News

2010年10月28日(木)

【『ソラトロボ』インタビューVol.6-1】作品を彩るサウンド

文:電撃オンライン

『電撃ゲームス』

 バンダイナムコゲームスから本日発売されたDS用ソフト『Solatorobo それからCODAへ(以下、ソラトロボ)』。『電撃ゲームス』(アスキー・メディアワークス刊)に掲載された、本作の連載インタビューを電撃オンラインでお届け。Vol.6は2回に分けて、『ソラトロボ』の世界を彩るサウンドについてインタビュー。1回目は、松山洋氏と、兄妹で本作の音楽を担当する福田考代氏&福田憲克氏に、サウンドへのこだわりを伺った。

※インタビューの文章は『電撃ゲームス』9月24日発売号で掲載した内容に一部修正を加えたもの。インタビュー中の名前は敬称略。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

【『ソラトロボ』インタビューVol.6-1】

エグゼクティブディレクター
松山洋氏(写真左)
 サイバーコネクトツー社長であり、ゲーム制作に深い情熱を注ぐ『ソラトロボ』の生みの親。

サウンドデザイナー
福田考代氏(写真中央)
 『ソラトロボ』の音楽全般の作曲を担当。オープニングで流れる主題歌の作詞作曲も手がける。

サウンドマネージャー
福田憲克氏(写真右)
 サウンドチームのマネージャー。プログラムや統括など、音楽制作の全般をサポートする。


●1枚のイラストから生みだされたオープニングテーマの曲と歌詞

【『ソラトロボ』インタビューVol.6-1】

──本作は大変長い年月をかけて作られている作品ですが、音楽制作はいつごろから始まったのですか?

松山:開発が始まってすぐですね。“ビズラ”という島のテストステージを作って、そこの曲を書いてもらったのが一番最初の仕事です。

福田(考):そうですね。そのテストの後に、オープニングテーマ制作に入りました。その時、松山から「造語を入れてほしい」というオーダーがありまして。あと、これまでのサイバーコネクトツーの作品のどれとも似ていないモノにしてほしいとも言われたのを覚えています。

松山:このオーダーを出したのは、曲に忘れられなくなるような引きというかフックを入れて欲しいと思ったからなんです。しっかりとしたベースはあるけど、“違和感”というか印象に残る何かが欲しい。それがオープニングテーマでは“造語”になるのかなと考えました。

福田(考):歌詞に入っている「リンサヤラ」などの造語については、特に意味はなく、歌って気持ちがいい、キレイな音にしようと思って選びました。

──テーマソングの制作にあたって、何か参考にした資料などはあるのでしょうか?

福田(考):曲のイメージは、初期の企画書に入っていたディレクターの磯部が描いたイラストからもらいました。その絵からは、壮大さが感じられて、それでいて空の明るさや切なさも伝わってきまして。その絵の男のイヌヒトが女の子を抱きしめているシチュエーションからインスピレーションを受けて、歌詞を書いていきました。

松山:彼女がインスピレーションを受けたイラストは、企画の初期段階で磯部が描いたイラストのうちの1つです。私が磯部に「この世界は、明るく健康的な世界に見えるけれど、過去に大きな戦争があって、そのバックボーンがちらほら見え隠れしているんだよ」と説明したのを受けて、彼がイメージを膨らませて描いたものです。私は、その完成したイラストにすごく心惹(ひ)かれて、企画書に大きく貼り込んで、「大人になる前にどうしても知っておいてもらわなきゃいけないことがある」と「ぼくらは、きっと誰かとつながっている」という2つのキャッチコピーを入れて作品のテーマに掲げました。最終的には、これらは採用されませんでしたけど(笑)。

福田(考):私も、そのイラストからは強く訴えかけられるものを感じたんです。戦争の影などを意識して描かれているだけあって、このイラストから明るい曲のイメージは出てきませんでしたね。

松山:『ソラトロボ』は、“光と影”や“表と裏”といった相反する要素をはらんだ二重構造になっている作品です。そのため、明るいだけの曲では、ユーザーの皆さんにイメージが伝わりづらくなったかもしれないので、現在の壮大な曲調になってよかったと思います。

──テーマソングを担当する“LieN -リアン-”のボーカル・三谷さんとは、どのようにやりとりしながら、楽曲の収録を進めていったのですか?

福田(考):作詞と作曲はすべて私が担当しているので、2人で缶詰になって作り込む……とかはありません。事前に曲と歌詞を彼女に渡して、歌い込んでもらって、収録の際にスタジオまで来てもらうというスタイルですね。彼女とは長年組んでいるので、歌詞や曲を書いている時点で、ある程度の仕上がりのイメージをつかめます。でも、実際に感情を込めて歌ってもらうと、歌や言葉のパワーを感じて、ぞくぞくっときちゃいますね。

【『ソラトロボ』インタビューVol.6-1】

──話は変わりますが、作中におけるBGMの制作に関しては、テーマソングと同様に何か特定の資料をもとに作っていったのでしょうか?

福田(考):私の場合はそうです。曲を書くときに仕入れられる情報量は多ければ多いほどいいですね。アイデア段階のカットや武器の設定まで、さまざまなものを見ますよ。特に設定画のイラストを担当している岡部が描く世界観からは、このプロジェクトに限らず、たくさんの音のインスピレーションをもらっていますね。また他のアーティストとも、よくお話してイメージを膨らませていっています。そうやって制作しているものの最新情報を随時確認しながら作業できるのは、開発内部にサウンドチームがある弊社のメリットだなと思います。

松山:『ソラトロボ』のスタッフは、サウンドチームの楽曲が聴こえ始めると集まってくるよね(笑)。

福田(考):みんなスピーカーの前に集まって、曲を聴いた後には感想を言ってくれました。こういう盛り上がりは、『ソラトロボ』のプロジェクトの特徴ですね。とにかく、熱意を持っている人間が多かったです。

福田(憲):本作はDSのソフトなので、スタッフは実機だけではなく、生の音源を聴きたいという思いもあったと思いますね。

【『ソラトロボ』インタビューVol.6-1】

──DSで『ソラトロボ』のサウンドを表現するにあたり、苦労されたことはなんでしょうか?

福田(憲):やはり、容量の問題ですね。トータルで使えるメモリが決まっている中で、どれほどの部分をサウンドに割り当てられるかはプログラマーと相談して決めていきました。本作は一般的なソフトの平均か、それ以上の容量を割いてもらえて、とても優遇してもらっていますね。ただし今回は、ボイスも入れる必要があったので、容量を節約するやりくりはかなりしましたね。

福田(考):エンジニアには、データ容量を節約するために、「1つの音でいくつかの音をやりくりする」ということを頑張ってもらっています。

松山:ある意味、ゲームミュージックの懐かしい作り方に戻った感じだよね。弊社のスタッフはサイバーコネクトツーに入社する前からゲーム開発をしている人間も多く、福田たちはゲームボーイのサウンドの作り方も知っています。その当時の作り方に、近いんじゃないかな。

福田(考):DSでサウンドを作るのは、匠の技術といっていいかもしれませんね。それは限られた色数のなかでステキなイラストを表現するアーティストも一緒です。携帯機でも、高い技術がなければ、キャラも背景も作り上げることはできないと思うんです。私は『ソラトロボ』の背景を見せてもらったときに、「すごくキレイだな」ってとても感動しました。このタイトルにかかわったアーティストの方々のことは本当に尊敬しています。


●全編フランス語で語られるキャラクターボイスへのこだわり

──レッドたちのキャラクターボイスは、どのようにして収録していったのでしょうか?

松山:登場人物が話しているのは、実はフランス語なんですよ。聞きなれない人も多い言葉だと思いますので、耳にしたときの違和感も含めて楽しんでもらいたいです。ただ、担当していただいた声優の方はみんな日本人なので、収録は苦労しました。実際に制作に入ってからは、声優の方には、英語の教材のように、セリフをフランス語で収録したテープを聞いてもらい、独特なイントネーションを把握してもらいました。ただし、フランス語は聞き取りづらい発音も多いので、収録のときもフランス語が堪能な方に同席してもらい、その場でわからない発音を声優さんが確認できるようにしました。さらに、収録した音声データをバンダイナムコゲームス様のヨーロッパ支社に送り、間違ったイントネーションや表現がないかチェックしてもらいました。ですから、フランス語の精度はかなり高いと思いますよ。

福田(考):フランス語は、やはり英語と比べるとなじみの薄い言葉が多いですが、言葉の意味は分からなくても、声優さんの演技力で気持ちが伝わってくることがありました。「これ、シナリオにある日本語のセリフとテンションのままだ!」と驚きを味わいましたね。

──最後に、『ソラトロボ』の発売を楽しみにしている読者の方にメッセージをお願いします。

福田(考):DSの小さなROMに、80曲以上もの曲を収録しました。シナリオは重厚感のある感動的な物語で、サウンドも聴けばその情景を思い出せるような出来に仕上がっています。ぜひ、物語の結末まで見届けてください。

福田(憲):フランス語のボイスや“LieN -リアン-”のテーマソングなど、いろいろなサウンドが詰まっていますので、全体を通してあらゆる音を注意して聴いてもらえると、サウンドチームとしてはうれしいです。ゲームはもちろんですが、ぜひ“音”も楽しんでください。

松山:通常のDS作品とは比較にならないくらい、たくさんの音や情報が詰まった作品です。いよいよ発売まであとわずか。予約を忘れないようにして、発売を心待ちにしていただければと思います!

→11月1日掲載のVol.6-2では、主題歌のボーカルを担当する三谷朋世氏にインタビュー!

(C)2010 NBGI

データ

関連サイト