2009年9月14日(月)
小梅先生:アニメのオープニング映像がとてもキレイでしたね。実は僕、アニメの『赤毛のアン』が大好きで、ことあるごとに見返しているんです。『赤毛のアン』の背景美術は放送された1979年ごろのアニメの中でも突出して優れていて、時々すごい色使いがあるんですよ。きらめきの湖とか本当にスゴイんですよ。
小清水さん:あのころはCGなんてないですから、全部手描きなんですよね。
小梅先生:でも『狼と香辛料』の背景は、『赤毛のアン』を超えるくらいのものだと思いますよ。
小清水さん:キャラクターだけじゃなく、背景の細かい色使いとかまで、すごく大事にしているっていうのは、見ていてすごく感じます。
小梅先生:それと、時代考証もすごいんですよ。僕もコミックの作画にあたって、中世の資料をかなり取り寄せたんです。けど、アニメを見ると、僕が見た資料と同じだって。資料を見るよりもアニメを見たほうが早かったりすることもあるんですよ(笑)。
小清水さん:アニメのほうで気になるキャラクターとかはいますか?
小梅先生:アマーティですね。アマーティがすっごくかわいくて。あいつはヤバイですね(笑)。
小清水さん:やっぱりそうですか(笑)。千葉紗子さんのお芝居がまたかわいくて、キュンキュンしちゃいますよね。
小梅先生:先月号で小清水さんが、ロレンスとアマーティだったらアマーティと答えてましたけど(笑)、その気持ちはわかります。
小清水さん:女性が演じる男性って、女性が思う理想の王子様像に近いと思うんですよ。男性にはわからない女性特有の理想というのを演じるほうがわかっているので、それをポンっと出されてしまうと、もうかなわないなって(笑)。
小梅先生:ロレンスの場合はヒゲを生やしたりして、ワイルド系ですしね(笑)。ちなみにマンガ版のロレンスには胸毛ことギャランドゥが生えているんですよ。以前に(小説のイラストを手掛ける)文倉十先生が描かれたマンガで、ロレンスにギャランドゥを生やしたらどうだろうっていうのがあったんです。そこからアイデアをいただきまして(笑)。ただ、単行本作業の際に、ギャランドゥを描き忘れていたところを発見したりして、泣きながら描き足したりもしました。
小清水さん:そんな加筆修正があったんですね(笑)。
小梅先生:でもやっぱり一番好きなのはロレンスですね。ぜひ、アマーティに負けずに頑張ってほしいと思います。
小清水さん:男性目線から見ると、ロレンスって感情移入しやすいキャラだと思うんですよ。逆に女性が感情移入しやすいのはホロなんだと思います。アマーティの場合は若くて才覚もあってと、かなりデキる男の子ですし、女性的にはとても惹かれる部分が多いんですよね(笑)。ただ、物語の中で、ホロがアマーティに対して怒りを抱えているっていうのがわかるシーンがあるんです。そこで、いったいホロとアマーティの間に何があったんだろうって、すごく気になりました。
小梅先生:ホロって他人に対しては、よく上辺を取り繕うじゃないですか。その部分に食いついたんだなってわかってしまったから、冷めたとか、そういうことがあったのかも知れませんね。
小清水さん:なるほど!
小梅先生:ロレンスは上辺のホロじゃなく、食いしん坊のホロが好きですからね(笑)。
小清水さん:そうですよね。ひどく酔っ払っていて、ゲソッて顔をした時も、何も言わずに布団をかけたりしてくれますし。
小梅先生:アニメの第1幕に収録されていたシーンですよね。
小清水さん:そうです(笑)。あの顔は女子としては絶対にさらしてはいけない顔ですよ(笑)。誰しも2日酔いにはなりますけど、あの顔は誰にも見せられない顔だと思うので、そういう顔を見ても彼女を受け止めてくれるロレンスって素晴らしいと思いましたね。
小梅先生:ホロがあの表情を見せた時に、ロレンスは彼女の弟的ポジションなんだなって思っていました。でも、僕はこの顔が大好きなんですよ。マンガでも描く機会があれば絶対に描きます!
小清水さん:こういう顔って、ある意味選ばれた人しか見られない顔ですよね(笑)。この回を演じながら、これもホロの魅力なんだなと思いつつも「ホロ、大丈夫!?」って思っていました(笑)。
小梅先生:力尽きているせいか、表情も身体もほとんど動かないんですよね。ただ1つ、尻尾だけがふぁさって動いて(笑)。
小清水さん:一応ホロも、喜んでいるんだなって(笑)。小梅先生的に、アニメで印象に残っているシーンはありますか?
小梅先生:この二日酔いのシーンもそうですし、第1幕の冒頭でホロが昔の仲間と会う、回想の部分ですね。第2期では「夢」が重要なのかなって思いました。そういう、原作にはなかった追加の内面描写は、アニメのスタッフの方々がどうやっていくのかと、マンガを担当する身としては気になっています。あとはやっぱり、演技ですね。声がとにかく素晴らしく、こればっかりはどうやってもマンガは無理ですから(笑)。小清水さんにも言っていただいたキャラクターの表情で表現できて行ければなと。
(C)支倉凍砂/アスキー・メディアワークス/「狼と香辛料II」製作委員会
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