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2011年12月3日(土)

【Spot the 電撃文庫】“一途な妹”と“何をされてもいい妹”ならどっちを選ぶ? 『妹ホーム』の柏葉空十郎先生インタビュー!

文:電撃オンライン

 電撃文庫で活躍する作家陣へのメールインタビューをお届けしていく“Spot the 電撃文庫”。第15回となる今回は、『妹(マイ)ホーム』の作者・柏葉空十郎先生のインタビューを掲載する。

『妹ホーム』
▲有河サトル先生が描く『妹ホーム』の表紙イラスト。

 本作は、妹たちに迫られて、思わず兄妹以上の関係になってしまいそうな少年の姿を描いたラブコメディ。貧乏ながらもつつましく幸せに暮らしていた少年・相葉佑(あいば ゆう)とその妹・相葉真伊(あいば まい)。そんな2人は奨学生制度で入学したセレブ御用達の名門校で、美しく成長した幼なじみ・志井舞衣(しい まい)と再会をはたす。

 そんなある日、舞衣が佑の実の妹かもしれないという疑惑が発覚! 佑を幼なじみ以上に慕う舞衣は、それをキッカケにして相葉兄妹が暮らすアパートを改装し、3人で同居生活を開始するのだが……?

 柏葉先生には、本作のヒロインやお気に入りのシーン、今後の展開などについて答えていただいた。また電撃文庫新作紹介ページから『妹ホーム』の試し読みができるようになっているのでまだ読んでいない人はあわせてチェックしてもらいたい。

――この作品を書いたキッカケは?

 話せば長くなるので、はしょると……異世界ファンタジーを書こうとしたら、いつの間にか不思議要素のほとんどないラブコメになっていた。何を言っているのか、簡単に見当がつくと思いますが、あえて平たく言うと反動なワケです。異世界の価値観、制度、歴史、その他いろいろ考えて、いっそ何もないほうが……。

――作品の特徴や相葉先生イチオシのポイントは?

 いろいろとPRしたいところですが、あえて1つに絞ると、メインヒロインの1人である相葉真伊の話す“おっとり広島弁”です。アニメやマンガでヤクザが出てくれば関西弁か広島弁と相場は決まっていますが、お笑い芸人のイメージがあってか、関西弁の2次元ヤクザはコメディタッチで描かれることも多いですよね?

 その一方で広島弁の2次元ヤクザは相手をビビらせるだけの怖い役割ばかりです。きっと全国的に広島弁には怖い・汚い・田舎っぽいといったイメージが先行していることでしょう。そして広島県民である柏葉自身も“まぁ、そんな感じ”と思っています。

 けれどそんな広島弁も、ゆっくり話すと、広島弁独特のイントネーションが暖かみを持ち、素朴で優しい言葉になります。そしてこの“おっとり広島弁”という話し方そのものが、相葉真伊がどんな少女なのか端的に表しているはずです。

――主人公とヒロインについて聞かせてください。

 先に真伊を紹介したので、続いてもう1人のメインヒロインである志井舞衣をご紹介します。ある日、“幼なじみの舞衣こそが本当の妹かもしれない”といった話が持ち上がります。別々に育った2人が、もしかすると血がつながった兄妹かもしれないといった事態になった時、普通はいろんな意味で終わりの方向へ向かいますよね? けれど舞衣は違います。むしろ、そこから始まります。

 おかげで主人公である相葉佑は、アイデンティティが崩壊しそうになるわけですが……という一文をもって、ついでに彼の紹介とさせていただきます。

――特にお気に入りのシーンは?

 1つに絞るのは難しいのですが、主人公とメインヒロインが2人だけになるシーン(※佑と真伊、佑と舞衣)にはお気に入りが多いです。いろんな意味で! そこで『電撃文庫MAGAZINE』の新刊情報に掲載されたフレーズをお借りしながら、真伊と舞衣のセリフをひと言ずつご紹介。

●相葉真伊
「うち、今、しあわせじゃけぇ」
 ビンボー兄妹のささやかな幸せを象徴するひと言です。

●志井舞衣
「わたしが妹に代わったからって、お兄ちゃんにガッカリさせたくない」
 彼女がこのセリフを語るシーンは作中、屈指の迷場面。

 お兄ちゃんに一途に付いていく妹。お兄ちゃんになら何をされてもいい妹。さあ、どっち?

――作品を書く上で悩んだところはどこでしょうか?

 実はもう1人登場させたかったヒロインがいました。けれど展開の上で登場する必要性がなかったので、枚数的な問題から、やむを得ず登場するシーンやエピソードを丸ごとカットしました。かなり四苦八苦したので、労力的にも自分の能力的にも、残念でなりません。

――執筆にかかった期間はどれくらいでしたか?

 上記の通り、プロットも執筆もかなり迷走したので、かなり長くかかっています。

――よろしければ、今後の展開について教えてください。

 需要(※読者の皆様のご要望)と供給(※大迷走したので、やや自信喪失中)のバランスが取れたなら、といろんな意味で含みを持たせる形に……。ただ基本的にはもう1人登場させたかったヒロインがいますし、泣く泣くカットしたシーンもあります。幻のヒロインに日の目を見せてあげたいですね。

――注目している作家や作品はありますか?

 やはり同じ年にデビューした作家さんは気になります。全員のお名前や作品を羅列するのも何なので、『妹ホーム』との同時発売作に限って紹介をさせていただくと、水鏡希人先生の『ハーレムはイヤッ!! 2』。 瀬那和章先生の『可愛くなんかないからねっ! 2』。安彦薫先生の『テイルズ オブ エクシリア 1』ですね。

――今熱中しているものはなんですか?

 健康作り? 実は真の目標として視力回復を目指しています。視力回復を目指す過程の中で、肥満はほぼ解消(※4カ月で約20キロ減)し、花粉症とドライアイの症状が劇的に改善しました。

 ただ肝心の視力の方は、0.01からスタートして最初の2カ月くらいで0.06か0.08くらいまでは回復したものの、それ以降はずっと横ばいで、半年たっても0.1にも届きません。本来の目的からすると、ちょっと頭がおかしくなりそうなので、とりあえず健康作りに熱中していることにしています。

――ゲームで熱中しているものがあれば教えてください。

 現時点で遊んでいるゲームがなく、熱中“している”とは言えないかもしれませんし、去年発売されたものですが、PSP用ソフト『タクティクスオウガ ~運命の輪~』です。デビュー作が『桜田家のヒミツ~お父さんは下っぱ戦闘員~』だったこともあって、柏葉は“一将功なりて万骨枯る、そんな争いのために下っぱ兵士を犠牲にしない”をモットー(縛りプレイ?)に遊びました。

 早い話、“狙うのは敵のリーダーだけにして、なるべく下っぱ兵士を殺さない”ワケです。こうした制約があると、ゲームが自分の中でよりドラマチックになります。例えば「あなた方の力は必要ありません」と答えたのに勝手に付いてきた騎士が最初のお城で下っぱ兵士を倒す姿を見て「これが貴公らゼノビアのやり方なのかーッ!」と憤ったり、どこかの神殿で老人から「あの女を殺さないでほしい」と頼まれて、足元に転がっているナイトを見ながら「えっ?」と声を出したり……。

 惜しむらくはクリア時の敵軍戦死者数が103人で、3桁の大台に乗ってしまったことでしょうか……もしかしたら2桁に抑えることも可能だったかも?

――読者へのコメントをお願いいたします。

 有河サトル先生が描かれた美しくカワイらしい表紙イラストをご覧ください。黒髪ロングの少女が相葉真伊、そしてツインテールの少女が志井舞衣です。本の中に彼女たちのドラマがあります。“広島弁なのに優しい。妹かもしれないのに、むしろはじまる”『妹ホーム』、よろしくお願いします。

(C)2011 ASCII MEDIA WORKS
表紙イラスト/有河サトル

データ

▼『妹(マイ)ホーム』
■発行:アスキー・メディアワークス
■発売日:2011年11月10日
■定価:620円(税込)
 
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