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2010年5月1日(土)

『アーサーと魔王マルタザールの逆襲』GACKTさんのインタビューを2日連続掲載

文:電撃オンライン

 4月29日から公開されている映画『アーサーと魔王マルタザールの逆襲』。劇中でマルタザールの日本語吹き替えを担当しているGACKTさんのインタビューを、前後編にわけて掲載する。

『アーサーと魔王マルタザールの逆襲』

 『アーサーと魔王マルタザールの逆襲』は、リュック・ベッソンさんが監督を務めるファンタジー映画。CGアニメと実写を融合させた作風が特徴だ。本作は全3部作の第2章で、2007年に公開された第1章『アーサーとミニモイの不思議な国』の続編となる。眠りについたはずの魔王マルタザールから王国を救うべく、再び立ち上がる少年アーサーの活躍が描かれる。

 『アーサーとミニモイの不思議な国』に続き、劇中でマルタザールの日本語吹き替えを担当しているGACKTさんのインタビューを、電撃オンラインで2回に分けて掲載する。後編は明日5月2日に掲載する予定なので、ぜひあわせてチェックしてほしい。

『アーサーと魔王マルタザールの逆襲』 『アーサーと魔王マルタザールの逆襲』
▲音楽活動を中心に、俳優としても活躍しているGACKTさん(左)。『アーサーと魔王マルタザールの逆襲』でも、前作に引き続き魔王マルタザール(右)を演じている。

――前回もマルタザール役で声優として出演されましたが、どういった経緯で、本作に参加されることになったのですか?

 最初は、「こういうおもしろい役があるんだけど」ということで、マルタザール役の話が来たんだ。僕は声優という仕事にもともと非常に興味があったし、特に、「自分が1人の大人として、子どもたちに対して何かできることがないか」ということを考えるようになっていった。だからなおさら、子どもたちに対してアプローチできる今回のような仕事は、優先して引き受けるようにしている。それが参加した大きな理由だね。

――リュック・ベッソン監督から直接オファーがあったのですか?

 一番最初は、リュック・ベッソンからのオファーということではなかったんだ。シリーズ1作目の時に、映画会社から話が来たんだけれど、声を録音した後でリュックがそれを実際に聴いて、とても気に入ってくれた。それで、その後に彼が僕の資料を見たときに、「えっ、こんな人なの?」と、声と顔のギャップに驚いたみたい(笑)。彼は僕のことをもっと大きくて、ごつい人だと想像していたみたいで、「こんな青年なの?」と言われてね。「そんなに若くないよ」って言ったんだけれど(笑)。

 その後、実際にリュックと会ったんだけど、すごく気が合って、「アーサーは実はこういう展開でさ……」っていう話もして、「またやってくれたらうれしいな」って、彼はその時に言ってくれていたんだ。それで今回、2作目の話で彼から指名されてね。彼は、クリエイターとしても尊敬している人だから、彼の気持ちに応えたいっていう気持ちがあった。それに、続投のリクエストの声も多くあったし、同時に子どもたちとも触れ合える作品でもあったから、「やろう!」っていうことになったんだ。

――リュック・ベッソン監督の他の作品はご覧になっているんですか?

 全部見てる。

――では、かなり好きな監督なんですか?

 そうだね。やっぱり一番好きなのは『レオン』かな。描写の仕方が非常に美しいと思ったし、彼が起用したゲイリー・オールドマンが素晴らしかった。僕はゲイリーが大好きなんだけど、あの時、ゲイリーはアル中だったんだ。そんなアル中のゲイリーを起用するあたり、「(リュック・ベッソンは)すごいな」って思ったよ(笑)。

――結構マニアックなところに目が行くんですね。

 僕? そうかな? 確かにジャン・レノたちの演技もよかったけど、実際にあの映画を引き立たせたのはゲイリーだと思う。そのゲイリーを起用したリュック・ベッソンはすごくおもしろいと思うんだよね。

 それに、ゲイリーやリュックには、映画に対する思いの強さとか心意気とかをすごく感じるんだ。リュックがゲイリーと作品のことについていろいろ話をしたことがあるらしいんだけど、それを聞いたゲイリーが、「それはどんな役なんだ? 俺が想像するにはこんな役なんだけど、合ってるようだったら言ってくれ」って言って、レストランの中で、“ガッシャン、ガッシャン”と暴れ出したらしいんだ(笑)。それでさんざん暴れた後に「こんな感じか?」って聞いたら、それをリュックがすごく気に入って、ゲイリーに決まったらしいんだよ。

 普通だったら、そういう人がいたら引くじゃない? でも、彼は作品に対して愛情があって、「こういう人を入れた方がおもしろくなる」ということがわかっていたからこそ、ゲイリーを起用しているんだ。大人はなかなかそういった思い切ったことはできないし、子ども心があるからこそできることだと思うんだ。それに、リュックのそういうところって、クリエイティブにもすごく反映されていると思うんだよ。今回の『アーサーと魔王マルタザールの逆襲』や、彼の他の作品に関しても、長年温めてきた熱い思いを感じるし、クリエイティブに対する純粋なところや、ひたむきな姿勢が大好きなんだ。だからこそ、この作品に僕が携れたことを誇りに思うし、彼に対して「応えたい」という気持ちがとても強いね。

『アーサーと魔王マルタザールの逆襲』 『アーサーと魔王マルタザールの逆襲』
『アーサーと魔王マルタザールの逆襲』 『アーサーと魔王マルタザールの逆襲』
▲本作は、リュック・ベッソンさんの著書『アーサーとミニモイたち』を、リュックさん自らが映画化した作品だ。

――声を録る時は、どういったイメージでやってらっしゃるんですか?

 声を録る時は、ブースの中にさまざまな映画制作陣がいるんだけど、まず、いつもしている僕の仕事のやり方っていうのがあって、だいたいみんなが持ってる僕の声のイメージっていうのは、普段いつもしゃべってる声だと思うから、幅が狭いわけなんだよ。僕は、それがおもしろくないと思うから、いつもブースに入った時に、自分が持ってる声を何パターンもやってみて、「好きな声はどれ?」って聞くんだ。そうやってイメージを膨らませてあげることで、「こっちの方がマルタザールに合っていると思う」とか、「ゲームのキャラクターだったらこっちの方が合っている」とかみんなの意見を聞いて声を決めるんだよ。それぞれのキャラクターによって声も違うし、アプローチの仕方も違うし、さらには対象も違うわけじゃない? たとえば、子どもに対してなのか? 少年に対してなのか? もしくは、女性に対してなのか、男性に対してなのか? それによって全然違ってくるから、いろいろなパターンを出してみて、「この中からピックアップしていいよ」って提案するやり方を必ずやるようにしてるんだ。

――リュック・ベッソン監督はどんな方でしたか?

 リュックは非常に子どもっぽい部分を持っているんだ。それと、やらなくちゃいけない、たくさんある大人の仕事にうんざりしているなっていうのが、よくうかがえるよね(笑)。でも、そういった、やらざるを得ない大人の部分を感じながら仕事をしているからこそ、今の彼の地位があるんだと思う。だから、すごく気をつかう人でもあるし、気をつかうことに対して疲れることもあるから、撮影や取材の時には、ほとんどの人間をシャットアウトするんだ。僕もリュックと似てて、あんまり人がいるとイライラするというか、「落ち着かないな」と思ってしまうことがある。

――同じクリエイターとして、リュック・ベッソン監督に共感できることはありますか?

 彼の場合は完全に制作側の人間で、僕はどちらかというと半々っていう感じなんだよ。演者でもあるし、制作側の人間でもある。普通はこういう仕事をもらった時は、演者として、与えられた仕事をこなせばいいだけだと思うんだけど、僕は半分制作側の人間でもあるから、「対象が子どもだとしたら、こういうアプローチの方がいい」とか、「この作品は3部作で、今回は2作目にあたるものだから、もっとこのキャラクターが立つように、こういうアプローチをした方がいいだろう」っていうのを考えながら、いつもやるようにしてるんだ。

 僕は「作る側の意図を考えてやりたい」という気持ちがどうしてもある。だから、制作する側の立場に立って、受け取り手のことも含めて、客観視しながら仕事をするスタンスがクセになってるんだ。

 でも、それは普段自分が制作側でもあるからこそ、そういうスタンスに自然になってしまうわけだけど、ただ単に来た仕事を「はい、やります」って仕事の仕方をしている人は、そんなことは面倒くさいから考えないだろうしね。

――『アーサー』シリーズは、子ども達に対するメッセージがたくさん詰まっている映画だと思うのですが、GACKTさんは、この『アーサーと魔王マルタザールの逆襲』を見る子どもたちに、どんなメッセージを受け取ってほしいですか? またどんな部分を見てほしいですか?

 直接的なメッセージはあまり言いたくないけど、『アーサー』の世界観は、僕らが子どものころに「もしかしたら、こういう妖精がいるんじゃないか」と思っていた世界を表現してくれているんじゃないかな? でも、実は地球上には、僕らが知らないことがたくさんあって、それで成り立ってることがたくさんある。そういうところをこの作品はふんだんに使っているよね。実際に僕ら人間は今、侵しちゃいけない世界の領域を、どんどん侵食してるじゃない?

 この映画のメッセージには、そういうこともたくさん含まれていると思うんだ。たとえば、本来ならば僕らの入っちゃいけない領域なのに、すでに僕らは入ってしまっていたり、さらに、僕らはそれを守らなければいけない立場なのに、知らず知らずのうちに、それをどんどん壊してしまっていたり……。そういうことを、子どもたちが映画全体を通して、「何となくわかってくれればいいな」って思うよね。

 でも、それをあまり前に出し過ぎちゃうと、作品っておもしろくなくなっちゃうんだよ。難しくなるし。だからこそ、「何となく感じてくれたらいいな」って思うし、映画を観た後、まず一番最初に「おもしろいな」って思ってくれるかどうかだと思うんだ。それで何回も何回も見ているうちに、それが子どもの思考にテイストとして入っていく。そうしたら、「以前よりも少し優しくなれる」という結果になると思うんだよ。だから、メッセージが一番前に立っちゃいけないと思うんだ。やっぱりエンターテインメントって、そういうものだと思うしね。

 それに、やりすぎてしまうと、「言いたいことはわかるけど、伝わらないよね」っていうことになってしまうし、逆に子どもたちが受け入れてくれなくなっちゃうと思うんだ。大人は観た後で「言いたいことはわかるよ」ってその一言で終わっちゃうけど、子どもの場合は、もうわかるとかわからないとか以前に、拒絶して見なくなるからね。子どもはそういう意味でわかりやすいよね。

(C)2009 EUROPACORP-TF1 FILMS PRODUCTION-APIPOULAi PROD- AVALANCHE PRODUCTIONS Images et Effets 3D-BUF

■『アーサーと魔王マルタザールの逆襲』概要
【公開日】2010年4月29日より新宿ピカデリー他で全国ロードショー
【配給】アスミック・エース

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