2010年6月25日(金)
――序盤の舞台となる村川村ですが、モデルになった場所はありますか?
一応、村の舞台になっている場所は、中伊豆の実際にある風景を使わしてもらっています。村自体や家は作り物ですが、山の稜線や盆地の雰囲気は僕の田舎をベースにして作っています。
――村川村の名産はワサビですが、監督自身、ワサビは好きですか?
アハハハ。そんなことを聞かれるとは思いませんでした。好きですよ……お寿司に入っているくらいの分量がいいですね。あと、お刺身が好きなので、おろしながら(手でワサビを下ろしているような動きをする)食べるのも好きです。
――ワサビを作中に出すというのは、監督が好きだから出したのでしょうか?
日本のアニメーションの中で、ワサビ畑が映像化されていないように感じたんです。昔見た時、すごくキレイという印象があったので、「イケる!」と思っていました。主人公の家をワサビ農家にしようとして取材に行ったら、農家の方がワサビのことをいろいろ教えてくれたんですね。たとえば、ワサビは株分けしているクローンだということや、すべてが同じ形をしているとか。あとは過去がすごい不明な植物ということを聞いて、倉田と相談して出すことにしました。
――先日、タイアップ商品として『田丸屋×宇宙ショーへようこそ 限定パッケージ わさびふりかけ』の発売がアナウンスされましたね。
ああ、そう!! あれ、すごいですよね。ニュースを見たら、ご飯が食べたくなっちゃって(笑)。ボクのタイトルで初めてのタイアップ商品なんですよ。老舗のお店ですし、うれしいですね。
――食べ物ということで気になったのは、メンバーが月でハンバーガを食べているのが印象的だったのですが、なぜハンバーガにしたのですか?
いきなり行って、すごく不思議なもので「これ食べられるの?」というものがあそこで出てしまうと、その後の説明が大変になってしまう可能性があった。今回の宇宙観は、地球の文化は宇宙から入ってきているというような設定があるんです。それの第一報ということでハンバーガを出しました。コーラも宇宙から来ているので、原液が何かはわからないというイメージです。
――ネットではインクの人気が高まっていますが、いかがですか?
うれしいですね。最初の段階で「宇宙人なんだけど、愛されるようにカワイく書いてね」とお願いしていたんですよ。ここまで人気が出るとは予想外でしたが、よかったです。
――制作中のエピソードなどあれば教えてください。
うーーーーん。言えないようなことはたくさん起きましたけどねえ。……カッティングの時に15分落とすという作業があったんですが、2日くらいかかったことかな。実はカッティング自体に、2カ月くらいかけているんですよ。その期間はホント大変だったんですが……これはあんまりいいエピソードじゃないなあ(苦笑)。
――シーンを切っていくという作業になるのですか?
シーンはほとんど切っていません。シーンを切ると話がつながらなくなるので、セリフを切っている感じですね。主語を切っていくとか、“てにをは”をなくすとか。
――素人考えで申し訳ないのですが、それで15分詰めるというのは相当大変な作業では?
本当に大変でした! 2カ月くらいのアプローチがあって、最後の2日でガッと作業するという感じでした。ラスト2日には候補も決めている段階だったので、とにかく削る作業でした。
――尺を削りつつ、身を削るという作業ですね。
そうそうそう(笑)。尺を削るというのは、抜いてつなぐというのではなく、撮影しなおしということなんです。抜くといろいろなものがずれてしまう。このキャラは削るんだけど、後ろにいるキャラはそのままというシートの書き直しを、演出の畑君と僕が死ぬ思いでやりました(苦笑)。
――『かみちゅ!』に続き、池さんが楽曲を担当されていますが、楽曲についてはいかがですか?
宇宙では星ごとに楽曲が必要となるので、池さんのジャズテイストがうまく生きた曲になればと思っていました。メインになっている劇盤は、とにかくキモチイイのを作ってほしいとお願いしましたね。落越はブラス(金管楽器)を入れることにこだわっていたので、最後はパッパラパッパラ鳴っています。
――音楽はすごく爽快だったという印象ですね。
池さんがフィルムスコアリングをやってくれたんですよ。ずっとやりたかったんですが、最後に時間がなくなっている状況での音楽作業だったので、あまり贅沢をいえなかった。さらに音楽のラインだけひいたら、映像135分のうち、100分くらいになってしまった。池さんに報告したら、「やるしかないよねえ」って言ってくれて、全部シーンにあわせた音楽を当て込んで作ってくれました。
――主題歌についてもコメントをお願いします。スーザン・ボイルさん起用の経緯は?
正月に田舎に帰った時に、声優の水樹奈々さんが出るというので、中学生以来見ていなかった紅白歌合戦を見たんですよ(笑)。ホント、何年ぶりくらいかに見ていたら、水樹さんが出た後に、すごいおばさんが出てきたんですよ。そしたらそのおばさんがすっごいうまくて! 名前は知っていたんですが、彼女がどんな人かも知らなかった。「世の中にはこんなに歌がうまい人もいるんだ!」とCDを買って聴きました。落越に「主題歌をお願いするなら、こういう人がいいよね」と何気なく話していたら、たまたまソニーミュージックで、お願いしてみたという縁です。
――偶然のつながりだったんですね。続いて、本作の見どころを教えてください。
あえて言うなら、子どもたちのかわいさ、健気さ、頑張っている感です。見る前は子役が声をやるから不安という声が多いようですが、見終わったらそういう人はいなくなっていますね。
――読者の方へメッセージをお願いします。
ぜひ見ていただき、いろいろな感じ方を人と話し合ってほしいと思います。多分、いいと思うシーン、セリフは違うと思うんです。それは、その人の引き出しの中にあるものだと思うので大切にしつつ、違った人の意見も大事にしてもらいたいです。とにかくかかわった人たちが、心を込めて、頑張って作った作品。楽しんで、見ていただければ幸いです。
――ちなみに、監督が好きなセリフはどこですか?
すごい小さいところなんですが、周が夏紀に「髪をやってあげる」と言われて、「やって~~」っていうセリフが大好きですね(笑)。絵コンテを描いている時からそういうふうに周に言ってほしいと思っていたら、本当にやってくれたので、あれはうれしかったです。考えて考えて子どもたちのセリフを出しているんですが、あそこが自分の考える子ども像と、実際の子どもがシンクロしているような気がします。
――本日はありがとうございました。
実は最初のタイトルは『ザ☆宇宙ショー』だったという本作。子どもが宇宙に行く話から、監督が考えたとか。タイトルを決める際に“宇宙ショー”という名前は残してほしいと思っていたようで、現在の『宇宙ショーへようこそ』はお気に入りのようだ。英語に訳した時の“Welcome to THE SPACE SHOW”というタイトルも、海外でウケがいいようだ。 |
(C)A-1 Pictures/「宇宙ショーへようこそ」製作委員会
■『宇宙ショーへようこそ』
【公開日】2010年6月26日 新宿バルト9、シネ・リーブル池袋、渋谷シネクイント、立川シネマシティ他全国ロードショー
【スタッフ】(※敬称略)
監督:舛成孝二
脚本:倉田英之
キャラクターデザイン・作画監督:石浜真史
場面設計:竹内志保
メカニック作画監督:渡辺浩二
プロダクションデザイン:okama、神宮司訓之、竹内志保、渡辺浩二
サブキャラクターデザイン:薮野浩二、森崎貞
演出:畑 博之
色彩設計:歌川律子
美術監督:小倉一男
CG監督:那須信司
撮影監督:尾崎隆晴
編集:後藤正浩
音楽:池頼広
音響監督:菊田浩巳
録音調整:名倉靖
音響効果:倉橋裕宗
原作:ベサメムーチョ
制作:A-1 Pictures
製作:『宇宙ショーへようこそ』製作委員会
配給:アニプレックス
他
【キャスト】(※敬称略)
小山夏紀役:黒沢ともよ
鈴木周役:生月歩花
原田康二役:吉永拓斗
西村倫子役:松元環季
佐藤清役:鵜澤正太郎
ポチ・リックマン役:藤原啓治
ネッポ役:中尾隆聖
マリー役:五十嵐麗
ボグナー役:小野坂昌也
ヘストン役:竹田雅則
ロビー役:宮本充
インク役:飯野茉優
ルビーン役:江川央生
ヤブー役:斎藤千和
タロー役:伊藤和晃
ハナコ役:日髙のり子
ゴーバ役:銀河万丈
トニー役:飛田展男
他