2010年12月21日(火)
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こんにちは。洋ゲー紹介所“洋鯨亭”のRONです。12月も残すところわずかとなり、だいぶせわしくなってきましたね。そんな中、一部のユーザーから熱狂的な人気を博したDS用ACT『コロぱた』を開発したラックプラスと、ナニカ(社名)が共同で新たに洋ゲーの販売ブランド“クロフネゲームズ”を立ち上げたと聞きまして、早速インタビューに行ってきました。
ご協力いただいたのは、ラックプラスの代表取締役社長・阿部氏と株式会社ナニカの取締役・稲葉氏です。はたしてラックプラスが組んだナニカとはどんな会社なのか、また洋ゲーを販売しようと考えたのはナゼなのか、そのあたりの疑問にお答えいただきましたので、ぜひご覧ください。(インタビュー中は敬称略)
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▲ラックプラスの阿部氏(左)と、ナニカの稲葉氏(右)。経営陣としての視点と1ユーザーとしての視点を織り交ぜた、ゲーム業界に対する非常に興味深いお話が伺えました。 |
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▲今からちょうど1年ほど前に発売され、ネットやクチコミを中心に人気が高まったDS用ACT『コロぱた』。かわいらしいキャラクターに反して、内容は歯ごたえのあるパズルアクションゲームになっています。 |
──まずはナニカさんをご存知ない方のために、業務内容についてご紹介いただけないでしょうか。
稲葉:うちはゲームソフトのローカライズを主とした会社でして、設立してから今年で7年目になります。業務としてはゲームソフトの翻訳や音声収録を中心に、コミックの翻訳などもやっていますから、ローカライズ全般ということになりますね。
──ゲームのローカライズは、設立当初からされていたのでしょうか?
稲葉:ええ。もともと僕は大手メーカーで海外事業にかかわり、一時期ローカライズも担当していましたが、より多くのメーカーのローカライズを担当してみたいと思い独立し、ナニカの設立に参加しました。
──そういえば、前回の連載で紹介したXbox 360『マスエフェクト』のエンディングクレジットにも御社の名前が入っていましたね。特徴的な社名なので覚えておりました。この他には、どんなタイトルを手がけられましたか?
稲葉:Xbox 360用の海外タイトルには、数多くかかわっています。その他ですと、思い出深いのはすでにサービスは終了してしまいましたが、エレクトロニック・アーツさんのPC用MMORPG『スター・ウォーズ・ギャラクシーズ』ですね。
――洋ゲー好きな人に知られたタイトルが多いですね。
稲葉:そうですね。ただ、この他にも色々な業務を行っていたのですが、実は去年の段階で受託のローカライズは一旦休止しましょうという決断をしたんです。
──ということは、今は他社からゲームのローカライズ業務を請け負っていないのでしょうか?
稲葉:ええ、そうです。受託でのローカライズ業務とは異なるアプローチ、より自分たちの主導による形でゲームを海外に持って行くという仕事にかかわっていきたいという思いが強まっていきました。
そんな中で、海外の小さなデベロッパー(開発会社)さんとお会いした際に「自分達のような小さな会社のタイトルを国外で販売しようとするとなかなか取扱ってもらえないし、予算的にも厳しい」というお話を聞いたんです。だったら、我々の方でローカライズから販売までを一貫してお手伝いしましょうと。そこから始まっていますね。このタイミングでラックプラスさんとお知り合いになれたのも大きかったです。
──そもそも両社の接点はどこにあったんでしょうか?
稲葉:きっかけは私と阿部さんの共通の知り合いを通じて、ですね。友人にこんなことがやりたいと話していたところ、阿部さんをご紹介いただいたんです。ナニカはパブリッシャー(販売会社)ではないので、組んでくださるパブリッシャーが必要だったんですね。
──ということは、当時ラックプラスさんもナニカさんと近いことをお考えだったと?
阿部:そうです。当時はまだ『コロぱた』を発売する前で、ウチはあのソフトを販売してくれるパブリッシャーを探していたんですよ。ところが色々なところにお話を持っていったんですが……どこも扱ってくれなかったんですよね(汗)。それは当社に実績がなかったことと、ゲームの内容が現在の売れ線ではないと判断されてしまったからなんです。まぁパブリッシャーさんもビジネスですし、売れないと判断されたら仕方ないですよね。
――作ったはいいけど、販路が確保できなかったわけですね。
阿部:はい。そういったこともあって、当社は止むなく自らがパブリッシャーになるしかなかったんですよ(笑)。他の中小規模のデベロッパーでもそうだと思いますが、こういった地味なタイトルはパブリッシャーに扱っていただきにくい現実があります。一応『コロぱた』のように販売数が5,000本(筆者注:5,000本完売だそうです)のタイトルでも小さな企業なら十分に会社を回していける利益になりますし、ウチはどうしても販売したかったんですよね。パブリッシャーに扱っていただけないとなると、後は下請けとして受託開発をするしか生き残る道はないですから。
ところが最近は不況の折、受託開発自体が減ってきていまして、私の知っている会社もバタバタと倒れてしまっているんですよ。そういった会社でも、実売がたとえ2,000本程度になってしまったとしても、自分たちの作ったゲームの販売さえできていれば確実に結果は違っていたと思うんですね。会社が存続できた可能性もあるわけです。その救済策といっては偉そうですが、そういった会社と組んで大手さんでは難しい小規模でも成り立つゲームを販売できる機会を作れればいいな、と考えていました。
──ではクロフネゲームズを立ち上げる前にはそういったお話をよくされていたと。
阿部:ええ。知り合った当時は先ほどお話したほど景気が悪くなかったですから、差し迫った状況ではなかったのですが、色々とお話をしている中で出てきた話題ですね。でも海外を狙うという点は、わりと最初のころから話していましたよ。
稲葉:日本から海外のマーケットに向けてソフトを販売するのは、海外のソフトを日本のマーケットで販売するよりもハードルが高いですよね。なので、まずはハードルの低い方からと考えて、日本で海外ソフトを販売することを優先しています。
阿部:そのうち、日本のタイトルを海外向けにローカライズして販売できるようにしていきたいですね。
──ラックプラスさんとしては、『コロぱた』とはまったく毛色の違うタイトルを販売されることについてはどう思われますか?
阿部:そうですね……見た目としては『コロぱた』とクロフネゲームズ第1弾の『カラーズ』では作風が全然違うのですが、実は『コロぱた』ってすごく洋ゲーっぽい面があるんですよ。なぜかというと『コロぱた』は結構しっかりとした物理演算エンジンを使っていまして、動きなどの面では、洋ゲーのストイックなパズルゲームっぽいと私自身は思っているんです。洋ゲーと和ゲーのミックスゲームと言ってもいいかな、と。
──和ゲーの皮をかぶった洋ゲーということですか?(笑)
阿部:ええ(笑)。スキン(キャラクターなどのグラフィック周り)を替えれば、海外でも販売できるかなと思っているんです。もともと私自身が和ゲーはもちろん、Amiga(※)でゲームをやっていたこともありまして、洋ゲーもかなり好きなんですよ。イギリスのゲーム会社・シグノシスのタイトルを全部そろえたりですとか、RCGの『Indianapolis 500』とかもよくプレイしていましたし。
それに、私がゲーム業界で働くきっかけになったのもAmigaで作った自作のゲームをゲームメーカーに持ち込んだことがきっかけですから。
※Amiga……1980年~1990年ごろにコモドールから発売されたPCシリーズのこと。中でもAmiga500はCPUが16ビットながら高いグラフィック処理性能があり、ゲームはもちろん3DCGを使った映像制作の現場では大いに活躍しました。当時私の友人がこれを持っていて、よくゲームを遊ばせてもらいました。
──色々と懐かしい名前が出てきましたね! では、昔から阿部さん自身は洋ゲーを好んでプレイされていたと。
阿部:ええ。かなり洋ゲー志向だったと思います。
稲葉:でも、30年ぐらい前からゲームを始めた人だったら、自然と洋ゲーに触れていた人は多いんじゃないでしょうかね。『Wizardry(ウィザードリィ)』や『Ultima(ウルティマ)』は外せないですし。そのころの洋ゲーに影響を受けた開発者が作った日本の作品が後に海外で販売されるということもあるわけで、アイデアなんかは還流していると思うんですよ。
でも最近は昔よりも小さめの洋ゲーが日本では販売されづらくなっていますよね。それは先ほど阿部さんが言っていたことにも関係するんですが、市場環境もあってパブリッシャーがリスクを取りづらくなってきていると思うんですよ。今はコンシューマで発売されるのは大作が中心で、小粒だけど変わってておもしろいと思うタイトルは、ほとんど遊べなくなりましたよね。
阿部:利益を得る以前に、コンシューマでは小規模デベロッパーがそういった小粒のタイトルを販売するという、スタートラインに立つことすら難しいんですね。iPhoneのApp storeで時々すごい本数のソフトを売るところが出てくることはありますけど、あれはあれでアプリが多いために1つ1つのソフトは埋もれてしまいがちですし。
──ネットやテレビなどで話題にならない限り、ランキングの上位に出てくるソフトがあまり変動しないこともありますよね。
阿部:そうですね。あのランキングに入ると目にとまりやすくなっていいんですけど、新しいアプリが育ちにくい印象はありますね。中には自分でソフトの制作会社を起こしたいという人もいると思うんですが、そういった人の努力が結果につながりにくいんですね。
なので収支はトントンでもいいから、クロフネゲームズのような小規模デベロッパーの駆け込み寺的なレーベルを回していければいいな、と考えています。先ほどの話にあったように、海外デベロッパーが日本国内で販売してくれる会社がないという問題は、たぶんワールドワイドで多くのデベロッパーが抱えている悩みなんだろうと思います。
稲葉:僕は大使館主催の講演なんかで外国の方とお話をする機会があるんですが、その辺の問題はもう何年も解消されていなくて、なんとかうまくマッチングできないかと考えていたんですね。でも、最近はダウンロード販売がだいぶ浸透してきたので、これならパッケージ販売よりも在庫や製造のリスクも減らせるし、いけるだろうと考えたわけです。
ダウンロード販売は、価格と予想販売本数、ロイヤリティーフィーなどを考えたら、正直大手さんにとってはあまり大きなメリットはないんだろうと思います。大手さんが多額の人件費などをかけてわざわざダウンロード販売しても、大きな販売本数にならない可能性もあるわけですよね。そういう点では、ダウンロード販売は小さな会社だからこそ挑戦できて、小さな規模だからこそ赤字にならない程度のメリットも期待できる販売方法だと思います。ウチだと内部でローカライズもできますし、コストもギリギリまで圧縮できますからね。
→クロフネゲームズの今後のリリースタイトルについても聞いてみました(2ページ目へ)
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