2010年2月25日(木)
早いもので、5pb.のXbox 360用ソフト『CHAOS;HEAD らぶChu☆Chu!』も、来月発売ですよ。1月から始まったこの特集企画も、今回で4回目です。
今回、皆さんにお届けするのは『電撃G’sマガジン』3月号に掲載されたオリジナルノベル“リア充こんぷれっくす”! 『電撃G’sマガジン』編集部にお願いして、特別に! 第1話を皆さんにお届けできることになりました!(G's編集部GJ(グッジョブ)) ちょうど、明日発売の『電撃G’sマガジン』4月号に、オリジリナルノベルの第2話が掲載されるので、ここで第1話を読んでから、本屋さんにダッシュするのがいいんじゃないでしょうか? ちなみに、残念ながら第2話以降を電撃オンラインで掲載する予定はありませんので、続きが気になる方は『電撃G’sマガジン』4月号でぜひ!
それでは、本作のシナリオライター・林直孝さんによるオリジナルノベル“リア充こんぷれっくす”第1話『女子同士によるスキンシップはご褒美です』のはじまりはじまり~。
『電撃G’sマガジン』3月号掲載
『CHAOS;HEAD らぶChu☆Chu!』オリジナルノベル
リア充こんぷれっくす第1話 『女子同士によるスキンシップはご褒美です』
文:林直孝
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脱オタっていう言葉を知ってる?
“オタクを脱する”――つまり、やめること。
そのために必要なのは、三次元女子との触れ合いなんだ! それが、この僕――西條拓巳の導き出した結論だよ。ふひひ。
今日は、中学生レベルの知能しかないクラスメイト女子二人が、僕に勉強を教えてほしいって言ってきた。これは絶好のチャンスだ。
三次元女子との恋愛フラグを立てろ! そうすればリア充――リアルの生活が充実している人――になれるぞ!
……なんて、ひとりでドキドキしていたら、そんな僕の妄想をはるかに上回る事態が、まさに今、目の前で進行していた。
パジャマ……だと?
泊まり込みで勉強会……だと?
年ごろの女子が男の部屋を訪ねてきて、自らパジャマに着替え、しかも泊まる気満々なんて不純異性交遊すぎる! だがそれがいい。
「ねえねえタク」
ピンク色のファンシーなパジャマに身を包んだ梨深が、困った顔を僕に向けてきた。シャーペンの先で、テーブルの上に広げた数学の教科書を指し示す。
「ここ、わかんないかも。教えて?」
「ああ、ええと、ここは――」
今教えているのは、中学で習うような内容だった。つまり、梨深はすごくおバカです。
「ほ、ほら、こうやって解くんだよ」
ノートに解き方を書く。でも隣に座る梨深は、顔をしかめてノートを凝視したまま。
「ん~? ごめん、もう一回お願い」
「いや、だから、こうしてこう……」
さっきと同じ数式を書いていくと、梨深はどんどん身を乗り出してきた。
理解しようと必死なんだろうけど、ち、近いって! 集中力の法則(?)が乱れる!
「あ」
と、梨深と僕、互いの手の甲が触れた。
見つめ合う。
すぐ目の前に、梨深の瞳。そして柔らかそうな唇。
大事なだ~いじな、チュッチュチャンス!
ここで不意打ち気味にキスをすれば、月9ドラマみたいでリア充っぽいぞ!
「こら~、そこのふたり~! なに見つめ合っちゃってるのら~!」
そのチャンスは失われた。
折原梢――通称こずぴぃが、僕らを見据えてブスッと頬をふくらませていた。
幼児体型の上にタンクトップ、短パン装備という、ロリ好きにはたまらない格好に、胸が熱くなるな。
「こずぴぃを仲間外れにし~な~い~で~」
そのさまは、どう見ても子供が駄々をこねているようにしか見えない。そして相変わらずの、イラッとさせるしゃべりかた。
こずぴぃは今の今まで、勉強なんて飽きたと言ってソファに寝っ転がり、マンガを読んでたじゃないか。
「梨深しゃんばっかりずるいのら。こずぴぃも拓巳しゃんとイチャイチャする~♪」
いきなり、僕の腕にすがりついてきた!
身体が密着する。さっきシャワーを浴びたからなのか、シャンプーのいい匂いがする。クンカクンカしてもいいですか?
「折原さんも、サボってないで勉強に戻ろうよ。今度のテスト、ピンチなんでしょ?」
「うぷ~。梨深しゃんはマジメれすね~」
唇を尖らせたこずぴぃが僕から離れる。そして代わりに、いたずらげな笑みを浮かべながら梨深に抱きついていった。
「えっ、ちょっと折原さん!?」
「梨深しゃんはおっぱい意外と大きいのら。セナしゃんとは月とすっぽんだね~♪」
すっぽん扱いのセナしゃんカワイソス。
「やわらかくてきもちい~のら♪」
「きゃあっ、も、もみもみしないでー。なんで脱がそうとしてるの!?」
これはけしからん! ごずぴぃGJ!
思わずムハーッと鼻息を荒くしてしまった。
いいぞこずぴぃ、そのままロザリオを渡して“こずぴぃのスールになるのら”と言え!
スカートの裾はひるがえさないようにだ! いや、今は二人ともスカートはいてないけど。
梨深は必死に抵抗してこずぴぃを引き剥がそうとするが、もみ合えばもみ合うほど梨深の着ているパジャマがズレていく。
「キャッ、ちょっと、ダメッ、下着見えちゃうからっ! タク、あっち向いててー!」
だが断る! ガン見するに決まってるだろ、常識的に考えて。
「折原さんを止めてよぅ」
「と、止めるわけないじゃないか。二人とも思うぞんぶん、百合チュッチュをするように。ぼ、僕はそれを、優雅にコーラを飲みながら見ていることにするよ。これぞ紳士のたしなみじゃね? できれば白いガウン、ワインにシャム猫もほしいところだけど、自重するよ。ふひひ」
梨深は身をよじらせ、かろうじてこずぴぃの手から逃れた。急いで服装の乱れを直している。
「逃げちゃだ~め~なの~」
「行け、こずぴぃ! 梨深をはずかしめるんだ!」
「ちょっと、タク~!」
梨深の抗議の声は華麗にスルー。
「ほいじゃ、本気で行っくぽ~ん♪」
こずぴぃが手をワキワキさせながら、突進していった。だけど梨深は、捕まる寸前でひらりと身をかわす。
「うぴっ!?」
勢い余ったこずぴぃは、床に転がっていたいくつかのCDケースを踏んづけ、バランスをくずして、身体ごと美少女フィギュアが並べられている棚へ激突した!
「ぎゃああ! 僕の嫁たちがーっ!」
「折原さん、大丈夫!?」
「うぴぃ、痛いのら……」
「なんてことを……なんてことをーっ!」
星来を含む僕の嫁たちが、棚から落ちて床に散乱している。胴体がまっぷたつになっていたり、関節を有り得ない方向に折り曲げてしまっていたり。まるで大量殺りくの現場だ……。
「タク、どうしたの!? 泡吹いてるよ、しっかりしてタクー!?」
脱オタとは、なんて辛く険しい道なんだ。
そんなことを思ったところで、僕の意識はブツンと途切れた――。
第2話は、明日発売の『電撃G’sマガジン』4月号でチェック!
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