2011年5月27日(金)
――開発にあたり、注意したことを教えてください。
松本:『ガチトラ!』では、プレイヤーさんがプレイ中に感じるストレスを減らすことを心掛けています。ライトユーザーに遊んでもらいたかったので、次に移動する場所を迷わないようにテロップとして表示したり、ロードもなるべく減らしたり……それでも多いって言われるのは仕方ないんですが。あとは、賛否両論だったんですが、バトルで勝ったことにしちゃうシステムも入れました。
――あのシステムは驚きましたね。最終話のバトルまであのシステムが対応しているとは思いませんでした。
松本:スタジオ斬さんとも「そんなのはゲームじゃない!」って激論しました。それはわかっているんですが、ゲームを苦手な人が遊んだ時に、最後までいけずにお話も楽しんでもらえないのは悲しい。ストーリーやドラマ性をしっかり楽しんでもらいたいので、入れたシステムです。
――ローディングに関しても気を使ったんですね?
松本:ユーザーさんから「少し多い」と言われているんですが、相当減らしたし、短くしているんです。UMDだと、あれ以上切り詰められないくらいに。ゲーム中のショップやトラのアパートに入る時に読み込みがあると立ち寄るのがイヤになると思ったので、普段からメモリにショップなどのデータを置き、入店する際にロードが入らないようにするという工夫もしています。
寺澤:とはいえ、あれだけのローディング回数が残ってしまったのは、グラフィックとクオリティを下げたくなかったから。あれ以上減らそうとすると、見た目を割り切って作る必要があったと思います。
――その分、学校内での移動時に、校舎の窓から飛び降りて一気に校庭に行けるようにしたり、階段では行きたい階数を選択できたりと気をつけたということですか?
寺澤:苦肉の策ではあるんですが、ローディングの回数を減らすための配慮です。ただ、それで少しでも楽になるなら、用意するべきだろうと判断しました。
――自由行動で行える授業の種類は、かなり多いですね。
松本:授業の仕様を決めたのが、開発時期の後の方だったので入れるかどうか悩みました。でも、せっかく先生が題材で学園ものなのに、先生らしい遊びがないのは寂しい。すったもんだしましたが、今の形で入れることに決めました。あと、一番の決め手だったのは、やりこみ要素を用意したかったというところです。
――厳しい条件の授業もあるので、全部集めるのは結構大変だと思います。
松本:本当はもっと、生徒育成モードっぽかったんですよ。席順も変更できて、この男の子と女の子を隣同士にすると相性が悪いとか。ただ、今回は開発の都合上、現在のようにパラメータが上がっていく形で落ち着きました。
寺澤:授業の仕様が固まったのは一番最後で、アルファ版やベータ版直前まで、何も入っていませんでした。ただ、全体を振り返ってみても、やり込み要素として必要だったので、ねじ込んだ感じです。
――あれがあるので、2周目を遊ぶ気になるという人も多いと思います。そのために、クリアした後はこれまでのエピソードを好きな章から始められるようにしたのですか?
松本:2周目をどうするのかというのは、毎回悩むんですよ。もう1回最初からやってもらうパターンもあれば、自由に動き回れるようにするパターンもある。
寺澤:いろいろ考えたんですが、『ガチトラ!』は章構成になっていたので、それぞれのユーザーが好きな話を見たいというニーズに応えられた方がいいかと。ミニゲームや対戦だけをやりたいという人もいるかもしれないので、それだけ遊べるように、後から入れました。
松本:1話の結衣ちゃんと戦う時のトラのバトルスタイルはヤクザスタイルのみなんですが、クリア後に挑戦することで「プロレススタイルで挑戦したい」というニーズにも応えることができる。あとは、たとえば萌ちゃんとだけバトルをしたいのに、萌ちゃんとのバトルシーンまで初めからストーリーをプレイして進めるのは大変じゃないですか? なのでクリア後はプレイヤーが遊びたい章を選択できるという割り切った仕様にしました。
――ミニゲームの内容はどうやって決まっていったのでしょう?
松本:生徒や街の人とのバトル以外の遊びを用意して、各エピソードで違う楽しさを味わってもらいたかった。ですので、STGや時限爆弾を解除するパズル色の強いゲーム、女性をナンパしたりするものやちょっとエッチなものなどを用意しました。バランスをある程度決めた上で、エピソードやキャラクターにちなんだミニゲームを作っていくという手順でしたね。
寺澤:たとえば、石川君ならば話の流れから野球にするという。ミニゲームはスタジオ斬さんの得意な分野なので、どれもクオリティが高くて、バランスもよかったです。
――結構きわどいものもありますね?
松本:お色気担当のキャラの時はミニゲームもエッチに、その代わりその次の章のミニゲームは普通のものに、という感じでした。バランスも見ながらやっていたんですが、若干エッチなものが多かったかもしれませんね。もう少し硬派でもよかったかも。
寺澤:アハハハハハ、確かにエッチなミニゲームは多かったかもしれませんね。
――街には、朝から夜まで時間帯が設定されています。リアリティがありますが、その分大変だったのではないですか?
松本:ドラマなので、すべてのイベントが昼に起きていると、違和感があるんですね。あと、マップによって、必要とされる時間も違う。それであれば、全場所でそれぞれの時間帯を用意しようということになりました。最初はプレイヤーが任意に時間を変えられるようにしていて、各マップに関しても最初から時間の経過ができるように準備をしていました。しかし、プレイヤーが自由に時間変更できるようにするとイベントのフラグ管理がかなり大変になってしまうため、今の形になりました。
――個人的には、夜の河川敷で電車が走っている風景がすごく好きで、夜であればあれを見てからトラのアパートに戻るという流れでした。
松本:あれはキレイでいいですよね。僕も多摩川を思い出して好きです。人によっては荒川だったり、江戸川になったりするみたいです。
――アドレス帳は何に使うのでしょう?
松本:もともとはアドレス帳に登録された人たちにメールを送れるようにしたかったんですが、風呂敷を閉じていく中でなくなりました(苦笑)。ですが、先生なので生徒のデータを持っていた方がいいだろうということで、キャラクターリストとして残しました。
――ソウルヌードバトルですが、なぜ脱がせようとしたのですか?
松本:トラと相手が言い合っている様子が描かれる手前で、戦い合うというのは決まっていたんですが、バトルシステムの名前が決まっていませんでした。最初は“脳内バトル”と言っていたんですが、まるでインパクトがない。そんな中で、「魂を裸にするんだから、ソウルヌードバトルはどう?」っていうアイデアが出て、それが採用されました。その名前が決まってから「それなら生徒を脱がそう!」ということになりましたね。
寺澤:その時の打ち合わせは、長かったですね。ホワイトボードに30~40くらい候補の名前を出しました。漢字のものから横文字まで。でもなかなか決まらなくて、最後の最後に出たソウルヌードバトルを採用しました。実は『ガチトラ!』の情報を最初に世間に公開した時は、まだバトル名称が決まっていなかったんですよ。
松本:まだ“脳内バトル”という名前でしたから(笑)。スタジオ斬さんからはブーイングの嵐でしたよ、生徒を脱がすことにすると伝えたときは。開発も後半だったので「ええ~~!今から脱がせるの!?」って。実はヌードになったときの生徒の体のモデルは使い回しと思っている方が多いと思うですが、違うんですよ。萌ちゃんはおっぱいが大きいけど、結衣ちゃんはスレンダーっていう。結構細かいところまで気を使って、いろいろ仕込んでいます!
▲画像は左が結衣のもので、右が萌のもの。並べてみると、確かにかなり違うのがわかる。 |
――最後に放ってくる生徒の技が個性的ですが、あれもキャラにちなんだものにしようとしたのでしょうか?
松本:毎回、勝つたびに「Win!」って出てもおもしろくないので、早い段階から決めていました。
――猫田君が猫を飛ばすのだけ、元ネタがわからなかったのですが……。
松本:あれは完全に名前からつけました。結衣ちゃんならアイドルだからマイクとか、生徒ごとの演出を決めている時に、彼だけアイデアが出てこなかったんです。モンスターペアレントを表現するのに苦労して考えているうちに、スタジオ斬さんから「猫田君だから、猫でどうですか?」っていうアイデアが出てきたので、それが採用されました。
――そんな経緯があったんですね。バトルのバランスはどういう風に調整したのですか?
松本:パラメータとAIの動きを僕が調整しました。根底にあるのは、ノーマルでやってちょっと歯ごたえがあるようなものにしています。でも、自分でずっと調整していると、これでいいのかわからなくなるんですよね。
寺澤:基本的には松本が取るバランスは、ちょっと厳しめです。アシスタントプロデューサーである齊藤(齊藤祐一郎さん)はあまりアクションゲームがうまくないので、すぐやられて「難しすぎて誰もできませんよ!」って文句を言って、それに対して松本が「そんなことないよ」というやりとりをよく見かけました(笑)。
――個人的に7話くらいから、ボス戦が急に難しくなるという印象で、回復アイテムを買い込んでスキルをフル活用して挑戦しました。
松本:それは僕の調整が出ていますね。序盤は比較的やさしめな設定にしたんですが、最後までそのまま行ってしまうと達成感が得られないので、後半は少しきつめにしています。回復アイテムを買っておくのは大切ですね。
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