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2011年2月14日(月)

電撃大賞銀賞受賞作『はたらく魔王さま!』和ヶ原聡司先生インタビュー!

文:電撃オンライン

■こだわりは、部屋の描写

――作中でのお気に入りのシーンを教えてください。

 この話を書くと決めた時に、最初に思いついたのが最後のバトルシーンでした。後ろで何かが崩れているところで戦いたいという、漠然としたイメージがあったんです。平坦な場所で剣と魔法で戦うのではなく、せっかく人外の存在同士で戦うので、もっと立体的に動き回らせたかったんですよ。作中の場所を選んだのは、縦だけでなく横にも動きまわれるからでした。

――なるほど。あのバトルシーンのイメージは最初からあったんですね。

 ただ、バトルシーンは、応募段階では反省の多かったシーンでもあります。選評でもバトルシーンの描写については指摘を頂きましたし……。自分でも納得の評価でしたね。お気に入りのシーンは、勇者エミリアが友だちの家に泊まったシーンです。作中で、過去や家族関係、主義主張が明らかになっているのはエミリアの友だちである彼女だけなんですよ。

――阪神大震災の話題が出てきますよね。

 自分が生きていた中で阪神大震災というのは、とてもショッキングな事件だったんです。自分が生きている間に、大勢の方が亡くなるような事件が起こったというのが忘れられませんでした。飲み会の時に、神戸出身の友人がポロっと言ったんですよ。「みんな地震のことを聞いてくる。それがものすごくイヤだった」って。これを書く前から、その言葉がずっと心の中に残っていて、この発想はなかったなと衝撃を受けました。ずっと一緒に芝居をやっていたやつなんですが、やっぱり現場で「神戸出身です」というと周りから地震について聞かれるんですよ。そのたびに、ずっとこう思っていたんだ……と。この作品の中で唯一、社会的な問題を取り入れた部分ですね。

――友だちの家に泊まるシーンでは、部屋の描写がすごく細かいなと思いました。

 女性の生活空間をリアルに描いてみたかったという思いもあったんです。男の部屋って、意外とディテールが必要ないんですよ。枕もとに飲んだ空き缶が落ちていたり、積み上がっているマンガの本が崩れてきたり、一貫性があんまりない。なので男の部屋はいくらでも書けるんですが、きちんとした女性の部屋って意外と書きづらくて。そこをリアルに書けるかどうかで、僕の作品の女性描写がうまく行くかどうかが決まるかなと思うぐらいの気合いを入れました。

――そこまでですか!?

 一番こだわったのは、ボディソープの位置です(笑)。友人たちと集まった時に、女性の部屋って男の部屋に比べて、水周りがとにかくキレイだなと感じたんですよ。部屋が散らかっている人もいるんですが、水周りだけはキレイにしているんですよね。でも逆に、メチャクチャ整頓されている部屋って男性の部屋なんです。そんな発見がありました。なので、部屋の描写はお気に入りです。魔王城の中の描写にもかなり力を入れましたね。細かく描写できなかったのは、エミリアの部屋ぐらいでしょうか。

――今後に期待ということですね。エミリアはいいところに住んでいるという設定なので、部屋もキレイそうですが……。

 作中では書いていないのですが、彼女が住んでいるのはワケあり物件なんです。永福町って急行停車駅なので、いいマンションが安いはずがないんですよ。実はエミリア以外に住人がいて……って幽霊なんですけど、その幽霊に日本での生活を教えてもらったという。それでワケあり物件だけど、5万で住んでいると。魔王と出会うまでの1年を、短編で書けたりしたら面白いかな……と考えています。

――5万は安いですね(笑)。

 実際、ワケあり物件の相場も調べてみたんですよ。1等地のマンションなんですが、周りが20万前後なのに1つだけ7万というのがあって。

――それは安すぎですね!

 明らかに何かあると思うじゃないですか! それを見て、「あ、こういうことなんだな……」と納得しました。他にも4LDKで家賃6万とか。これは郊外にあったんですが、両脇の部屋は普通に20万ぐらいするのに、そこだけ異様に安いんですよ。

――実際に見に行ったりしたことは……。

 ないですね。怖いじゃないですか……。

――ですよね……。

 実際に不動産を調べていたのは、この作品を書く前だったんですけどね。あと、作品を書いている間に妹が1人暮らしを始めたんです。その過程が作品を書くにあたってプラスになっていますね。

――他にこだわりのポイントはありますか?

 魔王たちの貧乏描写もかなりこだわっています。たとえば、魔王の愛車である自転車のデュラハン号なんですが、一番安いシティサイクルって変速機がついていないんですよ。カゴはプラスチックで、後ろの荷台がなくて、スタンドは片側なんです。これが絶対条件なんです。これぐらいのレベルで、ようやくドン・キホーテで7,980円ぐらいで買えますね。

――それも調べたんですか?

 実際にリサーチしました。西友のような量販店から、ホームセンター、ドン・キホーテあたりをうろついて。一番安かったのは、特価で売ってた5,980円だったんです。意外なことにママチャリだったんですが。ただ、特価とかセールとかは男性だと発見できないと考えて、設定を7,980円にしました。

――自転車以外にも調べたものはあったんですか?

 調べたというのとは少し違うのですが、衣類の値段相応の柄にはこだわりましたね。安売り店にはそれぞれの柄があるので、イラストを描いてもらう際に、洗濯物を描くシーンがあったら、こういう柄にしてほしいという要望を出しました。他にもアパートの構造を調べるために、あちこち周りましたね。家具なども、直接畳の上に置くと痛めてしまって敷金礼金を取られてしまうのでダンボールを敷くとか、家を傷ませない工夫は調べました。他には、リサイクルセンターに行って、使い込まれた道具はどういう風になるのかとか。フリーマーケットにも行きました。使い古されたゴミ箱には、なぜかガムテープの跡があるんですよ。

――調べ物の量がすごいですね。実際に作品を書くと決めてから調べたんですか?

 ある程度は経験で書いていますが、記憶があやふやなところは確かめに行ったりしました。

――執筆期間は3カ月とのことでしたが、その間に調べたんですか?

 そうですね。ただ、友人などはそんなに遠くに住んでいるわけではないので、遊びに行く体でこっそりいろいろチェックしました。

→気になる表カバーのデキは?(3ページ目へ)

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データ

▼『はたらく魔王さま!』
■発行:アスキー・メディアワークス
■発売日:2011年2月10日
■定価:620円(税込)
 
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