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2010年4月22日(木)

サービス5周年&“G12”アップデートを迎えて、『マビノギ』開発インタビュー

文:電撃オンライン

 4月10日にサービス5周年記念イベントが行われた、PC用MMORPG『マビノギ』。当日は大型アップデートG12に関して、ファミリーシステムや新たな都市といった最新情報が発表された。

 メインストリームをきちんと進め、すでにG12の内容を楽しんでいるプレイヤーも多いと思われる。そこで、今回NEXON Corporation devCATライブ室リーダー マビノギプロデューサー Lee Heeyoung(イ・ヒヨン)氏、同マビノギ開発チーム リーダー Sung-joon Moon氏(ムン・ソンジュン)氏、同マビノギ海外ライブチーム リーダー Minsung Song(ソン・ミン)氏、ネクソン運用部 ゲーム運用チーム 平原亮太氏、同事業部マーケティング1チーム 坂下智久氏に、イベントの感想を含めインタビューを行ってきたのでお伝えしよう。

『マビノギ』
▲左からネクソン 事業部マーケティング1チームの坂下智久氏、同ゲーム運用チーム平原亮太氏、通訳のKim Han Earl氏、NEXON Corporation devCAT マビノギ開発チーム リーダー Sung-joon Moon氏、同マビノギ海外ライブチーム リーダー Minsung Song氏、同ライブ室リーダー マビノギプロデューサー Lee Heeyoung氏。

──まず、昨日(4月10日)の『マビノギ』5周年記念イベントの手ごたえはいかがでしたか? 毎年取材させていただいてますが、何となく発表内容も含めアッサリした感じが強かったですけれど。

坂下氏:毎年この時期にオフラインイベントを日本で開催しており、できるだけ時期を合わせて大型アップデートを行うようにはしています。ただ、猫島というマビノギ初の日本独自コンテンツの発表をさせていただいた去年に比べると、そのように感じられる方もいらっしゃるのかもしれませんね。

──開発陣の皆さんは、5周年記念イベントには皆さんいらっしゃいませんでしたが、今回の来日目的を教えてください。

Sung-joon Moon氏:日本のプレイヤーが、『マビノギ』を熱心にプレイしてくださっていることは聞いていましたが、直に会って見たいと思いまして、イベントのタイミングに合わせて来日しました。ステージには出ませんでしたが、イベントの様子はすべて見ていましたよ。

Lee HeeYoung氏:チャプター4のアップデートを控えて、ディレクターがSung-joon Moonに変わりましたので、『マビノギ』の日本運営スタッフへの挨拶も兼ねています。

『マビノギ』 『マビノギ』

──では、次の大型アップデート“G12”について、少し詳しい話を聞かせてください。G12はG9から続くチャプター3最終章ということですが、プレイヤーにとくに注目してほしいポイントや、思い入れのある部分がありましたら教えてください。

Sung-joon Moon氏:これまでのメインストリームは、神と人間の対立が中心でしたが、G12は神々の関係を描いているところに注目してください。男性の神様が追加されるのも初めてですね。今までにないシナリオ展開に期待してほしいです。

──サブタイトルになっている“英雄の帰還”について、イベントではあまり多くは語られませんでしたが、バックストーリーについてもう少し聞かせてください。

Sung-joon Moon氏:“英雄の帰還”はチャプター3の最終章ということで、今まで神の力を得てきたプレイヤーが、その力にともなう責任と、そして人間として守るべきものは何なのか? といったことをメインに構成しています。それから神という存在が絶対的に正しい、善なのか? といった疑問をプレイヤーが自ら探っていくようなシナリオとなっています。

──かつてエリンの神々がいたという都市“ファリアス”が追加されますね。ここはストーリーを進めていかないと入れないエリアなのでしょうか? 

Lee HeeYoung氏:初めてファリアスに行くためには、やはりメインストリームを進めなければなりません。ただし、その後は特定の条件を満たすことで何度でも行き来可能となります。

──つまり、ファリアスへ入るためには2つの前提条件がある、ということですか。

Sung-joon Moon氏:細かい部分については、プレイヤーさんの楽しみを奪ってしまいますので実際にプレイしていただいて……ということで、あまりお話しないほうがよいでしょう(笑)。

──では、新しい遺物システムについて伺います。これはイリア大陸で行える既存の発掘システムとは何が違うのでしょうか。

『マビノギ』

Sung-joon Moon氏:イリア大陸での発掘とは異なり、神の都市で見つけた宝物を、人間でも使えるようにするために“復元”する、というシステムになります。

──イベントでのムービーでは、復元した遺物をスロットに装備できるようですね。ステータス値アップなどの効果はありますか。また、アップデート実装の時点で、遺物用のスロットはすべて解放されているのか、それとも何か前提条件があるのでしょうか。

Sung-joon Moon氏:主に神にまつわる能力が上がります。例えば半神化スキルの効率がよくなる、などですね。遺物スロットはメインストリームをクリアしてからの解放になります。

──そういえば新エリアのファリアスが開けることで、称号は増えないんですか?

Sung-joon Moon氏:ファリアス関連ではありませんが、それ以外のコンテンツ部分ではちゃんと新称号がありますので、安心してください。

──では次に、イベントでも盛り上がっていた“ファミリーシステム”について教えてください。まず、どうしてギルドやフレンドとは違う、家族というシステムを作ろうと思ったのか、聞いてみたいですね。ただ結婚できるだけでは寂しいという声が、プレイヤーから強かったのでしょうか?

Lee HeeYoung氏:『マビノギ』は生活系MMORPGとして、生活感を重視しているゲームです。そこで、ゲーム内で家族を作りたいという要望はありました。ただ、キャラクター感で子供を作るわけにはいきませんので、養子という制度を取り入れたわけです。また、『マビノギ』の初心者にとって、ギルドというのは規模が大きすぎて少し親しみにくいようでして、もう少しこじんまりとした、分からないことがあったらすぐ聞ける、助けてあげられるコミュニティとしてファミリーシステムを実装しました。

『マビノギ』 『マビノギ』

──なるほど、ファミリーシステムの基盤は夫婦、つまりお父さんとお母さんの2人ですが、どちらかが長期間ログインしなくなったり、離婚や性別転換を行った場合はどうなるんでしょう? 養子も一方的に解除され、その……家庭崩壊になるのかが大変気になります。

Lee HeeYoung氏:確かに様々な状況が想定できますよね。例えば養子になった子供達同士は結婚できないのか? ですとか。まぁ、あまり無理なことはできないようになっています、とだけ言っておきます(笑)。

──同性同士の結婚も無理ですよねぇ。

Lee HeeYoung氏:それは無理ですねぇ。

──家長だけが1日1回、ファミリーメンバーを全員強制招集できるなど、特殊なスキルもあるとのお話でしたが、それ以外に何か家族となるメリットはありますか。

Lee HeeYoung氏:このシステム自体、何かメリットを求めるものではなく、プレイヤー同士で一種のロールプレイを楽しんでいただくためのものです。ですからメリット/デメリットは特にありません。

『マビノギ』

Sung-joon Moon氏:家族になると“誰それのお母さん”、“誰それの妹”といった称号も付きますから、そいうったロールプレイを楽しんでほしいです。

──日本人はそういったロールプレイを好む傾向も強いですし、ますます結婚したくなるプレイヤーが増えそうですね。いま、ゲーム内にはパーティ募集掲示板がありますが、それとは別に“婚活掲示板”を用意するというアイディアはどうでしょう。GM主催のお見合いイベントですとか。

Sung-joon Moon氏:韓国でもパーティ募集の掲示板で、お嫁さん探しをする人はいるんですよ。日本のプレイヤーの状況を見て、独自システムとして入れることも検討しておきます。

──家長だけが決定できる家訓は、イベントではサンプルとして“無駄な殺生を禁ずる”なんていうのが発表されていましたが、他にどんな家訓がありますか。

Sung-joon Moon氏:他には“質素倹約”がありまして、これはどんなアイテムでも捨てると叱られます。

──う、うーん、殺生禁止とかアイテム捨てられないとか、プレイする上では厳しい家訓が多いですね。もうちょっと優しい家訓はないですか。

Sung-joon Moon氏:“女性に優しく”という家訓もありますよ。

──あ、それは素晴らしいですね(笑)。ところで養子の枠は最大6人ですが、これは最初から一度に6人養子に迎えられますか。それとも二人目以降は、何か条件があったりするのでしょうか。

Sung-joon Moon氏:2人目までは誰でも養子にできますが、3人目からは誠意の表明としてお金が若干……必要になります。

──なるほど、子沢山ファミリーに無くてはならないものはお金ですしね……。養子になったキャラクターが、「自分も結婚したい」と思った場合、家族を離れて一人だちするんですか? もう1つ、エルフとジャイアントが養子のなかで混在というもの可能なんでしょうか。

Lee HeeYoung氏:いえ、その必要はありませんよ。養子のまま結婚して、自分が家長となった状態の新しい家系図を持つことが可能ですから。ファミリーシステムはわりと柔軟でして、人間、エルフ、ジャイアントが混在したファミリーももちろん築けます。昔はエルフとジャイアントの対立が強調して描かれてきましたが、最近はそれも少し弱まってきましたから。

『マビノギ』 『マビノギ』

──それでは話を変えて、次に新武器のタワーシリンダーと新スキルヒートバスターについてお願いします。映像を見た限り、今までにない飛距離と威力がありましたが、そもそもタワーシリンダーはどういった使い方を想定して開発されたのでしょう。使用する結晶もちょっと気になりますが。

Sung-joon Moon氏:ヒートバスターは中級魔法、または錬金術の上級スキルに相当する威力があります。ただ、ヒートバスターは加熱されないと使えないという条件があり、他の錬金術スキルを使い、シリンダーが熱くなると初めて威力のある1発が撃てるようになります。ですので、戦闘に強弱のリズムがつき、ダイナミックな戦いができるでしょう。モンスターの数が多いダンジョンなどで威力を発揮できると思いますよ。結晶は、今シリンダーが熱くなっている時といいましたが、火の結晶のみ使用します。

──G12とは直接関係ありませんが、オフラインイベントで“ハウジング”システムについても少し触れていましたね。韓国での実装済みのハウジングは、まだまだ日本への導入は先の話になりそうでしょうか。生活系MMOとして、やはりハウジングは欠かせないと個人的には思っています。

平原氏:そうですね、当初は日本のプレイヤーに合わせた独自のシステムの形でハウジングを実装する予定でした。ただ、開発が難しいという話で、現在韓国や中国で実装されたものと同じ形で日本にも導入される予定です。今は、実装のタイミングを慎重に考えているだけです。

──では、実装しようと思えばいつでも可能というわけですか。例えば2010年内は無理ですか?

平原氏:開発側とも話しあっている途中でして、実装時期についてはまったく未定です。

──プレイヤーも韓国・中国におけるハウジングシステムに、色々と難があることは理解しています。そのまま日本に導入されるよりは、「よりよい形で、いつの日か実装してくれるといいな……」と恋焦がれているような状況です。何といいますか、ハウジングがやってくれば、もうそれだけで満足というか。

平原氏:我々もそのあたりは重々承知しておりますが、今しばらくお待ちください。

──さて、ちょっと聞きにくい質問を次にしますが……。今回のアップデートについてではなく、普段『マビノギ』プレイヤーが改善してほしいと思っていることを2つ、この場で聞かせてください。1つ目はフィールドボスのポップについてです。出現時間が現在はチャンネルごとの固定になっていますが、完全ランダムにはならないのでしょうか? 時間が分かっているためにボス出現タイムには、身動きが取れないほどのラグが発生しています。

『マビノギ』

Lee HeeYoung氏:おっしゃる通り現在はチャンネルごとのボス出現時間が決まっていますが、これは逆にラグを防ぐためです。

 以前は完全ランダムでしたが、あるチャンネルにボスモンスターが出現すると、すべてのプレイヤーがそのチャンネルに集中してしまい、今以上に混雑してしまったのです。その後修正し、実はG8でレッドドラゴン実施の際、もういちど完全ランダムシステムに戻してましたが結果は同じでした。ですので、日本は修正したチャンネルでの時差沸きシステムをあえて採用していますし、ランダムに戻すことはないでしょう。

──分かりました。次に銀行についてですが、現在レアリティの高いアイテムですと100万単位の金額でプレイヤー間取引がなされています。その結果、銀行の貯蓄上限を簡単に上回ってしまいます。上限を引き上げる、あるいは無くすことはできないのでしょうか?

Lee HeeYoung氏:小切手は当初100万ゴールドまでしかありませんでしたが、今は500万ゴールドまで対応しています。また、長く『マビノギ』で遊んでくれているプレイヤーには少なく感じるかもしれない貯金額も、これから初めてという新規プレイヤーにあまり大きな数字を見せるのは、よいことではないでしょう。

 もう1つ、表示される数字が増えるとシステム面での負荷が増えるリスクがあります。実際2004年頃の韓国版『マビノギ』では、銀行のウィンドウを開くだけで5分以上もかかった時期があり、影響が大きいことからも難しいでしょう。

──確かに小切手という便利なシステムはありますが、手数料の高さを考えると、何か別の手段を用意してほしいのが本音ですね……。ところで、Minsun SongさんはG13から新たに開発チームのリーダーに就かれたそうですが、リーダーを変えねばならぬ理由があったのですか。

Lee HeeYoung氏:いいえ、そういうわけではありません。『マビノギ』ではチャプターごとに必ずディレクターを変えているんですよ。私自身の考えで、ほぼ2年周期でディレクターが変わるのですが、やはり同じタイトルの開発に長く関わりすぎるとマンネリ化が避けられません。ゲームに新鮮な空気をもたらすためです。

『マビノギ』 『マビノギ』

──MMORPG全体で見ると『ウルティマオンライン』がサービス開始から12年目、『リネージュ』は日本サービス開始から7年目に突入しており古参タイトルと呼ばれるようになりました。『マビノギ』の5周年というのは、古参とは言えませんが中堅タイトルとしては十分なサービス期間です。こんなにも長くプレイヤーに愛され、育つことができた『マビノギ』ならではの魅力、おもしろさを教えて下さい。

Lee HeeYoung氏:一つは先ほど申し上げた、マンネリ化防止のためにディレクターを2年ごとに変えている点にあるでしょう。国内/国外を問わず生活系MMORPGは数少ないですから、そこも『マビノギ』ならではの強みだと信じています。

──それでは最後に電撃オンラインの読者に向けて、皆さんからメッセージをいただけますでしょうか。

Sung-joon Moon氏:5年間も変わらず『マビノギ』を愛してくださり、ありがとうございます。これからも『マビノギ』のアップデートが待ち遠しくなるようなコンテンツを提供できるよう、頑張っていきます。

Minsun Song氏:もう5年、さらに10年と皆さんが『マビノギ』で楽しく遊べるよう努力していきます。

Lee HeeYoung氏:ディレクターは2年ごとに変わりますが、プロデューサーの私はずっと同じです(笑)。『マビノギ』ユーザーと一生、一緒に歩み続けていきたいです。

──本日はありがとうございました。

『マビノギ』 『マビノギ』 『マビノギ』

Developed by devCAT
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データ

▼『マビノギ』
■メーカー:ネクソン
■対応機種:PC(対応OS:Windows 2000/XP)
■ジャンル:RPG(オンライン専用)
■サービス開始日:2005年4月26日
■プレイ料金:無料(アイテム課金)

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