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2009年12月19日(土)

生まれ変わった『モンスターファーム ラグーン』開発&運営インタビュー

文:電撃オンライン

 12月15日にプレオープンサービス(実質オープンβテスト)を開始した、『モンスターファーム ラグーン(以下、MFL)』。開発をテクモ、運営をゲームポットが手がける本タイトルは、すでにお伝えしている通り2008年11月にサービス休止となった『モンスターファーム オンライン』のリニューアルタイトルだ。1年間の休止期間を経て復活した『MFL』について、テクモ モンスターファーム ラグーン 開発プロデューサー高崎俊行氏、同開発ディレクター森田信行氏ゲームポット モンスターファーム ラグーン 運営プロデューサー浅和 潤氏にお話をうかがってきた。

『モンスターファーム ラグーン』
▲テクモ モンスターファーム ラグーン 開発プロデューサー高崎俊行氏と運営プロデューサー浅和 潤氏

──本日はよろしくお願い致します。それでは最初に『MFL』のどの部分を担当されているのか、お1人ずつ自己紹介をしてください。

高崎俊行氏(以下、高崎):『MFL』プロデューサーの高崎です。ゲームの中のことはスタッフに任せて、雑務全般を担当しています。

──雑務担当の一番偉い人なんですね……。

森田信行氏(以下、森田):ディレクターの森田信行氏です。『MFL』では開発チームの取りまとめと、ゲーム内に関する全般のディレクションが仕事です。

浅和 潤氏(以下、浅和):運営側の総責任者をやっています。読者の方に一番分りやすい言い方ですと、GMの一番偉い人になりますね。その他にもイベント実施やサポート対応の窓口も兼ねます。

──『MFL』のお話に入る前に、実は前回の『モンスターファームオンライン(以下、MFO)』そして『MFL』どちらも、電撃オンラインできちんと取り上げるのは初めてになります。すでに何度もこのお話はされているのでウンザリだとは思いますが、そもそもどうして『MFO』がサービス休止になったのか? そこからお願い致します。

『モンスターファーム ラグーン』

高崎:率直に申し上げれば、経験不足だったの一言に尽きると思います。PCオンラインゲームを自社開発したのは『MFO』が初めてでした。それでも開発には十分時間をかけ、研究したつもりでしたが、蓋を開けてみれば、プレイヤーさんが実際にゲーム内で情報取得するための導線、労力のかけかたやそのポイント、こだわり具合といった1つ1つが、我々の予想していたものと異なる部分が多々ありました。それは本当に思い知らされましたね。

 見通しが甘かった部分を修正するとなった時、まず最初に、夏に向けて大規模アップデートという形で改修をかけようと考えました。しかし、それだけでは痒いところに手が届ききらない。根本的に今のシステムを踏襲した形で修正を上乗せしても、ベストな作品にならないし、プレイヤーも楽しめないと気が付きました。そこで、夏ぐらいに「サービスを一旦止めて、きっちり修正の方向を考えませんか」と、我々の方から提案したのがサービス休止への発端でした。

──サービス休止をうたって、無事に復活できたオンラインゲームの少なさを考えると、かなりの英断でしたね。

高崎:うちとしても過去に例のないことですから、もちろん簡単には行きませんでした。運営移管や開発会社が変わることはオンラインゲームでもありますが、リニューアルのために丸々1年サービスを止めようと言うのですから……前例もほとんどありませんし。

──ところで、『MFL』発表会の際には「単なるリニューアルではない」とお話されてましたが、『MFL』は『MFO』とは全く別物の、後継作品だと考えてよろしいでしょうか?

高崎:いえ、正確にはリニューアルであって後継作品という扱いではありません。ただ、ここまで大幅な改修をする以上、ちょっとした手直しとは捉えられたくなかった、という強い気持ちが「リニューアルではない」という言葉になりました。

──ではここから、改めて『MFL』について伺います。先日の先行βテストでのプレイヤーからの反響はいかがでしたか。

浅和:先行βテストに参加した多くの方から、アンケートという形でご意見をいただきましたが、おおむね好評でした。もちろん厳しいご意見もいただきましたが、「これは、こんな風にすれば良くなる」「これが必要になる」などの改善案を含めた、非常に前向きなご意見、ご要望でした。ただ、我々が改善した根本的なシステム全般については、プレイヤーさんの要望と、大きくは乖離していなかったと実感できました。もちろん未熟な部分は多々ありますので、そこはこれからも努力していくべき部分です。

高崎:先行βテスト見ていて一番うれしかったのは、パーティプレイ率の高さですね。できればゲーム内で知り合った人同士で冒険に出て欲しいと思っていましたので、どうすればコミュニケーションを促進できるかは、当初からの課題でした。ところが先行βテストが始まってみれば鍵をかけた、つまり自分だけか元々の友達以外は入れないようにロックしたルームがほとんど見当たらず、知らない人とも積極的にPTを組んで遊んでくれたのは、うれしかったです。

──それは単にPTを組んだほうが、ゲームがさくさく有利に進められるからでは?

高崎:いえ、あのPT率の高さは船着場から冒険に出るとういう、ユーザーインターフェイスに因るところが大きいかと。何度か冒険に出ればパスワードをかける機能に気がつくはずですが、それでもオープンなルームが圧倒的だったのは嬉しい誤算でした。

──ところで先行βテストの初日は回線切断やNPCと会話できないなど、ありがちといえばありがちですが、かなりの不具合が見られましたね。単なるアクセス過多だったのか、それともプログラム上の問題だったのか、原因を教えてください。

森田:いわゆる“デーボオンライン”と言われてしまった、NPCが話しかけても反応しないバグがありまして。これはゲーム内で発生するイベントなどを制御するプログラムと、データをつなぐ部分にミスがありました。大人数でのテストで初めて発覚したバグでして、皆様のおかげでお陰様で何とかβテスト期間中に修正できましたが、最初なかなかゲームが進められなかったプレイヤーさんには申し訳ありませんでした。

『モンスターファーム ラグーン』 『モンスターファーム ラグーン』

──まずはモンスター誕生のシステムを、1枚のCDから一種類のモンスターが誕生するという、昔ながらのスタイルに戻した理由を教えてください。

高崎:前回の『MFO』でも種族をプレイヤーが選べてしまっていいのか? という疑問は常にありました。同時に利便性を考えれば選べるべきという意見もありました。確かにどうしてもこの種族でプレイしたい! という方にとってみれば、手当たり次第CDを持ってきてもお目当ての種族が出なければ、プレイのモチベーションも下がりますよね。そのせめぎ合いの末に、とりあえず試してみようとなりまして。開発内部で試したところ、やっぱり種族は選べないほうがワクワク感があって楽しかった、というシンプルな理由で種族を選べない旧システムを採用しました。プレイヤーにも誕生の喜びと育成の喜び、その両方を味わっていただければと思います。

──正式サービス開始のタイミングで、新モンスターは増えるのでしょうか。

森田:はい、正式サービスでは『MFO』にも登場しなかった、新種族が追加されます。どんな形で登場するかはまだ申し上げられませんが、皆さんでいろいろ試してください。

『モンスターファーム ラグーン』

──では次に、“塔”への冒険というシステムから、助手、ライセンス制度などなど、その他前作『MFO』から大きく変わった機能についてお願いします。無数の無人島と、そこにあ塔へ冒険にでかける形は、今後のマップ拡張のしやすさを考えて設定されたのでしょうか。

高崎:それも理由の1つではありますが、メインではありませんよ(笑)。ゲームの世界観とシステムは、きちんと連動させて開発を進めました。まず最初に「海、よいよね」という話になりまして、次に海を生かしたシナリオとシステムを考える上で島、塔とアイディアが出て行ったんですよ。その中で海はマップ拡張が楽かもと気がついたり、「海なら途中で突発的な嵐が起きてもおかしくないね」など、イベント絡みのアイディアが出たりはしましたが。

──モンスターの育成についても、以前よりだいぶバリエーションが増えたようですね。

高崎:基本的にモンスターを育てて戦うというのが、本タイトルの中心ではありますが、モンスターの育て方とその結果については、かなり自由度を高くしました。先行βテストではその部分が伝わりきらなかったと思います。技をアイテムの形で拾えることでカスタマイズ幅が増えましたが、冒険に出る前に選んでセッティングするため、どの技を覚えさせるかで強さがまったく違います。モンスターのレベルよりも技が重要であり、そしてその違いを体感してもらうために、属性を強調した塔を実装しました。1つの技があるか無いかで、塔の攻略のスムーズさが違いますから新しい冒険に挑戦するときは、どの技がベストか、色々と組み合わせを考える楽しみも味わっていただければと思います。

──確かに攻略要素が強くなりましたね。ただプレイヤーのコンテンツ消費速度、研究熱心さはたいてい開発側の予想を大きく上回るものです。この塔にはこのモンスターで、この技が一番効率的という結論が出てしまうと、「●●をもってない人はPTお断り」のような空気が生まれませんか?

高崎:とりあえず塔のてっぺんまでいけて、“Congratulation”の文字が出ればクリアできるわけですし、1人でいくのと3人のPTで行くのでは同じ塔でもだいぶ様子がかわり、遊び方もまた変化します。ですから、今言われたように「Aという塔には、このカスタマイズ以外ありえない」といった完璧なチューンナップを求めることは無いと思います。

『モンスターファーム ラグーン』 『モンスターファーム ラグーン』

──今後、モンスターが使える技は結構増えるのでしょうか。

森田:はい、まだまだ未実装のものが数多くあります。先行βテストでは登場モンスターの数も少なかったので制限されましたが、これから増えますよ。

──塔システムでもう1点気になるのが、これからサービスが1年、2年と続いてく中で新規参入した方が、ソロプレイでも攻略できるけれどPTを組みたい。でもみんな中級以上で一緒に遊べる人がいない……と寂しい思いをしない、つまり上級者が自然と序盤の冒険者と交流できるような、システムにはなっているのでしょうか。

高崎:今は詳しいお話をできないのですが、上級プレイヤーも循環して初心者と一緒に遊べる工夫はちゃんとあります。

森田:どんな上級プレイヤーでも新しいモンスターを入手すれば、結局一から育てなおすことになるので、新規プレイヤーはその波に一緒に乗れるわけでして心配無用ですよ。

──ライセンスは先行βテストで制限がありましたが、今後はどこまでどんなライセンスが増えるのでしょう。

森田:目ざとい方は気がついたと思いますが、先行βテストでは2段階目までしか解放されなかったライセンスはその先で分岐していきます。分岐していく中でプレイヤーはどのタイプになりたいか選択していくことになります。いわゆるスキルツリー方式ですね。さらに選択したタイプの中でもすべてのスキルは習得できませんから、そこでも、自分のプレイスタイルを考えて悩むことになります。モンスターだけでなく、プレイヤーキャラクターのカスタマイズもできるわけです。

──育てた結果、違うタイプになりたいときは課金アイテムなどでリセットできますか。

浅和:まあ簡単にリセットできてしまうと、それは問題ですので、バランスを見て検討したいと思います。基本はリセットできない前提で真剣に育ててほしいですね。

『モンスターファーム ラグーン』 『モンスターファーム ラグーン』 『モンスターファーム ラグーン』

──ライセンスの種類はどんなものがあるか、具体的に教えてください。

森田:登場させるタイミングは未定ですが、アクティブライセンスという種類が出ます。これはモンスターではなくブリーダーが任意に発揮させるものです。といっても、ブリーダーが直接敵を攻撃するのではなく、より細かくモンスターに指示を与えて戦闘を有利に運べるというものです。

──それがGo、Come、Waitの代わりなんですね。

森田:その通りです。このアクティブライセンスを使わなくても戦えますが、もっとプレイヤースキルを磨きたい、高度な戦術を使いたい方向けとなります。Go、Come、Waitよりもずっと細かいですよ。パッシブに関しては戦闘と関係ないものが、どんどん出てきます。

──次にファームについてお尋ねします。まず個人ファームとギルドファームの違いですね。ギルドファームでは何か個人ファームではできないような生産もできるのでしょうか。

森田:いえ、生産についていえばギルドファームでできることは、たいてい個人ファームでもできます。ただ、バリエーションや効率、利便性が違います。アイテム合成はギルドファームで行うほうがより効率がよくなります。近日中に実装される研究システムではファームに設置したオブジェクトを使って、新レシピを生み出せます。ギルドファームならみんなで集めたオブジェクトを共有できるため、よりアイテム合成がやりやすいわけですね。

──一人ぼっちのソロギルドは作れますか。

森田:システム上は作れますが…FPというギルドファームポイントは、塔クリアなどの貢献値を示しています。これを溜めてオブジェクトを購入するので、一人だとなかなかポイントが溜まらず大変になりますよ。

──先ほど2匹目以降、複数のモンスターを育てていくという話がでましたね。冒険に連れて行かないお留守番中のモンスターを、自分のファームに放牧して、ファームに戻ってきたらモンスターがくつろいでいる……なんていうシステムが個人的にすごくほしいのですが(笑)。箱庭要素が強くなって女性プレイヤーにも受けそうですし、愛着も沸くでしょう。このアイディアいかがでしょう?

高崎:そういった要望は開発チーム内にも存在しています。ただ、優先順位としてはまだまだです。ペットを育成するのと同じ雰囲気を、『MFL』で再現できればいいと思います。

森田:『MFO』のサービスを停止するときも、ファームだけは、育てたモンスターだけは継続したいという要望も強かったんですよ。最終日に泣いてしまったという、プレイヤーさんのブログもありましたし。今後検討していきたいです。

『モンスターファーム ラグーン』 『モンスターファーム ラグーン』

──オンラインゲームは本当に熱心にプレイしてくれる、一部のコアゲーマーさんがいますよね。そういった方向けの、やりこみ要素の強いコンテンツがあるかどうかちょっと気になっているのですが。

森田:今はモンスターが育った結果のパラメーターを皆さん注目しているようですが、来年早々にも実装したいなあと考えているのは、育成途中の過程によって結果が変わってくる機能をのせたいと思ってます。これがシビアになりすぎるとプレイが窮屈になるので、こだわった育成をしたい方向けに、ほどほどの縛りで用意しようかなと。

──ちょっと話は変わりますが、課金アイテムについてうかがいます。どんな種類の課金アイテムがいくらぐらいの価格で販売されるのか、予定を教えてください。

浅和:課金アイテムを使うことで最強になってしまうことはありません。経験値ブースト系から装備品まで、プレイスタイルに合わせて選択できるようにする予定です。基本的に課金アイテムはゲーム内で転売できません。

──大変聞きづらい質問なのですが……『MFO』が1年間のお休みに入り、新たに復活できたのは素晴らしいことですが、一般プレイヤーさんから見れば正直なところケチがついてしまったタイトルです。しかも今回のCβT初日は深刻なバグが発見されてしまい、「やっぱり復活してもダメなんじゃないの?」とかなりシビアな判断を下されたと思います。すでにネガティブにしか『MFL』を捉えていないプレイヤーの信頼を、どうやって今後取り戻していくご予定ですか。

高崎:それについては、秘策と呼べるものはないでしょう。今後よりいっそう真面目に『MFL』に取り組み、結果を見ていただくしかないと思います。逆にコンシューマゲームと違い、オンラインゲームはアップデートを重ねることで将来の可能性があるゲームです。開発陣である我々が努力し続け、皆様に見守っていただくしかないと考えています。

──それでは最後に、読者向けのメッセージをお願いいたします。

高崎:この1年間、時間をかけて丁寧に『MFL』の開発を心がけたつもりです。先行βテストである程度以上の手ごたえも感じられましたし、もちろん今以上にプレイヤーの多彩なライフスタイルに合わせた、どんな遊び方もできる間口の広さを用意するつもりです。まずは一度『MFL』で遊んでみてほしいです。

森田:先行βテストでは色々不具合もありましたが、現在は正常に遊べるようになっています。また、ログアウト中もモンスターが育つような、バトル以外の部分の遊び要素もたくさん登場していますので、ぜひ楽しんでください。

浅和:高崎さんが今述べたように間口の広い遊び方を用意している分、運営としてはそこに来てくださった様々なプレイヤーさんを、きちんとサポートするための準備をしています。休止中も毎日ブログをチェックしてくれた、熱心なファンの方がいたことは本当に嬉しかったですし、プレイヤーの皆さんと“繋がる”をコンセプトに運営に力をいれていきます。

──本日はありがとうございました。

『モンスターファーム ラグーン』 『モンスターファーム ラグーン』

Published by Gamepot Inc. (c)TECMO,LTD.2009

データ

▼『モンスターファーム ラグーン』
■メーカー:テクモ/ゲームポット
■対応機種:PC(OS:WindowsXP/Vista)
■ジャンル:SLG(オンライン専用)
■正式サービス開始日:未定
■プレイ料金:未定

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