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2009年6月16日(火)

大人のための不思議な童話――開発者が謎解きAVG『ツキビト』の魅力を語る

文:電撃オンライン

『ツキビト』

 SNKプレイモアから8月6日に発売されるDS用AVG『ツキビト』の開発スタッフに、インタビューを行った。

 『ツキビト』は、全10章で構成された謎解きアドベンチャーゲーム。さまざまなクリエイターが開発にかかわっており、原案・監修は『新耳袋』シリーズの著者・木原浩勝さん、シナリオは『女神転生』や『真・女神転生』などの制作を手掛けた鈴木一也さん、キャラクターデザインはWebコンテンツ『リヴリーアイランド』のデザイナーでおなじみMONSTER★SOUPさん、音楽は『シャドウ ハーツ』他さまざまなゲーム音楽を生み出してきた弘田佳孝さん、ラインプロデュースは『シャドウ ハーツ』、『SNK GAL’S FIGHTERS』など多くのゲーム制作に携わってきたJames Wangさんがそれぞれ担当している。

 今回、本作のシナリオを手掛ける鈴木一也さんに、『ツキビト』の魅力について語っていただいた。以下に、ゲームの紹介および鈴木さんのインタビューを掲載する。

■摩訶不思議な謎解きアドベンチャー『ツキビト』とは?

 本作の舞台は、どこか懐かしさを感じさせる寂れた観光地・神楽町。主人公は、“ツキビト”という不思議な存在が見られる“ツキビト見”の少女だ。“ツキビト”とは、人や物にそっとツいて生きており、ツいた人にさまざまな影響をおよぼす、通常は見ることができない不思議な存在のこと。物語は、主人公の少女がツキビトを見ることができる故に苦悩し、生きるのを諦めるところからスタートする。

 すべてを終わらせるために足を運んだ神社で、彼女は記憶喪失の少年・カガミと出会う。2人は、神社に棲みついて神楽町を守っているツキモノヌシ・フタバエルから、“ツキビト見の力を使って町の人を助けよ”という命題を与えられる。こうして少女と少年は、生きるために再び歩き出す。本作の序盤がよくわかるプロモーションムービーを以下に掲載するので、まずはこちらをチェックしてほしい。


『ツキビト』 『ツキビト』
▲ツキビト見の能力を持つ主人公▲記憶をなくした少年・カガミ
『ツキビト』 『ツキビト』 『ツキビト』
▲フタバエル▲キラホシアイ▲チャバシラタチマクリ
『ツキビト』 『ツキビト』
▲ツキビト自身は言葉を発することができず、上位のツキビトは人間に憑依して話すことになる。

 本作の目的は、町に散りばめられている謎や、点在するたくさんの“コマリゴト”を解決していくこと。謎を解くヒントは、町の人々との会話に隠されている。また、ゲーム中ケータイで展開される“神楽町裏情報サイト”にも、ヒントが多数隠されているとのことだ。コマリゴトの原因が判明したら、ミニゲームで謎を解決する。ミニゲームは、ツキビトを相手にするリズムゲーム“ツキビト舞踏(ダンス)”や、登場キャラクターを相手にするパズルゲーム“コトノハバトル”など。各章に散りばめられた謎を解決していくと、次第に真実が姿を現すという。カガミは記憶を取り戻すことができるのか? そして、神楽町に隠された大きな謎とは……?

『ツキビト』 『ツキビト』
▲ツキビト舞踏(ダンス)▲コトノハバトル
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▲神楽町の人々とコミュニケーションを重ねながら、さまざまな“コマリゴト”を解決していく。


■シナリオ担当・鈴木一也さんインタビュー

『ツキビト』
▲シナリオ担当の鈴木一也さん。

――本作のテーマやコンセプトを教えてください。

 コンセプトは、“箱庭的な町の中で、その空気にひたる”というところでしょうか。テーマは、“大人のための不思議な童話”です。オープニングは暗めですが、実際はあまり深刻な話ではありません。主人公とカガミが、神楽町のちょっと変わった人たちとのコミュニケーションを通じて優しさなど人間の内面を知っていく、そんな人間ドラマを描ければと思います。

――舞台の神楽町は非常に趣のある町ですが、モデルとなった場所などはありますか?

 ずばり東京の神楽坂です。あとは逗子・江ノ島。昭和のにおいといいますか、懐かしい雰囲気を感じとっていただきたいですね。僕としては、古く寂れた観光地をイメージしています。町にかんしては、細部にまでわたって作り込んでいますが、だからといって探索がメインになるわけではありません。町を移動するシステムなどは簡単なので、ゆる~く町の中の空気を楽しんでいただければと思います。

――懐かしい雰囲気の町並みに対して、キャラクターのデザインはビビットで今風の印象を受けますが、デザイナーにはどのような注文を?

 こだわりをもって描かれていらっしゃるので、ほとんどMONSTER★SOUPさんにまかせっきりです。ただ、最初にツキビトとはどんな存在かというところで、かなり時間をかけて話合い、すりあわせをしっかり行ないましたね。

――神楽町の住人は変わり者ぞろいとのことですが、お気に入りのキャラクターはいますか?

 います。それはもうたくさん。たとえば“乙女心を持った格闘家”。この人は格闘家なんですけど、すんごい乙女心を持っている人なんです。彼とのコトノハバトルは注目です。「乙女らしい言葉を言ってごらん!」って言われて、「たちくらみ?」とか(笑)。そんなキャラクターが大量に登場します。

――そんな個性的なキャラクターが大量となると、設定を考えるだけでも大変だったのではないでしょうか。

 設定も、ゲームに出てこない裏設定がものすごくあるんですよ。ミチハルというメガネをかけた子どもがいるんですが、この子がスケベでね。星なんてまったく見ないくせに、なぜか天文部に入っていて、望遠鏡をのぞいたりしている(笑)。望遠鏡のくだりはゲームには出てきませんが、そういう裏設定的なものが1人1人のキャラにものすごく用意されています。これらの設定をすべて公開しないのは、想像の余地を残したかったからです。プレイヤーさん自身に、いろいろと考えていただけたらうれしいですね。

――この他に注目キャラクターはいますか?

 注目といいますか、僕をモデルにしたキャラクターも作られました。ただ、このキャラは紆余曲折ありまして、なぜかイケメンになりました。最初、MONSTER★SOUPさんが描いた絵がものすごかったんですよ。魔法使いみたいな感じで。あまりに強烈で、SNKプレイモア側から「できればイケメンで……」というリクエストがありまして、古着屋とかにいそうなカッコいい外見になりました(笑)。

『ツキビト』 『ツキビト』
▲乙女心を持った格闘家とのコトノハバトルは必見!▲鈴木さんをモデルにしたキャラクターは、紆余曲折の末、イケメンに。

――では、お気に入りのツキビトを挙げるなら?

 好きなツキビトもたくさんいますね。引きこもっている人にツきやすい“セカイデヒトリ”とか、金持ちにいっぱいツいて幸運をもたらす“チャバシラタチマクリ”とか。ちなみに、乙女心を持った格闘家にツいているのは、“キラホシアイ”というかわいらしいツキビトです。いくら食べても太らない“モエカロリ”なんていう女性に喜ばれそうな素敵なツキビトもいます。お気に入りはたくさんいますが、やはり気に入られたいツキビトは、“チャバシラタチマクリ”ですねえ。

――シナリオを書く際に気を付けていることなどはありますか?

 な~んにも気を付けていません。アイデアが湧き出るままに書いています。そして、後からみんなに怒られます(笑)。でも、キャラクターの個性にかんしては、やはり気を遣っていますね。そのキャラクターのよさを引き出せるように心掛けています。

 あと気を付けていることとはちょっと違いますが、コマリゴトの原因がすべてツキビトのせいと受け取られないようにはしています。本来ツキビトにはいい面と悪い面があり、ツキビトのせいで人間に悪いことが起こるわけではないんです。人間には“気モチ”というものがありまして、ツキビトはそれをエサに生きています。気モチにはダークなものから楽しいものまで、いろいろな種類があるんですが、ツキビトによって好みが分かれるんですね。好きな気モチを出してくれる人のところに、ずーっとツいているんですが、嫌な気モチを出すようになると、そのツキビトは離れていっちゃうか、ツキビトの能力の暗い面が出てきちゃう。

 “セカイデヒトリ”にツかれている男の子がいるんですけど、その子は他人に注目されないんですよ。無視されてしまって、それを苦にしていろいろな騒動を起こす。一方で同じツキビトがツいていた頑固じじいの発明家がいて、この人も周りに相当迷惑をかけているんですが、昔はこのツキビトがツいていたおかげでいい発明をたくさんしていたという。このようにいい方向にいく場合もあります。要は、ツキビトと人間の相互作用で、そこにいろいろなドラマが生まれるというワケです。

――なるほど。では、最後に電撃オンラインの読者にメッセージを。

 この物語は現実をデフォルメした形で作っていますが、それを現実にもう1回フィードバックしてもらえると、もっと楽しめるかなと思います。たとえば嫌なヤツがいても、「ツキビトが悪さをしているに違いない」と考えれば、許すこともできるかなと(笑)。お母さんの小言がうるさいのは、そういうツキビトがついているからと思って、許してあげてください。その代わり、そのツキビトはどんないいことをしているんだろうということも考えてあげてくださいね。そういう視点で捉えていただければ、『ツキビト』もコンテンツとして楽しく広がっていくと思いますので。

『ツキビト』


(C)SNK PLAYMORE

データ

▼『ツキビト』
■メーカー:SNKプレイモア
■対応機種:DS
■ジャンル:AVG
■発売日:2009年8月6日
■価格:5,040円(税込)
 
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