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2011年2月21日(月)

灰村キヨタカ先生の画集発売を記念して『禁書目録』鎌池先生との対談が実現!

文:電撃オンライン

 イラストレーター・灰村キヨタカ先生の画集『灰村キヨタカ画集 rainbow spectrum:colors(レインボー スペクトラム カラーズ)』が、2月28日に発売される。この発売を記念して、電撃文庫『とある魔術の禁書目録(インデックス)(以下、禁書目録)』の作者・鎌池和馬先生と灰村先生の対談が行われた。

 この画集は、『禁書目録』に使用された挿絵や未収録のビジュアル、ラフスケッチ、その他さまざまな作品・媒体で掲載したオリジナルカットなどを収録したもの。総数350点以上のイラストが収録されたA4サイズ・192ページのこの画集には、鎌池先生書き下ろしの『禁書目録』短編小説も掲載される。

『灰村キヨタカ画集 rainbow spectrum:colors』 『灰村キヨタカ画集 rainbow spectrum:colors』
『灰村キヨタカ画集 rainbow spectrum:colors』 『灰村キヨタカ画集 rainbow spectrum:colors』 『灰村キヨタカ画集 rainbow spectrum:colors』
▲こちらは画集に収録されるイラストの一部。

 かつて、画集を出さないとファンに宣言したこともあるという灰村先生が、なぜ画集を出すに至ったのか? その経緯や『禁書目録』のイラスト、そしてペンネームの話など、さまざまなエピソードが座談会では飛び出した。以下でその模様をお伝えする。(インタビュー中は敬称略)

――画集の発売を記念しまして、『禁書目録』を支えるお2人、鎌池さんと灰村さんの対談を始めさせていただきます。

鎌池&灰村:よろしくお願いいたします。

鎌池:では早速ですが、灰村さんは、なぜこのタイミングで画集を出そうと思ったんですか?

灰村:実は友人に実家に帰るたびに説得されていたんですよ。

鎌池:ということは、もともと出す気はなかったんですか?

灰村:そもそも自分自身が見たくない(笑)。それに加えて、依頼されて描いたイラストって、基本的にお渡ししたあとは会社のものっていう意識があるんです。自分の作品のようでそうでないような、微妙な立ち位置。

――今や『禁書目録』といえば、累計1,000万部を到達した大ヒット作です。読者の方々から求められている……というのはないんでしょうか。

灰村:イベントなどで、ファンの方には「断固として出しません!」と断言していたので……。あんなこと言ってたのに出してるよ、我ながら変わり身が早いなあと(笑)。

鎌池:原作者としては、まとめて見たい! という思いがあったので、出てくれるのはうれしいですよ。

灰村:そこなんです。僕を説得していた友人からも「1冊の本として履歴を残しておけ」って言われまして、それもいいかなあというぐらいの意識でOKしたんです。

鎌池:担当さんにお会いするたびに「いつまでたってもOKくれないんですよ」って聞いていたのでビックリしました(笑)。

――鎌池さんも画集が出ると思っていなかったと。

灰村:僕自身も思っていなかったです。

鎌池:今回のお話をいただいて「ついに籠絡(ろうらく)されたか!」って(笑)。

灰村:何度も断ってましたからね。3~4年くらい前からかな、お酒の席で「出しましょうよ~」って何度もプッシュされてて。

鎌池:間違ってOKしてくれればチャンス! みたいな(笑)。

灰村:実際OKしたのも酒の席でした(笑)。

――画集に対するこだわりや、決めごとのようなものはあったんですか?

灰村:一番最初に考えたのは、3,000円を絶対に超えないようにすること。僕自身、3,000円を超える画集はめったに買わないんで。あと、ハードカバーは開くのが大変。あのかたさがダメなんですよ。やっぱり絵を描く仕事をしているので、画集から何かを学びたい意欲が強いんです。そうなると容赦なく開いて見るので、閲覧性のいいソフトカバーがいいなと。

鎌池:イラストにコメントを付けてますよね、それにもこだわりがあるということですか?

灰村:それも、自分が画集を見ていておもしろいと思う部分だからですね。ヘタすると、絵そのものよりもおもしろいことがあります。描き手の方のキャラクターがにじみ出ていて。

鎌池:そういう意味で今回の画集は、灰村さんから見た『禁書目録』がどういう作品だったのかが、わかるかもしれないですね。その辺がちょっと楽しみだったりします。

灰村:それぞれのイラストに僕自身のコメントを入れますからね。Webサイトで公開しているラフにはありますけど、実際に使ったものにコメントをつけるというのは、カバーイラスト以外にはやってないので、おもしろいかもしれません。

鎌池:ラフスケッチについてはカラーでほぼ全点掲載の予定なんですが、あそこまで徹底的に描くのはなぜなんです?

灰村:担当さんからその話を聞いた時に「えっ、他の方はやらないんですか?」って逆に言った覚えが。

鎌池:そうなんですか!

灰村:『禁書目録』って純粋な学園ものではないじゃないですか。ちょっと話が飛びますけど、学園ものなら基本的に、工夫があまり必要ないんです。普段、僕らが眼にしている人物や服装なり意匠のフォーマットを、マンガの作法の中に落とし込めばいいだけなので。でも『禁書目録』ってフィクショナルな部分が、特に魔術サイドにあったりするので、そこをどう説得するかという点で、下手をすると本番の作業よりラフのほうが時間かかったり。

――こちらにとっては大変ありがたいことで、アニメスタッフの方々もずいぶん助かったと(笑)。

鎌池:マンガ家の方だといらっしゃるかもしれないですけど、挿絵でここまでやるのはすごいです。さらに圧倒的に登場キャラクターの人数が違うはず……。

灰村:もちろん大変ですよ。自分で100%作るのと、他の方の作ったイメージにすり合わせるのでは、やっぱり前者が楽だとは思います。僕は完全オリジナルはやったことがないので何とも言えませんけど。でもねえ……、描かないと、気が済まないんですよ。

鎌池:自分を納得させるために描いている部分もあるんでしょうか。

灰村:言われてみれば、そういう部分は大きいかもしれないですね。ある程度、全体像を把握しないと描くのは難しいかもしれない。ちょっとうまく言えないんですが、やっぱり性分なんでしょうね。

鎌池:ところで書き手が聞くのもなんですが、今回の画集に掲載されるものの中で、これはムチャだぜっていう注文は何かありました?

灰村:13巻までは、あまりないんです。むしろ後半が大変で。一番印象に残ってるのは、パワードスーツと17巻の三つ折り口絵。15巻のようにキャラクターの数が増えるのはそれほど大変ではないんですよ。基本的に絵柄から何から変えるわけじゃないので、物量がいくら増えたところで、今までの流れ、内容的に前例があるものをボリュームアップしていくだけですから。だから、パワードスーツが大変だった。ロボットは描いたことがないですからね。ロボット工学の本を買いましたよ(笑)。

鎌池:14巻以降は次の画集に入りますから、期待ですね(笑)。ラフにこうじゃない、ああじゃない、いやこれ動かないといったことが書きこまれていて、ここまで考えて描くのは大変だなと。

――鎌池さん的に、イラストレーター・灰村さんの「ここがスゲェ!」というところはありますか?

鎌池:12~13巻のように、内容に極端な落差がある場合でも、どちらか一方に寄らないでそれぞれを描き上げてしまうのがすごい。ぶっちゃけた話、『禁書目録』って魔術と科学、正義と悪、どちらの方向にも広がるじゃないですか。それなのに「とりあえずこれでお願いします」ってブン投げたら、どうにかなっちゃうのがすごいなと。

灰村:ブン投げたらって、そんな衝撃的な(笑)。そういう意味で鎌池さんとして、大丈夫かなという心配はあるんでしょうか。

鎌池:特にないんですよ。何だかんだ言いながら詰まったりはしないと思っているので、原稿書くだけ書いて、イラストがどうあがってくるのかお楽しみという感じです。

灰村:変な話ですけど、最初のころより今のほうが絵を描くのに時間かかってるかもしれないですね。慣れたら早くなるもんなんですが、どんどん時間かかるようになってる。

鎌池:よくも悪くもバックボーンがなく自由に描けた1~2巻目に対して、前提に合わせて描かなければならないことが多いですからね。

灰村:ノウハウはたまってきましたけど、当時と今とでは絵柄も描き方も変わってますからね。

――イラストになって鎌池さんが一番助かったキャラクターって誰ですか?

鎌池:最初のほうだと神裂ですね。ぶっちゃけた話、ジーンズが片方すぱっと切れてるのがどれだけセクシーかっていうのは、文章に書いてもわからない。左右非対称って言われても、ああそうなんだって言われてしまうだけなので。結局、キャラクターの容姿なんて文章でどれだけキレイって書いて、髪型がこう体型がこうって言ったところで、イラストが1枚ある方が絶対わかりやすいんです。ミステリー小説における館の見取り図みたいな役目をしてもらえるのは、すごくありがたいなと。本文を見ればわかると思いますけど、その人物に関する描写っていうのは少なかったりとかするんですよね。着ているものや髪型は書かれていても、全体的なものはイラストになるだろうってブン投げたりしてますから。

灰村:鎌池さん的に“ブン投げる”はキーワード?(笑)

鎌池:仕草とか、その時に何をやってるのかとかは書いていますけど、ぶっちゃけた話、そのキャラクターはどうのこうのっていうのは、文章を基にした連想ゲームで、二本足のロボットを想像してくださいっていうのと同じで、読んでる人によって変わってきてしまうわけじゃないですか。それをイラストでバンって固定してもらえると、共通認識を持つのがすごく楽だろうなとは思うんですよね。そうそう、とりあえずキャラの容姿を書かないで投げると、たいていショートヘアになるのは何かあるんですか?

灰村:短い方が好きなんです。五和やオルソラがそうですね。もう一点、単純な話で、長いと描くのが面倒くさい。趣味と実益が一致した結果です(笑)。しかし、そういう質問が飛んでくるとは予想外だった……。

鎌池:他にも目に見えないものを表現しなくちゃいけないことがあると思うんですけど、殺気とか、音とか、どうするんですか。

灰村:その辺は絵柄を変えたことと関係しますね。特にモノクロはそうなんですが、マンガっぽい絵を意識してます。基本的に読者の方はマンガを読んでいらっしゃる層なので、雰囲気などの表現に共通了解があるんですよ。そういった作法は、1巻の時のような絵柄よりもマンガっぽい絵にしたほうがわかりやすいし、やりやすいんです。背景に描き込む効果のようなものは、読者の方々が持っているマンガの記憶を掘り起こしてもらうほうが伝わりやすい。一番いいのはコマ割りをすることで、連続性を見せたり間を開けたりっていう演出も使えるんですが、何せ描く量は増えるので負担も増える(笑)。個人的には完成にいたっていない、まだ試行錯誤の途中なんですけど。

鎌池:コマ割りじゃないですけど、カットイン的な表現も増えてますね。

灰村:カットインには、もうひとつの理由――キャラクターの多さがありますね。キャラクターが多くてもイラストの枚数は決まってるので、20人のキャラクターを10枚のイラストで描くには、もうカットインするしかないんですよ。特に『禁書目録』の場合は、距離の問題があって画面内にふたりの人物が収まらない。空中と地面にいるとか、数百メートル離れていたりすることが多い。そうなると絵を割らざるを得ない部分があって、カットイン演出が増えましたね。

鎌池:きっちりと分析して、理詰めで描いているのに、その絵が萌えるっていうのがデカいですよ。萌える絵って大抵どこかズレていて、理詰めの絵の方が正しいはずなのに、なかなか商品面でのニーズに一致しない。どっちかに寄っちゃうというか、すごくうまいけどうまいだけ、みたいな。萌える絵でかつ売れる絵というのは、かなりすごいことなんじゃないかなと思うんですけど。

灰村:理詰めで描いているのかと言われると半々、ちょっと答えるのが難しいですね(笑)。一旦、作業が始まるとノリで描いてしまう部分もありますから。

 →得意な絵と苦手な絵について(2ページ目へ)

(C)灰村キヨタカ/はいむらきよたか/アスキー・メディアワークス
(C)鎌池和馬/アスキー・メディアワークスイラスト/灰村キヨタカ

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データ

▼『灰村キヨタカ画集 rainbow spectrum:colors』
■発行:アスキー・メディアワークス
■発売日:2011年2月28日
■価格:2,940円(税込)
 
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