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2011年6月10日(金)

過去作との関連をリセットした新生『トゥームレイダー』はすさまじい映像クオリティ!!

文:電撃オンライン

 E3開幕から2日目、ロサンゼルス現地時間の6月8日の午後、スクウェア・エニックスより2012年に発売されるPS3/Xbox 360『トゥームレイダー』シリーズ最新作のクローズド・プレゼンテーションが開催された。

 今作はナンバリングタイトルではなく、ストレートに『トゥームレイダー』というタイトル名となっている。これが示す意味をはじめ、近作の特徴的な部分について、開発者のBrian Horton(シニア・アートディレクター)が実機でのデモプレイを交えつつ詳細に解説した。これをまとめると以下の通りとなる。

『トゥームレイダー』 『トゥームレイダー』 『トゥームレイダー』

■クローズド・プレゼンテーションのまとめ

 今作のコンセプトはリブート。

 過去作とはストーリー的に一切関係がない、ララの初めての冒険を描いた作品。

 クリスタルダイナミクス(開発を担当)のゲームエンジンに+αしたものをベースに開発。

 完全なオープンワールドではないが、HUBシステムにより、広大な世界をオープンワールド的に的確に表現している。

 ゲームを構成する3本柱は、サバイバルスキル、ファーストトラベル、サルベージ。サバイバルスキルは成長要素を意味し、ファーストトラベルは素早い移動を意味する。サルベージの詳細は現状不明。

 デモプレイで紹介されたのは2つのパート(ゲーム中で明確にパート分けされているかどうかは不明。今回のクローズド・プレゼンテーション用とも考えられる)。前者は広大な世界を練り歩くことを見せるパートで、後者はパズル(謎解き)や経験(成長)といった要素を見せるパート。

 ゲーム中では詳細に表現された物理法則に注目とのこと。

 物理法則が機能するシーンの一例として、ララが縄でしばられて宙吊りになっているシーンでは、左右に揺れることで逃げ出す術を求めることになる。

 火と水など周辺にある自然な環境とのかかわりが本作の謎解きにおいて重要となる。物を火で燃やして先に進むなどが端的な例だが、それを行うために複数のギミックを駆使するなど、状況ごとにさまざまな手が必要となるようだ。今回のデモプレイで見た例は、手にした松明の火を爆発物に引火させるために、爆発物から離れたところにあるコンテナに引火させた上でそのコンテナを蹴り飛ばして水面に落とし、水の流れに乗せて爆発物まで誘導する(水の流れが自然に爆発物まで引火したコンテナを運んでくれる)という方法。ゲーム中の各所において、その場所ならではの状況分析が謎解きのカギになる。積み木を組み立てていくかのようにギミックの連鎖を考えて謎を解いていく。

 謎を解く際に活用することになるシステムがサバイバルインスティンクト。使用すると画面が白黒の2色になり、謎解きに対して機能するギミックが光って(黄色で)表現される。これにより、機能するギミックがわかり、あとはそれらをどのように連鎖させて謎を解いていくかをプレイヤーが考えることになる。なお、ララが成長して力強くなっていくと、同様の仕組み(白黒+光源の手法)で新たに行ける場所もわかるようになるようだ。

 ララの感情をリアルに感じられて、それをプレイヤーと共有できるかが、開発における重要なポイント。ララの痛みの表現(腹部に木片が刺さり、痛みでもがき苦しみながらもそれをなんとか抜きとるときの動作や表情など)、過酷な状況下を生き抜く様子(水がその場所の9割を満たした狭い閉鎖空間で、スペース上部になんとか顔を出しながら、なんとか空気を吸いつつ移動するなど)、煙を吸って咳き込む、火を扱う際におののくなどが代表例。

 ララの動作や表情、仕草はムービーだけでなく、プレイヤーが操作するすべてのシーンで、まるで生きているかのようにリアルかつ詳細に表現される。これをゲームに取り込むための開発時の例として、ララ役のモデルの女性が男性を10回引っ張って、息が切れそうになっているシーンを実際に撮影し、それをキャプチャーして取り込んだとのこと。これは、船長のロスが深手を負って気を失ってしまったシーンにおいて、ララが彼を雨露を避けられるところまで引っ張るという、ゲーム中の場面で採用されている。

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『トゥームレイダー』 『トゥームレイダー』
『トゥームレイダー』 『トゥームレイダー』
『トゥームレイダー』 『トゥームレイダー』

 クローズド・プレゼンテーションでは、上記の内容をデモプレイとセットで解説してもらったわけだが、実機の画面をじっくり見ていて特に強く感じたのは、“ララの表情、仕草、動作がどんな場面でもひたすらリアル”“カメラワークが独特かつ効果的でまさに映画的”という2点。これらをひと言で表すと“映画を見ているかのよう”となる。

 “映画を見ているかのよう”という表現は、ゲーム画面の美しさを表す際に古今東西さんざん使われてきた、ある意味陳腐な表現ではあるが、真の意味でこれがピッタリ当てはまるゲームは今までなかったと思う。素直に私はそう感じた。昨今、ゲームの映像表現はどんどん進化しているが、本作の実機映像を見て、「ゲームってここまで進化するんだ!」という驚きを久しぶりに感じることができたことも、あえて記述しておきたい。

 本作は映画的ではあるが、ゲーム的な部分で非常に充実している点も多数見ることができた。ララのアクションは過去作以上にアクション性が増し、詳細に描きこまれたフィールドを各種アクションでクリアしていく様は、アクションゲームとしての完成度の高さを想像させる。謎解きに関しては、複数のギミックを連鎖させてクリアしていくなど、プレイヤーの発想をフル活用する必要がありそうだ。かといって不親切ということではなく、サバイバルインスティンクトによって機能するギミックがわかるなど、ゲーム的な利便性も追求されている。

 総評として『トゥームレイダー』は、私が今回のE3で見た中で1、2を争うほど映像のクオリティが高い作品だと感じた。こうした映像美とゲーム部分の融合具合を含めた最終的な仕上がり(完成度)が楽しみでしょうがない。相当すごいゲームになりそうな予感がする。

 最後に開発者のBrian Horton(シニア・アートディレクター)のインタビューをお届けして、本稿を締めくくりたいと思う。このインタビューからは、上記では判明しなかったいくつかの新事実が見えてくる。(記事:野村一真)

『トゥームレイダー』

――今作は、今までの『トゥームレイダー』シリーズをリセットして新規にスタートされるとお聞きしました。その方向性にした意図をお聞かせください。

 主人公のララは世界中で愛され、誰もが理解できるキャラクターとして確立されていました。しかし、作品を重ねるにつれ、彼女のキャラクター性がゲームユーザーの皆さんに共感できないものになってきたと感じまして……。そこで原点に戻って、新しいララとして新生させ、最初のエピソードをスタートすることにしました。

――過去作とは具体的なつながりはないということでしょうか?

 そうですね、直接的なつながりはありません。今作もたしかに『トゥームレイダー』シリーズですし、主人公も同じララなのですが、物語そのものは新しくなっていまして、バックストーリーもこれまでとはちょっと違ったものになっています。

――当初は『トゥームレイダー』1作目よりも前のエピソード、つまり『トゥームレイダーゼロ』といったものを想像していたのですが、そういうわけではないんですね。

 そうです。今作を含め、今後発売される『トゥームレイダー』シリーズは、以前の『トゥームレイダー』シリーズとは別物と考えてください。まさに新シリーズです。

――今作でプレイヤーに最も見てもらいたいところをお聞かせください。

 重要なのは、プレイヤーがララに共感できるようにするという部分です。ゲーム開始当初のララは、未熟でサバイバル経験がない21歳の女性ですが、彼女自身は潜在的に強いキャラクターです。プレイヤーとともに成長していけるようになっています。

――彼女の“強さ”という部分についてお聞きします。強さを表わす仕組みとして、レベルアップなどのゲームシステムを用意されているのでしょうか?

 サバイバルスキルというスキルが用意されています。詳細はまだお話できないのですが、スキルを習得してララを強くすることができます。また、スキルと同じように新たなアイテムを使うことでもララを強化することが可能です。

――ゲームをクリアしたあとでも遊べるようなやり込み要素は、搭載されていますか?

 もちろんです。普通にストーリーを進めている時点ではたどり着けない場所が各ステージに用意されていまして、のちにスキルを修得して成長したララであれば、そういったところにたどり着くことができます。こうした仕掛けを数多く用意していますよ。

――それはメインストーリーとは別に、サブイベントのようなものとして用意されているのですか?

 詳しいことは秘密です。クリアしたステージに再度戻ってきたときに新しいチャレンジが用意されているとお考えください。

――次は謎解きについてお聞かせください。ゲーム内に用意されている謎解きの解法は、1つではなく複数用意されていると考えてよろしいでしょうか?

 今回のデモプレイでは、謎解きの解法の代表例をお見せしました。これはあくまで1つの方法でして、たとえば、デモプレイでお見せした謎解きのシーンでは、火をつける順番を変えても謎が解けるようになっています。今作の世界はプレイヤーの皆さんがいろいろと探索し、発見していくように設計していますので、直線的な一本道の謎解きだけではないということです。

――デモプレイを見たところ、各シーンのカメラワークが非常に独特でした。この点は新生『トゥームレイダー』ならではと感じましたが、制作するうえで苦労されたり、こだわったりした部分があればお聞かせください。

 本作の制作には演出家の方にも参加していただいています。たとえば閉塞感のある場所では、その狭さがわかるようなカメラワークを採用していますし、揺れがあるような場所ではその揺れが実感できるようなカメラワークにしています。この表現にはとにかく長い時間を費やしていますね。

――ララの一挙手一投足が、まるで映画を見ているかのようにリアルに感じられました。たとえばジャンプして足場を飛び移るときに、ギリギリの位置に着地して、落ちないように手をバタつかせたりとか。こういったちょっとした動作も含め、ゲーム中の各種アクションには膨大なパターンの動作や仕草、表情が用意されていると思いますが、パターン数はどれぐらいあるのでしょうか? 制作時のこだわりなどもあればお聞かせください。

 私たちが使っているアニメーションのシステムは、いくつものパターンをレイヤーとして重ねられるようになっています。そのため、実際にモデルさんの演技を撮影して、それらを複数取り込めるのが大きなメリットです。また、アナログな手法も並行して活用することができますので、ゲームという点のリアルなアニメーションを突き詰めることができます。これは何年もの時間を費やして積み重ねてきた独自のシステムなんですよ。

――最後に日本の『トゥームレイダー』ファンに向けてメッセージをお願いいたします。

 何年もの間、ララを愛してくれて本当にありがとうございます。私たちが作る新たなララをぜひ体験していただき、存分に楽しんでもらえればと考えております。まだ開発中ですので、ご意見などがありましたらぜひお寄せください!

TOMB RAIDER (C) 2011 SQUARE ENIX LTD. Published by Square Enix Co., Ltd. CRYSTAL DYNAMICS, the CRYSTAL DYNAMICS logo, EIDOS, the EIDOS logo, LARA CROFT and TOMB RAIDER are registered trademarks or trademarks of Square Enix Ltd. SQUARE ENIX and the SQUARE ENIX logo are registered trademarks or trademarks of Square Enix Holdings Co, Ltd.

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