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2009年10月1日(木)

あの思い出をもう一度…MMORPGサービス最終日レポ第1回は『LotRO』

文:電撃オンライン

 新しく生まれるMMORPGがあれば、また一方で去り行くタイトルもある。サービス終了の裏側には開発/運営会社の様々な事情があるわけだが、そんなこととは無関係にただ一心にそのタイトルを愛し、遊び続けたプレイヤーたちがサービス最終日をどんな風に過ごしているのか。その様子を取材すべくオンラインゲーム(MMORPGに限らず)を心から愛する筆者が、惜しまれながらもサービス終了となるタイトルの最終日にゲーム内を訪問。出会った一般プレイヤーさんと交流しつつ、そのタイトルへを振り返っての思い出話や愛を心行くまでたっぷり語っていただこう、というのが本企画の目的である。

 第1回はさくらインターネットが運営を担当、9月30日をもって日本語版サービス終了となった『ロード・オブ・ザ・リングス・オンライン アングマールの影』(以下、LotRO)の最終日、ブリー村“踊る子馬亭”前の様子をお伝えする。なお、本記事は不定期連載という形を取っているが、できることならあまり更新されないことを願っている。

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■ハイファンタジーの世界を忠実に再現した『LotRO』の中つ国

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 まずは『LotRO』がどんなゲームだったのか、簡単に説明しておこう。J・R・R・トールキンによるハイファンタジー作品『指輪物語』の世界を忠実に再現したMMORPGで、小説に登場する中つ国のごく一部、エリアドール地域を中心に実装されている。プレイヤーは人間、ホビット、エルフ、ドワーフの4種族から選んでキャラクターを作成可能。成長はレベル制度で種族と職業ごとに固有のスキルを持ち、基本部分は非常にオーソドックスなMMORPGだが、メインシナリオに沿ってクエストを進めていくと主人公のホビット、フロドの足跡をたどれるだけでなく、馳夫やトム・ボンバディル、ゴールドベリ、ギムリ、レゴラスといった原作の登場人物たちにゲーム内で多数遭遇できるのがポイント。魔法は万能な能力ではないという『LotRO』の世界を構築する根幹部分も重視し、原作付きという制限とMMORPGが持つ可能性の間で、優れたゲームバランスに仕上がっていた。また、プレイヤーが自らモンスターに変身し、人間側勢力=プレイヤーと戦えるモンスタープレイシステムがあり、どちらの視点からも『LotRO』の世界を堪能できるのも魅力の一つだ。

 操作方法や基本システムを学ぶチュートリアルは、種族ごとにその背景説明を兼ねた違うバージョンが用意されており、まるで映画のような迫力ある演出は原作ファンをも納得させるクオリティであった。

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▲起動直後に流れるムービーは、『LotRO』というよりも『指輪物語』の導入部プレイヤーに教えてくれる。指輪物語ファンにはグっとくるオープニングじゃないだろうか。


■『LotRO』日本語版サービスの歩みを振り返る

 さくらインターネットが『LotRO』日本語版の共同制作、および日本における販売権/運用に関するライセンス取得を発表したのが2006年8月のこと。同社代表取締役社長兼CEO 笹田亮氏(当時)は熱烈な“洋ゲー”ファンであり、社長自ら日本語翻訳を手がけるなど積極的な姿勢を見せていた。2007年4月にクローズドベータテスト実施、2007年5月にはオープンベータテストが開始され、指輪物語の世界の住人になりきったロールプレイ推奨ワールドのNarya、ノーマルワールドのAeglosの存在、月額料金制などが明らかにされた。

 その後は大規模アップデート『第十巻 王の都』『第十一巻 エリアドールの守護者達』などが順調に実装されたが、2007年11月にはクライアント無料化と、レベルキャップ制無料期間を変更。さらに2008年3月にはTurbineとの契約期間を2009年9月までに短縮したニュースが流れ、結果としてその通りに9月30日をもって『LotRO』日本語版サービスは終了となった。

■長大なチュートリアルの存在を忘れていて焦りまくる電撃ちゃん

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▲最初はホビットでチュートリアルを始めてみたが、これまで未経験の人間/キャプテンに後から作り直した。

 実は筆者は日本語版のクローズドベータサービスからLotROに参加、大型アップデート『第九巻 イヴンディムの湖岸』までプレイしており、おぼつかない記憶によれば確かレベル45のホビットハンターであった。当時はNaryaワールドのキンシップ“古い鉄”に所属していたのだが、不規則な仕事ゆえに長時間拘束されるフェローシップクエストなどが遂行できなくなり、泣く泣く引退したものだ。今回のサービス最終日にも当時のキャラクターでログインしようと考えていたが(だって楽だし……)、どうしてもIDを思い出せず、やむなく新たに人間キャラを作成しなおしてAeglosワールドにお邪魔してみた。久しぶりに見るオープニングムービーはやはり圧巻。原作はもちろん映画三部作も何十回と見直した身にとって、目の前で灰色のガンダルフやフロドたちが、あの名場面を見せてくれるのはかなりうれしい。特にホビットでゲームを開始するといきなり黒の乗り手に遭遇し、ドキドキしてしまう。

 今回はせっかくなので一度もプレイしたことのない、人間のチャンピオンでオープニングを終え、懐かしいアーチェト村に降り立った。この時点で22:00。ちょこちょこクエストを進めるも他のプレイヤーに遭遇しない……。「おかしいなー初期村だからダメなのかな、クエスト無視してブリー村に行ってしまおう」と思うが、中継地点の小谷村の扉が閉ざされていて進入不可に。そんなはずはない! と叫んだところでハっとしてグー。そういえば『LotRO』のオープニングムービーはあくまでこの世界への入口にすぎず、チュートリアルの前半部分でしかないのだ。ホビットと人間は同じアーチェト村に飛ばされるのだが、ここは広大なインスタンスゾーンとなっており、だいたいレベル5~10ぐらいまで過ごせるクエストが大量に用意されている。特定のインスタンスミッションを遂行しない限り、すでにチュートリアルを終えたプレイヤーとは絶対に出会えないことを忘れていた。 序盤のクエストを全力ダッシュで遂行するマイキャラクター。不思議なことに2年たった今でも、どこに何があるのかおおよその位置は覚えていたおかげで、全身汗だくになりつつもなんとか23:10分にはインスタンスをクリアし、小谷村を抜けてブリー村に到着できた。ハァ、よかった。

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■『LotRO』ファンの多くは北米サーバに移住済みらしい

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▲ブリー村で称号に“皆あそんでくれてありがとねー”と記したプレイヤーに遭遇。ちょっと涙ぐみそうになった。にしても、筆者の知らない毛色の馬やマントのマークが増えたこと。

 多くのプレイヤーはブリー郷のお祭り用地に集まっていたようだが、たまたま踊る子馬亭の前でくつろいでいたキンシップ“Blazing Soul”の皆さんにご協力いただいた。Blazing Soulのメンバーの多くは、すでに北米サーバに移住しプレイを再開しているとのこと。ただし移住といっても日本語版サービスからのデータ移管は行われないため、要はすべてを一からプレイしなおすことを意味している。「全部やりなおしは辛くないですか?」と聞いてみたが、「言語の壁を乗り越えてでもプレイしたい」「万難排除しても北米サーバでプレイしたいと思わせる魅力があるゲームです」と熱いコメントが。その他にも「こういったMMORPGが日本で流行せずに終るのは残念でなりません」、「流行に左右されず老若男女が楽しめて、制作側のこだわった作りこみが素晴らしい」といった『LotRO』への愛情こもったコメントをたくさんもらうことができた。あぁ、最後に古森や風見が丘、裂け谷に行きたかったな……。

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▲踊る子馬亭の前でくつろぐ人々。ぜんぜんオシャレじゃない初期装備の自分が恥ずかしい。▲取材をお願いしたキンシップ“Blazing Soul”の皆さん。最初はこの程度の人数だったのが……。
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▲10分後にはこの人数で筆者の低スペックマシンは悲鳴をあげていた。お別れのあいさつもきちんとできずに落ちてしまい、ごめんなさい。そして取材へのご協力ありがとうございました。

 日本語版の導入が決定していたが実現しなかった拡張パック『モリアの坑道』や、さらにその先に広がるローハン、ゴンドールなどの国々を見られないのは本当に残念だが、『LotRO』自体は細部まで原作に忠実に作りこんだ広大な世界があり、それでいて高いゲーム性を保った素晴らしいMMORPGだ。すでに北米サーバに移住したプレイヤーには、これからも中つ国の住人として仲間とともに冒険を繰り広げてほしい。(麻生ちはや)

THE LORD OF THE RINGS ONLINE(tm): SHADOWS OF ANGMAR(tm) interactive videogame c 1995-2007 Turbine, Inc. and patents pending. All rights reserved.Middle-Earth Poster Map c 2007 The Saul Zaentz Company, d/b/a TolkienEnterprises (SZC), under license to Turbine, Inc. All rights reserved.

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