2011年8月12日(金)
8月10日よりスタートした電撃文庫のフェア“電撃文庫ぶっちぎり!メディアジャック!!フェア”。その一環として、電撃オンラインでは電撃文庫の作家陣へのインタビュー企画“Spot the 電撃文庫”をスタートする。
第1回は、8月10日に発売された電撃文庫『Let it BEE!』の作者・末羽瑛(すえば えい)先生のインタビューだ。インタビューをお届けする前に、本作をまだ読んでいない人のために簡単に作品の内容を紹介していこう。
本作は、フェンシングはド素人の少女・有星結恵を主人公にした“青春フェンシングストーリー”。元インターハイ優勝者にして、“女王蜂”と呼ばれるフェンシング部の顧問・蜂谷巴に見初められた結恵は、フェンシングを始めることに。しかし結恵は尖ったものがニガテという先端恐怖症で……という内容だ。
▲こちらはTea先生が描く表紙イラスト。 |
インタビューでは、そんな本作を書くことになったキッカケや、作品の見どころ、そして末羽先生の人となりがわかるような質問をぶつけてみたので、興味がある人はぜひチェックしてもらいたい。
――この作品を書いた経緯を教えてください。
私が高校時代、フェンシング部だったからです。今まで野球とかバスケとか、他にも色々なスポーツはやっていたのですが、マイナー競技は当時が初めてでした。新鮮でしたし、おもしろいことも経験したので「せっかく貴重な体験を3年もしたんだから、書かなきゃもったいない!」と思って書きました。
――この作品の特徴はどこですか?
実際の公式戦では採用されていないのですが、この作品では“男女混合団体戦”という設定を付けました。スポーツは男子・女子と分かれていることが多いので、登場キャラクターの性別が偏ってしまいがちですが、この設定を付けたことによって両方の選手を描くことができました。フェンシングで男女が戦うシーンが入っているということが、この作品の特徴になっているのかなと思っています。
――作品を書く上で悩んだところはありますか?
複雑なルールをどう書こうか、というところです。試合用語もフランス語ですし……。ですから重要なところだけ専門用語を使って、あとはかなり崩して書いてみました。
――執筆にかかった期間はどれくらいだったのでしょう?
ベースになる話は、高校卒業くらいに書いていました。その時は2カ月くらいです。それから別作品で電撃小説大賞に応募して拾われて……。担当さんに「前に言ってたフェンシングの話、本格的に書いてみませんか?」と言われてからは3~4カ月です。話よりも修正にずいぶん時間がかかってしまいました(笑)。
――特にお気に入りのシーンを教えてください。
最後の試合シーンです。主人公の結恵が強い選手と戦うシーンなんですが、私も自分よりもずっと強い選手と戦ったことがあって、その時のことを思い出しながら書きました。ちなみに私の試合の結果は……秘密ということで。
――主人公やヒロインについて聞かせてください。
一応、モデルというか、元になった体験があります。実は私、現役時代に小学生の女の子にボロ負けしたことがあるんです。彼女は小柄で、剣と同じくらいの身長でした。そんな彼女が構えを取ると、突きに行ける場所がまるでなかったんです。……惨敗でした。今思えば、あの敗北が有星結恵の生まれた要因の1つだと思います。ちなみに、初めて結恵のイラストを見た時は「結恵ってこんなに可愛かったのか」とつぶやいてしまいました(笑)。
――今後はどんな作品をリリースしていく予定なんでしょうか?
現在、新作の執筆作業を頑張っています。今回のものとはまったく毛色の違う作品になる予定です。
――ゲームで熱中しているものがあれば教えてください。
最近、友人たちがPS3をプレゼントしてくれたので、アドホックパーティーで『モンスターハンターポータブル 3rd』をやっています。もし、どなたかご一緒することがあれば、その時はよろしくお願いします(笑)。
――小説を書く時に、特にこだわっているところは?
文章の読みやすさです。難解な表現で読むテンポが崩れないよう、読みやすく、なおかつわかりやすい文章を書くように心がけています。わかりやすくしようと思ってくわしく書きすぎてしまい、編集さんから「やりすぎです」と言われることがしばしばあります。
――執筆中のおもしろエピソードなどはありますか?
打ち合わせは電話ですることが多いのですが、長いと3時間くらい話しているので毎回ケータイの充電が切れます。「あ、やばいです。充電切れそう。ちょ! ちょっと待ってください! 今――」→(電話が切れる)なんてことがよくあります。私の充電が切れたことに気づかなかった編集さんが一方的に話し続けていたなんてこともあったとか(笑)。……すみません。ちゃんと充電器を付けっぱなしで打ち合わせします。
――アイデアを出したり集中力を高めるためにやっていることはありますか?
アイデアを出す時は、本屋に行って本のタイトルだけ見て内容を想像する、なんてことをしています。読んでみると全然違うことが多いのですが、想像した内容は新しいアイデアとして残るので重宝しています。集中力を高めるためにやっているのは……喫煙でしょうか。
――現在注目している作家は?
現在というわけではないですが、京極夏彦さんや森見登美彦さんの作品は好んで読んでいます。京極夏彦さんの作品は知識の書き込みがぼう大なのに、それをおもしろく読ませてくれるところがすごいと思います。森見登美彦さんの作品は文体がポップで、「こんな文章書けたら楽しいだろうなー」とよく思っています。
――学生時代に影響を受けた人物・作品は?
恐らく高校時代は今までの人生の中で一番本を読んでいた時期なので、正直挙げきれないです。影響されやすい人間なので、読むものすべてになんらかの影響を受けていたような気がします(笑)。映画ならジャッキー・チェン主演の作品でしょうか。シリアスだったり、コミカルだったり、見入ってしまうようなアクションだったり……。あのコメディっぽさを残しながらも手に汗にぎるバトルシーンは、小説ならどう表現すればいいのか……当時ずっと考えていました。今も書けそうにないですが、いつか書けるようになりたいです。
――今熱中しているものは?
大学生のころからバイクが好きで、よく乗っています。愛車はホンダのスズメバチです。……今回の作品もそうですが、特別ハチが好きというわけでもないのに、なぜだかハチとは縁があります(笑)。
――小説を書こうと思ったキッカケは?
小学生のころ、那須正幹さんの『ズッコケ三人組』が大好きだったんですが、私の小遣いではろくに買いそろえられなくて、「じゃあ自分で続きを書こう!」と思ったのがキッカケでした。できあがったものは『ズッコケ三人組』とはほど遠い冒険ファンタジーだったんですが……。とにかく書くのが楽しかったんです。
――初の商業作品というところで、その感想は?
ずっと目標の1つにしていたのでうれしいです。ですがその反面、達成できた実感がなかったりします。たぶん、知らない誰かの感想が耳に入ってやっと初めて実感できるんじゃないかと思います。
――今後、どういった作品を発表していきたいですか?
今回は“フェンシング”という珍しい題材で書かせていただきました。次回も少し変わった題材を扱う予定です。色々と新しいことに挑戦していきたいので、チャレンジャー精神を忘れないような作品を書いていきたいです。
――それでは最後に、電撃オンラインの読者へコメントをお願いいたします。
フェンシングは優雅で上品に見えますが、実は骨太でかなり熱い競技です。知っている方、知らない方、どちらにも楽しんでいただきたいと思って書きました。青春やスポコンがお好きでしたら、ぜひ読んでいただけると幸いです。
(C)2011 ASCII MEDIA WORKS
表紙イラスト/ Tea