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2010年4月15日(木)

没入するシナリオを生むために! 『龍が如く』シナリオを手掛ける横山さんに迫る

文:電撃オンライン

――シナリオ作成する際、キャラクターを作り、シナリオ全体の流れを構築していくのでしょうか? 逆にシナリオを考え、キャラを配置していくのでしょうか?

 特に決まった方程式はないですね。谷村はシナリオの途中で生まれましたし、秋山や冴島はなんとなくイメージがありました。いつもそうですが、私はまずプロットの足がかりとして、登場キャラクターの人物相関図を作ります。

 最初はつながりとか関係性は考えず、ババーっと桐生や遥といったシリーズのキャラ、それに実在の役者さんの画像を並べていきます。画像をなんとなく並べて、何か足りないと思えば、女性を足したり、他のキャラを作ったりしていく。リリもそうして生まれました。そして並べた画像を線でつなぎ、関係性を考え、シナリオの流れを構築していきます。僕独自の作り方かもしれませんね。ドラマの座組み(=キャスティング)を考えているような感じです。TV局のプロデューサーみたいな(笑)。

――このキャストでドラマをしたいというノリですか?

 相関図を見ながら「これいいなあ~、こんなドラマあったら観たいなぁ~」とか言いながら(笑)。貫禄が足りないなら渡哲也さんを持ってきたり、若さが足りないなら旬な人を配置してみたり。「ラストを締める人がいないなあ」と思ったらそういう人を足してみたりする。もちろんキャストは後で変わるんですが、相関図がなんとなく形になってから、設定を考えます。

――最初に構想していたキャストでいくこともあるのでしょうか?

 桐谷健太さん(城戸武役)と遠藤憲一さん(杉内順次役)はそうでした。毎回、最初に思いついたキャストには大体オファーするのですが、思い通りとはいきませんね。逆に、全部が最初の構想のままだったら、大変なことになりますが(笑)。

『龍が如く4 伝説を継ぐもの』 『龍が如く4 伝説を継ぐもの』
▲東城会の3次団体・金村興業の構成員である城戸を演じた桐谷さん(左)と、神室署捜査一課刑事の杉内を演じた遠藤さん(右)。

――今回、キャスティングする上で、印象深かった人はいますか?

 北大路欣也さん(宗像征四郎役)ですね。北大路さんはこだわりがすごかった。セリフもそうですし、物語全体への質問がとにかくすごい。それだけ真剣に役者というお仕事をされているということだと思います。最初のお打ち合わせで数時間話し合い、『龍が如く』の世界観をお伝えし、さらに収録の前日の深夜までファクスでやりとりしながら、台本の調整などもしました。

 収録当日も数時間、1対1で打ち合わせしています。ただ、収録自体はものすごく早くて、スムーズに進みました(笑)。

『龍が如く4 伝説を継ぐもの』 『龍が如く4 伝説を継ぐもの』
▲北大路さんが演じたのは、警視庁副総監の宗像。ノンキャリアでありながら役職の壁を越え、副総監にまで昇りつめた伝説的な人物だ。

――動き出すと早かったんですね。先ほどの話ですが、リリが相関図から生まれたというのには驚きました。

『龍が如く4 伝説を継ぐもの』

 きっかけは相関図ですね。そこから、どうやってストーリーやキャラに絡ませるかを考えていきました。名越(総合監督の名越稔洋さん)から「4人の主人公でやろう」と言われたんですが、個々のエピソードは書けても、それぞれが独立していてもしょうがない。当たり前ですが、それらを何かで結ぶ必要があるので、その役周りを“女性キャラ”に担当してもらおうと。単純に女性キャラのほうが、あの信念の強い男たちが動いてくれそうな気がしたので。

――確かに。個人的にですが、リリの立場が相手に応じて変化するのは心に残りました。

 せっかく主人公が複数人いるので、主人公毎に1人のキャラが違う見え方をするというのはやらないといけないと考えていました。秋山から見た場合は恋人、冴島は肉親である妹、谷村は利用しないといけない関係。多面的に1人の人間を見せることで、複数主人公を採用した本当の意味がでてくるのではないかと。

――キャラクターをつなぐ存在といえば、城戸も同じように感じたのですが?

 城戸は途中から役割が変わったんです。実は最初は若衆Aという端役で、秋山編冒頭の解説者としての役割のみを担うキャラの予定だったのですが、書いているうちに僕がおもしろくなってきちゃって(笑)。1章終わった時点で「このキャラは重要になるな」と感じ、そのまま大きい役に昇格させました。

 ただ、今作はシリーズ物でありながら、新作的な要素が多いので、物語序盤に解説者がいたほうが話を理解してもらいやすい。リリは解説者にはなれないので、城戸が解説者になっていくのは、自然な流れだったと思います。

『龍が如く4 伝説を継ぐもの』 『龍が如く4 伝説を継ぐもの』 『龍が如く4 伝説を継ぐもの』
▲さまざまなシーンに登場する城戸だが、最初はただのチンピラだったという。

――真島が2部で大きな存在として出ていますが、彼ありきでシナリオを作られたのですか?

『龍が如く4 伝説を継ぐもの』

 真島の過去というのはシリーズ通じてのファンの方の「もっとも観たい」部分であると感じていたので、どういう形であれ、入れようとは思っていました。もともと、真島メインで過去の神室町をスピンオフとして作りたいと思った時期もあったくらいですしね(笑)。また本作の制作当初も、4人の主人公の中の1人として真島がいてもいいという話だったんですが、「危険度が高い」と思って自粛したのを覚えています。

――それは新規ユーザーを考えてですか?

 逆で、シリーズファンを考えてのことです。よくユーザーの方からも「真島のスピンオフがやりたい!」というお声を耳にするんですが、いざ実際に真島を主人公として新作を作ったら、「俺が思っていた真島じゃない!」ってなるのではないかと。恐らく皆さんが期待している真島というのは、“破天荒”で“予測不能”、それでいてカッコいいというキャラクターだと思います。

 しかし主人公=操作キャラ、となるとそういういい部分を削ぎ取ることになってしまうのではないかと。主人公というのは、ユーザーの方が“考え”“動かす”ものですので、真島っぽい行動を取らない可能性が高い。たとえば、パチンコ屋に入って玉が出てこなければ「出ないやんけ~! ボケがぁ~~!!」って叫んで、台を蹴り倒すような真島をプレイヤーは見たい。でも主人公だったらそれをやらない、というかできない(笑)。

――それはやりませんね(笑)。

 ですよね? 真島は一般的な思考にアジャストしないような、意外なことをするからおもしろい。キャバクラにいって、すごくキレイな女の子が出てきたのに、引っぱたいて「チェンジや~~!」って言いそうなのが彼の魅力です。でも、ユーザーさんは多分そうしませんよね? 真島は「客観視してこそ生きる」キャラなんですよ。

 ファンの方のスピンオフを見たいというお気持ちは理解できるのですが、あれはドラマや映画をみるのと同じ感覚なのではないかと。しかしゲーム、特に『龍が如く』は主観視点で進めるタイプのゲームなので、真島を主人公にするのはゲームプレイの根幹を揺るがす非常に危険な挑戦になってしまう。なので今回は脇に回ってもらいました。

『龍が如く4 伝説を継ぐもの』 『龍が如く4 伝説を継ぐもの』
『龍が如く4 伝説を継ぐもの』 『龍が如く4 伝説を継ぐもの』
▲人気キャラゆえに、起用に関して気を遣ったという真島。これまで描かれたなかった若き日の真島の姿を見ることができる。

――右目を失うエピソードは、今回考えたのでしょうか?

 ……これは言っていいのかな? 今回考えました。実は『龍が如く2』では、ボツになったサブシナリオの中に、眼帯の謎を解き明かすものがあったんですよ。内容は明かせませんが(笑)。

――それは驚きです。浜崎がかなり芯のあるキャラになっていましたが、前作から出そうと考えていましたか?

『龍が如く4 伝説を継ぐもの』

 僕の個人的な思いなのですが、『龍が如く3』ではシナリオ面で、色々やり残したこともありました。それに決着をつけたかったので、浜崎をもう1度出そうとたくらんでいました。あと、浜崎は桐生との絡みがある数少ないキャラの1人ということもあります。

――谷村を、自分の目的のために行動する刑事にしたのはあえてですか?

『龍が如く4 伝説を継ぐもの』

 まっとうな刑事を書こうという気はサラサラなかったので、最初からクセのあるキャラクターにしたいなと。谷村は、宗像と対比させて作っています。秩序や決まりというのは、誰かが決めているけど「なぜそれを守らないといけないんだ?」というキャラが欲しかった。それが谷村です。刑事なので率先して社会的な規則を守らないといけないんですが、率先してやぶっている。彼は自分の中の正義のためだけに動いているんです。刑事になったのも正義を果たすためではなく、目的を果たすための道具なので。

 これは僕の持論というべきものなんですが、物事のよしあしは「自分で考えて判断しよう」というのがあるんです。世間で当たり前のように言われている「お年よりは大切に」とか「女性は守る」とかそういうことを、理由も考えずに鵜呑みにして欲しくない。ちゃんと理由を考えて、なぜそうするべきなのか考えてほしい。

 谷村はそういう1つ1つのことを、自分で考えて決めて動いているので、そういった谷村の信念が、遊んだ人になんとなく伝わっているといいなと思っています。

――名前が正義なのもそこが理由ですか?

 そうです。実は最初は、今回の新主人公3人すべてに“義”を背負わそうと思っていたんですよ。秋山仁義、冴島道義、谷村正義、という具合に。ただ、仁義と道義の区別がつきにくいし、勘違いされそうだったので、他の2人は変更しました。

→意識するのは情報の共有!?
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(C)SEGA

データ

▼『龍が如く4 伝説を継ぐもの』
■メーカー:セガ
■対応機種:PS3
■ジャンル:A・AVG
■発売日:2010年3月18日
■価格:7,980円(税込)
 
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