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2011年7月20日(水)

『アーマード・コア V』の徹底したこだわりとは? 鍋島プロデューサーに聞く

文:電撃オンライン

■『ACV』のこだわり

『アーマード・コア V』

――話を伺っていると、『ACV』の要素のそれぞれが綿密に関係していて、ムダがないというか、1つの要素が存在する意味を徹底的に突き詰めていますよね。

 うちの会社は、そういう作り方なんですよ。タイトルによってさじ加減が違うところはありますが、つじつまが合わないのが嫌いなので。25年前にシステムの会社として始まって、社長もエンジニアだったからかもしれないですが、問題点には「それ、つじつま合わないよね」とすぐ反論されるんです。

 なんか偉そうな言い方になっちゃいましたが、このことはたぶん同時に弱点でもあって、理屈に落とし込めない要素を持つゲームを作るのが苦手なんですよね(笑)。ゲームに出るようなロボットって、実際にはないものなので、ハッタリみたいなのものも当然必要じゃないですか。“カッコいい俺”っていうのをやりたいから、ゲームを遊んでいるというのもあると思うんです。どこの会社のゲームも、理屈とハッタリのバランスをうまく取って作られているわけですが、うちの場合は、“つじつまが合う”ことをどうしてもベースにしてしまうので。

――ゲーム全般でそういうジャッジがされているということですか?

 たとえば、地形を生かしたい。だから飛べるとまずいよね、という話で終わるのではなくて、飛べなくなったらどうなる? という話になり、どんどん話をつなげていく。直列にゲームを作ることはあまりしないので、何かを作った後は、別のところと整合性を取らないといけないと考える。だから、作って戻ってを繰り返してだんだん前に進んでいく部分はあります。最終的なゲームバランスもそうですけどね。

 武器にしても、1つを重くすると、他とつじつまが合わなくなりますよね。重量以外でもそれは発生しますし。だから「これだけ重いなら、これだけ威力ないとダメなんじゃないの?」、「こんなに威力あって、こんなに弾数あるのおかしくない?」みたいな話し合いが繰り返される(笑)。ゲームはすごく複雑なピラミッドみたいになっているので、小さな石を1つ動かしただけで、全然関係ないところがグラついてしまう。パラメータにしても、他の部分にしても、つじつまが合うか? という判断の繰り返しで、最終的な落としどころが決まる感じです。

『アーマード・コア V』

――頭が痛くなりそうなお仕事ですね(笑)。

 おもしろいですよ(笑)。アクションの話をしますが、今回はどういう動きがうまいのか、というところで、まず個々のアクションをいろいろ用意したんです。最終的には、それをどう組み合わせていくか、その組み合わせ方がテクニックになるよう作っているんですね。

 たとえば、グライドで一気に近づいたところでブーストチャージ、だとか。敵の攻撃をハイブーストで避けて、ドライブして敵の上とって、みたいな動きとか。さらにスキャンモードを組み合わせて、敵の位置を察知してから、回り込むとか。いろいろと、組み合わせの妙が出るプレイができるようにしています。

――位置取りに関して、戦術的な選択肢がすごく増えそうですね。

 それはアセンブルなどにも発展する要素で、ブーストチャージは機体のタイプによって威力が違うし、機体の状態、速度とかによって威力も違う。いろいろ組み合わせると、こんなこともできんじゃない? みたいなことが、今までよりも強くなるよう作っているつもりなんですよ。いろいろと試行錯誤できるゲームです。もともと『AC』ってそうなんですけど、『ACV』は特に、試行錯誤できるゲームとして、アクションとしても、かなりやり応えのあるゲームになっていると思います。

――アクションの組み合わせを考えたり練習したりすることで、きちんと上達できるということですか?

 で、これまでよりも入り口を広げたい。僕らが目指している、考えている枠組みはそうです。チームでのゲームプレイとか、オペレータとか、これまでにない遊び方を強く押し出しているのもそのためなので。

 ただこのゲームの場合、見えないところから撃たれた弾を避けるようなすごいユーザーさんもいるので(笑)。そういう風になったら、僕らとしては思惑を超えられてしまっているので、意外に感じるところはありますね。ただ、それがおもしろいとも思っていて、それだけ夢中になって遊んでくれることがありがたいです。

 上達という意味では、最終的な理想は、5対1のチーム戦で1の側が勝つということですよね。現実には、普通にプレイしてそれだけの戦力差をひっくり返すことはなかなか難しいですけど、誰かやってくれないかなと。圧倒的不利をひっくり返すのって、日本人は好きですよね。この夢はみんな見ていると思うんですが(笑)。

『アーマード・コア V』

――確かに見てみたいですね(笑)。話は少し変わりますが、アクションやアセンブル以外のところで、こだわっている部分などはありますか?

 今回、操作を簡単にしたり、新しいアクションを入れたり、目立つところもいろいろ作ってはいるのですが、理系チックな部分を刺激をするようなところは今まで以上に複雑にしています。

 たとえば、アセンブル画面で出てくるグラフ。片方が速度のグラフで、もう片方が攻撃と防御のグラフなんですよ。これは、今の機体で操作をすると、こういう風に速度が変化していきますよ、といったことを示しています。もう一方はKE、CE、TEに対しての攻撃力とダメージを表したグラフです。

――なぜグラフを入れたのですか?

 1つは、今までのイメージを変えたい、数字が並んでいるのではなく、もう少し視覚的に見せたいという理由ですね。もう1つは、いろいろ分析できる要素を増やしたいからです。ゲームの難易度とは別に、複雑か単純か、という話があって。ある程度の複雑さがないと『AC』は絶対に成り立たない。だから、クリアするのが簡単とか難しいとかの話はあると思うんですが、「ああでもない、こうでもない」と考えられる複雑さは落とすつもりはないんですよ。その前提で、アセンブルの画面だけでも、いろいろ考えられるようにしたいんです。

――女性プレイヤーがまた減りそうな話でもありますが……(笑)。

 男女比は気にしてないんですよ。アンケートベースで統計を取ると、初代からずっと変わらず0.2%とか0.3%とか、1,000人に2人くらい。昔は、せめて1%にする方法はないのか、と考えた時もあったんですが、もうやめた(笑)。女子は来なくていいよくらいに突き抜けていこうと。

――せっかく入口が広がったから、女性も歓迎、ではないのですか?

 いや、本当はもちろんそう思ってますよ。でもヘタに小細工をすると、かえって中途半端なものができると思うんですよ。『AC』は結局、何をどうしても男だらけのゲームだと思うんです。逆に、そういうゲームに飛び込んでこようという女の子は、そういう男っぽいところが好きだと思うんですね。だっから男っぽいところを走り抜けていった方がいい。

――なるほど。

 だからグラフの話だけではなく、『ACV』の複雑さはこれまでよりも上がっています。アセンブルとか、戦い方とかも含めて。それが最大5人のチームになったことで、戦術や機体の組み合わせといった考え方でいくと、さらに奥深い、濃いゲームになっています。やり応えはやっぱり大事にしたい。

 今までは、それを作ったところで時間切れになってしまって、最初の入り口部分に手が回らなかった反省がありました。だから今回は、入口も奥深さも、両方ちゃんとやりたい、という話で作ってきています。すごく夢中になってプレイしてもらえるゲームになると思います。

――『ACV』の濃さ、奥深さ、期待しています。今日もいろいろと話を聞かせていただいて、ありがとうございました。

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 ここまでは、クローズドベータテスト(CBT)実施前に行ったインタビューだが、PS3版CBTが開始した後に鍋島さんが感じた手ごたえや、製品版に向けての意気込みなどについて、電撃オンラインにコメントが到着しているので掲載する。

→PS3版CBTを実施してのリアルタイムコメント(6ページ目へ)

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