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2010年5月14日(金)

【あの思い出をもう一度……MMO卒業白書】第3回は『ヨーグルティング』

文:電撃オンライン

 新しく生まれるMMORPGがあれば、また一方で去り行くタイトルもある。サービス終了の裏側には開発/運営会社の様々な事情があるわけだが、そんなこととは無関係にただ一心にそのタイトルを愛し、遊び続けたプレイヤーたちがサービス最終日をどんな風に過ごしているのか。その様子を取材すべくオンラインゲーム(MMORPGに限らず)を心から愛する筆者が最終日にゲーム内を訪問。出会った一般プレイヤーさんと交流しつつ、そのタイトルへを振り返っての思い出話や愛を、心行くまでたっぷり語ってもらうのが『MMO卒業白書』の目的である。

 第3回はガンホー・オンライン・エンターテイメントが運営を担当、5月14日にサービス終了となった『ヨーグルティング』。最終日の宵月学院/エスティバー学園の様子をお伝えしよう。

『ヨーグルティング』 『ヨーグルティング』 『ヨーグルティング』

■謎の無限放学現象(通称EVP)により先生達が姿を消した学校がゲームの舞台

 『ヨーグルティング』はある日突然世界を襲った“無限放学現象(Endless Vacation Phenomenon)”により、教師の大部分が消え、授業はなくなり、学校周辺では奇妙な事件が相次ぐという状況に見舞われた、学校が舞台のMORPG(アップデート“2がっき”以降、MMORPGにシステムが変更された)。各学校の生徒会役員が事態の解決に乗り出す中、プレイヤーは一般生徒として彼らに協力していく、というのが一応のバックストーリーとなっている。

 MMORPGとしては数少ない学園モノであり、明るくポップな色使い、イメージイラストを裏切らない愛らしいキャラクターデザインは、クローズドベータテストの時点から高い評価を得ていた。

 キャラクターの成長を1年生、2年生と学年に例えたり、大型アップデートを学期で区切るなど、学校というモチーフを上手に取り入れたシステムもプレイヤーには好評。また、スクール水着に体操着(ブルマ!)、部活動や委員会などとリンクさせた豊富なアバター衣装はかなり力の入ったものが多く、かわいいもの好きなライトゲーマーのハートもがっちり掴んでいた作品である。また、当時の韓国産オンライゲームとしては珍しくメインシナリオが充実しており、クエストを進めていくことで“無限放学現象”にまつわる謎が、少しずつ解き明かされていった。

『ヨーグルティング』 『ヨーグルティング』
▲プレイヤーはキャラクター作成時に、私立“宵月学院”か公立“エスティバー学園”のどちらに入学するかを選択。両校はバスで簡単に行き来できるが、エピソードの内容と制服が異なる。個人的には宵月学院の制服がお気に入りだった。

■『ヨーグルティング』日本サービスの歩みを振り返る

 本タイトルは韓国NeowizとRed Duck(旧Ntix Soft)が開発を手がけ、2004年の東京ゲームショウにおいて、ガンホー・オンライン・エンターテイメントが国内運営を発表。当時は両社の契約金が(対日本向けとしては)過去最高額という部分も、ずいぶんと注目を集めたものだ。2005年9月にはクローズド&オープンベータテストが行われ、同年11月には無事正式サービス開始にこぎつけた。

 「今までとはまったく違うMMORPGを」という難易度の高い要求に応える形で開発された『ヨーグルティング』は、冒頭で述べたとおり、学校という誰もが一度は体験する場所に、エピソードと呼ばれるクエストを組み込むことで、プレイヤーの国籍を問わず自然とゲームに馴染める世界観を構築。剣と魔法の欧米風ファンタジーRPGが多い中、世界は学校の敷地内に限定、友達登録が相手の名前ではなく携帯電話の番号だったりと、かなり異色のタイトルであった。

『ヨーグルティング』
▲エピソードはクリア実績と学年に応じて、順次アンロックされていく。進級するには全エピソードをAランクでのクリアが必須条件など、意外に厳しい学校生活。

 また、フィールドはプレイヤー同士がおしゃべりできるMMOだが、エピソードはソロまたはパーティで挑戦するMOスタイルで、モンスターの奪い合いをせずに自分のペースで遊べたり、クラスが存在せず、武器を取り替えることで戦闘スタイルが大きく変わっていくといった特徴的なシステムを取り入れていた。いわゆるクリックゲーに分類されるMMORPGが席巻していた当時、『ヨーグルティング』は実に挑戦的な作品だったのだ。

 日本国内の運営を担当するガンホー・オンライン・エンターテイメントもプロモーションには力をいれていたようで、プレスカンファレンスを“入学説明会”として、代表取締役社長 森下一喜氏、宣伝担当の古志野 史嗣氏、開発担当の鳥山主税氏(すべて当時)が学ランを着て登場。ゲーム内では、東京アナウンス学院 放送声優科(学校法人東放学園)の一般生徒が“学級委員”として登場し、新規プレイヤーと一緒に遊ぶといったゲーム活性化への取り組みも積極的になされていた。

 しかし、2007年2月にNeowizは『ヨーグルティング』の韓国サービスを終了。開発陣が実質存在しない状況となり、日本では大型アップデート“2学期”実装以降は目立ったアップデート、バグ修正などが行われないままサービスを続行。「世界中で『ヨーグルティング』が遊べるのは日本だけ!」という、ちょっとシニカルなコメントが囁かれる中で、2007年3月には3つあったワールドを1つに統合。そしてついに、2010年5月14日をもって『ヨーグルティング』日本サービスは終了を迎えた。

『ヨーグルティング』 『ヨーグルティング』
『ヨーグルティング』 『ヨーグルティング』
▲CBT当初から使われていたローディング画面もかわいいと、プレイヤーからは好評だったことを思い出す。開発元含め、よりよい方向へ舵を切れなかったことが悔やまれる、本当に惜しいタイトルだ。

■宵月の制服でエスティバーの卒業式に紛れ込んでみるの巻

 サービス終了は5月14日10:00だが、その1週間前にはGMによる卒業式イベントが開催されており、今回も宵月学院の“電撃子”としてこっそり参加してきた。私事で恐縮だが、実は筆者がゲームライターとしてデビュー後、某メディアで初めて担当したゲーム連載が『ヨーグルティング』であり、ゲーム内容とは一切無関係な絶対領域(ニーソックスとミニスカートの隙間にできる、神聖なる肌露出部分を指す)について延々語るという暴挙を許してもらった、誠に思い出深いMORPGなのだ。好成績を残すことよりも、アバター衣装集めに翻弄した日々を懐かしく思い出す……。今回はキャラクターの髪型と色も、当時のものにあえて合わせて作成してみた。

『ヨーグルティング』
▲卒業式イベントでは、エピソードを彩るNPCたちのユーモアあふれる会話がシステムログとして流れていた。それにしても本当に驚くほどのプレイヤーが校庭に集合していた。

 さて、卒業式イベントの夜は校庭が大混雑! 3年生で中退した筆写が見たことも無いカワイイ衣装もあふれかえっており、アップデートがあろうとなかろうと『ヨーグルティング』をプレイし続けてくれた人が、こんなに大勢いたんだなあと胸がいっぱいになってしまった。校庭でまったりお話しする人、やり残したエピソードを友達と一緒に遊ぶ人。そんなエスティバー学園で、一般プレイヤーの方に記念撮影と『ヨーグルティング』の思い出についてインタビューをお願いしたところ、快く受けてくれたのでお伝えしよう。

 「ずばり、『ヨーグルティング』への愛を語ってください」とのお願いに、「皆と会えた場所が無くなるのは寂しいです」「せつなくて死にそうです」「『ヨーグルティング』が初めて遊んだオンラインゲームなのでさみしい」「同好会の会長とけんかしたのも、今はいい思い出です」「エピソードのシステムが友達を作りやすくてよかったです!」などなど、チャット欄がたちまち埋まるほどのコメントをいただけた。インタビューの後はみんなで“卒業アルバム”と称して、記念撮影へ。教室や校舎裏手で素敵な思い出作りができたこと、この場を借りて御礼申し上げたい。
(麻生ちはや)

『ヨーグルティング』 『ヨーグルティング』
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▲卒業すらも明るく元気にコメントする、NPCナナの姿にまた目頭が熱く……。

◇◆◇『ヨーグルティング』卒業記念アルバム◇◆◇

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