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2010年2月10日(水)

電撃小説大賞・大賞に輝いた『幕末魔法士』の田名部先生インタビューをお届け!

文:電撃オンライン

 本日2月10日に発売された小説『幕末魔法士 -Mage Revolution-』で第16回電撃小説大賞・大賞を獲得した、田名部宗司先生のインタビューをお届けしていく。

『幕末魔法士 -Mage Revolution-』

 『幕末魔法士 -Mage Revolution-』は、魔法が存在する幕末の日本を舞台にしたファンタジー活劇。出雲で巻き起こる“ミスリル銀”にまつわる陰謀に巻き込まれた、優秀な魔法士・久世伊織と、シーボルトの孫で赤い眼を持つ志士・失本冬馬の活躍が描かれる。

 インタビューでは、本作に関することや、田名部先生自身についていろいろと質問をぶつけてみた。興味がある人はぜひ読んでもらいたい。

『幕末魔法士 -Mage Revolution-』
▲作者の田名部先生。

――受賞した時の気持ちはどうでしたか?

田名部先生:ありきたりですが、やっぱりうれしかったですね。メールでの連絡だったんですが、連絡をいただいたのがちょうど仕事中で、ものすごく難しい見積もりを作っていたんですね。どうやって積算していこうかな~と思いつつメールを見たら、大賞受賞と書いてあって……あまりのうれしさに、思わずおたけびをあげてガッツポーズ取ってしまって(笑)。

――それくらいうれしかったってことですね。

田名部先生:ええ。でも、当然職場のみんなは受賞のことなんか知りませんから「ついにおかしくなったか、とてつもなく素晴らしい見積もりの名案が浮かんだのか?」と思ったみたいです。今では、正直不安が大きいですね。

――不安というと、「この次何を書こうか?」とかですか?

田名部先生:もちろんそれもありますね。私も他の受賞者の皆さんに比べると若くないものですから。それと、はたして読んでくれた人がおもしろいと思ってくれるのか。そのあたりが不安ですね。まずは、作品に興味を持ってもらうことが第一ですけど。

――そうですね。それでは、作品のことについて話していきましょう。まず最初に、本作を書くにいたった経緯を教えてください。

田名部先生:単純に「幕末モノを書いてみたいな」とふと思ったんですよね。そこで、幕末の日本には外国からいろいろな技術が入ってきましたが、そういった技術に代わって魔法というものが入ってきたらどうなるのかというアイデアがパッと思い浮かんだんです。

――それをそのまま形にしたと。

田名部先生:でも、西洋ファンタジーと幕末をそのまま合体させてしまうことに無理があるんじゃないかと思ったんです。なんのキッカケもなく“そういうもの”として書くことに、思い切りが付かなかったんですよね。だからいったん保留にしました。

――そこからなぜ、作品として書き上げる気持ちになったんですか?

田名部先生:いつもアイデアを考える時には、近くの川岸をジョギングするんですね。その時に、明治維新の“明治”は、音の響きから魔法使いの“メイジ”とも取れるな、と。そこからエイヤって感じで書くことにしました。

――書く気になったキッカケはシャレだったんですか(笑)。

田名部先生:そうですね(笑)。最初は魔法士の“士”に“使”や“師”という字を当てていたんですが、そこも字面を武士とあわせて“士”にしたり。同時にタイトルについても、この時に決まりました。

――それはまた、何か理由があるんですか?

田名部先生:ご覧の通り、“幕末”と“魔法”いう混ぜると危険そうなモノをくっつけているタイトルですが、そうすると最初っから読み手は「この作品はそういう話なんだ」とわかってもらえると思ったんです。ページをめくっていたらイキナリ魔法が出てきて「なんじゃこりゃ?」みたいな違和感を覚えないように、この本は「幕末モノで魔法が出てきますよ」と前もって言ってしまおうと。それでも手にとっていただけますか? という確認ですね。付けた時に「そのまんまやな~」とは思ったのですが(笑)。

――確かに、タイトルを見れば間違いなくその幕末モノで魔法モノだってことは一目瞭然ですよね。

田名部先生:それと、メイジという言葉に関して、副題に入れようか入れまいか迷いましたね。英語で書いてしまうとひょっとしたら“マゲ”って読む人が出てくるかもしれないぞ。とは重々わかっていたんですが……。まぁでもベタでわかりやすいシャレなので、わかってくれた時に「アホなことしてるな、こいつ」と思っていただけたらいいな、ってくらいでしたね。一時は副題を取るという話まであったんですよ。

――時雨沢先生はメイジと明治はもちろんのこと、マゲまで言及されていましたね。

田名部先生:そうですね。時雨沢先生が帯で、そこに触れてくださったお陰で、副題は生き残ることができたんです。選考の時といい、なんとお礼を言えばいいかわかりません。

――では、続いて物語を作るうえで苦労した点や、電撃大賞に送るうえで注意した点などを聞かせてもらえますか?

田名部先生:注意した点というのは、そんなにないですね。電撃大賞ならば、ある程度どんな内容の作品を送っても許してもらえるであろう、と投げっぱなしジャーマンを繰り出すような感覚でした(笑)。必ず受身を取ってくれるであろうという核心もありましたし。

――投げっぱなしですか(笑)。

田名部先生:ハイ。あとはもう、電撃文庫編集部の皆さんを信じようと(笑)。大丈夫かなぁ、大丈夫かなぁ……と思いつつでしたけど。ですから、あえて電撃文庫の作品を読まずに、よけいな前情報を入れないよう気をつけていました。……後に大後悔することになるんですけど。

――え? 何か大変なことが?

田名部先生:ズバリ言うとですねえ……。言っていいのやら悪いのやらなんですが……。

――ぜひ聞かせてください!

田名部先生:直しの中で、ラストの部分をちょっぴり変えることになったんです。変えることにはなんの異論もありませんでしたので、そのまま直したんですね。そして受賞が決まってからしばらくたって、遅ればせながら「どんな作品が受賞しているんだろ?」と思ってとある受賞作品を手に取ったんですよ。そしたらですねえ……訂正前のラストの部分がその作品と丸カブリになってたんですよ!

――えっ!

田名部先生:終電で結構人が乗っていたんですけど、思わず「ダメじゃん!!」って叫んじゃいました(笑)。これは不味いだろ! と。選考委員の先生方も苦笑いだったろうなとか、編集さんもズバリは指摘しにくかったんだろうなとか、一秒の間で、いろいろなことを考えました。

――それは結構ビックリですね!

田名部先生:「訂正せずに、そのまま世に出してたら、頭のおかしい奴と思われてたはず」と、電車の中でワナワナと震えました。しかも受賞作品を読んでないというのは、「意識しないのもほどがあるぞ!」と怒られても仕方ないですよね。でも、それくらい自分が受賞するとは思ってなくて、青天のへきれきだったんですよ。

――逆に、インタビューで読んだことありませんって言っておいてよかったかもしれませんね。ちなみに、作者の●●●●先生にはお会いになったんですか?

田名部先生:授賞式が終わった後で言いにいこうと思っていたんですけど、そのタイミングが取れなくて……。心温まるプレゼントを手渡しで頂いた時に、切り出そうかと思ったのですが、先生は何も知らないでしょうから、今ではないなと。でも、いつかは言いに行かなければいけませんね。こういう小説賞に作品を送る人って、しっかり傾向と対策を練る人と、僕のようにあえて知識を入れずに出す人とがいると思うんです。ただ、今の僕が、昔の僕にアドイバイスできるなら、「ある程度は、読んどいたほうがいいぞ」と耳打ちします。

――その展開を知っていたとしたら、逆に同じように書かないですよね。

田名部先生:そんな恐ろしいことできません!! 本当に今思い出しても冷や汗が……。

――冷や汗をかかせてスミマセンでした。では、作品のセールスポイントを教えていただけますか?

田名部先生:やはり幕末モノというと、歴史的なエピソードの結果は変えられないという部分がありますよね。そういう意味で読者の予想を違えることはできない宿命があります。ただし、今回は魔法という大きな嘘をついているの

で、僕としては、申し訳ないけどそうした約束事を守る気はないです。そこが大きなセールスポイントになりますかね。

――死ぬはずの人間が生きていたりとかですか?

田名部先生:そういうこともありえますよね。ただし、単純に読者の予想を裏切ることが、すなわちおもしろいことだとは思っていませんので、期待に応えつつもあまり予想できないような話を作っていきたいですね。

――思い入れのあるシーンやキャラクターはありますか?

田名部先生:そうですね。やっぱり伊織には思い入れがありますね。伊織はこっちが思った以上に動いてくれたので、気に入っています。ガッツがあって、感情豊かでサッパリした性格なので。

――ちょっと話題を変えて、田名部先生の好きな作品を教えてもらえますか?

田名部先生:田中芳樹先生の作品は大好きですね。歴史を絡ませた作風がとても好きです。

――田中先生というと、たくさんの作品を出されていますが、作品で言うとどんな作品が好きですか?

田名部先生:『アルスラーン戦記』と『マヴァール年代記』、それとやっぱり『銀河英雄伝説』ですね。この3つがとても好きです。他にも吉川英治先生ですとか、司馬遼太郎先生ですとか、いろいろな歴史小説が好きですね。

――今回の作品に幕末という時代をチョイスしているところからも、歴史が好きなんだろうな、ということは伺えますね。

田名部先生:そうなんですが、自分の中で歴史が好きか小説が好きかわからなくなってしまった時期があったんです(笑)。でもいろいろあってライトノベルを書きたいと思うようになって、役に立つんじゃないかと思い大学では史学科に進んだんです。

――歴史好きの田名部先生にはピッタリじゃないですか。

田名部先生:いえ、これがなぜか日本史でなく西洋史学専攻のほうでして……。

――え?

田名部先生:しかも、さっきも言ったように、自分の中で歴史と小説のどっちが好きなのかで迷っていた時期があったんですが、大学に入った初日の講義で教授があいさつしている時に小説が好きだということに気付きまして……(笑)。

――ずいぶん早く気付きましたね!(笑)

田名部先生:大学はいる前に気付いていたらよかったんですけどね(笑)。でも、それはそれ、これはこれと割り切って、キチンと勉強しました。

――ちなみに、大学での勉強は小説に生かされて……

田名部先生:まったくゼロでしょうね(笑)。お世話になっていた教授が近現代アメリカの専攻でして。僕自身も社会学に傾倒していったりで、歴史小説とはまったく無縁の世界にいました。最初の質問から脱線してしまったんで話を戻しますと、田中先生の作品が好きですが、他にもマンガはよく読みますね。

――今オススメのマンガは?

田名部先生:別にアスキー・メディアワークスの作品だからっていうわけではないんですが『よつばと!』ですね。自分が書く作品だと、人がいっぱい死んでしまうことが多いのですが、あの作品のようにほのぼのとした話が大好きなので。ちなみに、マンガだけでも3,000~4,000冊くらい持っていますよ。

――4,000冊ですか! それは結構な量ですね。

田名部先生:大学時代に、父と一緒にTVを見ていたら、ニュース番組か何かで「ある大学生の部屋には200冊を超えるマンガが~」みたいなレポートが流れてきまして、父が「大学生にもなって恥ずかしい!」と言っていたのを「アンタの息子はもっと持ってるのに気付いとらんのかい!」と心の中でツッコンでいたのを思い出しました。

――それにしても、アクション作品を好んでいるのかと思いきや、それ一本やりというわけでもないんですね。

田名部先生:影響を受けた作品という意味では高田裕三先生の『3×3 EYES(サザンアイズ)』ですね。キャラクターや話がおもしろいということもありますが、初めて触れた青年マンガだということが大きいですね。他には高校に入ってから士郎正宗先生の『攻殻機動隊』を読んだり。少女マンガも好きですね。樹なつみ先生の『OZ』とか。

――ゲームなどは遊んだりするんですか?

田名部先生:やっぱり歴史が好きですので、コーエーの『信長の野望』ですとか『三國志』を遊んだりしますね。後はアメリカンフットボールが好きなこともあってエレクトロニック・アーツの『マッデン』シリーズなどを遊んだりしますね。『信長の野望』シリーズと『マッデン』シリーズをやっていなかったら、僕はまだ20代です(笑)。

――かなり時間を持っていかれていますね(笑)。

田名部先生:ええ、際限なく時間を持っていかれてしまうので、最近では1週間に1時間遊ぶか遊ばないかというくらいにしています。

―― 一応遊んではいるんですね。

田名部先生:そうですね。遊ぶことによって、1週間のストレスを発散できたと暗示をかけるために遊んでいます(笑)。なんというか、儀式的なものかもしれません。

――小説を書き始めたのはいつごろからですか?

田名部先生:書き始めたのは、浪人生のころですね。ただし、書き始めたと言っても、そのころはプロローグと第1章をちょろっと書いて行き詰ってやめてしまうというよくあるパターンでしたね。「自分は書けるんじゃないか?」という思いだけがあって、技術も能力も何もかも足りなかったんです。結局、大学を卒業するまでに1本書こうという目標も果たせずに卒業してしまったんです。

――書こうという意思だけだった、と。現在のように、作品を書き上げるようになったのは?

田名部先生:大学を卒業して就職して、ずっと仕事しかしていないような時期が3年あったんです。それくらいの時期に、ふと「やっぱり書こう、死ぬまでに1冊書いて出さないと悔いが残る」と思ったんです。当時は朝も夜もなく仕事をしているような状態だったので、これでは小説を書くのは無理だと思って仕事を辞めたんです。そうしているうちにやっと1本書き上げることができて……それが28歳のころでした。今32歳ですから、だいぶ経ってしまいましたね。

――『幕末魔法士』を書くまでに何作くらいの作品を書いたんですか?

田名部先生:4~5本というくらいですかね。でも、1つ書いてそれを丸々書き直すようなこともしているんで、そういうものを含めたらもうちょっとありますね。

――それでは最後に、読者へのメッセージをお願いします

田名部先生:椋本先生のイラストだけでも買う価値があります! 幕末で魔法ということで、無茶するなぁと考えていらっしゃる方は多いかと思います。手を伸ばすのは難しいかもしれませんが、そこはひとつ勇気を出して、手を伸ばしていただければ有難いです。……最後にオチがなくてスミマセンでした(笑)。よろしくお願いいたします!

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データ

▼『幕末魔法士 -Mage Revolution-』
■メーカー:アスキー・メディアワークス
■発売日:2010年2月10日
■価格:578円(税込)
 
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