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2010年6月14日(月)

すべてが思惑通りに行かない日もあることを思い知らされるの巻

文:電撃オンライン

【E3どうでしょう番外編】雑感的and私的E3日記、徒然に13-JUN-2010

(電撃ゲームメディア総編集長 江口聡)

 13日の夕方、成田を発ってLA時間で13日の12:30ごろ到着予定だった我らがシンガポールエアライン。ロサンゼルス国際空港の着陸便が混んでいるとのことで、上空を数回旋回し、着陸後も空港が混んでいるという理由で数十分機体は止まったまま。挙句の果てには機内(エコノミー)で盗難(って、機内じゃ捕まるだろうに、なぜにそんなことをする輩がいるのだろうか、無計画というか無謀というか……)があったことでまた数十分、計1時間以上遅れてやっとLAの地を踏みました。そして、レンタカー屋へと急ぎ、事前予約とゴールドクラブ会員という武器で、わずらわしいやり取りがなく短時間で車を借りられる……と思ったら(いつものことだが)予約時の車がなく違う車種に(いっつもだよハーツさん)。気持ちを切り替えて、いざダウンタウンへ! GO!

 今日は、マイクロソフトの“The World Premiere Kinect for Xbox 360 Experience”を見るのみと、一見余裕があるように思えるだろうが、その実かなりヘロヘロ(時差ボケはないのだが、機内で一睡もできておらず、かなり眠い。加えて上記の事情でホテルに着いたのが15:30とスケジュール的にもタイトになっていた)で、取るものもとりあえず、会場であるGalen Center(ガレンセンター)に一路、と思いきや、同行の電撃某誌編集長が時間になっても待ち合わせの場所に現れず、少し足止め(和尚だけに喝だ!……って、皆さんにはわかりませんよね)。

 ガレンセンターに向かおうとフリーウエイに乗るも、北と南の方向を間違えて、またまたタイムロス。そして会場近くの指定の駐車場が見つからず右往左往した挙句、やむなくヴァレットパーキング(後で聞いたらVIPのみで事前に配布したチケットなしではNGだったらしい)。会場の周りを見ると、もうそこには、受付を済ませたメディアやメーカーもろもろの職種人種の長蛇の列。受付の場所がわからず係の人に聞き(もちろんイングリッシュですよ)、案内される後を追いかけるも、受付の手前で、我々が来た道からはそこに行けないことがわかり、元来た道を逆戻り。受付で、日本のXbox 360事業部長の坂口さんにお会いして今日の内容を聞くと、カンファレンスではなく明日行われるカンファレンスに先駆けて、“Project Natal”を感じてもらうイベントです、と聞かされる。えっ、“Project Natal”に特化したカンファレンスではないのか! と、明らかに勘違い野郎な我々。とはいえ、坂口さんの話では「なんともいえない非日常的な幻想体験ができますよ!」とのことなので「よっしゃ、じゃあ今日は硬く考えず、楽しもう!」って感じで会場入り。

 会場に入るなり、ドリフの合唱団を彷彿(ほうふつ)とさせる白い衣装(ポンチョっぽい)を着る。肩に何か入っているのか、べジータ張りのいかり肩なのだ。張りぼての岩が左右に配置された場所から暗闇を進むと、右手にリビングでくつろいでいるアジアの国の家族の風景画が、額縁のような枠の中に見える。と、彼らが我々を手招き、その額っぽい仕切りにはガラスや阻むものがなく、我々はその中にin(ダイブ)して、ちょっとの間彼らの片言とも言えない程度の会話(というよりもコミュニケーション)をして本会場へ。四方を観客席に囲まれた体育館のようなスペース。

 あ、忘れていたが、入場口から、幻想的な(「アバター」に出てきそうな感じの人たちが麻呂赤児的な踊りをしている)パフォーマンスが繰り広げられ、会場のあちこちでも手品やダンスなどさまざまなパフォーマンスが行われていた。それらのパフォーマンスは、日本でもおなじみのシルク・ドゥ・ソレイユのものらしい。さすがー。お金がかかっている感じ。最近いい話を聞かないゲーム業界で、この“お金かかっている感”は重要ではないだろうか、と個人的に思うのであった。

 で、さっきも言ったように、会場にいる全員が(某メーカーさんの2人を除いて)同じ白い衣装なので、ある種異常といえば異常な状況で、音楽も打楽器を中心としたプリミティブなリズムで、えも言われぬ世界観を構築していた。ここまではよかったが、待てど暮らせど、本番のナタルが出てこない。徹夜で、時差ボケで、立ち続ける、ただ立ち続ける。観客席に行こうとしたら、入り口の係員が、我々のリストバンドの色が席には行けない人種(いえいえグループです)らしいと聞き、がっかり(どこかの媒体がこっそり違う色のリストバンドをもらって、ちゃっかり座っていたが)。

 なんかそれはかっこ悪いし、ゴリゴリ感が気持ち悪かったので、ふらふらで倒れそうになりながらも、ただただ立って待っていた。一緒に行っている同志の1人がついに、口をだらしなく開けながら立ち寝までする始末。あまりにも過酷で、まるで修行のような状況、そのうえ撮影禁止って俺たち何をしてればいいの? って、もう少しのところで私も意識が飛んでしまいそうなところで、ついに本題のパフォーマンスがスタート! たぶん建物の外での並びを入れて、2時間以上立ちっぱなしなのだ!!!! “親にだって立たされたことがないのに!”(ウソ)。

 で、恨み節はこのへんで、会場の様子と発表されたゲームの詳細はDOLのニュース班がきっちり伝えるので、ここでは割愛させてもらうとして、今日、イントロダクションとして発表された“Project Natal”改め、“Kinect”の感想を。

 昨年のE3でその存在を明らかにした、まったく新しい発想のコントローラレスなゲームプレイを可能にしたこのシステム。技術的なすごさを語ると、どれだけスペースがあっても足りないし、私にはあまりにも専門知識がないのだが、いろいろなゲームクリエイターの方に話を聞くと、口々に画期的で革新的なものであるし、作りがいがあるという。なので、このKinectは、とっても先進的革新的なモノであり、言い方を変えるとプレイする人を選ぶ、また新しいゲームシーンを提案できうるポテンシャルはあるモノであるのでは? と当時は思っていた。

 ところが、ところが今回のイベントでの内容は私の予想を覆した。まず単純明快にコントローラなしでゲームをプレイしている。この単純明快さをあからさまにと言ってもいいほどに強く伝えてきていること。次に、家族をターゲットにしていること、そして家族で遊べるものとして、レースゲームやフィットネス、陸上競技やサッカーなどの球技、全身を使うダンスを立て続けに披露した。そう、ここで私が個人的に思ったのは、今あるWiiの範ちゅうではないかということ。そこのユーザーをターゲットにしていることを明らかにしていると思うのである。ビジネス的にはとても正しいし、市場としてはもうすでに存在しているところへの新たなテクノロジーの投下。逆に、このパフォーマンスを見てXbox 360の本気が見えた。小難しいものよりも単純明快で説得力があるからである(誤解されないように言うと、このKinectは別にWiiをまねているわけではない)。そう、Wiiがその新しさや従来のゲームと一線を画して今の地位を築いたように。

 明日のカンファレンスでは、今日のイベントの内容だけでなく私が始めに思った先進的で新たなゲームの世界も紹介されるような気がします。ハードとしてゲームが成功する1つのパターンとして、相反する2面性があるものがこれまでも大成功していると私は思う。そうなれば、このKinectが、これからのゲーム業界をおもしろいものにするような気がしている。

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