2010年10月27日(水)
前回に引き続き、プロゲーマー田原氏へのインタビューをお届け。今回は田原氏が提唱する“ゲーミング”によるコミュニケーションの可能性、田原氏がプロゲーマーとして活動してきた中で見えたこと、そして求めるその先についてお伝えする。
【人物紹介】
FPSプロゲーマー
【田原“uNleashed”尚展】
2007年にプロゲーマーとして活動開始。メインでプレイしているFPSは『Quake Live』。最近はマウスパッドの開発が楽しいと語る。
――それでは前回に引き続き“ゲーミング”について教えてください。
“ゲーミング”という言葉は、ゲームを通じて人とコミュケーションを取ったり、そういったコミュニティの輪を広げていったりする意味で僕は使っています。最初はゲームを楽しくプレイすることから始まると思うのですが、その次の段階としてゲーミングが待っているのかなと思います。自分としてはゲームを楽しんでいるというか、ゲーミングを楽しんでいるともいえますね。
――他の人との交流というのは、オンラインを介してということでしょうか?
オンラインでの交流も、もちろんゲーミングに値すると思いますが、オフラインで集まって遊ぶのがやっぱり格別だと思います。子どものころ、友だちの家に集まってゲームを遊んでいたじゃないですか。あのワイワイ遊ぶ感覚はやっぱり楽しいですよね。ただ、オンライン対戦が普及してきた中で、今の若い子はそのあたりの感覚がよくわからないようです。オンラインで対戦できるのに、わざわざ交通費を使って集まるのかと言われることもあります。
――日本と海外を比べて、集まって遊ぶということに対する感覚は違うのでしょうか?
北米に限定したお話になってしまいますが、彼らには集まれる環境がたくさんあります。たとえば、日本でちょっと大規模に集まろうとすると、先ほどの交通費の話もありますし、会場代などもかなりかかってしまいますよね。北米では廃業になった郊外のホテルなどが、大きなイベントスペースとして貸し出されているケースが多いんです。そのため、10万円支払えば4日間使ってもいい、みたいな破格の値段で提供されていたりします。
――日本なら半日借りるだけで10万円以上かかることも珍しくないですからね。
あと、みんなで同じホテルに泊まったりするので、ゲームの合宿をしにきているような感じになったりします。それがまた楽しいんですよ。
――ちょっとした旅行ですね。
そうですね。バイトをしてお金をためて、みんなで行って楽しもう、といったようなことが文化として根付いている印象はありますね。
――日本でもそういう流れができると、もっとゲームが楽しいものになりますよね。子どものころにやっていたことを大人になってもやるといった感じで。
さらにいえば、ゲームってソーシャルの場で使うには、すごくよくできたコミュニケーションツールだと思うんです。各自がゲーム好きだから話題を簡単に合わせられますし。また、集まる人たちの中には、お仕事をされている方も多いので、その人たちの間でビジネスに発展するケースも北米では多くあるみたいです。
――ゲームという共通言語が人と人の間を結びつけているわけですね。
そうですね。今はUstreamなどの配信手段も発展してきたので、そういうオフラインイベントの模様をリアルタイムで流しつつ、その配信を見た人に自分も行きたいと思わせる……そういった誘導もできるのではないかと思います。
ゲームは社会的に悪者として扱われることがあると思いますが、ゲームをしていたことによって社会復帰ができた、なんてケースもあるんですよ。引きこもりの青年がカジュアルFPSを始めて、チームとして大会に出てみたいから、交通費を稼ぐためにアルバイトを始めた、なんてこともありました。また、そこから大検の資格をとって大学に入学した人もいます。これもゲーミングが持つ可能性なんじゃないかなと思います。ゲームは確かに悪い面もありますが、いい面もたくさんあると思うんですよ。僕が英語を勉強するきっかけになったのはゲームが発端ですし、海外留学も何もやっていないのに英語が話せるようになったのも、まさしくゲームのおかげですね。
――海外に単身乗り込んで大会に出たりとか。
海外の大会に出る場合は環境が違いますから、事前に向こうに行って現地のプレイ状況に慣れておく必要があるんですね。ただ、そうやって向こうで練習をする場合も、現地のトッププロゲーマーたちは仲間内だけでプレイしていて、いわゆる野試合はほぼやらないんです。そういうプロのコミュニティに飛び込んでいく際に英語は必須でした。
――言語が異なるコミュニティですから、敷居の高さはものすごいんじゃないですか?
実はイイ人が多いんですよ。彼らも苦労しているからかもしれませんが、快く迎えてくれましたね。ちなみに僕は、就職活動のときに今までにお話ししたようなことしか話していないんです。それであっさりと就職が決まったので、ゲームさまさまですね(笑)。
(10月28日掲載 Vol.2-2へ続く)
【用語解説】
●プロゲーマー
プロゲーマーという概念について田原氏は、スポンサーからのバックアップがある者、仕事としてゲームをプレイする者、どちらもプロゲーマーであると語る。ただし、日本ではスポンサーが付いていないとプロゲーマーと名乗らない場合が多いとのこと。
●Ustream
2007年に開始された動画配信&共有サービス。日本では2010年5月に日本語化してから、急速に認知度が上がり、さまざまなメディアや個人によって動画の配信が行われている。ダウンロードしながら動画を再生する形式のため、ダウンロード中の待ち時間が少ないのが利点となる。
●カジュアルFPS
『Quake Live』のようなプレイヤーの腕が勝敗に完全直結するFPSではなく、いくつかの偶然性が勝敗が大きく影響するFPSのこと。かわいらしいキャラクターが採用されている場合も多く、一例として『サドンアタック』や『ペーパーマン』があげられる。
●トッププロゲーマー
田原氏によると世界1位~200位ぐらいのプレイヤーにおいて、エイミングなどによる技術面の差はほとんどないという。では、大会などで上位に君臨し続けるトッププレイヤーと、その下の中堅プレイヤーでどこに差が出るのかというと、マップの把握や戦術など、知識による差が大きいという。
―全世界5億人以上が活用するFacebook―
▲田原氏のFacebookサイト。フレンドは海外のユーザーが多く、主に英語で交流している。 |
Facebookとは、アメリカで開発されたSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)のこと。Facebookの一番の特徴は、実名での登録が推奨されている点にある。これにより、現実でのコミュニティの広がりにおいて、より深いつながりが持てる利点があり、また数多くのユーザーがいることで、海外でサービスそのものが一般化しているところも大きい。
なお、日本国内のユーザーは現在約120万人にとどまっており、海外と比べて極端に少ない。これは、実名を推奨するFacebookの文化が日本の匿名文化に合わないことや、mixi、GREEといったSNSが、すでに日本のユーザーに浸透していることなどが原因といわれている。(田原氏のFacebookアカウント→http://snipurl.com/wplze)
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