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2010年5月3日(月)

『あのすば』再装版は「期待しないでください」? 自転車創業にいろいろ聞いた

文:電撃オンライン

■コンシューマで制作することの考えは?

――ここからは、『あのすば』以外の話もうかがいます。法人で、PCの一般ゲームオンリーのメーカーは少なくなってきましたね。コンシューマ機に参入するPCゲームメーカーが増えていますが、かざみさんはいかがですか?

 コンシューマを検討する以前に、そんな金がないです。それと、コンシューマで出すと、ハードの寿命に引きずられるという問題もあります。うちが出した作品の中で一番古くなっているのは、リメイク分も考慮すると2004年に出た『ロストカラーズ』なんですが、バージョンアップ以外ではいじらずに6年も経過しているんです。それでも今、まだ買ってくださる方がいる。コンシューマでは、なかなかそうはいかないですから。

 あと、おれの個人的な性格として、最後の決定権が自分にあってほしい。モノを作って、売って、お客さんの手に届けるところまで自分でやりたい。最終的に流通に卸してはいますが、どの流通を使うかはうちが選べるわけで、そういう選択肢がないのはイヤなんです。

 ゲームの内容や表現についても、どこかに言われて変えることはやりたくないんです。逆にいえば、PCで出している作品をそのまま変えずに出してもいいということであれば、そこに供給するのはかまわないと考えています。自分が「これがいい」と思ったものを変えずに出せなければ、「おれが作った」とは胸を張って言えない。

――なるほど。では逆に、プレイヤーからのコンシューマ移植の要望はあるんですか?

 PSPやDSで出してほしいという要望はありますし、DSだと謎解きができやすそうだなとは思います。ただ、大前提としておれが携帯ゲーム機を持っていない(笑)。あとおれが、外に出てゲームをやらないので、たとえば通勤・通学時のゲームプレイへの細かい気配りができないんです。

 実は、『だらよ』を作っているころにWiiウェアも検討していたんですよ。参入費も高くないと聞いたので。でも『だらよ3』を開発して落ち着いてから考えようと思っていたら、いつの間にか、おびただしい数のメーカーが参入していて、それならもういいかなと。配布データの容量制限の問題もありましたし。少なくとも現時点ではあまり考えていません。

 以前は確かに、コンシューマへのあこがれがありました。でも、開発する側としては、最初から最後まで1つのマシンで済むというのは存外に大きい。コンシューマでも、最近はPC上で制作することが多いんでしょうけど、最終的なテストは実機でやらなければいけないでしょうし。

 おれはプログラマーではないですから、ゲームを作る上での負担は少しでも少ない方がいいと思っています。プレイヤーから見たらわからないかもしれませんが、そういった細かいところでの手間暇が増えると、集中力が削がれて後々ボディーブローのように作業効率に効いてきます。


■まさか2010年にもなってX68kの新作を出すとは……

自転車創業
▲X68k対応として発売される『サンダーストーム』。

――プラットフォームとしてみれば、Windowsの普及数が圧倒的であることもメリットですよね。一方で、もう使っている人が少ないX68kですが!

 昔はただの一ユーザーで、X68kにあこがれている少年だったハズなんですが。バイト代でX68kを買って遊んでいただけだったのに……。在庫処分品のX68kを買って、宅配代がもったいなくて、歩いて何キロも持って帰ったのを今でも覚えています。その時には、まさか2010年にもなってX68kの新作を出すことになるとは思っていなかったですよ。

――それにしても、『あのすば』再装版と同日発売になる『サンダーストーム』ですが、X68kに対応するソフトを2010年に出すことのインパクトはありますよね。

 反響は大きいですね。ただ受注数が伴ってないので皆様ご注文お願いします(笑)。リアルに次回に響きます。おれも毎回、X68k版は「さすがにこれが最後かな」と思うんですけど、なんのかんので2010年ですね。すでに“実機で遊ぶようにする”こと自体が遊びの1つになってるかもしれません。SCSI接続のDVDドライブを探すとか、そもそもつながるのかとかまで含めて。むろん、MOやCD-Rなどにに書き込んで転送する方法なども、手順の説明は入れていますが、どのやり方も保証があるわけではない。

――まだ記録は延びるんですか?

 自転車創業は、先の予定はすべて未定です。物事を長く続けるコツは先の予定を言わないことを持論としているので。だから未定! 自転車創業という会社は、ゲーム作りをやり続けている限り、続くとは思いますけどね。

――『ロードブラスター』『サンダーストーム』と来て、LDゲームといえば『タイムギャル』ですが、これはどうなんでしょう?

 企画者が『タイムギャル』に興味がないらしいので、その人がやりたくないものは、出ないと思います(笑)。

――それは残念。同人サークルの自転車“操”業は、今後の予定はいかがですか。

 こちらも予定は未定です……まだ何にも手を付けていませんし。今も昔もサークルでは、おれが物を手渡ししたいと思ってやっていますので、やるのであれば手渡しする機会を作るためのものを売っていくと思います。本は通販の要望も多いので、救済措置として地方のショップにも少しだけは置いてもらっていますが、そこまでして欲しい人はできるだけ買いに来てもらえるとうれしいです。逆に会社として出すものは、欲しい人にはできるだけ損失なく届くようにと考えており、現在ダウンロード販売の準備などを並行して行っています。

――そういえば、MZ-700用『あの、素晴らしい  をもう一度/TINY版』といったものもありましたが……。

 MZ-700はおれが最初にさわったPCなんです。それのリスペクトも込めています。あの元ネタのゲームも実機でやっていましたし。

――あのネタは、そういうことだったんですね。では最後に、自転車創業の優先順位でいうならば、最優先でやるべきことはなんですか。

 ゲーム制作が進むと、それ以外の私生活のことがどんどん後回しになるので、完成したら今度はその宿題を片付けるターンになります。まだダウンロード販売の準備とかありますが、それが終わったら家の屋根の雨もりをなんとかしたいです。

――なるほど(笑)。長い時間ありがとうございました!

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 かざみさん自身は強くアピールしなかったが、10年前に生み出した『あのすば』という作品が今でも通用するという自信を持っていることを、インタビューでひしひしと感じた。“化粧直し”された『あのすば』がどう変わっているのか、初代をプレイした方も、そうでない方も、興味を持った方はぜひ手にとってほしい。

 また結局、次回作や今後の予定を聞くことはできなかったが、かざみさんの予定が“決定”に変われば、いずれアナウンスがあるだろう。それまでは明日発売の『あのすば』再装版や『サンダーストーム』をプレイしながら待つことにしたい。

 なお余談として【ネタバレあり】のトークも少しだけ行ったので、この後にオマケとして掲載する。『あのすば』の初代や再装版を未プレイの方にはお勧めしないので注意してほしい。

→ここから先はネタバレ注意!(4ページ目へ)

データ

▼『あの、素晴らしい  をもう一度/再装版』
■メーカー:自転車創業
■対応機種:PC(対応OS:Windows 2000/XP/Vista/7)
■ジャンル:AVG
■発売日:2010年5月4日
■価格:2,940円(税込)
 
■『あの、素晴らしい  をもう一度/再装版』の購入はこちら
Amazon
▼『サンダーストーム』
■メーカー:自転車創業(開発:太陽製作所)
■対応機種:PC(対応OS Win/X68030/X68060)
■ジャンル:STG
■発売日:2010年5月4日
■価格:2,940円(税込)
 
■『サンダーストーム』の購入はこちら
Amazon

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データ

▼『あの、素晴らしい  をもう一度/再装版』
■メーカー:自転車創業
■対応機種:PC(対応OS:Windows 2000/XP/Vista/7)
■ジャンル:AVG
■発売日:2010年5月4日
■価格:2,940円(税込)
 
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▼『サンダーストーム』
■メーカー:自転車創業(開発:太陽製作所)
■対応機種:PC(対応OS Win/X68030/X68060)
■ジャンル:STG
■発売日:2010年5月4日
■価格:2,940円(税込)
 
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