2010年9月13日(月)
スクウェア・エニックスから11月11日に発売されるPSP用ソフト『タクティクスオウガ 運命の輪』について、ディレクターの皆川裕史さんにインタビューを行った。
▲インタビューに応じてくださった皆川裕史ディレクター。これまでにスクウェア・エニックスで、『ファイナルファンタジータクティクス』や『ベイグラントストーリー』、『ファイナルファンタジーXII』といった数々の作品を手掛けてきた。 |
本作は、1995年にスーパーファミコンで発売され、今なお根強い人気を誇るシミュレーションRPG『タクティクスオウガ』を再構築したもの。覇権争いに揺れるヴァレリア島を舞台に、青年・デニムの視点で物語が描かれる。オリジナル版を制作したスタッフらが中心となって開発にあたっており、見た目だけでなくバトルデザインにも新たな要素が加わっているという。
前回、前々回に続いて今回は、具体的な変更点についてお聞きしている。なおこのインタビューは、8月21日発売の『電撃ゲームス Vol.12』(アスキー・メディアワークス刊)に掲載されているもののダイジェスト版となる。全文を読みたい人は、ぜひ誌面で確認してほしい。
――“昔のまま”のグラフィックにこだわりながらも、公開された情報を見ていると、ゲームシステムはかなり変更されているように感じます。その変更は、戦術にも影響がありますか?
グラフィックやストーリーと違って、遊び方の部分は時代の影響が強いと思っています。だから今の時代に昔のままのゲームデザインを持ってきても、当時と同じおもしろさは感じにくいんじゃないかと。なので、15年前の攻略方法は、ほとんど通じなくなってますよ。たとえば、キャラクターを育成する際に便利だった“トレーニング”(自軍のユニット同士で戦い、経験値を稼げるモード)は、今回はなくなっています。
――そうなんですか!? 当時の定石として、トレーニング中、高レベルの自軍ユニットに石を投げて経験値を稼ぐというものがありましたが、そういったやり方も通用しなくなると?
少なくとも、15年前と同じ形では通用しないでしょうね。ユニットのレベル差を埋めるための経験値稼ぎはどうしても作業的になりがちなので、そういった部分はいろいろと見直しています。もちろん、トレーニングとは違う形で、育成をサポートするための要素は用意していますよ。
――弓が使い勝手がよかったといったような、バトルのバランスも大きく変わるのでしょうか?
多くのユーザーが当時感じたであろう攻略方法というのは、基本的には松野さん(※1)が狙っていた部分なんですよ。接近しての直接攻撃は反撃されるリスクが高いとか、高低差の概念によって遠距離攻撃のメリットが大きいとか。そういう遊び方を想定して、ゲームデザインを行っていたんです。
※1……ゲームデザインを担当した松野泰己さん。代表作は『タクティクスオウガ』、『ファイナルファンタジーXII』、『ベイグラントストーリー』など。
一方、今回はまた違うアプローチでのゲームデザインを考えているようです。詳細はまだ明かせませんが、自分だけの軍団を長期スパンで鍛えていくといった部分や、より軍団を率いて戦う感覚を味わえるように、クラスごとの特徴を生かしてバトルに挑む楽しさなどがクローズアップされる形になります。特に“軍団を率いる”という部分は、かなり大事にしていますね。
PS『ファイナルファンタジータクティクス』は出撃ユニット数が少なめで、個々のユニット運用というよりもキャラクター性を重視したRPG寄りのゲームデザインでしたが、『タクティクスオウガ』はSLG比率が高い集団戦となります。仲間は最大12体、敵は最大18体と、合計30体のユニットが入り乱れて戦うことになるので、いかに自分のユニットの性能を生かすかがカギになります。15年前のオリジナル版以上に、役割分担などが重要になってくるわけです。
▲高台からの弓というのは、敵味方を問わず強力な戦法であったが、それにも変化があるようだ。 |
――クラスの役割が変わるとは、具体的にはどのような変化になるのでしょうか?
以前はソルジャー、またはアマゾネスがすべてのクラスの基本となるポジションでしたが、今回は違います。戦士系の基本としてウォリアーが存在して、魔法使い系の基本にはまた別のクラスが用意されています。
ここでは基本という言葉を使いましたが、実際はもうちょっと違う感じで、単純な意味での“基本職と上級職”ではありません。能力的な互換というより、それぞれのクラスに一長一短があり、役割の違いがあるといったバランスを考えています。
――となると、かなり気軽にクラスチェンジができると考えていいのでしょうか?
そうですね。今回は男性/女性という性別によるクラスの制限がなく、かなり自由にユニットを育成できます。特殊な状況下でのバトルを乗り切るために、一時的に特定のクラスを増やして対応するといった遊び方もできるゲームデザインですね。ユニットの育成やカスタマイズの幅広さは、以前と比べて非常に大きくなっています。
▲“転職証”というアイテムがあれば、より専門性の高いクラスで戦うことができるという。転職に条件がついていたオリジナル版とは、この点も変更されている。 |
――編集部では、モンスターの扱いがどうなるのかが話題になっています。正直、オリジナル版はバトル時の使い勝手がよくなくて、オークションを利用して“タコヤキ”(※2)などと交換するような使い方が多かった気が……。
※2……オリジナル版に存在していた能力値をアップするアイテムの1つ。これらのアイテムは、レベルが一定以上になった特定のモンスターユニットをオークションに出すと、後日、ショップにアイテムが販売される。ユニットを売りに出す時のセリフが切ない。
松野さんいわく、「今回は強いよ!」だそうです(笑)。オリジナル版の際は、人間タイプ2体ぶんの出撃枠が必要というユニットサイズの問題もあって、ちょっと不遇な部分もありましたが、今回は人間タイプと同じユニットサイズになります。人間タイプとは一長一短になりますが、モンスターだけの軍団を作っても大丈夫というぐらいのバランスになる予定です。
――それはうれしいお話です(笑)。
皆川 僕たちもモンスターが好きで、特にオクトパスはお気に入りなんですよね。今回は“タコヤキ”にならないことを願っています(笑)。
次回(9月15日掲載)は、新システムについてお聞きする。
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※画面は開発中のもの。