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2011年9月3日(土)

『ICO』『ワンダと巨像』プレミアムイベントレポ! 意識したのはあえて変えないこと

文:電撃オンライン

 SCEから9月22日に発売されるPS3『ICO』と『ワンダと巨像』。その発売を記念したプレミアムイベントが、東京都内の同社社内で本日9月3日に行われた。

『ICO』『ワンダと巨像』プレミアムイベント
『ICO』『ワンダと巨像』プレミアムイベント 『ICO』『ワンダと巨像』プレミアムイベント

 両タイトルの発売を記念して、『ICO』と『ワンダと巨像』の好きなシーンをTwitterやmixiなどで共有して、オリジナルグッズを当てるという企画“Great Scene Sharing”が、10月31日まで行われている。

 プレミアムイベントには、この“Great Scene Sharing”に参加した人の中から抽選で40人が招待された。両タイトルのディレクター・上田文人さんと、『サイレントヒル』や『SIREN』シリーズを手がけてきたクリエイターの外山圭一郎さんが登壇し、集まったファンを前にトークを行った。

『ICO』『ワンダと巨像』プレミアムイベント 『ICO』『ワンダと巨像』プレミアムイベント
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▲『ICO』でプレイヤーが操作するのは、角が生えていて、生贄(いけにえ)として霧の城に送られてしまった少年。城内で出会った謎の少女をエスコートしながら、2人そろっての脱出を目指そう。
『ICO』『ワンダと巨像』プレミアムイベント 『ICO』『ワンダと巨像』プレミアムイベント
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▲亡くなった少女を生き返らせるため、主人公のワンダは愛馬アグロと一緒に、巨像に挑む。『ワンダと巨像』では、ワンダの何倍もある巨像たちとの戦いに加えて、幻想的なストーリーが話題となった。

 外山さんは『ICO』について、PS2用として作る前のPS向けで作っていた当時と、PS2用の開発時とで、ゲームを構成する要素が大きく変わっていないことに驚いたという。「雑誌で初めて見た時には、海外のスタジオが作ったのを国内に持ってきたのか?」と思ったほどのインパクトがあったことを告白した。

 それに対して上田さんは、『ICO』でチャンスをもらった時、これまでの商品に立ち向かうためにはどうすべきかを考えたという。「人の逆をやろうとしました。まあ、若かったというのもあります」と笑いながら語った。

『ICO』『ワンダと巨像』プレミアムイベント 『ICO』『ワンダと巨像』プレミアムイベント
▲クリエイターとしてだけではなく、上田さんの作品の1ファンだという外山さん。今日のイベントを楽しみにしていたことを明らかにした。▲PS3版をリリースするにあたって、「オリジナルを忠実に再現しながら、PS3で出すことを意識した」と話していた上田さん。

 『ワンダと巨像』にも話が及ぶ。『ICO』当時、整合性を4年にもわたって取りながら、城の中を作っていた上田さんは、その反動でアクション活劇を作りたくなったのだという。『ワンダと巨像』を作っている時には、今後は“巨大なボス戦”が主流になると思っていたようだが、考えていたほどは主流にならなかったと語った。「それを踏まえて、現在は『人喰いの大鷲トリコ』を作っています」と上田さんは続けた。

『ICO』『ワンダと巨像』プレミアムイベント

 話題は、『ICO』のお気に入りのシーンに移る。外山さんは“シーン9、崩れる橋”をチョイス。廃墟のような感じや危険な感じが出ているところが印象的だと説明した。このシーンでは、橋が崩れてヨルダが宙ぶらりんになり、ヨルダを引き上げることになる。上田さんはこのシーンに「プレイヤーに、これからも手をつないでほしい」というメッセージを込めたのだという。

 外山さんは、『ICO』を作るにあたって海外でも取材したと思い、上田さんに質問したそう。しかし上田さんから「取材せずに作れているので、取材は必要ない」と、身もフタもない言葉が帰ってきて驚いたという。

 しかしそんな上田さんも、『ワンダと巨像』を作るにあたり、乗馬だけは体験取材に行ったとか。馬の挙動に加えて、“ダイレクトに操作できないものを操作する”ことがゲーム作りの参考になったと、当時を振り返っていた。

『ICO』『ワンダと巨像』プレミアムイベント

 『ワンダと巨像』の外山さんお気に入りシーンは“シーン20、最後の一撃はせつない。”。このシーンについて外山さんは、「(ボスを倒して)ゲームで一番ほめられるところで、倒した後に触手のようなものが出て、物悲しさを覚えたため」と解説した。

『ICO』『ワンダと巨像』プレミアムイベント

 上田さんが『ICO』から選んだのは“シーン23、その手を離さない”。崩れていく橋で、プレイヤーにジャンプするか、しないかを委ねるシーン。賛否が出ると思ったが、プレイヤーが思惑通りの行動をしてくれたそうで、大成功と感じて思い出深かったようだ。

『ICO』『ワンダと巨像』プレミアムイベント

 『ワンダと巨像』からは“シーン34、崩れる橋”をピックアップ。これはエンディングのシーンだが、上田さんはエンディングすべてが印象に残っているという。エンディングの絵コンテは上田さん自身が描いており、音楽に合わせて作ったそう。当時、何度も音楽を聞きながら作ったので印象に残った、と補足していた。

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▲ユーザーの投票が多かったシーンも明らかになった。“シーン3、囚われの少女”は、2人の初対面のシーン。その距離感を出すために、カメラを引いて映したと上田さんは語った。▲外山さんが挙げた“シーン9、崩れる橋”も人気。このシーン以降、ヨルダから手を離せなくなってしまったという人が多かったようだ。
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▲『ワンダと巨像』でユーザーからの投票が多かったのは“シーン20、最後の一撃はせつない。”。こちらも外山さんと同じだ。▲2位はアグロの人馬一体となった“シーン16、友とともに大地を揺るがす”。上田さんは、アグロと協力するシーンがそこまで多くないため、アグロがここまで人気になるとは思っていなかったという。

 ここで、話のテーマは“作品を創作するにあたって”になる。2人とも設定を先に作るタイプではなく、ビジュアルイメージがあり、そこからゲームの整合性を考えつつ、世界観を構築していく、という作り方をしていて、制作の考え方は近いようだ。

 外山さんは、『サイレントヒル』を作った際に、PSのポリゴンでは近影しか描けなかったので、「遠くはボヤかそう」とハードの弱点を逆に生かしたゲーム作りをしたことを明かす。上田さんも『ICO』を作る際に、周りを海にして、霧を濃くすれば遠景を見せなくていいと考えていたことを明かした。

 今後について聞かれた上田さんは、「開発中の『人喰いの大鷲トリコ』を満足のいく形で、完成させないといけないと思っています。娯楽である限り、他よりも優れているとプレイヤーに感じてもらう必要がある。仕事なので、それをできないこともあるが、なるべくまっとうできるように抗っていきたい」と意気込みを語った。

 外山さんは、年末に向けてPS Vita『GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動(以下、GRAVITY DAZE)』を作っている。この作品は、同氏の代表作であるホラー作品をやる前から考えていた方向性のものだという。「Vita最初の盛り上げに貢献するために、すごく気合いが入っています。東京ゲームショウ2011にプレイアブルで出展するので、ぜひさわってほしいです」とアピールした。

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▲会場では、『GRAVITY DAZE』の映像が公開された。以前にこっそりプレイさせてもらったという上田さんは「最近、完成度がかなり上がったということを社内で聞いたので、またこっそり遊ばせてほしいです(笑)」とエールを送った。

 最後に上田さんは、会場のファン、そして発売を待つファンに向けて、「9月22日に『ICO』と『ワンダと巨像』のPS3版がリリースされます。このような形で、10年、6年前のタイトルが発売されるのも、ファンの方々の応援のおかげ。ただ、気持ちとしては最新作が代表作になるように思っているので、よければ応援してください」とメッセージを送り、イベントは終了となった。

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(C)2001-2011 Sony Computer Entertainment Inc.
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