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2010年5月31日(月)

【ケイブ・コラム第4回】新川はるか氏がオンラインゲームの導線について語る!

『haruka』
▲新川はるか氏は『真・女神転生IMAGINE』の運営プロデューサー。その名前から女性と間違えられることも多いとか……。

 雨の日はキライじゃないのですが、いちいち傘を持って歩くのが億劫です。そろそろ誰か水滴を弾く反重力コントローラーでも開発してくれないでしょうか。いけませんね、なければ自分で作る、これを是としたい新川です。実際に作れるかどうかはアレですが。

 第3回のコラムで、オンラインゲームのサービスにおいては“直感的”“イメージしやすい”事が重要であると振り返ってみました。それはストーリーだったり、生産の仕様だったり、ダンジョンの構成であったり、細かい話をすれば枚挙にいとまがありません。

 もちろん、やってみて初めてわかる良さというものもあり、それを否定する気はありません。しかし、やる前からイメージが沸くというのも大事なことです。

『真・女神転生IMAGINE』 『真・女神転生IMAGINE』
▲ゲーマーなら知らない人はいないであろう名作RPG『真・女神転生』。その世界観を継承したPC用オンラインRPG『真・女神転生IMAGINE』の運営プロデューサーを新川氏が務める。

 さて、実際に相手に“イメージが伝わる”ときって、どんなときでしょう?

 かつて琴線に触れた言葉で“人間は、自分の物差しでしか測れない”というものがあります。これは要するに“経験してないことは、わからない”ということです。

 例を出してみましょう。自分が大好きな映画の一つに『エイリアン』があります。リドリー・スコットが監督し、シガニー・ウィーバーが以後のシリーズも主演しており、地球外生命体と繰り広げる密閉空間での惨劇や、H.R.ギーガーのクリーチャー・コンセプトデザイン、SFXが特徴の映画です。

 印象深いシーンの一つに、地表に卵を無数に産み付け、他の生命体に狙いを付けると“フェイス・ハガー”と呼ばれる蜘蛛のような生物が飛び出し、能動的に宿主の咽喉部から幼体を植え付け、やがては宿主の体を食い破って誕生するというものがありました。

 と、私は今、フェイス・ハガーを「蜘蛛のような」という言葉を用いて表しました。多分、エイリアンを鑑賞したことがない方も「ああ、あんな感じなのかな」と、だいたいの外形を想像できたのではないでしょうか。でも“蜘蛛”を見たことがない地域の方に同じ話をしたら、通じるでしょうか?

 同様の話で、過去「流石、カルパッチオ。ヴェネチア派の特徴をよく表しているね」とか言われ、自分の意見を求められた事がありますが「カルパッチョは美味しい」「ヴェネチアは一度は行ってみたい」などといった返答しか思いつかず、そもそもこれが芸術論であるかどうかの判断も尽きませんでした。ついでにこの話自体がウロ覚えなのでこれが用法として正しいのかも保証しかねます。

 というわけで、自分の中でどれだけ素敵な絵図を膨らませても、相手が体験、記憶したことがない事象は説明しようがないという事でした。私はこれを師事した人間に倣い「原初の追体験」と呼んでおり、誰もが一度は経験したことがある事象こそ“普遍的”であると考えています。そして、これに“高揚感”というエッセンスを加えれば、限りなく万人にウケるコンテンツができるのではないか、とも考えています。

 そうしてみると「あれやったこと、あるでしょ?」という導線が一番、人を引き込むのかもしれません。

 ところで、『真・女神転生IMAGINE』は、『メガテン』自体が有史以前からの神と悪魔の戦いを背景に描き続けているため、ともすると「やたら知的幅の大きいストーリーじゃない?」などと言われることがあります。
 しかし、ストーリーの根幹自体は「選択における自らのアイデンティティの確立」だと思っていますので、「むしろ誰にでもわかりやすく、それでいて奥の深い展開が楽しめるコンテンツであるべきだ」と答えています。

 誰だって心の中に“天使と悪魔”がいますよね。どちらを選ぶか、それは日常的でもあり、その人の人生を決定する重大な決断でもあったり。常にそんな問い掛けを明示し続けるサービスを展開していきたいと思っています。

『真・女神転生IMAGINE』 『真・女神転生IMAGINE』
▲5月20日に実装された異空間ディアスポラでは、最大30人のプレイヤーでチームを結成し、襲いかかる悪魔と超絶バトルを楽しめる。このディアスポラには、トウキョウの守護神であった“マサカド”の力が眠っているのだ。『メガテン』好きならマサカドの力を集めて復活させるべし!

(C) ATLUS / (C)CAVE

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