News

2010年7月17日(土)

PSP『フェイト/エクストラ』クリア後レビュー。まったく新しい『Fate』が完成!

文:ごえモン

 マーベラスエンターテイメントから7月22日に発売されるPSP用ソフト『Fate/EXTRA(フェイト/エクストラ)』。本作のクリア後レビューをお届けします。

『フェイト/エクストラ』

 さて、『フェイト/エクストラ』といえば、皆さんはゲーム情報誌などで初報を読んだ時にどう思われたでしょうか? 僕は「え!? あの『Fate』がPSP? しかもジャンルはRPGで、『世界樹の迷宮』シリーズを手掛けた新納一哉さんがプロデューサーだって!?」と非常に驚いた記憶があります。

『フェイト/エクストラ』
▲本作を初めて知った当時は、「なんでセイバーが赤いの?」とか「『Fate』でRPGって……一体どんな戦闘になるんだろう……じゅるり」なんてドキドキ&ワクワクしたものでした。

 その反面、ジャンルも違えば絵も違う、それで『Fate』の世界観をしっかり再現できるの? なんて思っていたんです、大変失礼なことに……。でも、たぶん少なくない人がそう感じていたんじゃないかと思うんですよね。

 そこで今回、あまりに気になって気になってしょうがなくなってしまったTYPE-MOONファンの僕は、マーベラスさんにお願いしてひと足早く本作をプレイさせていただきました。

 そのレポートや感想を、皆さんが気になっているだろう要素を交えつつ、お伝えしていこうと思います。……あ、先に結論から言ってしまいますが、この『フェイト/エクストラ』……かなりおもしろかったです!

『フェイト/エクストラ』とは? 『Fate/stay night』との関連性は?

 まずは本作の情報を集めていなかった人のために、簡単にゲームの概要を紹介していこうと思います。

 本作は、人気美少女ゲームブランド・TYPE-MOONのPCゲーム『Fate/stay night(以下、Fate)』の世界観を再構築し、RPGとして新生させた作品。もしかしたら、単純に『Fate』をRPG化したもの? なんて勘違いしている人がいるかもしれないですが、まったく違う作品に仕上がっています。

 ただし、違う作品になっているからといっても、シナリオを奈須きのこさんが手掛けていますから、全然『Fate』の世界が崩れていないんです。皆さんもテキストを読めば「しっかり『Fate』してるじゃん」と感じてもらえると思います。

『フェイト/エクストラ』 『フェイト/エクストラ』
▲RPGとしては非常にテキストが多い本作。奈須さんファンとしては、とってもうれしい仕様です。▲主人公が危機を感じたワンシーンで、テキストが赤字に!! これでこそ『Fate』!

 じゃあ、一体どのあたりがまったく新しいのかというと、まず時代。本作では、なんと西暦2032年が舞台! それだけでも衝撃ですが、さらに霊子虚構世界・SE.RA.PH(セラフ)と呼ばれる“電脳世界”での聖杯戦争が描かれていくんです。

 他にも、セイバーが赤かったり葛木先生が黒いイケメンになっていたりと、いろいろと違うところが出てきます。そんな“原作『Fate』との違いを楽しむ”という、ある種間違い探し的な楽しみ方もありますね。

『フェイト/エクストラ』 『フェイト/エクストラ』 『フェイト/エクストラ』
▲舞台は電脳世界に構築された月海原学園。弓道場もあり、その外観は『Fate』の舞台の1つとして描かれた、穂群原学園に酷似しています。魔術師たちは腕利きのハッカーとして、聖杯を求めてこの電脳世界にダイブしています。
『フェイト/エクストラ』 『フェイト/エクストラ』
『フェイト/エクストラ』 『フェイト/エクストラ』
▲おなじみのキャラクターがNPCとして登場したり、アバターとして遠坂凛や間桐慎二などの姿を模した魔術師が登場するなど、原作ファンも思わずニヤリ。

 これまで“まったく新しい”とか“全然違う”などと強調してきましたが、もちろん『Fate』ファンが楽しめる要素もたくさん盛り込まれています。

 たとえば、ゲームを開始すると表示される注意文。そこには「本作は、デッドエンドルートや、理不尽な選択肢が存在します。セーブデータを複数用意することを推奨いたします」という内容が!

 『Fate』といえばデッドエンドの多さが印象的でした。本作でも、そこは踏襲されているので主人公が簡単に死んじゃいます(笑)。なので購入する人は、注意文にもあるようにこまめにセーブすることを心がけましょう!

『フェイト/エクストラ』
▲こちらがゲームを起動すると見られる注意文。惜しむらくは、デッドエンド後に見られる“タイガー道場”がないことですが、原作ほど膨大なデッドエンド数ではないので、ないのもうなずけます。
『フェイト/エクストラ』 『フェイト/エクストラ』
▲選択肢を間違えて主人公があえなく死亡! こまめにセーブは本作の基本です!! ちなみに本作にはセーブポイントという概念がなく、3Dダンジョン内、会話時、イベント時以外であればメニュー画面からいつでもセーブが可能です。
『フェイト/エクストラ』 『フェイト/エクストラ』
『フェイト/エクストラ』 『フェイト/エクストラ』
▲タイガー道場がない代わりに(?)、藤ねえにいろいろなお使いを頼まれる“タイガークエスト”が収録されています。クエストを達成するとインテリアがもらえ、サーヴァントが住む部屋がどんどんゴージャスに!

 他の共通点といえば、プロローグが『Fate』と同じで3日間であること。藤ねえこと藤村大河がホームルームで盛大にこける、完璧超人なのにちょっとした失敗でテレる遠坂凛などですね。もちろん、マスターやサーヴァントは変わらず存在しています。

 『Fate』の魅力の1つに、サーヴァントの存在があると思います。『Fate/Zero』や『Fate/strange fake』も同じで、登場するサーヴァントが一体どんな能力を持っているのか? 宝具は? そしてどんな英雄なのか、と主人公に感情移入しながら想像しドキドキするのがおもしろいんです。

 本作でもそこは外していないので、『Fate』ファンもバッチリ楽しめると思いますよ。

『フェイト/エクストラ』
▲プロローグで、1日が終わるごとにカウントダウンが表示。3日目に一体何が起こるのか……皆さんの目で確かめてみてください。
『フェイト/エクストラ』 『フェイト/エクストラ』
▲藤ねえがコケるシーンを3Dグラフィックで見られるのはうれしい! スローモーションになりながら盛大に飛んでいる藤ねえの姿に、思わず笑いがこみ上げます。
『フェイト/エクストラ』 『フェイト/エクストラ』
▲こちらは、主人公のことをNPCだと勘違いした遠坂が、ベタベタと体を触ってくるイベント。その後、マスターだと気づいて頬を染める遠坂がギャップかわいい。

聖杯戦争では情報が命! 6日間で敵サーヴァントの情報を知る

 さてさて、長い前置きが終わりまして、ここから本作がどのように進行していくのか、システム部分を紹介していきたいと思います。

 衝撃的なプロローグを終えた後、主人公の性別と名前、そしてセイバー、アーチャー、キャスターの3人の中からサーヴァントを決めます。僕は“赤いセイバー”の正体がとっても気になったので、セイバーを選択しました。

 セイバーは初プレイ向きと説明書きがありますが、男主人公を選び原作の主人公・衛宮士郎とアーチャーのイチャイチャ(?)を擬似体験したい人はアーチャーを選ぶもよし、完全新規のケモノミミキャラ・キャスターを選ぶもよし、そこはプレイヤーのお好みで。

『フェイト/エクストラ』 『フェイト/エクストラ』
▲最初に主人公の性別を選ぶことに。主人公はセリフがなく無個性で、完全に主人公=プレイヤーという図式です。
『フェイト/エクストラ』 『フェイト/エクストラ』 『フェイト/エクストラ』
▲サーヴァントはセイバー、アーチャー、キャスターの3人から選択。どのみち3周以上プレイすることになるのに、ここで30分ほど悩みました(笑)。どのサーヴァントを選ぶかは、購入する前に決めておくといいかもしれませんね。

 サーヴァントを決め、チュートリアルの意味を含めた冒頭のイベントを見た後、いよいよ主人公の聖杯戦争が始まります。このゲームの聖杯戦争は128人ものマスターがいるため、バトルロイヤルではなく週1回対戦を行うトーナメント方式で進行していきます。

 もちろん、負けたマスターを待っているのは“確実な死(電脳死)”であり、逃れることはできません。毎週マスターの人数が半分になっていき、学園がさびしくなっていく……そんな容赦なき“死の描写”が『Fate』の味であり、本作の魅力の1つでもあります。

『フェイト/エクストラ』
▲学園内で仲よくなった相手や親しみを感じる相手とも、生き残りをかけて殺し合わなければならない……相変わらずシビアな世界観です。

 聖杯戦争の対戦相手は、週始めに学園内の掲示板で発表されます。対戦相手が決まると、プレイヤーには6日間の猶予期間(モラトリアム)が与えられ、その6日間の間に3Dダンジョンで自サーヴァントのレベルを上げたり、買い物をしたり、敵サーヴァントの情報を集めたりして、対戦を行う7日目に向けて準備をすることになります。

 この“敵サーヴァントの情報を集める”という作業が本作のキモ。敵の情報は、学園内で他のマスターから聞いたり、図書室で調べたり、敵本人から聞かされたり(笑)、実際に敵サーヴァントと戦闘を行ったりして集めていきます。

 集めた情報は、システムメニューの“マトリクス”内にどんどん追加されていき、それを見ながら「もしかして、こいつはあの英霊なんじゃないか?」と推理するのが楽しいんですよ! ちなみに、本作に登場する英霊は比較的有名な人たちばかりなので、結構推理しやすいんじゃないかと思います。

『フェイト/エクストラ』 『フェイト/エクストラ』
▲頭上に黄色い吹き出しが出ているキャラクターに話しかけると、イベント進行に関係する情報やサーヴァントに関する情報を聞くことができます。
『フェイト/エクストラ』 『フェイト/エクストラ』
▲一部のマスターは、自分でサーヴァントの情報を明かしてしまったり(笑)。
『フェイト/エクストラ』 『フェイト/エクストラ』
『フェイト/エクストラ』 『フェイト/エクストラ』
▲“マトリクス”には、サーヴァントの能力値や宝具名、生前のエピソードなどが収録されます。はじめは虫食い状態ですが、情報を集めていくうちにどんどん追加されていきます。……しかし赤セイバーさん、対魔力がCって青セイバーさんに比べると心もとないですね……。

 また、サーヴァントの情報には“マトリクスレベル”という値が設定されていて、真名を推理するために必要なヒントを入手すると3までレベルを上げられます。

 敵マスターとの対戦日である7日目に、自サーヴァントとこれまでの情報を整理し、うまく情報を整理できると“マトリクスレベル”が“E”に上昇。そこでやっと、敵サーヴァントの真名がわかる仕組みになっているのです。

 なお、このレベルは上がれば上がるほど戦闘時に有利になるのですが、どう有利になるのかは後ほどご紹介しますね。

『フェイト/エクストラ』 『フェイト/エクストラ』
▲敵サーヴァントの情報を入手すると、上の画面写真のようなアナウンスが表示されます。▲“マトリクスレベル”が1だと、ほぼ何もわからない状態。なので、ほとんど空欄だったりクラスに“?”が付いていたりします。
『フェイト/エクストラ』 『フェイト/エクストラ』 『フェイト/エクストラ』
▲7日目になると敵サーヴァントの情報を自サーヴァントと一緒に推理します。これまでの情報をよく覚えておき、何回か適当な選択肢を選ぶとマトリクスレベルが“E”に上昇。ここでついに、敵の真名が明かされます。

戦闘は攻撃方法の読み合いがカギ!

 本作の戦闘は“アリーナ”と呼ばれるダンジョン内で発生します。戦闘はターン制で、3すくみの関係にある“ATTACK”、“BREAK”、“GUARD”の3つの行動とサーヴァントが習得しているスキルの中から、あらかじめ6つを自由に選択。敵も6つの行動を同時に行い、相性のいい攻撃方法を選択したほうが相手にダメージを与えることができます。

『フェイト/エクストラ』 『フェイト/エクストラ』
▲“アリーナ”内の敵シンボルに接触すると戦闘が開始!▲“ATTACK”は“BREAK”に強く、“BREAK”は“GUARD”に強い。そして“GUARD”は“ATTACK”に強いという3すくみの関係になっています。

 この戦闘システムが案外難しく、6つの行動がすべて裏目に出たせいで初めて出会ったザコ敵に1ターンで殺される、なんてことを数回体験しました(汗)。ただ、2~3ターンほど敵の行動を見ればある程度行動にパターンがあることがわかるので、それがわかってしまえばノーダメージで敵を倒すことも可能です。

 この説明を読むと、若干不親切な印象を受けてしまうかもしれませんが、聖杯戦争の“負けたら死が待っている緊張感”がうまく演出できているので、僕は好きです。

 ただ、敵を見ていて「なんかこいつは硬そうだから“GUARD”しそうだな」とか「こいつは暴走気味だから“BREAK”を使うんじゃないか」といった見た目の印象が、わりと的を射ていたりするのでそこまで不親切ではないかも。大事なのはしっかりと行動を読み、考えることですね。

『フェイト/エクストラ』 『フェイト/エクストラ』
▲最初は敵がどんな行動をとるかわからないので、苦労しがちです。でも、救済措置として1~3つの行動が見えることもあるので、そこからパターンを推測するのが大事。
『フェイト/エクストラ』 『フェイト/エクストラ』
▲パターンがわかってしまえば、ノーダメージで「オレTUEEEEE!」プレイも楽しめます。ただ、たまーにパターンを変えてくる敵がいるので、全行動の逆を付かれることもしばしば……。
『フェイト/エクストラ』 『フェイト/エクストラ』
▲3回連続で有効な行動を取ると、“Extra Turn”が発動して1回多く攻撃できるようになります。逆に敵の“Extra Turn”が発動すると即死の危機です。
『フェイト/エクストラ』 『フェイト/エクストラ』
▲どうしても戦闘がつらいという人は、ゲーム開始時に初心者モードを選ぶのが吉。初心者モードを選ぶと、“アリーナ”の1階層にしかないはずの“回復の泉”が多く出現します。

 “負けたら死”の緊張感は、特に対サーヴァント戦で顕著にあらわれます。敵サーヴァントの場合は、ザコ敵よりも行動パターンが豊富で読みにくかったり、1回のダメージが大きいのでミスできる回数が少ないのです。

 と、そこで登場するのが“マトリクスレベル”。“マトリクスレベル”が高いと、敵サーヴァントの6つの行動のうち、1~3つの行動がプレイヤーから見えるようになります。

 さらにレベルが“E”になると、宝具を使うタイミングまで見えるようになるので、宝具に合わせて“GUARD”をしたり、その前に回復をしたりできるようになります。なので、“マトリクスレベル”は必ず“E”まで上げることをオススメしておきます。

『フェイト/エクストラ』
▲敵の強力な攻撃がくる前に、1ターンに1回だけ発動できるマスターの特殊能力“コードキャスト(魔術のようなもの)”を使用しましょう。ちなみに、回復以外にもさまざまな効果を持つ“コードキャスト”があります。

サーヴァントの能力値上昇は蒼崎青子さんにお願い?

 本作では、敵から経験値を獲得してサーヴァントのレベルを上げても、サーヴァントのHP&MPとマスターのMPしか上昇しません。どうやってサーヴァントを強くするのかというと、レベルアップ時に手に入る“スキルポイント”を使用して、『月姫』などに登場する魔法使い・蒼崎青子さんにステータス値を上げてもらいます。

『フェイト/エクストラ』 『フェイト/エクストラ』
▲『月姫』からのゲストキャラクター・蒼崎青子がサーヴァントを強化してくれます。しかも、隣には姉の橙子さんまで登場! 仲の悪い2人が一緒に登場するなんて……なんだか感慨深いです。▲ステータスを上げるには、レベルアップ時に手に入るスキルポイントが必要。スキルポイントは5つのパラメータに自由に振り分けられるので、自分の好みに合わせて振り分けていきましょう。

 また、ステータス値をある程度上昇させるとサーヴァントはスキルを習得します。スキルは対サーヴァント戦で非常に役に立つので、スキルポイントは温存せずにガンガン使ってしまいましょう!

『フェイト/エクストラ』 『フェイト/エクストラ』
▲こちらはセイバーが最初に覚えるスキル・花散る天幕(ロサ・イクトゥス)。これ以外にも、さまざまなスキルを習得していきます。

感想:原作『Fate』の魅力はそのままに、まったく新しい世界観を構築した良作RPG

 というわけで、PSP『フェイト/エクストラ』のレビューお届けしてきましたが、いかがでしたでしょうか?

 本作は、軽いSF要素が盛り込まれた新しい『Fate』なんですが、次第に明らかになっていくサーヴァントの能力・真名や“次にどんな英霊が出てくるのか想像する楽しさ”、聖杯戦争という過酷な戦いの中で、強い願いを胸に秘めて戦うマスターと仕えるサーヴァント個人個人のドラマ、あと女性キャラクターのかわいさ&男性キャラクターのかっこよさなど、挙げたらキリがない『Fate』の魅力をまったく損なわずに盛り込んだ良作RPGです。

 『Fate』ファンには間違いなくオススメできるタイトルですが、原作を知らなくても楽しめるように作られているので、原作を未プレイの人にもぜひプレイしてほしいですね。

 『フェイト/エクストラ』を入り口として、これから『Fate』シリーズの魅力にどっぷりハマっていただければ『Fate』ファンとしてもうれしい限り。ぜひぜひ、皆さん遊んでみてください!

(C)TYPE-MOON (C)2010 Marvelous Entertainment Inc.

データ