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2010年5月20日(木)

【経営者は語る 第6回】WeMade Online代表取締役 崔鍾玖氏インタビュー

文:電撃オンライン

■新作タイトル・モバイルゲーム・SNS“WeMade効果”は来年から

──あらためて、WeMade Entertainmentとの提携の意義についてお聞きしていきたいと思いますが、ここまでお聞きしたところでは、YNK JAPANはYNK KOREAの意向で生まれた会社であるものの、かなり独立性が強い印象ですね。

崔 鍾玖氏:2008年からそうなった、と言うべきでしょうね。2008年3月に日本のベンチャーキャピタルさんから投資が入った後は、YNK KOREAの出資比率が6割くらい。もちろん過半数ですからYNK KOREAの意向を受ける立場にいたわけですが、新規の資本調達を含めて経営を任せてくれたところは、自由にやらせてもらえたということです。その点は本当にありがたいことですね。

──なるほど……。そうした経営判断の結果として今回、WeMade Entertainmentと提携することでWeMade Onlineとして、新たなステップを刻んだ、と。

崔 鍾玖氏:WeMade Entertainmentと一緒に事業を進めることで、いろいろと有望なビジョンを描けます。その第一に挙がるのが、新作を続々と開発している点です。『Sky Heroes』(天険英雄伝)を代表とした、ブラウザゲームも重要なジャンルですね。子会社の開発会社2社買収した外部の2社を含め、MMORPGの新作など、WeMade Entertainmentではいろいろなプロジェクトが進んでいます。

──日本サービスを検討すべき作品も、相応にあるだろうと。

崔 鍾玖氏:二番目に挙げるべきはモバイルゲームへの投資です。Nexon MobileからNexon Korea本体に入って社長を務めた人物が、Nexon Koreaを退き新しいモバイルゲームの会社を起こしたのですが、WeMade Entertainmentはそこに33.4%出資しています。モバイルゲーム自体、新しいビジネスチャンスといえますし、シナジー効果も期待できます。これも、WeMade Entertainmentが持つ可能性の一つといえるでしょうね。

 同様にWeMade Entertainment傘下にはインスタントメッセンジャーサービスからゲームポータルを兼ね備えるようになった『buddyBUDDY』というサービスもあります。こちらについてはまだ情報交換を進めていませんが、互いに何らかのメリットを見出せる可能性も大きいと思っています。

──韓国では携帯電話サービスを通じた小額決済が発達していますし、モバイルゲーム分野が今後どう進むか、非常に楽しみですね。携帯電話とSNS、SNSとゲームポータルという取り合わせも、今後のゲームシーンとして重要ですから。

『【経営者は語る 第6回】WeMade Online代表取締役 崔鍾玖氏インタビュー』

崔 鍾玖氏:PCと携帯電話、二つのプラットフォームにまたがって動けることには、大きな可能性を感じますね。どちらの技術も押さえていることは、今後のトレンドをカバーするのに重要な能力だと考えます。

 また、WeMade Entertainmentの社長の考えが面白いんですよ。「親会社/子会社の関係にあっても、ビジネスはビジネス。本社が持つIP(知的財産=作品)をサービスしなければいけないわけじゃない。自分で選択してほしい。その代わり、ライセンス料をタダにすることはない。他社からのソーシングはどんどん進めてほしい」と言われました。もともとエンジニア出身でアメリカでビジネスを学んだ人ですから、産業を見る目を持っているんですね。

──WeMade Entertainmentの出資比率はどのくらいでしょうか?

崔 鍾玖氏:現在56%です。

──YNK KOREAの持分をそのままに、増資したのでしょうか。それとも株式の譲渡が中心だったのでしょうか?

崔 鍾玖氏:株式の譲渡です。今回の買収で、資本金は増減していません。YNK KOREAが持っていた60%の株式のうち、35%がWeMade Entertainmentの手に移り、さらにExciteさんが持っていた株なども合わせて56%です。

──買収と同時に増資というわけではなかったのですね。

崔 鍾玖氏:「「資本提携したとたんに増資を行って事業を拡大するのは良くない」というのが、WeMade Entertainmentの考えです。現在の事業計画の範囲ではとくに増資は必要ないですから、“WeMade効果”が出るとすれば来年からであり、現在はそのためのビジネスプランを練っているところです。

──役員人事については、どんな変化がありましたか?

崔 鍾玖氏:WeMade Entertainmentから本社社長が非常勤取締役として加わり、また監査役が新たにボードメンバーに加わりました。ただし、派遣されてWeMade Onlineに常駐する役員はいません。

──これまた「任せるよ」というスタンスなのですね。

崔 鍾玖氏:もちろん経営会議をはじめ実務上のやり取りはありますから、そのやり方を調整したうえで、現在我々に足りないところについて、私のほうからいろいろアドバイスを求めています。社員、お客様、その次に株主という優先順位を心がけていますから、経営者から見れば社員も“ユーザー”であって、会社の体制を整備することは重要なのです。

 仮に今後、大きなタイトルのパブリッシングや新規の事業といった、大きな話が持ち上がるとしても、そこは心配していません。必要ならば増資の要請にも応じてもらえると考えているからです。

──社名をWeMade Onlineと改めたというのは、やはり今後WeMadeというブランドを担っていくというお考えの表れなのでしょうか?

『【経営者は語る 第6回】WeMade Online代表取締役 崔鍾玖氏インタビュー』

崔 鍾玖氏:日本市場におけるWeMadeのブランディングは、積極的に展開していくつもりです。ブランディングによって、新たなビジネスチャンスが出てくると考えていますので。そしてもちろん、WeMade Entertainment本社がWeMade Onlineに期待するメリット、ニーズがいくつかあります。現在WeMade Entertainmentは、全体の売り上げの8割を中国/台湾マーケットが占めています。これについては事業のポートフォリオ(組み合わせ、分散配置)を考えないといけません。ポートフォリオの考えを別にしても、日本市場はゲームマーケット全体を見たときに重要な位置にいますので、事業収益のみならず、情報拠点としての役割を大いに期待されています。

 単純にある作品のサービスライセンス契約をしたパブリッシャさんでは、WeMade Entertainmentから市場調査のお願いをするのも、いろいろと難しいわけです。また、日本市場におけるパブリッシング業務での統計数値なども、パブリッシング契約のみの間柄では提供をお願いしにくいデータだと思います。そうした意味で、常にコミュニケーションを行える日本のパートナー拠点として、果たせる役割は小さくないと考えています。

──中国、韓国、日本、それぞれマーケットの特徴がかなり違いますしね。

崔 鍾玖氏:日本マーケットということで言えば、オンラインゲームの成長余地というところでも、大いに期待しています。中国、韓国が逆に極端すぎるのかもしれませんが、日本でオンラインゲームはまだまだ伸びるだろうと。

──2001年、2002年くらいの時点で、韓国におけるオンラインゲームの普及度合いをベースに大手広告代理店さんが予測した日本のオンラインゲームマーケットのサイズと、現在の実情の間には大きな落差がありますよね。日本のオンラインゲームマーケットは、2008年、2009年とも1000億円前後。まだ予測数値の数分の1に留まっています。崔社長ご自身は、近い将来にどのくらいまで伸びるとお考えですか?

崔 鍾玖氏:個人的には、少なくとも現在のマーケットサイズの3倍以上にはなると思っています。自分の子供を日本の小学校に通わせた経験から見ると、日本ではPCに触れるタイミングが遅いんですね。ですが今後、PCに触れる年齢はどんどん下がっていくはずです。下がっていくと、現在コンソールゲームだけに触れている子供さんが、少しずつPCに移ってきます。ゲームによって年齢制限が必要になったりする場面も出てくると思いますが、全体の流れとしてはPCでゲームをする人が増えていくだろうと。

 また、ニンテンドーDSやPSPを使って4人くらいでゲームをプレイする場面が増えています。それが浸透することで、もっと多くの人と一緒にゲームをプレイする楽しさが、広く伝わっていくだろうと考えています。映画『アバター』のヒットに見られるとおり、コンピュータグラフィックスで作られた映像作品を楽しむことも浸透しつつありますし。

 日本におけるゲームのシェアで、PCオンラインが占めるのは7%くらいです。少なくとも20%くらいにならないと、逆に不自然かなあと。

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 ■YNK KOREAとの関係を良好に保ちつつWeMade Entertainmentの新作に大いに期待



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