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2010年9月1日(水)

【CEDEC 2010】メーカー8社から集まったクリエイターがゲームオーディオを語る!

文:電撃オンライン

【CEDEC 2010】

 パシフィコ横浜で8月31日~9月2日にかけて開催されているゲーム技術者向けカンファレンス“CEDEC 2010”において、パネルディスカッション“ゲームオーディオ ~未来への提言~”が行われた。

 “ゲームオーディオ ~未来への提言~”では、バジェット(予算)を切り口にしたゲームオーディオ制作の現状報告、北米タイトルのゲームオーディオについてのディスカッションが行われた。カプコンの制作部 サウンド制作室 シニアサウンドエンジニアの瀧本和也氏をはじめ、信山斉之氏(カプコン)、山口晋平氏(SCE)、中西哲一氏(バンダイナムコゲームス)、高木謙一郎氏(マーベラスエンターテイメント)、矢島友宏氏(スクウェア・エニックス)、鈴木英之氏(KONAMI)、光吉猛修氏(セガ)、中條謙自氏(コーエーテクモゲームス)らがパネラーに迎えられたこのディスカッションで、どのような話がされたのか、以下にかいつまんで紹介していく。

■バジェットとコストから見る現在

 前半は、不景気などの問題から、より少ない予算(バジェット)と費用(コスト)を求められる現在のゲーム開発において、各人が現状や考えを語った。今回、ただ1人サウンド制作ではないプロデューサーの立場から出席した高木氏は、「開発費の大半は人件費」と語る。高木氏は、低予算でゲーム開発を成し遂げるには、各チームがゲームのイメージを共有することが重要であるとも語っていた。これは、各チームにゲームのイメージが浸透しない場合に起こる“作り直し”が、もっとも無駄な制作過程になるためだ。

【CEDEC 2010】 【CEDEC 2010】
▲高木氏の手掛けた『勇者30』は、氏の考えを実践して、少ない開発費で早期に開発できたゲームの一例だという。

 予算と費用の問題について、出席者の共通した意見としてあがったのは、「お金を有効的に使う」ということ。無駄なことにお金を使わないことで低コストを図り、必要なことにはきちんとお金を使うという“適切なお金の掛け方・使い方”をいかに判断し、あるいは個々がその問題意識を持って取り組むかが、安くてクオリティの高いサウンド開発には重要とのことだ。

 また、「作曲家や映画など外部とのコラボレーションは、その作品のクオリティを上げるだけでなく、そこから得られる経験やノウハウが社内にフィードバックされ、内製のスキルアップにつながる(中條氏)」、「ゲームをより個性的にするため、最初に各人が自分流でクオリティを追求し、そこで下がる効率を技術でフォローする――すなわち技術面によりお金を掛けることが重要(中西氏)」など、お金を掛けることのメリットについても語られていた。

■北米のゲームオーディオ

【CEDEC 2010】

 国産ゲームの市場も、日本にとどまらない現在。そこで後半は、北米のゲームオーディオについてのディスカッションが行われた。中條氏が語ったのが「日本のゲームは状況に音楽をつけることが多いが、海外のゲーム開発では心情に音楽をつけるという認識がある」という、国内と海外の違い。山口氏も自身の携わる新プロジェクトについて、プロトタイプを海外側に披露した時に「このゲームはいつ音楽が止まるんだ」と聞かれ、日本と海外の感覚の違いを如実に感じたという。

 また信山氏によれば、海外のクリエイターが日本のゲームサウンドに対して「1つ1つのクオリティは高いが、入り込めない」と指摘をする声もあるという。これは、デモシーンなどでシリアスなシーンを描写して、声優もそれにあった演技をしているのに、そこからプレイヤーの操作できる通常のゲームシーンが始まると、単純に操作に対応した明るいボイスなどが流れて“せっかくの盛り上がりがシラけてしまう”ことがある、ということらしい。中條氏もまた、海外のディベロッパーカンファレンスで“没入感”という言葉がよく聞かれると話していた。

 自分たちがやりたい部分と海外に合わせる部分の見極めや、日本と海外で両方に受け入れられる作品の開発、あるいは効果音1つにいたるまでローカライズを行うなど、この問題に対する案がいくつか出たものの、本日のところは結論を見ずディスカッションは終了となった。最後に瀧本氏は、「日本ではゲームクリエイター同士が、ディスカッションをすることが少ない」という問題提起を聴講者に投げかけ、日本でももっと多くのディスカッションを行うことを望み、ディスカッションは終了した。

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