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2010年9月1日(水)

【CEDEC 2010】『ポケモン』と『ドラクエ』のキーパーソンが“プロデュース”を語る

文:電撃オンライン

 8月31日~9月2日にかけて、パシフィコ横浜 会議センターで開催中のゲーム技術者向けカンファレンス“CEDEC 2010(CESAデベロッパーズカンファレンス2010)”。本日9月2日に行われたセッション“人を楽しませるプロデュース”の模様をレポートする。

 このセッションの登壇者は、ポケモン代表取締役社長・CEOの石原恒和氏、スクウェア・エニックスプロデューサー統括部 マネージャー、プロデューサーの市村龍太郎氏、そして司会も務めたスクウェア・エニックス開発部ディレクター・吉田直樹氏の3人。

 9月18日に最新作『ポケットモンスターブラック・ホワイト』の発売を間近に控える石原氏と、『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』『ドラゴンクエストVIII 空と海と呪われし姫君』『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』などのプロデュースを担当した市村氏、『ドラゴンクエストモンスターバトルロード』シリーズにディレクター・ゲームデザイナーとして参加している吉田氏らが、“製品を商品に変える”という、エンターテイメントを生み出すためのプロデュースについて語り合った。

CEDEC 2010
▲写真左から、吉田氏、石原氏、市村氏。登壇した石原氏は「『ポケモン』対『ドラクエ』のようになっていますが、後に響くので、お互いをほめる方向で話していきたいですね」と話し、会場からは笑いがこぼれていた。

■ポケモンと読売巨人軍は似ている?

 まず、吉田氏から“プロデュースする際に大事にしていること”を聞かれた石原氏は、「自分が楽しめるもの、納得する物を作ることです。そうすればみんな楽しんでくれると思っています」と述べた。その上で「できるだけ多くの人に遊んでもらうためには、全年齢のゲームを作ることが重要です。作っている段階からお客さんを失うのはもったいないと思います」と、誰でも遊べるゲームを作ることの重要性を説明した。

 同様の質問に対し市村氏は「今までにないものを作ることが大事ですが、独創的になりすぎてもよくないので、そのさじ加減が重要です。まずは遊んでもらって、その時に新鮮さを感じてもらいたいです」と、自身のプロデュースの方針を語っていた。

 「『ポケモン』は、1996年に発売した『ポケットモンスター赤・緑』から、TVアニメや映画、カードゲームまで幅広く展開していますが、ゲームからすべてが広がっていくという原則は今も変わっていません」と話す石原氏。ここで吉田氏は「今はゲームではなくアニメから『ポケモン』に入るようなお子さんもいると思いますが、あくまでゲーム中心なのでしょうか?」と質問する。石原氏は「ゲームが中心であることは変わりませんが、スタッフが意識している部分はあると思います。でも、最初に3匹の中から1匹を選ぶスタンスはずっと変わりませんし、ポケモンの細かいディテールや設計図なども、すべてゲームの中に入っています。アニメなどは、そこから生まれるという考え方ですね」と、あくまでゲームありきだという『ポケモン』の構造を説明した。

CEDEC 2010

 続いて吉田氏から“『ドラゴンクエスト』のプロデュースで気を付けていること”を聞かれた市村氏は、「自分が遊んでいた『ドラゴンクエスト』を忘れないことですね。それを、よりパワーアップして今の人に伝えたいという考え方です」と述べ、自身も『ドラゴンクエスト』プレイヤーであった経験から、「今の人たちが『ドラゴンクエスト』をどういう風に見ているのか、一歩引いた立場から客観的に見られる」と説明。「石原さんは『ポケモン』の親ですが、僕は『ドラクエ』の家庭教師のようなポジションです」と話す市村氏は、「最近『ドラゴンクエスト』の平均年齢が上がっているのを見ると、(子どもは)みんなポケモンやってるのかなぁと、いい意味で悔しい思いになることもあります」と、『ポケモン』が刺激になっていることを告白した。

 その後、市村氏は「株式会社ポケモンという会社を作って、ライセンスなどに注力している人がいるのはすごいですよね。社内で株式会社ドラクエを作った方がいいのでは? といった話が出ることもあるんです」とポケモンの商品プロデュースを称賛。「サントリーさんと『トロトロスライム』を作った時も、モンスターのイラストをプリントだけすればいいのではなく『ドラクエ』の商品にしなくてはいけないとこだわったのですが、ポケモンさんのように商品について考えるたくさんの仲間がいないと難しいなと感じました」と、市村氏は商品開発の難しさを話した。石原氏は「“ポケモン以外のことはやらない”という縛りを与えることにより、他のこともできなくなるんです。たとえばの話ですが、スクウェア・エニックスさんの場合は、今の『トロトロスライム』を『エリクサー』と一緒に売ることだってできるわけです」とリスクがあることも説明。その上で『ポケモン』というコンテンツを最大化させるために、ポケモン以外のことはやらないという選択をすることにしたのだという。

 また石原氏は、他に自分たちと同じような会社はないかと考えた時に、「いくつものコンテンツを扱うウォルト・ディズニーやサンリオは少し違う」と述べ、読売新聞とのコラボ企画などの経緯から「社員全員が巨人軍というブランドを浸透させようとしている、株式会社読売巨人軍は似ている」と話していた。

→すれ違い通信の成功の要因は?(2ページ目へ)

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