2011年4月4日（月）

【電撃乙女部】福地なる時空に迷おう！ PSP『遙かなる時空の中で5』プレイレポ

■その男、福地桜智

　さて、かなり駆け足で紹介した『遙か5』ですが、やはりメインは殿方との恋愛ストーリーですよね！　もちろん、攻略キャラクターはどれも個性的かつ魅力的。全員に触れたいところですが、今回はそれらの素敵殿方を完全スルー。たった1人の男性だけを紹介したいと思います。

　その人の名は、福地桜智！　別名“夢の屋”と呼ばれる情報屋で、あらゆる情報を収集して幕府に提供する他、市井の人のためのかわら版も発行しています。なんだかまともな人に聞こえますね。ですが、何を隠そう彼こそネオロマンスゲーム史上初めて舞い降りた、奇跡のストーカーなのです（※1）。論より証拠！　まずは本作のストーリーから、福地桜智が登場し、仲間になるまでの流れを追いかけてみましょう。

（1）部屋の前に、だれかが……

　怨霊との戦いを繰り返す主人公。ある時、彼女は戦闘で肩にケガを負ってしまいます。その夜、宿のふすまを開けると、そこ（廊下）にはなぜか傷薬の袋が。次の日、彼女がまたふすまを開けると、そこには可憐な花束が置いてありました。……明らかに不審。ごんぎつねか？　でもこの時点では、誰のしたことかは不明です。わたしも最初は、すでに仲間になっている誰かが名乗らずに置いていったのだと思ったものです（※2）。

（2）京の町中を歩いていると、なんだか……

　視線を感じます。本作の主人公は結構おっとりした女の子ですが、その彼女でも気づくくらいの熱烈な視線です。しかし誰なのかはこれも不明。本人は一向に出てきません。カットインで挿入される目もとから、プレイヤーは「福地だ……」とわかるのですが、今度は逆にアレが本当に八葉なのかと不安が兆します。ちなみに彼女の仲間は、この時点で視線に悪寒を覚えています。正しい反応です。

（3）情報を得るため“夢の屋”を探していたら……

　京の町で、四神・朱雀を探す主人公たち。“夢の屋”ならば情報を持っているのでは、ということで彼を探しているうち、ついに直接接触する機会を得ます。主人公が彼を追いかけてぶつかってしまうのですが、彼は「……キ、キミは……！」とかなんとか言って赤面・絶句。この時点で怪しいですが、ぶつかったのでとりあえず心配すると、「そうだ……肩、ケガをしていたんだったね……」と言い出す福地。え、なんで知ってるの？　さらに、こちらが名乗ると「……もちろん知って……」とつぶやく福地。だから、なんで知ってるの？　その後も勝手にテンションを上げ続け、会話が成立しないうちに、突然「その…さ……さようなら……！」と言い捨てて逃げてしまいます。これが彼とのファーストコンタクトでした。……不安が増しますね。

（4）再会――乱れ飛ぶ好感度

　主人公たちが四神・朱雀の情報を得ようと頑張っていると、またどこからかあの視線が。今度こそ犯人を突き止めるべく振り返ります。すると、店の看板の影からこちらを陶然と見つめている福地桜智の姿……。攻略キャラクターが物陰に隠れて見つめてくるという、ネオロマンスゲームでは前代未聞の事態です。怪しすぎるだろ！　という仲間の制止も聞かず、主人公が彼に呼びかけます。ここが選択肢になっていて、呼びかける言葉を選べるのですが、ここは迷わず「桜智さん？」を選択。すると彼、「……私の……名前……？　しかも、下の名を……」（中略）「……ああ……生きていて、よかった……」。そこで好感度アップを示す☆マークが3つくらい乱れ飛びます。呼んだだけで好感度が上がる男。どうやらそれが福地桜智です。

（5）野放しにしておくと危ないので、仲間に！

　こんな怪しい男は早々にスルーしたいところなのですが、彼は「これからも、声をかけていいかな……」と食い下がります。「ならいっそ、一緒に行動する？」という主人公の言葉に、いやいやダメだろ！　明らかに変態だろ！　と仲間は猛反対。正しい反応です。それでも、腕利きの情報屋だし、一緒にいれば役に立つかもしれない。なにより、野放しにしているよりは、まだ安全かも……という理由で、仲間に迎えることになります。本当に大丈夫か？

　これが福地との出会いのあらましです。どうやら彼は、初対面の前から主人公が大好きだった様子。もちろん、冒頭の傷薬も、花束も彼の仕業です。そこで気味悪がらずに受け入れるのが、主人公のいいところでしょう。さらに彼は、町を歩いているだけで、女性陣に囲まれてきゃあきゃあ言われてしまうほどの美丈夫。ですが主人公が話しかけると、すぐ「ああっ……」とか「そんなっ……」などと赤面・絶句。挙句の果てには、懐に帳面をしのばせて主人公のことを逐一記録するというストーカーっぷりを発揮します。まさに外見詐欺状態（※3）。仲間からはことあるごとにあきれられていますが、特に、主人公の従姉・都からのツッコミは苛烈です。胸が熱くなりますね。


▲声を当てている竹本英史さんの、くぐもったようで情熱的なボイスがまた、ピッタリ。1つのセリフでこれだけ言いよどむ役どころもそうそうないと思われます。


▲町の女性たちにモテモテでも、興味がないどころかそもそも感知していません。挙句の果てに、新選組局長・近藤勇の前でこの発言……。ともすると福地が御用改めに遭いそうです。

■「……末永く、よろしくね……」

　こんなキャラクターと恋愛ができるのか……？　不安にもなろうものですが、そこはもちろん（？）ご安心あれ。ともに幕末の激動をかいくぐるうちに、彼は“地の白虎”として目覚め、八葉としての自覚を得ます。そして、彼自身の身に秘められた、ある秘密が明らかに……。なぜ彼が、（こんな性格なのに）名うての情報屋と呼ばれるに至ったのか？　そもそも、なぜ最初から主人公を知っていたのか？　いったいどこで一目惚れしたのか？　……それらの理由が判明し、ドラマは俄然ヒートアップ！　変態なだけじゃない、福地のバックグラウンドが語られていきます。

　さらに物語の中盤、彼との関係を揺るがす大きな事件が発生。以降、彼の態度は、ただのあこがれから少しずつ変化し、なにがあっても主人公の心に報いる、彼女を守ると誰にも負けない意志をにじませるようになります。ここからが福地の本領発揮。ぜひ、彼の決意を見届けてください。仲間に加わった時に彼が口にした「末永く、よろしく」というひと言。その時には「何が末永くだ！」と都にツッコまれていましたが、その言葉が現実味と切なさを帯びていく様子は、必見です。

　ストーカーと呼ばれ、変態と呼ばれ、罵られても主人公ラブな男・福地桜智。その個性、少しでもお伝えできたでしょうか。シリーズ作ということで、過去作との比較で語られることも多い本作ですが、この『5』だけでも十分に楽しむことができますので、ぜひ福地をはじめとする殿方との恋愛絵巻を堪能してください。坂本龍馬らと、薩長同盟を結ぶために奔走する後半のシナリオでは、歴史モノの熱さを存分に味わうことができますよ。


▲どんなツッコミも、この愛の前には甲斐なし。ちなみに、かわら版に神子の愛らしさをつづり、そのまま発行するというイベントもあります。もはや手の施しようが……。

（※1）ストーカーというのはあんまりな呼び名ですが、ちゃんとゲーム中でもそう呼ばれているのが、彼のすごいところ。
（※2）『遙かなる時空の中で3』において、源九郎義経がそっと柿を置いていったシーンを思い出した人もいるのでは？　彼の場合は、まさに照れ隠しでしたが………。
（※3）外見が詐欺だという評価も、ゲーム中で他キャラクターが下したもの。プレイヤーより容赦ないです。