか「おもしろそう」と思っていただけたのなら、その気持ちに応えられる要素は盛り込んでいます。

――最後に読者に一言お願いします。

伊藤:発売までゲーム紹介や動画などで手を尽くして説明してきたのですが、たぶん伝わりきっていないと思います(笑)。「これまでにない感覚のゲームを体験してみたいけど、どんなゲームかわからないから手が出せない」と思っている人は、体験版がダウンロードできますし、10月9日からの「東京ゲームショウ2008」に試遊台を用意するので、ちょっとでも気になったらまず触ってみてほしいと思います。大切なお金をいただいた分は遊び尽くせるように作り込んであります。個人的には友だちから借りてでもいいので、一度プレイしてみてほしいと思いますね。特にタッチペンの操作はこだわって作っているので、そこだけでもかまいません。作業としてただこなしていくゲームではなく、プレイヤーが成長していくゲームなので、そこを実感してもらえるといいなと思います。特にゲームをガッツリやってみたいという人は、手に取ってみてください。

(C)2008 STING

データ

▼『ナイツ・イン・ザ・ナイトメア』
■メーカー:スティング
■対応機種:DS
■ジャンル:S・RPG
■発売日:発売中(2008年9月25日)
■価格:6,090円(税込)
 
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データ

▼『ナイツ・イン・ザ・ナイトメア Dept. Heaven Episodesシリーズ スペシャルパック』
■メーカー:スティング
■対応機種:DS
■ジャンル:S・RPG
■発売日:発売中(2008年9月25日)
■価格:8,190円(税込)
※『ユグドラ・ユニオン』GBA版を同梱、数量限定版
 
■『ナイツ・イン・ザ・ナイトメア Dept. Heaven Episodesシリーズ スペシャルパック』の購入はこちら
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