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2010年5月18日(火)

機動力を武器に自由なゲーム作りを! ウィッチクラフトの金子彰史さんに迫る

文:電撃オンライン

――この1年間に3タイトルがリリースされましたが、振り返ってみていかがでしたか?

 最初は、まったく慣れない会社の経営に戸惑ったり、いろいろと仕込みを行ったりで、どちらかというと地下で暗躍しているというイメージが強かったのですが、タイトルが発表されて、またそれらが発売されていくと「ああ、ゲーム業界に帰ってきてよかった~」って思いました(笑)。実際のところは、一度たりとも離れていなかったのですが、それでも潜伏期間が長かったので感激もひとしおです。

 潜伏期間中は、社内のスタッフを始め、本当にいろいろな人に支えてもらいました。とてもじゃありませんが、自分ひとりの力ではここまでできなかったと思います。大きなパブリッシャーの社長さんに直接話を聞いてもらったり、指導をしてもらったりしましたが、自分は周囲にいる方々に恵まれているなあ、と改めて実感しました。

――リリースされた3タイトルは、ターゲットやジャンルがかなり異なりますよね?

 はい(笑)。見れば見るほどバラバラでいい具合になっていると思います。「これからのゲーム業界では、これまでと同じことをやっていては通用しない」という、先のパブリッシャーの社長さんの教えに従い、いろいろなこと、とりわけ今までやってこなかったところに積極的にチャレンジした結果がアリアリと出ています。アリアリすぎて、自分はどれだけ素直なんだと、ちょっと笑ってしまいますね。

 でもそれだけに自分の中では、『SIMPLE DSシリーズ Vol.48 THE 裁判員~1つの真実、6つの答え~(以下、THE 裁判員)』、『暗闇の果てで君を待つ』、『リリカルなのはA’s PORTABLE』は、ちょっと特別な位置付けとなった作品ともいえそうです。それこそ日本テレネット時代の初期3作である『天使の詩』、『未来少年コナン』、『ぽっぷ’nまじっく』と同じくらいに、すごく貴重な財産になりました。

――各タイトルへの印象をお願いします。

 すべてに共通点がない、てんでバラバラな3作品ですが、「いろいろなことをやろう」という点と、「自分に興味のあることをしよう」という点では、非常に似通ったタイトルと言えるかもしれません。

 まずウィッチクラフトとして世に出したタイトル第1弾である『THE 裁判員』ですが、脚本と監督を担当した弊社スタッフの遠藤(※)としても、興味のある裁判員制度を題材に扱えたということで、楽しみながら開発に取り組んでくれました。

 自分は仕事うんぬんを抜きにして、遠藤の書く脚本が大好きなので(笑)、『THE 裁判員』を完成させることは、イコール自分の欲求を満たすことでもあるため、幸せな仕事でもありました。問題作でもある“あの第3話”を商品として世に送り出せたことは、とても意義のあることだと思っています。

(※)遠藤正二朗さん。これまでにPC用AVG『セツの火』やセガサターン用ソフト『ひみつ戦隊メタモルV』などのシナリオを手掛けている。

――『THE 裁判員』は、2,800円(税込)とは思えないボリュームでしたし、内容もすばらしかったですね。

 ありがとうございます。お値段以上のものを作ろうと頑張りました。制作中、遠藤と一緒に裁判所の傍聴に行って取材しましたね。発売元のディースリー・パブリッシャーさんからも「好きに作っていい」と言っていただいたので、こちらとしてもノリノリで作りました。ほとんど趣味です(笑)。

――『THE 裁判員』は、ある程度プロットを作った段階でプレゼンに行ったのでしょうか?

 会社を設立する時に、過去にお付き合いがあったメーカーさんにあいさつに行ったんですよ。その際に、ディースリー・パブリッシャーさんの方からご提案いただきました。興味があったので、制作するに至ったという経緯ですね。

金子彰史さんインタビュー 金子彰史さんインタビュー 金子彰史さんインタビュー
▲昨年5月に発売された『THE 裁判員』。個性的なキャラクターと突飛な設定が特徴だ。

――次にリリースされた『暗闇の果てで君を待つ』もディースリー・パブリッシャーから発売されていますが、こちらはどんな経緯だったのでしょうか?

 『THE 裁判員』の件で、後日改めてうかがった際に、別のプロデューサーの方を紹介していただきました。その方から「乙女ゲームを作らない?」と言われたのですが、何しろやったことのないジャンルなので、保留していたんですよ。ところが、自分の知り合いで興味を持っている人間がいたので、制作することになりました。

 この『暗闇の果てで君を待つ』は、乙女ゲームという自分自身では決して作れない作品なので、少し離れた位置にて開発現場を眺めるのみでしたが、なんだか楽しそうでした。いや、開発に携わっている当人たちは至極真剣、マジメも大マジメなんだろうけれど、男ではとても気にならないような部分にこだわっていたりして、その開発風景そのものが新鮮でしたね。

 「いろいろなことをやろう」という、当初に掲げたウィッチクラフトの精神の体現そのものがこの作品かもしれません。前の会社にいたままでは、きっとおそらく生涯かかわることがなかったジャンルだと思います。

――この『暗闇の果てで君を待つ』ですが、電撃オンラインの読者が選ぶ、2009年度の乙女にオススメゲームアンケートで、他を寄せ付けずにダントツの1位だったんですよ。

 そうなんですか!? ありがとうございますっ!! こちらのタイトルも、ディースリー・パブリッシャーさんのご好意で、好き勝手にやらせていただきました。ホント、そんなのばっかりで(笑)。今までお付き合いしてきたメーカーさんには恵まれていると思います。

金子彰史さんインタビュー 金子彰史さんインタビュー 金子彰史さんインタビュー
▲電撃オンライン読者からかなりの支持を集めた『暗闇の果てで君を待つ』。無事、真相にたどりつくことができるか?

――そして、第3弾となる『リリカルなのはA’s PORTABLE』が今年の1月に発売されましたね。

 この『リリカルなのはA’s PORTABLE』は、自分も大きくかかわっているだけに、この3本の中でも別格の思い入れとなっているのは間違いありません。ちょうど会社立ち上げのバタバタした状態が一段落した矢先、個人的には“いろいろなこと”そして“自分に興味のあること”ということで、漠然と「アクションゲームをやりたいなあ」くらいに考えていましたが、そのタイミングで映画化の話を伺い、ならばということで連動すべく急ピッチで企画を進めていきました。

 そういえば、『リリカルなのはA’s PORTABLE』の発表に合わせて無理矢理公式サイトを立ち上げしたのもいい思い出です。弊社はスタッフがもれなく全員、開発にかかわっていますので、それまで公式サイトを作っている余裕がなかったのです。いい加減、そろそろ作らなければいけないということで担当には頑張ってもらいました。

金子彰史さんインタビュー 金子彰史さんインタビュー
▲劇場版アニメ『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st』にあわせてリリースされた『リリカルなのはA’s PORTABLE』。電撃オンラインでは、インタビューや対戦など、さまざまな企画を展開した。

→ゲーム制作や会社について、金子さんが次のページでコメント!

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データ

▼『魔法少女リリカルなのはA’s PORTABLE -THE BATTLE OF ACES-』
■メーカー:バンダイナムコゲームス
■対応機種:PSP
■ジャンル:ACT
■発売日:2010年1月21日
■価格:通常版 5,229円(税込)/リリカルBOX 13,629円(税込)
※開発:ウィッチクラフト、ディレクター:金子彰史
 
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▼『暗闇の果てで君を待つ』
■メーカー:ディースリー・パブリッシャー
■対応機種:DS
■ジャンル:AVG
■発売日:2009年10月22日
■価格:通常版 5,460円(税込)/限定版 7,560円(税込)
 
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▼『SIMPLE DSシリーズ Vol.48 THE 裁判員~1つの真実、6つの答え~』
■メーカー:ディースリー・パブリッシャー
■対応機種:DS
■ジャンル:AVG
■発売日:2009年5月21日
■価格:2,800円(税込)
 
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