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2010年4月2日(金)

国内外から1,100人を超える魔法使いが集結! 『MTG』グランプリ横浜参戦レポ

文:電撃オンライン

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 ここからは、ベスト8に残った選手達による準々決勝、準決勝、そして決勝の観戦レポートをお届けする。

■ 準々決勝第1試合 黒田正城選手 VS 本波友行選手 ■

 準々決勝第1試合は予選ラウンド1位通過の黒田正城選手と、8位通過の本波友行選手。デッキは黒田選手が“ハイパージェネシス”、本並選手が“Zoo”だ。黒田選手は日本人で初めて“プロツアー優勝”を成し遂げたプレイヤーということもあって、大勢の観客が観戦していた。

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 “Zoo”の本並選手が《貴族の教主》から《野生のナカティル》、《梅澤の十手》と流れるように展開し、一気にプレッシャーをかけるが、攻撃にあわせて黒田選手が《悪魔の戦慄》をキャスト。そして“続唱”効果によりライブラリーから《超起源》がめくられ、唱えられた。

 《超起源》の効果でお互い、手札のカードを順番に戦場に出していく。両者ともまずは手札の土地を戦場へ。続いて黒田選手は《ボガーダンのヘルカイト》を選び、本並選手はその能力を無効化する《時間の孤立》を選ぶ。しかし黒田選手の手札からはさらに《テラストドン》が現れる。《テラストドン》の能力で《梅澤の十手》、《時間の孤立》が破壊され、さらに《ボガーダンのヘルカイト》によって《貴族の教主》、《野生のナカティル》も除去されてしまう。

 この結果、黒田選手の下には《ボガーダンのヘルカイト》、《テラストドン》、そして《テラストドン》の能力で自身の土地を破壊して得た3/3の象トークン、本並選手には《時間の孤立》、《梅澤の十手》の代価として与えられた2体の象トークン、という状態になる。

 本並選手は9/9の《テラストドン》を象トークン2体と《稲妻》で除去し、さらに5/6の《タルモゴイフ》を盤面に追加。ダメージレースを挑む。さらに2枚目の《時間の孤立》で再度《ボガーダンのヘルカイト》を無力化しようとするが、ここで再び“続唱”呪文の《暴力的な突発》から《超起源》が唱えられ、黒田選手は《絶望の天使》を登場させる。これにより再度《時間の孤立》が破壊され勝負あり。黒田選手が初戦をものにする。

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▲巨大クリーチャーへの対抗策である《時間の孤立》によって対抗する本並選手だったが、いずれも実らず。“ハイパージェネシス”は《テラストドン》、《絶望の天使》など、ただ巨大なだけでなく相手に干渉できるクリーチャーによって高い制圧力をほこる。

 2本目。巻き返したい本並選手は痛恨の2マリガン。黒田選手の初手は《叫び大口》に《炎渦竜巻》。“超起源”コンボには絡まないものの除去が満載の手札をキープ。

 本並選手の《タルモゴイフ》、《野生のナカティル》を黒田選手は《叫び大口》で続けて除去し、そのまま《叫び大口》で攻撃を始める。これ対して本並選手は《稲妻》で1体を除去し、そして自分のターンで《月の大魔術師》を召喚。特殊地形だらけの黒田選手の土地を《山》に変える。さらに《長毛のソクター》、《聖遺の騎士》と巨大クリーチャーを連打して、一気に攻勢に出る。

 しかし《叫び大口》による絶え間ない攻撃でライフを4まで減らしていた本並選手に対し、黒田選手は《叫び大口》での攻撃後《暴力的な突発》を唱える。普段はその“続唱”効果のみが求められているこの呪文だが、“攻撃クリーチャーのパワーを1上げる”という効果が決め手となり黒田選手が準決勝へ進出する。

 負けてしまったものの、2マリガンに加え、初動4ターンという遅さからでもあと一歩で逆転というところまで相手を追い詰められる“Zoo”の打点の高さに驚かされる試合だった。

 この時、他の卓はすでに決着がついておりコントロール型コンボデッキの“DDソプター”を操る森勝洋選手、同じくコントロール要素のあるコンボデッキ“スケープシフト”の石原隆志選手、緑白黒ビートダウンデッキの“ドラン”の金民守選手がそれぞれ勝利し、準決勝へと駒を進めた。

■ 準決勝 森勝洋選手 VS 石原隆志選手 ■

 準決勝は2005年世界チャンピオンの森勝洋選手と、石原隆志選手の試合をお伝えする。

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 1本目。先手の石原選手が2マリガンという苦しいスタート。さらに追い打ちをかけるかのように森選手が《思考囲い》を唱え、序盤の要の1つである《桜族の長老》を捨てさせる。土地と《謎めいた命令》2枚という手札になってしまった石原選手を尻目に、森選手は《闇の腹心》で自身の手札を充実させ、そのまま《暗黒の深部》、《吸血鬼の呪詛術士》によるコンボから20/20飛行トークンを生成。すみやかに勝利をおさめた。

 2本目も石原選手は1マリガンスタート。1ターン目に《明日への探索》を待機させ、ターン終了。しかし森選手は再びの《思考囲い》から、まず軽量カウンターである《差し戻し》を奪い取る。そして間髪いれずの《強迫》で今度は《死亡/退場》を捨てさせる。手札をボロボロにされた石原選手は《思案》で体勢の建て直しをはかるが、森選手はさらに《思考囲い》を唱え、石原選手の手札に対抗策がないことを確認してから《弱者の剣》、《飛行機械の鋳造所》によるコンボを完成させ、大量のライフと1/1飛行トークンの量産体勢を整える。

 なんとか粘りたい石原選手だったが、森選手はダメ押しの《精神を刻む者、ジェイス》で石原選手のドローをコントロールし、《根絶》で《風景の変容》も追放する。打つ手がなくなった石原選手は投了。終始、石原選手を圧倒した森選手が決勝戦への切符を手に入れた。

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▲《思考囲い》、《強迫》、《精神を刻む者、ジェイス》など、コントロールカードの凶悪さが際立った試合となった。

■ 決勝戦 森勝洋選手 VS 黒田正城選手 ■

 もう1つのテーブルでは黒田正城選手が勝ちあがり、決勝戦は森勝洋選手と黒田正城選手という、ビッグネーム同士のカードとなった。2人は過去にチームを組んだこともあり、非常に和やかなムードでお互いのデッキのシャッフル。しかし、手札が配られると一気に真剣な表情に。

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 1本目は森選手の《思考囲い》からスタート。黒田選手の手札を確認すると《テラストドン》、《アクローマの記念碑》といった重量級がそろっているものの、肝心の“続唱”呪文はない。森選手は、マナをのばす《猿人の指導霊》を捨てさせ、ターンを終了する。

 “続唱”呪文待ちの黒田選手が土地を置くだけで序盤を終えていくのに対して、森選手は3ターン目までに《弱者の剣》、《飛行機械の鋳造所》をそろえ、ゲームを決めに行く。黒田選手は《忘却の輪》で《飛行機械の鋳造所》を追放するが、対応して5体の1/1トークンが生み出されてしまう。2ターンほど、有効なカードを引き込まない黒田選手を森選手のトークンが襲い、ライフを奪っていく。さらに森選手は《思考囲い》で、黒田選手の手札を確認、それに対して黒田選手は温存していた《ボガーダンのヘルカイト》を唱え、トークンを壊滅させる。しかし、森選手は2枚目の《飛行機械の鋳造所》を戦場に出し、トークンの量産を再開。対抗策を失った黒田選手は投了し、森選手が先取する。

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 2本目。後手の森選手が1マリガンからスタート。森選手は2ターン目に《思考囲い》を撃つが、2枚の“続唱”呪文と《ボガーダンのヘルカイト》、《強迫的な研究》という黒田選手の充実した手札に渋い表情を見せる。結局、手札を引き増す《強迫的な研究》をディスカードさせ、ターン終了。

 その後、お互いしばらくドローしてターンを終え、ゲームが動いたのは黒田選手の第4ターンの終了時。森選手が《知識の渇望》を唱えたところに、黒田選手がインスタントの“続唱”呪文《暴力的な突発》を合わせ、ライブラリーから《超起源》が唱えられる。まず黒田選手が《ボガーダンのヘルカイト》、森選手が《暗黒の深部》、続いて黒田選手は《絶望の天使》、森選手は《闇の腹心》と《島》を戦場に出す。

 《ボガーダンのヘルカイト》によって《闇の腹心》が除去され、《絶望の天使》は森選手の《沈んだ廃墟》を破壊し、色マナを拘束する。一気に黒田選手有利の状況になったかと思いきや、森選手は《知識の渇望》によるドローで《吸血鬼の呪詛術士》を引きあて、さらに迎えた自分のターンで《トレイリア西部》をドロー。この《トレイリア西部》を“変成”能力で《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》に交換する。これによって黒マナが自由に得られるようになった森選手は《吸血鬼の呪詛術士》を唱え、《暗黒の深部》とのコンボで20/20飛行トークンを誕生させる。

 これで一気に苦しくなった黒田選手。20/20トークンの攻撃を《ボガーダンのヘルカイト》、《絶望の天使》でしのぎ、何とか解決策を引き込もうとする。《テラストドン》を引いた黒田選手は《絶望の天使》でブロックを行ったターンの終了時、《暴力的な突発》から《超起源》を唱え、9/9の《テラストドン》を戦場に。さらに《テラストドン》の能力で自分の土地を破壊し、3体の3/3トークンを得て18点の一撃で逆転を狙うも、森選手はトークンを一掃する《残響する真実》を持っていた。

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▲完璧な対抗策を持っていた森勝洋選手の勝利。決勝戦はお互いにコンボを決め、情勢が常に二転、三転する名勝負となった。

 こうして、2-0で勝利をおさめた森勝洋選手が、見事グランプリ横浜優勝を飾った。以下に、決勝を戦った森勝洋選手と、黒田正城選手のショートインタビューを掲載する。

■ 森勝洋選手インタビュー ■

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――おめでとうございます。優勝した今の気分はいかがですか?

森選手:ありがとうございます。決勝は黒田さんが相手で、厳しいマッチでした。勝利することができてホッと一息。疲れたなという感じです。

――森さんは、去年末まで半ば引退状態とのことですが、これを機にまた精力的にトーナメントに参加されるのでしょうか?

森選手:いや、そういうことはないです。参加はしますが、1日練習して、それで勝てたらいいなって、そのくらいです。

――今回も1日の練習で優勝されたということですか。

森選手:はい。

――今のところはプロツアーや世界選手権といった目標は特にないと。

森選手:そうですね。できるだけ出たいんですが、あまり時間が取れないので、気楽な姿勢でのぞみたいと思っています。

――ありがとうございました。

■ 黒田正城選手インタビュー ■

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――おめでとうございます。優勝された森選手とは親交があるそうですね。

黒田選手:そうですね。

――今回、お2人のデッキの相性のようなものは、どうだったのでしょうか?

黒田選手:かなり悪いですね。これまでにエクステンデッドの負け試合は大半があのデッキ(DDソプター)です。

――なるほど。その黒田さんのデッキですが、どういったチョイスだったのでしょうか?

黒田選手:僕は天使とドラゴンが入ってないデッキを使いたくないんですよ(笑)。でも、ドラゴンも天使も競技環境では重すぎてなかなか使われないんですね。その点“ハイパージェネシス”デッキはコストを無視できるので。そういう基準でデッキを選びました。

――楽しさ重視、ということですね。

黒田選手:そうですね。まぁ、楽しくてナンボなんで。

――今年のトーナメントに対する意気込みを聞かせてください。

黒田選手:できるだけ多くの大会に出たいですが、海外はちょっと(笑)。限られた時間の中で、いい成績を残せるよう頑張りたいと思います。

――ありがとうございました。

 周囲のプレイヤー、ジャッジまでが「森は天才だ」と口をそろえて言うように、今回の大会で森は天才の風格をぞんぶんに見せつけ、優勝をさらっていった。本人はあくまで気楽なスタンスでと言っているが、今後の活躍に期待せざるを得ない。おめでとう、森勝洋選手!! また、今回は残念ながら準優勝という結果に終わった黒田選手だが、その表情は明るかった。恐らく、この2日間思いっきり『MTG』を「楽しんだ」のだろう。筆者もこの「楽しむ」というスタンスを忘れないようにしたい、と改めて思わされた。

 こうして本選、サイドイベントともに大きな盛り上がりを見せた“グランプリ横浜”は全日程が終了。次の国内グランプリは6月に仙台で開催される。フォーマットはスタンダードということで、さらに参加しやすいイベントになることだろう。

 というわけで、今回は誰にでも扉が開放されている“グランプリ”をレポートしてみた。まだ行ったことがないという『MTG』プレイヤーは、ぜひ一度訪れてみてほしい。きっと『MTG』の新しい魅力に取りつかれてしまうはずだ。

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[Text by ねこひげ合同会社/ゆば]

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