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2009年5月26日(火)

下村陽子さんが音楽の出会いを告白! 『ピアコレ KH』インタビュー前編

文:電撃オンライン

 スクウェア・エニックスから5月27日に発売される音楽CD『ピアノ・コレクションズ キングダム ハーツ』。このCDのプロデューサーである作曲家・下村陽子さんにインタビューを行った。

 『ピアノ・コレクションズ キングダム ハーツ』は、同社の人気タイトル『キングダム ハーツ』シリーズの歴代サウンドトラックから選抜した曲に、ピアノによるアレンジを加えて収録したもの。収録曲は、スクウェア・エニックス メンバーズのユーザー投票で選ばれた人気曲を中心に、下村さんが選曲したものとなっている。

 今回は、『キングダム ハーツ』シリーズの音楽を手掛けた作曲家・下村さんに、音楽との出会いから、下村さんご自身、楽曲を作る上での苦労、そして『ピアノ・コレクションズ キングダム ハーツ』について語ってもらった。大ボリュームのインタビューとなったので本日と明日の2回に分けて掲載するので、ぜひチェックしてもらいたい。

5月27日に発売される『ピアノ・コレクションズ キングダム ハーツ』のジャケット。

■音楽に対しての接し方

――最初に音楽にふれたきっかけは?

下村:3つ上の従姉妹がピアノを習っていたので、それを見て「私もピアノやりたい~」みたいな感じで習い始めたのが、最初のきっかけですね。確か、4歳か5歳くらいでした。

――他にも、ピアノを習っていた友だちなどは?

下村:当時の習いごとの定番はピアノだったので、習っている子は多かったですね。子どものころに入ってきた音楽っていうのは、そのまま心に残っていると思うので、小さい時にそういう風に音楽にふれていたことはいい経験だなと思いますね。両親には本当に感謝です。

――それからずっとピアノをやり続けて、現在に?

下村:いや、そうでもなくて(笑)。指揮を習ったりもしていました。高校の時に1年間と大学でも2年間。最近は、『のだめカンタービレ』でブームとかがあって、興味ある人が沢山いらっしゃると思うんですけど、私の時代は「なんで指揮?」みたいな時代でした。私、小澤征爾さんがすごく好きだったんですね。それで、指揮を習えば「あの音楽性がどこか見えるかもしれない!」とか、思っちゃって(笑)。で、両親に頼んで指揮を勉強しました。でも、高校で1年習ったくらいじゃ、指揮科に行くのはやっぱり厳しかったので、結局ピアノ専攻を選びましたね。

――では、ピアノをやりつつ指揮もやるという感じだったんですね。

下村:性格的に、やれるものは色々やりたかったので……むしろそれだけではなかったですね。高校の時はブラスバンドをやっていたのでフルートを吹いていましたし、大学に入ってからは管楽器クラスが取れたのでトランペットを始めてみたり。チャンスがあれば、やれる楽器はいろいろやりました。弦楽器のバイオリンだけができなかったので、バイオリンに対してはすごいあこがれがあります。

――ブラスバンドにも参加したり指揮を始めたりと、音楽の幅が広がっていますけど、ピアノのほうはずっと続けられていくつもりだったのですか?

下村:ピアノはずっと続けていました。でも、すごく好きなんですが、あまり上手ではなかったんです。手も小さかったですし。自分でそれがわかっていたので、「音楽がこんなに好きなのに、ピアノがこんなに下手ってことは、他に何か向いているものがあるんじゃないかな」と思って、中学の時は合唱部に参加したり、クラシックギター部にいたりして、毎年なにかしら新しいことを始めてようと心掛けていましたね。

――なぜそこまで音楽が好きだったのでしょう?

下村:うーん、どうしてでしょうね?(笑) 私もよくわからないんですが、無性に魅かれていました。そんなに魅かれているのに、クラシック音楽以外の音楽をまったく聴かない時代があったり、ピアノが好きなのに、全然練習しなくてサボってばかりなど、迷走した時期もありました。それが、小学校6年の時にスイッチが入って、歌謡曲をものすごくいいと思いつつ、ピアノもドンドン練習するようになりました。何がそう変えたのかわからないんですが、なんかスイッチが入ったんですよね。それで、中学になったら洋楽とかも聞いたりとかして。その後はずっと音楽漬けでした。なんだったんでしょうね。引っ越しをしたんですけど、そういう環境の変化もあるのかもしれないです。

■ピアノから作曲へ、そして大好きな音楽が仕事に!

――下村さんは現在ゲームの作曲家として活躍されていますが、作曲活動はいつごろから行っていたのですか?

下村:おかしな話なんですけど、小学校低学年……クラシックばかり聴いていたころかなぁ。仲のよい、ピアノを弾く友だちと“名ピアニストごっこ”という遊びをしていまして。何をするかというと、でたらめにピアノを弾くんですよ。言ってみれば即興作曲みたいなものですね、ただ手を交差させてみたかっただけ、とか、すごいデタラメなんですけど(笑)。あと、誰に聞かせるわけでもないですが、自分でピアノの曲を見よう見まねで作ってみたりっていうのは、小学校のころに始めていますね。

――小学校のころから作曲を始められた、ということは音楽を仕事にしていきたいと意識し始めたのはその頃からなのでしょうか?

下村:小学生のころは「音楽を仕事にできたらいいなあ」ぐらいには漠然と思っていたのですが、具体的に意識していた訳ではないですね。その後、中学生になって……。中学生ぐらいって子どものころに夢見ていたことがかなわないってことに気付くころですよね。現実はそんなに甘くないっていうのをわかってきたので、ピアニストに限らず音楽の作り手や演奏家とか、そういう人にはもうなれないと思っていたんです。ネガティブですね(笑)。でも、すごく音楽が好きなので、音楽雑誌を作っている出版社とか「音楽に関係している仕事に絶対就きたい!」という意識ではいました。それで中学の時にピアノの先生に「高校から音楽科に行きたいんです」って話をしたら、「そんなに甘くないわよ」という話になって、高校生の時に頑張って音大を目指すことになったんです。なので、高校に入る時は音大に行きたいと決めていたんですね。そして入学した高校の音楽の授業がすごくおもしろかったんです。

――どのような授業だったんですか?

下村:いろいろな民俗音楽を聞いてレポートを書いたり、楽器の演奏があったんですが、その授業の中に作曲があったんです。作曲も普通の作曲じゃなくて、万葉集とか百人一首から好きな言葉や好きな詩を取ってきて、それに自分の好きなメロディを乗せなさいっていうものだったんですよ。自由度はかなり高かったですね。高校生で、インドの民族音楽を聴いたり、グレゴリオ聖歌を歌ったりしたので、音楽の知識はその時にすごく広がりました。

――本格的な作曲活動はそこから?

下村:うーん、本格的と言えるほど、作曲活動……活動はしてなかったですね。授業で「なんでもいいから曲を自分で好きに作りなさい」という課題があったんです。私はピアノ曲を書いたんですけど、何を血迷ったか、演奏に7分もかかるピアノ曲を書いて、これを譜面で書いたんですね。自分は「すごい名曲だなぁ」と思って自信満々で先生のところに行ったら、その先生が譜面を見ながら弾いて、「君はさ、血液型B型だろう」って言われたんです。「えっ!? 曲の感想がそれなの?」って思いつつ「違います」と答えたら、「じゃあO型? ……ABじゃないよね?」と続けられ、A型であることを告げると「たまにいるんだよね、こういうA型」と言われて……。これが私の曲への感想だったんですね(笑)。

――それは、すごいですね。

下村:私は曲の感想が聞きたかったのに聞けなかったので、「これどういう意味なんだろう?」って思ったんですよ。その時は、一応成績はいい成績はもらったんですけど。でも、やっぱり感想が聞きたいと思っていたんです。親に聞いてもらってもわからないだろうし、どうしようと思っていたら丁度その時に指揮を習っていた先生に見てもらえたんですよ。そして、うれしそうに楽譜を見せて弾いたら、「きみさ、指揮やるより作曲やったほうが絶対いいと思うよ」って。それって指揮向いてないってことなんですが(笑)。そういってはもらえたんですが、もう高校2年になろうという時から作曲をやっても、音大には行けないというのがあったので、とりあえず心の中で「あーそうなんだ」って思うくらいに留めていましたね。今にして思えば、当時の私の思いこみや行動は痛い、痛すぎますね。恥ずかしいです(笑)。そして、結局ピアノで短大に進学して、全員が受ける基礎の作曲の授業を受けるまではそのままでした。

――短大で授業を受けるようになり、将来について考える時期だと思いますが、進路についてはどのようにお考えだったんでしょうか?

下村:短大に入った当初……本当は4年制の大学に行きたかったんですが、私の技術が追いつかなかったので(笑)、そこの短期大学のほうに入学したんですよ。そこから編入の道もあったので、入学した当初は編入するつもりだったんですね。ただ、毎日8時間とか練習しても、うまい人は私が全然追いつかないレベルまで行っている。やりたいことを諦めるって、すごく切なくて悲しいことなんですけど、「自分はピアノで身を立てるのは難しいんだな」ということを感じたので、結局短大の2年で就職することを決意しましたね。

――短大の2年間で就職を決意されて、ゲームメーカーへ就職されるわけですが、どのような経緯でゲーム音楽作曲家という道に進むことになったんでしょうか?

下村:中学のころから思っていた、音楽関係の仕事に就きたいって気持ちはあったんですけど、やはり音楽を仕事にするって非常に厳しい道でなかなか見つからないので、どこかで諦めてしまっている部分があったんです。私の時代はいわゆるバブルで、就職しやすい状況だったんで、内定もすごくとりやすい時代。それで結構のんきにしていたら周りがどんどん就職先を決めてきて、私もあわてて「どっかに採用してもらわないと!」と思って、いきなり車のディーラーを受けたら、内定をもらっちゃったんですよ。でもさすがに母が、「あんなに音楽が好きで、音大まで行ったのに、なんであまりにも関係ないところを……」と残念がったんですね。それで反省して、学校の先生かピアノの先生を目指したんですが、学校の先生の採用試験には見事に落ちまして(笑)。結局、ピアノの先生に一応内定が決まって「これでもう決まりかな」って思っていた時に、就職指導科にたまたま新卒採用の求人がはり出されていて、そこにゲームメーカーの作曲家募集の求人があったんですよ! その中から、家から通いやすいとか、採用条件とかを見て、ダメ元でカプコンさんを受けてみようと思いました。

――そして見事に採用されたと。

下村:幸運にも(笑)。本当にラッキーだったと思いますね。でも、それまでろくな作曲人生を歩んでいなかったので、入ってからが大変でしたね。

――もしかしたら、高校の先生が譜面から血液型を判断せず、そのまま感想を話していたら、作曲に関する関わり方も変わっていたかもしれませんね。

下村:それはあったかもしれないですね。高校の先生は、作ったものをけなしたりしなかったんです。いいところを見つけて、そこをほめてくださる先生だったので、「自分はどういうところをほめられるのかな」って期待していたんですね。でも、そういう返事(血液型を聞かれた)だったので、他に感想を述べてくれる人を探した。もし、そこで普通にほめられていたら、その感想で満足して終わっていたかも知れないです。指揮の先生に「作曲したほうがいい」と言われていなければ、大学の授業への接し方、そして作曲家募集を見た時の自分の反応も、違っていたでしょうね。

■ゲームメーカーへ就職、そしてゲーム音楽作曲家に!

――ゲーム音楽を始めた時の気持ちは、どういうものだったのでしょう?

下村:私はゲームがすごく好きだったんですよ。好きな音楽をやれて、さらにゲームにも関われて「超ラッキー」と思っていました。非常に楽しかったですね。

――ちなみにどんなタイトルを遊ばれていたんですか?

下村:ファミコンの『スーパーマリオブラザーズ』でゲームに目覚めたんですが、とにかくヘタクソで(笑)。そんなヘタクソでもやれるゲームがあるよと教えてもらったのが、『ドラゴンクエスト』でした。かなり遊んでましたね。当時はそんなにRPGがなかったので、RPGと聞けばかたっぱしから遊んでいました。『ヘラクレスの栄光』とか『貝獣物語』とか……。ゲーム雑誌を買っている女子大生でしたねえ(笑)。

――喜び勇んで入ってみたゲームメーカーですが、どうでしたか?

下村:入ってみて、自分は全然作曲ができないってことがわかりました(笑)。

――それは何でですか? リテイクがあったとか、自分自身が納得できなかったとかですか?

下村:自分では「イケてる!」と思って書いた曲が、非常に厳しい先輩に「こんなもん全然使い物にならない」といわれて。でも、今思えば本当に使えないものばかり書いていたんですが……。新人で未知数なので、なかなか仕事が振られなかったんですが、今思い返せば「仕事が振られなくて当然だよな」って(苦笑)。私だったら、当時の自分には任せたくないです(笑)。

――印象深いタイトルとかありますか?

下村:『ストリートファイターII』は、いろんな意味で人生が変わったタイトルだと思うので外せませんね。

――その後、スクウェア(当時 ※現スクウェア・エニックス)に入ることになりますね。

下村:そうですね。個人的には、RPGの音楽を作りたかったので、スクウェアに入ってからのタイトルはどの曲もかなり印象深いというか、思い入れがありますね。1本の作品に対して、沢山の時間を与えてくださったというのも大きいかと。

 明日は、いよいよ『キングダム ハーツ』シリーズについて、そしてCDについて迫っていく!

明日は、『キングダム ハーツ』や『ピアノ・コレクションズ』についてお聞きする。写真は、PVの公開収録時の模様。

(C)2009 SQUARE ENIX CO., LTD.
(C)2002,2004,2006,2007 Walt Disney Music Company Copyrights Renewed.All Rights Reserved.

データ

▼『ピアノ・コレクションズ キングダム ハーツ』
■発売元:スクウェア・エニックス
■品番:SQEX-10144
■発売日:2009年5月27日
■価格:3,000円(税込)
 
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▼『drammatica -The Very Best of Yoko Shimomura-』
■発売元:スクウェア・エニックス
■品番:SQEX-10112
■発売日:2008年3月26日
■価格:3,000円(税込)
 
■『drammatica -The Very Best of Yoko Shimomura-』の購入はこちら
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▼『キングダム ハーツ 358/2 Days』
■メーカー:スクウェア・エニックス
■対応機種:DS
■ジャンル:RPG
■発売日:2009年5月30日
■価格:5,980円(税込)
 
■『キングダム ハーツ 358/2 Days』の購入はこちら
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