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2011年8月26日(金)

【Spot the 電撃文庫】範乃先生に聞く『特異領域の特異点』に詰めたモノとは?

文:電撃オンライン

 電撃文庫の作家陣によるメールインタビューをお届けしていく“Spot the 電撃文庫”。第3回となる今回は、『特異領域の特異点』の作者・範乃秋晴先生のインタビューをお届けしていく。

 本作は、“特異領域理論”というものによって物理法則はおろか、政治経済の枠組が一変した世界を舞台に描く空想科学冒険譚だ。主人公は、特異領域理論の研究にかんして世界最高峰と言われる世界国家第一大学に在籍する自称天才・一ノ瀬賢悟(いちのせ けんご)。とある事情で無期停学になっていた彼のもとに、あるメッセージが送られてくる。それは稀代の天才科学者・天川理離(あまかわ りり)からの救難信号だった。天川は特異領域理論を提唱した5人の天才科学者の1人であり、長らく消息を絶っていた人物だった。その裏に潜む事情を想像した賢悟は、天川の救難へと向かうが、それは世界を揺るがす事件の始まりにすぎなかった!?

『特異領域の特異点』
▲saitom先生が描く本作の表紙イラスト。

 範乃秋生には、架空の理論をテーマにした本作が生まれたキッカケや、小説を書く時のこだわりなどを聞いてみたので、興味がある人はご一読あれ。

■ ワクワク、ドキドキ、ハラハラを詰め込んだ物語に ■

――この作品を書いたキッカケを教えてください。

 キッカケは大きくわけて3つあります。まず数年前に見たアニメのワンシーンなんですが「特異点では物理法則が意味をなさない」というような台詞が出てきまして、それがものすごくワクワクしたんです。そこから特異点についての資料を調べつつ、特異点の正体が一体どういうものならおもしろいかということを考えはじめました。

 2つ目はある日、なにか適当な考えごとをしていたら、ふと考えるってどういうことなのか疑問に思ったんです。当たり前の話ですが、人には意識があるじゃないですか。なのに意識が一体、なんなのかってことは現代科学でもまだよくわかっていなくて、今このことを考えている自分の思考というものは一体どこからやってくるのか、そう考えたらおもしろくて仕方がなく妄想を広げずにはいられませんでした。

 最後は担当編集の方から新作を書きましょうという話がきたことです。前作『マリシャスクレーム』(こちらはメディアワークス文庫)は自分としてはおもしろい出来に仕上がっていると思っていますが、いかんせんクレーム対応の負の部分に焦点を当てているため、あまりに内容がニッチすぎたんじゃないかと反省もしております。それを踏まえて、今回はもっと幅広い読者に読んでいただけるような話にしようと思いました。ワクワク、ドキドキ、ハラハラを目一杯詰め込んだ楽しくおもしろい物語を書こうと決め、以前ものすごく興味をそそられた上の2つのことを中心に組み立て、本作『特異領域の特異点』が誕生しました。

――作品の特徴や、ウリとなるポイントを教えてください。

 舞台は、特異領域理論によって物理法則を書き換えられるようになった少し未来の地球です。科学の発展によって今の私たちからは想像もつかないほど変貌(ぼう)した世界が待っています。そして実在するあらゆる理論がそうであるように、特異領域理論も仮説であり、多くの謎が残されています。それは世界の謎と言ってもいいでしょう。主人公ら科学者はその謎を科学によって解き明かしていきます。もちろん、一筋縄ではいきません。ワクワク、ドキドキ、ハラハラしながら彼らと一緒に真理へと迫ることができるのが本作の醍醐味だと思います。

――作品を書く上で悩んだところはどこですか?

 世界設定とバトルシーンです。科学という題材を取り扱う以上は、世界設定は物語の根幹に関わります。科学者は科学理論を提唱する際、「世界はこうである」と言うことになるわけですから、解き明かした世界の謎がつまらないものにならないように頭が痛くなるぐらい考えました。

 バトルシーンについて、本作は科学によって物理法則が書き換えられるという話ですから知能戦でなければおもしろくないと考えていました。愛と勇気と根性は素敵で大好きですが、それだけで苦難を乗り越えてしまうとこの物語は逆に盛り下がってしまうんです。なので危機に陥った主人公の一瞬の閃きを理詰めで考えるのにとても苦労することになりました。

――執筆にはどれくらいの期間がかかっているのでしょうか?

 書くと決めてからは3カ月ぐらいです。

――主人公やヒロインについて聞かせてください。

 一ノ瀬賢悟という17歳の少年が本作の主人公ですが、その人となりを表すにふさわしい彼の座右の銘が“ノープロブレム、ノーライフ”です。性格は浮き沈みが激しく、よく無茶をやり、はた迷惑なところもあるけれど憎めない。それでいていざという時にとても頼りになるのが賢悟です。ある事情によって無期停学中のため、物理法則を書き換えるための“特異領域制御装置”というものを扱えないのですが、その彼が特異領域制御装置を有した敵を相手にどう立ち向かうのかは見ものだと思います。

――特にお気に入りのシーンはどこですか?

 どうしても書きたかったシーンは、作中の天才科学者が世界についてのある仮説を主人公に話すところです。それは妄想じみていて、証明が難しくて、望ましいことではない。だけど、もしかしたらそうかもしれない、と思わされるような仮説です。実在の理論と架空の理論を合わせて、かなりイメージ通りのシーンが書けたと思います。

――今後のシリーズ展開について聞かせてください。

 特異領域理論を提唱した5人の天才科学者の内、何人かは本作で登場していますが、残りの科学者もそれぞれ独自の理論を引っさげて出てくる予定です。後は特異領域制御装置を使った更なる甘味の追求や、特異領域理論が日常生活にどのような恩恵をもたらしているのかというのをおもしろおかしく書いていきたいです。

 →執筆中の一番の問題は……?(2ページ目へ)

(C)2011 ASCII MEDIA WORKS
表紙イラスト/ saitom

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データ

▼『特異領域の特異点』
■発行:アスキー・メディアワークス
■発売日:2011年8月10日
■定価:662円(税込)
 
■『特異領域の特異点』の購入はこちら
Amazon.co.jp

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