2009年4月16日(木)
【まり探】金田一耕助の魅力は不完全さ――DS用AVG『八つ墓村』インタビュー
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新作旧作問わず、さまざまなミステリー・ホラー・サスペンス系のアドベンチャーゲームを紹介していく“まり蔵探偵事務所”。今回は、フロム・ソフトウェアから4月23日に発売されるDS用AVG『八つ墓村』のプロデューサー・武村大さんに、昭和の名探偵・金田一耕助をこよなく愛するまり蔵所長がお話を伺いました。
『八つ墓村』は、金田一耕助が活躍する横溝正史の推理小説をゲーム化した、本格推理AVG『金田一耕助』シリーズの第2弾。第1弾の『犬神家の一族』は、今年の1月22日に発売されています。今回、本シリーズの武村プロデューサーにインタビューを敢行。ゲーム開発に関する裏話はもちろん、金田一耕助の魅力や新作『八つ墓村』の注目ポイントなどについて、いろいろと語っていただきました!
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フロム・ソフトウェア企画部課長/プロデューサー PS2『アーマード・コア ラストレイヴン』のディレクターを務め、その後フロム・ソフトウェアの独自ブランド・スリーオクロックレーベルより、DS『サンリオキャラクターずかんDS』などをプロデュースする。東京ゲームショウ2008の発表会では、金田一のコスプレ姿を披露。 |
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●多くの勘違いやミスをする、それが金田一耕助
――TVドラマ、映画、コミックなどあらゆるメディアで展開されている金田一作品ですが、ゲーム化をしようと思ったきっかけを教えてください。
“あらゆるメディアで展開されている”にもかかわらず、今まで一度もゲーム化がなされていなかったためです。ゲームもTVや映画、コミックなどに一歩もひけをとらないエンターテインメントであればこそ、コンテンツにしてみたいという強い思いがありました。
――これだけの有名作品で、すでに物語や犯人を知っている人が多い中、ゲームを制作するというプレッシャーはありましたか?
もちろん、物語や犯人を多くの方が知っているという点では、「なぜ今さら」という声もありました。しかし、今まで幾度となく同名の作品が世に送り出されているわけです。それは、金田一作品を愛する方々が物語や犯人を知っていても、エンターテインメントとして形を変えたものにすれば受け入れてもらえる土壌があることに他なりません。ですから、ゲーム制作に着手する上では、プレッシャーはまったくありませんでした。
――金田一耕助のキャラクターを作る際に苦労したことなどはありますか?
今回のゲームでは、あくまで原作に忠実なイメージでのキャラクター創出が前提となっていました。とはいえ、メディアで確立されてしまった金田一耕助像というものがあるのも事実でして、グラフィックを含めて“ゲームならではの金田一耕助”が完成するには、ディレクター、デザイナーと夜を通しての意見交換が行われました。
――探偵・金田一耕助の魅力とは?
“不完全さ”だと思います。名探偵と名高い金田一耕助ですが、実際には多くの勘違いやミスをします。勘違いなく解決していれば出なかった犠牲者も多くいるわけです。
――確かに、『犬神家の一族』や『八つ墓村』では、結構な数の人間が殺されますよね。実は止められた殺人もあったんじゃないかと思ったことも……。
そんな不完全さが非常に人間臭く味があり、誰からも愛されるキャラクターとして定着したのだと思います。
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●“クロスワードに没頭した”は本意ではない?
――『犬神家の一族』や『八つ墓村』を制作する際に、苦労した点などを教えてください。
原作が非常に偉大な歴史あるコンテンツのため、その作品性に傷をつけないよう配慮しました。世界観を視覚化した際に、最も適しているグラフィック表現は何か、会話1つとっても、現代風にわかりやすい表現でありながら、世界観を壊さないものになっているか、常にそれらを念頭に置きながらの制作でした。
――では、逆に楽しかった点は?
自分がもともと好きな原作をゲーム化しているわけですから、楽しかった点と言われればすべてです。キャラクターが1人完成するごとに、イベントシーンの絵が1枚完成するごとに、テンションが上がっていきましたね。
――本当に金田一作品がお好きなんですねぇ。では次に、グラフィックを墨絵調にした理由をお願いいたします。
先ほどもお話ししましたが、「原作の世界観に最もマッチするグラフィック表現は何か?」と考えた時に、真っ先に思い浮かんだのが墨絵でした。金田一作品には、世界から隔絶されたようなモノクロの雰囲気を持つ舞台が多く登場します。そのイメージと合致させる映像表現は、モノクロかつ墨絵タッチしか考えられなかったのです。
――基本的にモノクロですが、血などの部分だけは赤で表現されていましたよね。あのグラフィック表現には、かなり恐怖心をあおられました……。
モノクロだけではやはり“地味”になってしまうことも否めませんでしたので、血などの特別なシーンには色を入れてやり、場面として印象付ける手法をとったわけです。
――キャラクターの会話をメッセージウィンドウではなく、フキダシで表示させたのはなぜでしょうか?
“アドベンチャーゲーム=メッセージウィンドウ”というお決まりの形がイヤだったからというのも理由の1つです。しかし、今回のゲームはプレイヤーが金田一となり、対峙する相手との会話の駆け引きで事件を解決に導くというものですので、会話のやりとりを視覚的に表現するにはフキダシが最適であると考えました。
――金田一が頭をかく“推理モード”は、どのようにして生まれたのでしょうか。プレイで詰まった時は、かなりこのシステムに助けられました……。
開発チームの中では、“ボリボリシステム”と呼ばれています(笑)。金田一といえば“頭をかきむしる”というイメージができあがっていますので。原作でも金田一は、悩んだり興奮したりすると頭をめちゃくちゃにかきむしります。ならばこのイメージをゲームに使わない手はない! ということですね。
――新聞を手に入れるとプレイできるクロスワードパズルなどのミニゲームが、非常に細かく作り込まれていましたよね。
どうしても説明などが長くなってしまい、ただただ物語を進めるだけ……という状態に陥り、ゲーム自体を途中でやめてしまうということが自身の経験でもあったものですから、はし休めでできるミニゲームは入れようと当初から考えていました。しかし、ただ入れればいいというわけでもなく“世界観を壊さない”という大前提の中でのミニゲーム制作でしたので、当時の雰囲気を出せる“クロスワード”と“虫食い算”を採用しました。
――特にクロスワードパズルは、本当におもしろいです! パズルに時間をかけるあまり、本編をクリアするのにかなりの時間を要しました……。
我々の本意ではないですが、「本編をやるのを忘れてクロスワードに没頭した」というユーザーさんの声もいただいております(笑)。
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●プレイヤーの操作によって物語が変わる……これがゲーム
――『犬神家の一族』では、原作に忠実なエンディング以外にも多数エンディングが用意されていましたが、『八つ墓村』にもそういった結末は用意されているのでしょうか?
もちろん用意されています。ゲームの売りはそこだと考えていますので。原作に忠実でありながら、プレイヤーの操作によっては物語が変わる……これができるのはゲームだけだと思います。
――『犬神家の一族』では、エンディングの数が多かったりバッドエンディングへの条件がかなりシビアだったりと、アドベンチャーゲームにしてはやり込みの度合いが強い印象を受けました。そのあたりは意識して制作されたのでしょうか?
難度の高いハードルを越えた時にある“達成感”が、ゲームにとって重要な要素であると我々は考えています。ゆえに条件の厳しいエンディングに関しては、意図して設定されたものです。
――エンディングをすべて見るのに、本当に苦労しました。さすがフロム・ソフトウェア作品というべきか……。
ぜひハードルをクリアして、すべてのエンディングを見た時の達成感を味わっていただきたいですね。
――『犬神家の一族』を発売して、ここをこうすればよかったなどの反省点はありますか? また、『八つ墓村』に生かされている要素などがありましたら教えてください。
ゲームのシステムとしてはシンプルなものにすることが目標だったので、その点に関しては『八つ墓村』にも同様に引き継がれていますが、やはりミニゲームなど、会話のやり取り以外の要素をもう少し膨らませてみたかったです。『八つ墓村』で鍾乳洞の3Dダンジョン探索を入れたのもその理由からです。
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――現在『八つ墓村』をプレイさせていただいているのですが、鍾乳洞の3Dダンジョン、意外と難しいですよね。思っていた以上に本格的で、驚いています。
『八つ墓村』は『犬神家の一族』同様、プレイヤーの選択でさまざまに物語が変化するマルチシナリオと、今回初めて登場する3Dダンジョン探索を楽しんでいただければと思います。ミニゲームのクロスワード&虫食い算も、さらに充実しておりますので!
――『犬神家の一族』、『八つ墓村』ときましたが、次にゲーム化するならどの作品ですか?
『獄門島』または『悪魔の手毬唄』でしょうか。制作はしてみたいですが、こればかりは需要あってのものですので、多くの方が『犬神家の一族』と『八つ墓村』をプレイしていただければ、実現も不可能ではないと思っています。ので、よろしくお願いします!
――『八つ墓村』の発売を待ちわびているファンへメッセージをお願いします。
前作『犬神家の一族』同様、世界観を壊さず、さらにゲームならではの要素を追加することで、原作に負けないエンターテインメントとして仕上がっていると自負しております。複数用意されているエンディングをすべて見て、最高の達成感を味わってください!
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というワケで、武村プロデューサーに金田一耕助に対する愛をたっぷり語っていただきました。現在、最新作『八つ墓村』をプレイ中のまり蔵から、ちょっとだけネタバレを。『犬神家の一族』の時より、いろいろな意味で猟奇的になっております。あと、めちゃめちゃ愛らしいかわい子ちゃんが出てくるので、お楽しみに!
そうそう、こぼれ話といってはなんですが、武村プロデューサーのフェイバリット金田一作品は『仮面舞踏会』だとか。犯人を追い詰めるシーンでは、恐怖で全身に鳥肌がたったそうです。ちなみにまり蔵のNo.1は『本陣殺人事件』。あの強引な密室トリックがたまりません。続編の制作はまだ未定とのことですが、フロム・ソフトウェアさん、ぜひぜひ第3弾をよろしくお願いします~!
(C)横溝正史
(C)2009 FromSoftware, Inc.
- ▼『八つ墓村』
- ■メーカー:フロム・ソフトウェア
- ■対応機種:DS
- ■ジャンル:AVG
- ■発売日:2009年4月23日
- ■価格:5,040円(税込)
- ■『八つ墓村』の購入はこちら
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- ▼『犬神家の一族』
- ■メーカー:フロム・ソフトウェア
- ■対応機種:DS
- ■ジャンル:AVG
- ■発売日:2009年1月22日
- ■価格:5,040円(税込)
- ■『犬神家の一族』の購入はこちら
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