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2010年2月16日(火)

趙雲の冒険譚『精恋三国志』で電撃文庫MAGAZINE賞受賞の奈々愁先生を直撃

文:電撃オンライン

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――苦労するポイントだけど、いいポイントでもあると。そんな本作のセールスポイントはどこですか?

奈々愁先生:う~ん……。作品を一言で表すと、“『三国志』をベースにした御伽噺”となるんですが……。

和田編集:恋愛部分はしっかりと追いかけてほしいです。無骨な青年と、意地っ張りな少女が命がけで想いをつむいでいくところですかね?

奈々愁先生:そこまでキレイに言われてしまうと、なんだか恥ずかしいですけど(笑)。昔から、男の子と女の子が出会う冒険譚というものを一度は書いてみたい、と思っていました。それも、子どものころにみた『天空の城 ラピュタ』みたいに、どきどきわくわくするような冒険譚を。セールスポイントとは少し違う話になってしまいますが、子どものころに触れたものはマンガでもアニメでも映画でも小説でも、一生残ると思うんです。その中でも心をひどく動かされたものは、年を取ってからでももう一度触れたくなったりするのかと。なかなか難しいこととは思うのですが、そんな風な物語を書けたらいいな、と思っています。

――作品に触れる年齢はとても大事ということですか?

奈々愁先生:そうですね。僕が『ラピュタ』を見たのって、小学生くらいのころで、横山光輝先生の『三国志』に触れたのも小学校の高学年くらいだったんですよね。それらは、とても鮮明に心に残っています。『ラピュタ』は映画館で見たことも含めて、強く印象に残っています。どきどきしすぎたのか、見た直後のことはあんまり覚えていないのですが、家に帰ってから布団の中であれからラピュタはどうなったんだろう?パズーとシータは幸せになったのかなって、考えていた記憶があります。他には『ドラゴンクエスト -ダイの大冒険-』ですね。ポップがとにかく好きだったんです。主役じゃないのですが、ポップが気になって気になってもう仕方なかった。大人になってから振り返ってみると、ああいう風に「読み手が登場人物を好きになってその後どうなったのか、知りたくなるようなお話を作ることができれば」とよく思います。

――今お話いただいた感じですと、そういったアニメやマンガを読むのが大変お好きなようですが、マンガを読んだりアニメを見たりするのが趣味なんですか?

奈々愁先生:趣味というわけではないんですよ。趣味と呼べるものはないかもしれません。いちおうプロフィールでは読書ということにしているんですが(笑)。本自体はよく読んでいるんですけどね。

――どんな本を読んでいるんですか?

奈々愁先生:ヘンな本ばっかりですよ……っていうと、この後名前出していいのかわかりませんので、本を読んでいるということだけで(笑)。

――先ほどのセールスポイントを聞いた時には、ちょっぴり聞きそびれてしまいましたが、お気に入りのシーンなどはありますか?

和田編集:ここじゃないですか? 冒頭の(笑)。

奈々愁先生:いや~そこは……(笑)。

(※和田編集が指摘したのは、優音と趙雲がお互いの裸を見てしまうシーン)

――去年の『ロウきゅーぶ!』インタビューでも、バスルームトークを削る削らないというくだりがありましたが……やっぱり今回のシーンも和田さんの趣味なんですか?(笑)

和田編集:そんなことはないですよ!(笑) でも、インタビューでこういう質問があったら、そう言われるとは思っていました。最初に奈々愁先生から「こういうシーンなんです」と説明された時に「もうちょっとわかりやすくしましょうか」とは言いましたけど(笑)。

奈々愁先生:(笑)こだわったというわけではないんですけど、僕の作品だと冒頭でそんなシーンがあることが多いかもしれませんね。なんといっていいのかわかりませんが、そういうものなんです! 個人的には、終盤にお気に入りなシーンが多いですね。

――選考委員の高畑京一郎先生は、選考評で「『三国志』の原典をとても尊重している」とおっしゃっていましたが、そのあたりでこだわりがある部分ってありますか?

奈々愁先生:それはもう、全部ですね。常に意識しながら書いています。『三国志』の年表にはなるべく忠実にしながら……。でも、個人的には“なんとなく”で書いていることが多いんですけどね。綾崎先生の話を聞いていると、本当にいろんなことを考えているんだなぁって感心しちゃうくらいです。作家を志した理由もそれほど明確なものではなく、自分が書いたものを読んで喜んでくれる人がいたらうれしいな、くらいのものですし。理由を聞かれても困ってしまうというのが正直なところですね。

――なるほど。では話は変わりまして、思い入れが強いという孔明と馬謖の話について聞かせてもらえますか?

奈々愁先生:う~ん、本当に個人的に思い入れが強いだけなのですが、昔から書いていた作品なんですよ。そうした作品がたくさんあって、それを最初に送ったんです。『精恋三国志』は、その後に送りました。

――孔明と馬謖の話のほうが自信作だったんですか?

奈々愁先生:いえ、自信作というわけではないんです。とても好きなシーンがある作品で、そちらを先に送ろうと思っただけなんです。書き上げた時には「いいシーンを書いたなぁ」と思ったんです。そういうふうに感じることって、あまりないもので。ページ数が足りなかったのでどこにも送れなかったのですが、今回新設された“メディアワークス文庫賞”なら、新しい賞なのでカテゴリーエラーもないだろう、と思いまして、そちらを狙って出したんです。

――では最後に、読者の皆さんにメッセージを。

奈々愁先生:『三国志』モノというと、とっつきにくい印象があるかもしれませんが、物語は主人公の趙雲とヒロインの優音を中心にしたものです。御伽噺を読むような感覚で気軽に読んでください。

――ありがとうございました。

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データ

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