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2010年10月27日(水)

【『ソラトロボ』インタビューVol.5】SF世界を盛り立てるメカ

文:電撃オンライン

『電撃ゲームス』

 バンダイナムコゲームスから明日10月28日に発売される、DS用ソフト『Solatorobo それからCODAへ(以下、ソラトロボ)』。『電撃ゲームス』(アスキー・メディアワークス刊)に掲載された、本作の連載インタビューを電撃オンラインでお届け。Vol.5では、松山洋氏と、メカニックイラストレーションを担当した谷口欣孝氏にお話を伺った。他のロボット作品とは一線を画すロボのデザインができ上がった経緯とは?

※インタビューの文章は『電撃ゲームス』8月20日発売号で掲載した内容に一部修正を加えたもの。インタビュー中の名前は敬称略。

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【『ソラトロボ』インタビューVol.5】

エグゼクティブディレクター
松山洋氏(写真左)
 サイバーコネクトツー社長で、会社の顔というべき存在。特撮作品やロボットアニメが大好きで、本作のロボたちにもこだわりを見せる。

メカニックイラストレーション
谷口欣孝氏(写真右)
『スーパーロボット大戦』シリーズのオリジナルメカや『サモンナイト』シリーズの召喚獣などのデザインを担当したイラストレーター。


●大学時代から密かに存在していた2人を結ぶ“縁”

【『ソラトロボ』インタビューVol.5】

──本作のメカニックイラストレーションを谷口さんが担当するまでの経緯を教えてください。

谷口:実は、実際に同じ時期に通っていたわけではないのですが、松山さんも僕も九州産業大学の出身なんですよ。

松山:そう。私たちは学校の先輩と後輩の関係なんです。私が卒業した後くらいに、ちょうど谷口くんが入学した感じです。でも、卒業してからもいいイラストレーターがいないか大学の学園祭などに足を運んでいたので、谷口くんの名前はだいぶ前から知っていました。彼の絵を見て、「異様にメカがうまい人間がいるな~」と思ったのを覚えています。

谷口:それと、僕は大学生のころにも松山さんには何度かお会いしているんですよ。僕の5~6歳上の先輩に、プロとして活躍しているマンガ家がいるんですが、その方のアシスタントをしていたときに、松山さんが仕事場によく遊びに来ていたんです。

松山:そのマンガ家と私は知り合いだったので、定期的に遊びに行っていたんですね。今思い返してみれば、谷口くんはあの仕事場にいたんだよね(笑)。

谷口:そこでトーンを貼ったり、線を描いたりとかしていましたね(笑)。もともと松山さんとはそういった誰かを介してのつながりはありましたが、こうして縁あって『ソラトロボ』でお仕事をご一緒させていただくことになりました。設定資料を見せていただいた時は、ワクワクする世界観、服装や宗教、社会風俗といった設定が異常なほど細かく決めてあって、「この人たち、本当にブッ飛んでるなぁ」と思いましたね(笑)。そんな設定資料を見て、ぜひこの作品にかかわりたいと思いました。

松山:確かに、ゲームには絶対に出てこないであろう設定を、うなりながら一生懸命考えている時間もありましたからね(笑)。

谷口:そうそう、トイレの設定なんて、絶対ゲームに出てこないでしょ、という(笑)。そんなおもしろい世界観を知って、ぜひ僕も一緒に『ソラトロボ』を盛り上げたいなぁと思えたんです。

【『ソラトロボ』インタビューVol.5】

──ディレクターであり、イラストレーターでもある磯部孝幸さんによるロボやメカニックのベースデザインには、どのような感想を持たれましたか?

谷口:最初にロボのベースデザインを拝見したときは、腕が長く、前傾姿勢で、シッポが生えた姿が斬新だなと思いました。本作には何体ものロボが登場しますが、その多くがドラゴンをモチーフにしていて、統一感があっていいですよね! それに、飛行艇のデザインが独特なことにも惹かれました。普通の飛行機は平べったいデザインのモノが多いんですが、本作では縦長のデザインがかなり多いんですよ。どちらかといえば、飛行機というよりは船舶に近い感じがします。

松山:それは、大陸が空に浮かんだ世界ということで、“雲海を泳ぐ船”をイメージして制作したためですね。

谷口:あらゆる機械にクリステルドライブが付いているとか、全体を通じて世界観にブレがないのもいいですよね。制作者側のイメージが揺れていると、イラストの修正を何度もしているうちに本来の世界観からブレていってしまうことがあるんです。そうなると、どうしても描き手として絵に対するテンションを保つのが大変なんです。でも、この作品では松山さんもディレクターの磯部さんも目指すべき場所がはっきりしていて、修正の指示もわかりやすかったので、僕もつねに高いモチベーションを維持して作業を続けることができました。

──具体的に、イラストを起こす作業はどのようにして進めていったのでしょうか?

松山:谷口くんは、本社がある福岡に住んでいるので、実際に何度も会社に来てもらうことができました。制作中のROMを見てもらったり、私や磯部が彼のちょっとした質問に答えたりと、密なやりとりをしながら進めていくことができたのは幸運でしたね。

谷口:ゲーム終盤に出てくるロボは、ベースデザインの資料が当時はまだラフの段階でしたが、磯部さんに直接メカの構造を聞きながら描いたので早かったですね。あと、ゲーム中のポリゴンモデルの角度を変えて撮影してもらって、それを資料にして描いたこともあります。

【『ソラトロボ』インタビューVol.5】

──話は変わりますが、谷口さんが特に気にいっているデザインのロボは、どれでしょうか?

谷口:ダハーカMk2ですね。ダハーカのような赤や青といった色味が強いロボから、白を基調にした色のロボになりパワーアップするというのは、王道の展開ですし。手の長さや姿勢など基本のデザインは残したまま、顔がヒーローっぽくなっているあたりは、正統派の進化といえますよね。個人的に、このロボのデザインは、ラフの段階からあった力強くシャープな感じがうまく出せている気がするんですよ。キモとなる腕も我ながらカッコよく描けたと思います。特に、腕に付いているデカいフィンは、特徴的でおもしろいデザインになりました。

──松山さんからご覧になって、谷口さんの仕上げたイラストの印象はどうでしょうか?

松山:本作はロボとヒトで異なるアクションが可能な作品で、ロボは特に重要な要素です。そのロボが変形したときに、「絶対そんな形にならない」というものでは困ります。でも、逆にリアルなだけでもつまらない。これはこう曲がるだろうと想像できるだけのリアリティのある構造と、ハッタリも入ったケレン味のある外見がいい感じに混じっているものがカッコいい。ロボは半分の嘘と真実でできています。ですから、各部の立体構成、パースは正確に描ける人にデザインをおまかせしたいと思っていました。そして谷口くんは、想像以上のものを描いてくれましたね。

──谷口さんは本作の世界で、他にも描いてみたかったデザインやテーマはありますか?

谷口:“変形合体”ですね。今回も、クーバースの3人組のロボを合体させませんかと提案したのですが、もうポリゴンモデルやシステムができているので難しいですと言われてしまって……。変形と合体は男のロマンですから、次の機会がありましたら、ぜひ描かせていただけるとうれしいです(笑)。


●谷口氏がロボを描き始めた起源(ルーツ)

【『ソラトロボ』インタビューVol.5】

──谷口さんがロボを描くきっかけになった作品を教えていただけますか。

谷口:小さいころから“SDガンダム”が好きで、よく描いていましたね。人間のキャラクターについては、SDガンダムを描く延長線上で描く程度で、デフォルメされたキャラクターが中心でした。昔はA4用紙を9分割して、その枠の中を埋めていくようにデフォルメキャラを描くというような遊びをしていました。それが、僕がロボを描くようになった起源(ルーツ)といえる体験でしょうね。そんな描き方をしてきたせいもあって、キャラクターやロボの等身が低めの本作は、とてもイラストが描きやすく感じました。僕の場合、リアルな等身を描こうとすると、頭や脚の長さのバランスが崩れてしまうことがよくあって……。だから、そうなってしまったときは、描いたものをスキャンしてパソコンに取り込んで、バランスを調整してから出力し、それをトレースして下書きにするという大変な手直しが必要になります。個人的に、これはクリアしていきたい課題ですね。

──最後に、読者へメッセージをお願いします。

谷口:開発にかかわらせていただいた身ではありますが、いちファンとして早くプレイしたいなと思っています。本作は寄り道できる要素がいっぱいあって、クエストもたくさん用意されています。僕の好きなスーパーファミコン時代の古きよきゲームの味わいに、豪華なムービーも付いてくるという感じで、とても楽しみです。

松山:ロボたちのデザインは、谷口くんの手によってリアリティを保ちながらも、豪快に気持ちよく仕上がりました。彼のイラストによって、『ソラトロボ』という作品のピースが、ひとつパチンとハマった感じですね。谷口くんは同じ福岡在住ということで、これからも末長く仲よくしていきたいです(笑)。ゲームが発売しましたら、今回紹介しているロボたちが活躍しますので、カッコいいロボに乗り込んで、思うがままに暴れまくってください。あ、それと、発売まであと少しですから、皆さん予約だけは忘れないようにしてくださいね(笑)。

→Vol.6は2回に分けてゲームを彩るサウンドについて聞く。1回目は28日掲載!

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